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ノーチラス 5711 1a 010は、時計愛好家以外の人達にもよく知られた腕時計の一つです。2006年にこのモデルが発売開始されて以降、特に2010年代後半からは「狂想曲」と言われるほどブームになりました。
この記事ではノーチラス 5711 1a 010を、購入するにはどうしたら良いか、詳しく紹介していきます。
目次
ノーチラス 5711 1a 010とはどんな時計?
ノーチラス 5711 1a 010は、2006年に初代ノーチラス 3700の30周年記念モデル(5800という説もあるなど諸説あり)として発表されたモデルです。
ノーチラス 5711 1a 001が、2010年頃にマイナーチェンジされ、それ以降ノーチラス 5711 1a 010と表記されるようになりました。
初代モデルノーチラス3700から継承されているサンバーストに水平エンボス加工した手法を施しているダイアルが特徴で、ダイアルカラーはブラックからブルーへと変更されました。他のブランドとは違う、より深みのあるブルーが採用されています。
この色を「ブルーグレー」とブランドは表記していますが、愛好家たちからは「パテック・ブルー」とまで呼ばれるほどオリジナリティ溢れる色合いになっています。黒に近いブルーで、人々を魅了し虜にさせました。この「パテック・ブルー」によって、人気が急騰した可能性も否定はできません。
パテックフィリップ ノーチラス 5711/1A-010
素材:ステンレススティール / SS
ケース:縦 43mm × 横 38mm
駆動方式:自動巻き / Self-Winding
付属品:外箱(ダメージ有) / 内箱(ダメージ有) / 取扱説明書 / 保証書(国内正規店発行日付 2010年9月)
初代ノーチラス3700は「ジャンボ」という愛称で親しまれた大きなケースが特徴的なモデルでした。ノーチラス 5711 1a はジャンボよりややダウンサイジングしたケースですが、横に大きくせり出す耳を含めると、結果的にジャンボより大きくなります。
ケース厚も7.6㎜から8.3㎜へとアップしています。これはノーチラス 5711 1a に成った際ケース構造が2ピースから3ピースへと大きく変更された事が要因です。
またトランスパレントバック(スケルトンバック)になった事も要因の一つになります。
ケース構造が3ピースになった事で防水性は、120M防水と大幅に向上して実用的になりました。大幅な設計変更でケース厚は増しましたが、それでも僅か0.6㎜増に抑えているのは、さすがパテックフィリップです。
一般的な腕時計はスポーツウォッチだと、1.5㎜前後の物が多くなっています。ノーチラス 5711 1a 010は、自動巻きで防水性も担保して、尚且つ美しいトランスパレントバックを備えています。
これだけの機能性と審美性を両立させていることは、パテックフィリップの驚愕の職人技です。
ノーチラス 5711 1a 010の価格
ノーチラス 5711 1a 010の正規販売店における定価は、当時(2018年)「3,326,400円」でした。この定価は生産終了前の販売価格を今振り返ると、パテックフィリップの製品にしては明らかに割安な価格設定です。
しかし、2021年時点での定価は、3,872,000円と僅か3年で約16%も値上がりしています。ただ、販売価格より重要な事は、ノーチラス 5711 1a 010のウェイティングリストに入れるかどうかです。
幸運にもウェイティングリストに名を連ねる事ができても、順番がいつ回ってくるかは、わかりません。その間、リクエストをした人たちは値上げという恐怖にも怯えなければ、いけません。
2021年の生産終了の発表前で、長い人だと約8年から10年待ちだと噂されてていました。予約待ちの間に100万円近く値上がりした人も居たかも知れません。またウェイティングリストに名を連ねた人たちも皆ノーチラス 5711 1a 010を無事入手できたかのは不明です。
中古相場は「およそ1600万円」
世界的ECサイトの中古相場は、2024年11月時点でおよそ1600万円です。相場のピークは2022年3月で、約3000万円近くまで上昇しましたが、その後暴落しています。
しかし、2024年に入ってからは、相場は緩やかに上昇中です。
ノーチラス 5711 1a 010が生産終了になっている事で、2次流通市場に新品や未使用品が入ってくる可能性はほぼ無いと予想されます。今後は売り出された数少ない中古品が、マーケット内で循環し続けると予想されます。
所謂時計バブルは2021年から始まり、2024年現在は完全に収束して、今後は価格が乱高下(高騰や暴落)する事は暫く無い筈です。
相場が急落した時期は、間違いなく投資目的でノーチラス 5711 1a 010を購入した人たちの「損切り」が、始まった時期でしょう。マーケット内の商品が一時的に増加した事で、相場が暴落したと推測されます。
短期間で相場がこれだけ(1000万円近く)暴落した事から、中古市場でも元々流通していた個体は少ない中、短期間で損切りしたノーチラス 5711 1a 010が流入して活発な売り買いがされた筈です。
現在では一時的に増えたノーチラス 5711 1a 010の流通数も落ち着き、以前の市場に戻っていると推測されます。
実際どのECサイトでも販売している個体は売り切れか、1個程度しか在庫がありません。
相場が正常に戻った時期は、価格を見る限り2023年の夏頃で、以降相場の曲線が緩やかになりました。現在中古市場に流通しているノーチラス 5711 1a 010を今後入手を希望する人たちは、時計愛好家に絞られてくる筈です。
彼らがノーチラス 5711 1a 010を手に入れると、余程の事(経済的苦境)が無い限り手放す可能性は低いと予想します。一般的に市場に流通する個体数が少なくなると、価格は上昇しますが、時計愛好家が購入希望者だとするとそうはいきません。
時計愛好家は過去の相場も熟知している筈です。現在のような高騰した市場は、実勢価格を上回る相場だと見て、彼らは簡単には手を出しません。売れなければ、中古販売業者も値下げを行う筈です。
売り手側もできるだけ値下げはしたくないので、ここは両者の我慢比べがしばらく続くと考えられます。いずれにせよ、現在の1600万円という相場はまだ高く、価格に見合うかどうかと問われたら、もう少し値下がりを待つのがベストだと考えます。
ノーチラス 5711 1a 010の魅力
ノーチラス 5711 1a 010の魅力は時計全体と言っても過言ではない位、完成度の高い腕時計です。ただ、パテックフィリップの時計は細部に注目するとさらにその良さが、実感できると思います。
詳しく説明しますので、参考にしてください。
魅力①ベゼルについて
画像引用:パテックフィリップ公式サイト
ノーチラス 5711 1a 010のベゼルの魅力はケースと一体化した、3ピース構造にあります。
3ピース構造になった事で防水性が大幅にアップしました。当然強度もアップして、スポーツウォッチらしい実用性を実現させています。
このベゼルは遠目に見るとこのベゼルは楕円形に見えます。しかし近くで見るとこのベゼルは八角形になっている事が特徴です。さらに特徴的な耳を両方に持った独創的なデザインにも定評があります。
実機の所有者はご存知かも知れませんが、この八角形ベゼルは直線だけで構成されていなく、微妙な曲線から成る八角形になります。これは初代モデルから続く伝説的時計デザイナージェラルド・ジェンタによるデザインエッセンスの継承です。
初代モデルが発表された時、ジェンタは「船窓から着想を得た」と語りました。楕円に耳が付いたように見えるこの風変わりな外観は、いつしか「洗練されたデザイン」と呼ばれるようになりました。
ラウンド(円形)かスクエア(四角)が常識だったベゼルに一石を投じたこのデザインは、ジェンタの常識に捉われない奇才な発想があったから、生まれたのでしょう。
魅力②インデックスについて
ノーチラス 5711 1a 010のインデックスの魅力はシンプルなバーインデックスでありながら、文字盤に埋没しない存在感がある事です。
本体には18Kホワイトゴールドが採用されています。イエローゴールドのような華やかな色合いではありませんが、銀白色で輝きが良く耐食性にも優れた金属です。
ダイアルがブルーでサンバースト仕上げ、エンボス加工しているため、インデックスが目を惹く色の組み合わせになっています。長方形のバーインデックスで、夜光塗料を縁取りしたような形状になっています。
ダイアル全体の調和も良く、その事で視認性を高めています。インデックス自体にも丁寧にポリッシュ仕上げを施し、エッジも立てて、光の加減によって輝きを増す微細な工夫をしていることが特徴です。
魅力③文字盤について
ノーチラス 5711 1a 010文字盤(ダイアル)の魅力は、光の加減でその色合いが微妙に変化する事です。深みのあるブルーは、文字盤のサンバースト仕上げとエンボス加工されたパターンによって表情を変えます。
視認性の確保のため、文字盤の反射を極力抑えるだけでは無く、反射を利用してそれによって生じるグラデーションをダイアルデザインとして、計算し尽くしている印象がします。
フラットな文字盤にサンバースト仕上げのみを施すのではなく、水平横方向に伸びるエンボス加工も加えている事がこのモデルの特徴です。この事で引いて見た時に文字盤の端のインデックス付近の色合いが濃くなり、インデックスが際立ちます。
またノーチラス 5711 1a 010のエンボス加工のパターンは、5711 1a の前期モデルと比較して溝の幅が広くなっているそうです。そのため、5711 1a の前期モデルはブランドロゴが溝内に収まっています。
ノーチラス 5711 1a 010では、ブランドロゴ付近の溝を無くして、Patek Philippeのロゴをせり上がった様に見せていることが特徴です。
この年代毎の違いをノーチラス 5711 1a 010と、比較して楽しむのもノーチラスの魅力の一つになります。
魅力④ムーブメントについて
ノーチラス 5711 1a 010のムーブメントの魅力は、高精度でありながら、堅牢性と薄さを兼ね備えた事です。一般的には、ノーチラス 5711 1a 010のムーブメントはCal.324SCになります。
ただ、2019年頃のノーチラス 5711 1a 010は、Cal.26-330SCへ変更となりました。それに伴い、ハック機能(秒針を止める機能)も付加されたことで現代風にアップデートされます。
同様にジュネーブ産の証である「ジュネーブシール」からより厳格な「パテックシール」へ変更した事も特徴です。ただ、このCal.26-330SC搭載されたノーチラス 5711 1a 010は極めて少なくなっています。
Cal.324SCとCal.26-330SCのその他の変更点としては、自動巻きの巻き上げ効率と耐磁性を高めている事です。大多数のノーチラス 5711 1a 010にはCal.324SCが搭載されていると推測されます。
この両方のムーブメントは、ドレスウォッチなみの薄型ムーブメントでありながら、振動数は28,800振動を誇ることも魅力です。これだけの高振動であることは、精度も優れています。
パテックフィリップはカラトラバに代表されるように、ドレスウォッチの製造に関しては定評があります。
しかしスポーツウォッチの実績に関しては、ノーチラス以前は皆無でした。にも関わらず、実用性と審美性を両立させたスポーツウォッチに相応しいムーブメントをノーチラス 5711 として、世に送り出した事は流石です。
このような完成度の高いムーブメントに仕上げた事は、パテックフィリップの妥協を許さない、クラフトマンシップなのでしょう。
魅力⑤ブレスレット
ノーチラスを語る上では、手の込んだ造りのブレスレットにも注目して欲しいです。ノーチラス 5711 1a 010ではブレスレットの完成まで約55の工程を経て、仕上げています。一般的な「時計バンド」と異なり滑らかで、しなやかなブレスレットの質感は必見です。
定評のあるブレスレットは3連のコマ(部品)によって構成されています。真ん中のコマがポリッシュ加工され、両端は艶消しのサテン仕上げのコマで挟む構造になっている事が特徴です。
また細かい箇所に注目するとノーチラス 5711 1a 010ではブレスレットのコマがネジ式からピン式に変更となっています。しかし初期のノーチラス 5711 1a 010ではネジ式もあるそうなので、この部分にも注目して欲しいです。
ノーチラス 5711 1a 010はどこで買える?
ノーチラス 5711 1a 010はどこで買えるのかといえば、正規店と中古販売店で買う事ができます。それぞれに一長一短がありますので、詳しく紹介します。
正規店では購入できない
画像引用:watch-yoshida 公式サイト
ノーチラス 5711 1a 010は正規店では、生産終了になっているため、現在買う事はできません。ノーチラス 5711 1a 010がまだリクエスト可能だった頃は、このウェイティングリストは最大約10年待ちと、言われていました。
そのため正規店では、今現在もひっそりとリストに掲載されていた予約顧客にノーチラス 5711 1a 010を引き渡しているかも知れません。その顧客が引き渡し直前にキャンセルする可能性もあるかも知れません。
生産中だった頃も既に定価の約3倍まで2次流通市場では取引されており、運良く購入できた人は相場より安く購入できて幸運だったはずと筈です。このように正規店での購入は、人気モデルだと、安く購入できるメリットがあります。
中古販売店
中古販売店のメリットとしては、在庫さえあれば誰でも購入できる事です。価格は人気モデルであれば、高くはなりますが、ノーチラス 5711 1a 010のように正規店でも生産終了になっていて入手不可モデルであれば、仕方ありません。
また近年流行りのフリマアプリのような所でノーチラス 5711 1a 010を購入するのは、リスクが大き過ぎます。
そもそも実機が目の前に無く、画像だけでノーチラス 5711 1a 010の真贋を判定するのは難しいです。また仮に実機をガラス越しに見ても近年は、贋作のノーチラス 5711 1a 010が流通している可能性も否定はできません。
このような高価なノーチラス 5711 1a 010はできるだけ、店舗を構えて実績のある中古販売店で購入するのが安全です。
ノーチラス 5711 1a 010はどんな服装に似合う?
ノーチラス 5711 1a 010に似合う服装は、カジュアルでありながらエレガントさが漂うファッションです。色合いとしては、シックなカラー、具体的にはダイアルと同系列のカラーが映えます。
またケースはシルバーなので、その点も注意して服装を選ぶのがポイントです。
以下にシーンに合わせた服装を紹介します。
スマートカジュアルな服装
ノーチラス 5711 1a 010は、初代ノーチラスRef3700より継承されている「ディナースーツと同様にウェットスーツに似合う」コンセプトをそのまま継承しているモデルです。
デザイナーのジェラルド・ジェンタが未来へ伝えたかったのかも知れない、この想いは、伝統を再解釈しながら未来へと繋がる新しいスタイルを展開する事だと思います。
現代のファッションでは、世界的に見てもノーネクタイが主流です。スタートアップ企業のトップだけを見ると、伝統的なスーツスタイルは最早絶滅危惧種と言ってもおかしくありません。
しかし、いつの時代もジャケットを羽織るスタイルは健在です。
ファッションでスマートさ(頭の良さ)は、まだまだ求められている気がします。ジャケットを羽織る、スタイルはシーンに合わせてスムーズに着脱ができる機能性を持っている事も特徴です。
空調の聞いている船上のキャビンではジャケットを羽織り、屋外のデッキではジャケットを小脇に抱えられる実用性も兼ね備えています。
ジェラルド・ジェンタが想定していた洋上のクルーザーのシーンでも対応できる腕時計が、まさにノーチラス 5711 1a 010のような腕時計だったのでしょう。
ジャケットスタイルは、スタートアップ企業のトップが、愛するファッションとも合致します。僅かな隙間時間の間に現場とオフィスを行き来する現代のCEOには、スムーズな着脱ができる服装も不可欠です。
ノーチラス 5711 1a 010のようにスタイリッシュで、実用性も併せ持つ腕時計であれば、多少激しく動き、水を浴びても問題ありません。
ビジネスカジュアルな服装
世の中の全ての人たちが全て、スタートアップ企業のトップではありません。何代も続く歴史ある企業で働く人たちも一定数存在します。多少ドレスコードに制限があっても、ノーチラス 5711 1a 010をつける事で、スタイリッシュさを損なう事はありません。
ビジネスカジュアルな服装で必要なのは、ルールを順守しつつスタイリッシュに見せる創意工夫が不可欠です。そんな彼らが服装で重視すべきポイントは素材と色の組み合わせでしょう。無地のシャツを中に着ても、ジャケットの色は小粋にネイビーやグレーを着るのがおすすめです。
ダービーシューズやオックスフォードと言った少し凝った靴を履くとセンスの良さが光ります。伝統的なスーツスタイルであっても小物をモダンな物に置き換え、個性的なアクセサリーを装着する事で、ワンランク上のスタイルが実現できます。
まとめ
ノーチラス 5711 1a 010は、同じノーチラス 5711 1aシリーズの中でも比較的後期にリリースされたモデルです。そのため細部が初期の物よりアップデートが加えられており、ムーブメントも実用的な仕様になっています。
しかし、ノーチラス 5711 1a 010は、そもそもパテックフィリップ全体の生産本数が、ロレックスと比較すると一桁少ない生産本数なので、需要に生産が全く追いつかない状態が長く続きました。
パテックフィリップもノーチラス 5711 シリーズがここまで人気になるとは予想していなかったと推測されます。またパテックフィリップ目線で考えた時、ノーチラス 5711 1a 010のような、ベーシックウォッチの腕時計はパテックらしくありません。
コンプリケーションウォッチ(複雑時計)やステンレスでは無いゴールドやプラチナといった貴金属で造られた腕時計の方が、パテックフィリップのスタイルなのです。世の中のパテックを愛する愛好家たちも同様な考えだったと推測できます。
当初はノーチラス 5711シリーズも販路を広げようと、価格設定を3700シリーズの時の売れなかった反省を踏まえて「抑えた値付け」にしたのかも知れません。結果的にノーチラス 5711シリーズはノーチラス 5711 1a 010も含めて大ヒットしましたが、売れすぎました。
まるで人気絶頂のアーティストが、突如引退するようなセンセーショナルな生産終了の声明でした。しかし、現在ではノーチラスの5712シリーズや5726シリーズに ノーチラス 5711 1a 010のDNAは、継承されています。
現行品のノーチラスと併せて、ノーチラス 5711 1a 010を比較して、どのように変化したかを楽しむのもおすすめです。ぜひ一度、実績ある中古販売店でノーチラス 5711 1a 010の実機を直に見てください。
その良さが実感できるはずです。
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当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年