バッグや財布などの皮革製品、アパレル、コスメ、アクセサリー・・・あらゆるブランドのトップと聞くと、ルイヴィトンの名前を挙げる方が多いでしょう。
言わずと知れたフランス発のハイブランドで、「モノグラム」「ダミエ」と言ったロゴはあまりにも有名ですね。
ただ、こと腕時計と言うと、いったいその性能や評価はどうなのでしょうか。
バッグなどと同じように至高の逸品なのか、はたまた「キワモノ」的扱いなのか・・・
そこでこの記事では、東京 銀座の時計専門店GINZA RASINのスタッフが、ルイヴィトンの腕時計を徹底検証してみました!
デザイン、機能・性能、価格、そしてルイヴィトンなら気になるリセールバリューをあますことなくお伝えいたします!
目次
ルイヴィトンの腕時計「タンブール」
2002年に誕生したタンブール。聞きなれない名称ですが、フランス語で「太鼓」という意味を持ちます。
16世紀にドイツで初めて作られた寸胴ケースの旅行用小型携帯時計「ドラムウォッチ」に由来しており、まさしく太鼓のようなインパクトあるケースフォルムが大きな特徴です。
ちなみに2005年から角型ケースのスピーディーコレクションも展開されましたが、そのケース形状やデザインはタンブールのDNAを引き継いだ仕様となっています。
また、トランクメーカーから端を発するルイヴィトンですので、「旅」が一つのブランドコンセプトとなっています。
ドラムウォッチ自体が旅行用の時計であったことからもそれは明白でしょう。
加えてGMTやGMTアラーム、方位計測機能など、旅にちなんだ機構を搭載したモデルが多い、ということもタンブールの大きな特徴となります。
「インパクト」と申し上げましたが、ケースフォルムが斬新に思えるのは、その厚みに秘訣があります。
ケース自体が厚いというのもありますが、風防と裏蓋が太鼓のようにせり出す形状となっており、ただのデカ厚時計ではないのです。
また、ラグを持たずに独特なエンドピースでブレスレット(またはベルト)を支えていたり、ベゼルはきわめて薄く文字盤が強調されていたり・・・何から何まで既存の腕時計の「型」を打ち破る類のものでした。
先ほどルイヴィトンの時計製造は「高評価」と申し上げましたが、誕生当初は「キワモノ」といった扱いがあったことも事実です。
しかしながら、世界ナンバーワンをひた走るファッションブランドならではの創意工夫と高い設計力・デザイン性によって、タンブールはキワモノから「唯一無二の至高の腕時計」へと昇華されました。
その詳細については、次項で徹底検証いたします。
ルイヴィトンの腕時計を徹底検証!
ルイヴィトンの腕時計「タンブール」を、「デザイン」「性能・機能」「価格」「リセールバリュー」の面から検証・評価していきます。
①デザイン
いくらデカ厚が流行った2000年代においても、タンブールはかなり奇抜な意匠をしていました。
ラウンドフォルムのケースは、円柱をそのまま切り取ったかのように寸胴で、しかも風防のみならず裏蓋側もかなりふっくらしているのです。
誕生から間もなく22年が経とうとしていますが、今なおインパクトは絶大です。
ムーブメント機構や防水性の確保のため、ケースが厚くなってしまうことはしばしばあります。
そこでブランドはケース構造をサンド方式にしたり、立体的にしたりと工夫をこらすのですが、ルイヴィトンは非常にシンプル。
ケースサイドに「Louis Vuitton」のロゴを一周させることで視覚的に寸胴ケースにメリハリを与えました。
メリハリがないと、寸胴はどうしてもずんぐりむっくりした印象になってしまいます。
ケースが厚いというのはこういうことです。
しかしながらシンプルにロゴを一周させるだけで、非常にスタイリッシュなケースフォルムを確立しました。
また、ラグを持たせずエンドピースのみにしたことも、時計のスリム感に一役買っています。
現在は多数の派生モデルもラインナップされていますが、初代からデザインコードは一貫して変わっておらず、誕生当初から完成されたデザインであったことがおわかりいただけるでしょう。
もはやタンブールは、モノグラムやダミエと同じように、ルイヴィトンの一つのアイコン的役割を持つようになりました。
加えて、その後「タンブール ムーン」が登場します。
従来の太鼓フォルムとは逆をいくタンブールで、ケースサイドを湾曲させ「くびれ」を作ることでスタイリッシュさを作り上げる、という工夫がこらされています。
2023年位までは従来のタンブールと、タンブール ムーンを二本柱に派生モデルが展開する形となっていました。
その他のルイヴィトン製品にも言えることですが、こういった一目でルイヴィトンとわかるアイコンを持つことは、ブランドにとっては必要不可欠。
特にルイヴィトンのように、ステータスシンボルとして扱われるアイテムであればなおさらです。
「なんかよくわからないけど変な時計着けてる」よりも、「ルイヴィトンのオシャレで独創的な腕時計を着けてる」って思われた方がいいですよね。
こういった意味では、タンブールのデザインは時計としても、ファッションアイテムとしても非のうちどころがないと言えます。
なお、タンブールはそのケースデザインの見事さが語られがちですが、随所に至るまで完成されていることも特筆すべき点です。
例えば文字盤。最も時計の「個」が出る部分ですが、タンブールにケースほどの奇抜さは少ないかもしれません(モデルにもよりますが)。
しかしながら色を使い分けたり、ブランドロゴを潜ませたり、絶妙なバランスでインダイアルを並べたりと、ケース同様に高い設計力を活かした配置がなされています。
さらに言うと、ベルト・ブレスレットもルイヴィトンならでは。
伝統的な皮革製造ノウハウを活かした装着感の良い革ベルトは言わずもがな、メタルブレスレットにおいても、ジュエリーのように美しく腕元を彩ると定評があり、他社にはなかなか真似できない、と評価されています。
また、革ベルトにしろラバーベルトにしろモノグラムやダミエをあしらった個体も少なくなく、ルイヴィトンのブランドイメージが全面に押し出されている形です。
こういったディテールまでこだわりぬかれたデザイン性が、ルイヴィトンファンのみならず、時計愛好家を魅了する大きな要素と言えるでしょう。
②性能・機能
ルイヴィトンはLVMHグループにおいて、いくつかの時計職人集団と強力なコネクションを持ちます。
そのため時計の性能は随一。
特筆すべきは自社製造のムーブメントです。
2009年より自社の時計製品の一貫製造について言及しましたが、これは一部の高い技術力を持ったブランドにのみ許される生産手法となります。
そのため「マニュファクチュール」と呼び、一つの付加価値として時計界に定着しています。
ルイヴィトンは時計製造の歴史はまだ浅いながら、このマニュファクチュールを実現している稀有なブランドです。
しかもルイヴィトンがお得意とするのはコンプリケーションである、ということに驚かされます。
コンプリケーションとは日本語にすると複雑機構と言う意味で、クロノグラフやGMTなどと言った、2針または3針に付随して儲けられる機構を備えた時計、といった意味です。
コンプリケーション製造はメーカーにとってマニュファクチュールよりもさらに難易度の高い手法となります。
機械式時計は基本の機構以外のものを付加するには、既存のムーブメントにモジュール的に組み込んでいくのですが、ムーブメントに必要以上の厚みが出てしまったり、パーツが多くなるがゆえに壊れやすくなってしまったり、そもそも正常に動くような設計を行うことが難しい・・・など、完成品までのハードルがなかなか高い機構となるためです。
さらに言うと、ルイヴィトンはコンプリケーションを発展させ、ユニークな独自機構を開発していることも大きな強みです。
例えば上の画像のスピンタイム。
発売された当初はスピンタイムと言えばルイヴィトン、といった地位を獲得していました。
文字盤上に並べられたキューブ内でホームタイムを視認できる機構なのですが、赤い三角マークは午前は外側、午後は内側を指す仕様となっており、昼夜判別が可能となっています。
ちなみにこのスピンタイムを文字盤内のシリンダーが回転することで読み取れる機構もリリースされました。
これまでご紹介してきたデザイン面、そして時計としての性能・機能が突き詰められていることを鑑みれば、実はルイヴィトンはかなり堅実、あるいは質実剛健なブランドであることが理解できるのではないでしょうか。
事実、時計のみならず、その皮革製品やアパレル製品のワンランク上の品質は言わずもがな。
メンテナンスをしながら大切に扱えば長持ちするという性質から、経年があっても値がつき、一大中古市場を築く所以にも繋がっています。
③価格
ルイヴィトンは高額です。
もともとの正規の定価が高い、ということもあるでしょう。
加えて、基本的にルイヴィトンは決まった定価を下げる行為の一切を拒否している、ということも関係しています。
セールやアウトレットへの出店は行いません。
これはルイヴィトンの他には、シャネルやエルメスなどが採用しているブランド戦略です。
流通する製品の価格を下げない努力をすることで、結果的にハイブランドとしての価値を守ることが目的となります。
実際、これらのブランド戦略が功を奏し、ルイヴィトンは長年世界トップクラスの圧倒的ステータスを堅持してきました。
そのためルイヴィトンのバッグや財布など、多くのアイテムは数万円~数十万円がプライスレンジで、これを高いと思う方がほとんどでしょう。
しかしながら「高級時計」という分野で見れば、ミドルクラスに位置します。
前項でご紹介したようなコンプリケーションが付加されたり、ゴールドやダイヤモンドが使われたりするとその分価格も高くなりますが、シンプルなモデルであればこの限りではありません。
さらに、並行輸入店であれば、さらに購入価格を下げることが可能です。
並行輸入はアウトレットなどとは異なり、メーカーから正規ルートで仕入れるのではなく、海外など独自ルートで仕入れて国内で販売する手法です。
コピー品や偽物などではなく、もちろん本物。製品自体は同一です。
これは海外と国内の為替や定価の価格差を利用して安く売る、という、1990年代頃~確立された販売形態となります。
この並行輸入店であれば、新品であっても50万円前後~タンブールを手に入れることが可能です。
さらに言うと、新品と中古の価格差も大きいブランドです。
中古であれば20万円~40万円前後、コンプリケーションでも40-50万円台~販売されています(もちろん個体によっては中古でも100万円超えのものも)。
前述の通りルイヴィトンは長持ちするので、状態の良い個体が二次流通市場に出回っているのも嬉しいところ。
信頼できる時計店で、ぜひお得な一本を探してみてくださいね。
ただし、LVMHグループは、正規店以外で購入された製品のメンテナンスを割高にする「並行差別」を行っています。
そのためルイヴィトンでしか直せないような独自機構の製品などはメンテナンスコストが高額になる可能性がありますので、ご注意ください。
④リセールバリュー
ルイヴィトンのもう一つの特徴。それはリセールバリューに他なりません。
ルイヴィトンは数あるブランドの中でも「高く売れる」「売れる場所が豊富」「売りやすい」の三拍子揃ったブランド。
あるブランド買取店の話では「ルイヴィトンならどんな状態の製品でも売れる」とのことで、ボロボロでも、破損していても買い取りたいというお店は少なくありません。
ことルイヴィトンの腕時計に関しても、リセールバリューの高さは健在です。
非常によく売れるため、当店GINA RASINでも、ルイヴィトン製品は積極的にお買取りをさせていただいております。
しかしながらルイヴィトンの中でも腕時計製品の売却は、いくつかの注意が必要です。
それは、腕時計は時計専門店に持ち込んだ方が高値で売却しやすい、ということ。
店舗にもよるので一概には言えませんが、例えば動かなくなってしまった時計を売る時、ただのブランド買取のお店だと修理ノウハウがなく、再販できないとして買取を拒否されたり、二束三文で買いたたかれたりする可能性があります。
一方時計専門の買取店であれば自社の提携工房を持っており、査定額から差し引かれることとなりますが、よっぽど深刻な破損がない限りは買取が可能です。
ただし、時計買取専門店だと「再販できるかどうか」が重要ですので、再販できないほどの個体は買取拒否の対象となります。
「動かなくてもヴィトン製品なら」と言った買取店があれば、そちらに持ち込んだ方が良いでしょう。
また、付属品をお持ちであれば、必ず一緒に査定に持ち込むようにしましょう。
腕時計はメーカー付属品、特に保証書の存在が非常に価値を持ちます。
真贋を見極める、ということはもちろん、それが一つの付加価値となるためです。
保証書があるかないかで査定額が数万円変わってしまうことも。
もしお持ちでしたら、必ず一緒にお持ち込みください。
まとめ
ルイヴィトンの腕時計「タンブール」について、デザイン、性能・機能、価格、リセールバリューの面で検証・評価してみました!
タンブールは一見すると「オシャレで奇抜」な時計ですが、それだけでは終わらない、上記4項目全てにおいて非常に優れた時計製品であること。
巨大資本を背景に、ウブロやゼニス、タグホイヤーなどと言った一流時計メーカーのノウハウを上手に活かしていること。
時計愛好家からも高い評価を得ていることをお伝えできたでしょうか。
ルイヴィトンは、言ってみれば大人のオシャレアイテム。本格的で上質な逸品をご堪能いただけることに間違いありません。
最初の一本としても、サブ機としても。ルイヴィトンの腕時計のご購入をぜひご検討ください!
当記事の監修者
南 幸太朗(みなみ こうたろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ
学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴13年。