「グランドセイコーの手巻きモデルに興味があるが、詳しい情報を解説している記事が無い。」
「グランドセイコーの手巻きモデルの情報を集めて、購入の参考にしたい。」
グランドセイコーの手巻きモデルに気になるモデルが見つかり、他の「手巻き」に興味を持つ人も多いはずです。
ただ手巻きモデルは数が少なく、その情報も限られています。限られた情報ゆえにミステリアスな印象を抱く人も少なくありません。
この記事ではグランドセイコーの手巻きモデルを詳しく、オススメモデルも併せて解説します。
目次
手巻き時計の仕組みと魅力
グランドセイコーの手巻きモデルは自動巻きと同じく機械式ムーブメントです。手巻きはゼンマイを手動(マニュアルもしくはセルフワインディングとも呼ぶ)で巻き上げます。
近年機械式腕時計の動力源の大部分は、自動巻きです。一般的には手巻きの比率は機械式全体の生産量の約2割程度と言われます。
機械式時計の動力の仕組みは自動巻き手巻き共に、リュウズで巻き上げたゼンマイの解ける力が動力源です。
その力が輪列に伝わり、針を動かします。
自動巻きは手首に装着するだけで、腕の動きを利用してローターが動き、自動的にゼンマイを巻き上げるのが特徴です。それに対して手巻き式はローターは無く、手動でリュウズを回して、ゼンマイを巻き上げます。
近年は自動巻き時計が多くなっていますが、少なからず手巻き時計を愛用者も一定数居るのも事実です。
手巻き時計の最大の魅力は、時計との対話ができることにあります。
基本的にグランドセイコー手巻きモデルでは、ゼンマイは最低1日一回巻かなければいけません。
この時、ゼンマイを巻く行為で時計内部の歯車や軸受から伝わる感触(摩擦)を指で直接感じ取ることができます。
手巻き時計を愛する人たちは、この巻き上げの重さの変化が好きだと口にする人が多いです。
一般的に手巻き式時計の場合、毎日決まった時間帯に巻くことが良いとされています。例えば毎朝決まった時間にゼンマイを巻くことで、日々の生活のルーティーンに時計のゼンマイの巻き上げを加えると、より手巻き時計を愛することができるはずです。
グランドセイコーの手巻き時計の歴史
画像引用:セイコー公式サイト
グランドセイコーの手巻きモデルの歴史は、グランドセイコーそのものの歴史でもあります。
1960年のグランドセイコー初代モデルは手巻き式でした。1967年に発表された44GS、62GSも手巻き式で、1968年の61GSより自動巻きモデルが加わりました。
その後グランドセイコーは、クォーツムーブメントにシフトして、最終的に1998年に機械式ムーブメントが復活するまで、手巻き式ムーブメントが生産される事はありませんでした。
機械式ムーブメントが復活して以降は、数は少ないながらもコンスタントに手巻き式時計は生産されるようになります。
グランドセイコーの手巻き時計の評価
数が少ないながらも近年手巻き時計が出ている理由は、手巻き時計のメリットが見直されて再評価されてきている事からです。
手巻き時計の最大の利点は、時計のケースの厚みを薄く仕上げられることにあります。
これは自動巻きと違い、ムーブメント内に自動巻きのローターが無い事が要因です。ローターが無い事で部品数が減り、その分時計のケース厚みを薄く仕上げることができます。
時計を薄くできる事で、装着感も良くなる事が特徴です。何より見映えが良く見える事も忘れてはいけません。
前述したように、手巻き時計は機械機構と直接「時計と対話できる」事に、愛好家達が気づき始めて来ました。
コレクション歴が長くなるほど時計のコレクションに新たな手巻き時計を付け加えたい気持ちに駆られる事も事実です。
スイス時計だと、手巻きモデルは高額なプレステージモデルに限定されます。それに対して、グランドセイコーの手巻き時計は比較的購入しやすい価格帯のモデルが多くある事が特徴です。そのことで、海外のコレクターや愛好家からの評価が日増しに高くなってきています。
高品質で信頼性の高いムーブメントは歴史もあり、積み上げたノウハウが集積されている事が特徴です。
海外のコレクターの中には、わざわざグランドセイコーを購入するためだけに、日本へ渡航する人たちもSNS上で散見されます。
製品購入の情報交換をしている人たちも多く、その中には手巻き時計も含まれています。購買力旺盛な海外のコレクターに購入される前に、グランドセイコーのお膝元である我々日本人が、手巻き時計の魅力を見逃さないようにしていかないといけません。
グランドセイコーの手巻き時計はどう選ぶ?
グランドセイコーの手巻き時計は、現行品でも購入可能なモデルが多くなっていますが、様々なモデルがあり、どれを選んだら良いかは、絞り込むのは大変な作業です。
そこで、グランドセイコーの手巻きを選ぶポイントを次の項目から紹介していきますので、参考にしてください。
手巻きムーブメント搭載機に着目して選ぶ
時計を選ぶポイントとして、搭載されている手巻きムーブメントに着目するのが、おすすめです。
現行品では2006年に登場したCal.9S64があります。このムーブメントはCal.9S54の後継機で、パワーリザーブが従来の50時間から72時間に向上したことが特徴です。
画像引用:グランドセイコー公式サイト
ロングパワーリザーブによって、時計を複数所有するコレクターでも、新たに手巻き時計を加えることが現実的になります。
ロングパワーリザーブは長時間稼働するだけでない、その他のメリットもあるのです。
グランドセイコーのHPには、ロングパワーリザーブになったことで、「ゼンマイがほどける時に発生するトルクが緩やかに減少する効果によって、精度も向上させることに成功した」と記述されています。
ロングパワーリザーブと高精度の両方を実現できる事で、これからもロングパワーリザーブはもっと主流になっていく筈です。
2024年、新たに10振動の手巻きムーブメントCal.9SA4が登場、グランドセイコーが得意とするハイビート(36000振動)モデルです。ハイビートにも関わらず、パワーリザーブは80時間を誇ります。
画像引用:グランドセイコー公式サイト
Cal.9SA4は細部まで美しさに拘り開発されたムーブメントです。そのため裏蓋から見える歯車や地板にも筋目模様を芸術的に仕上げています。この裏蓋側から見えることを意識した設計になっていることが特徴です。
新型ムーブメントか、これまで実績のあるムーブメントを選ぶかはユーザーからすれば悩みが増える要因になります。しかしながら、スペック的に同じであれば実績のあるムーブメントを選ぶ方が賢明です。
裏蓋から見える模様が美しいムーブメントのモデルを選ぶのもありなので、実機をできるだけしっかり細部まで見渡してから決めるようにしましょう。
アンティークモデルから選ぶ
生産数が限られた、アンティークモデルから選ぶ方法も見逃せません。グランドセイコーの手巻き時計のアンティークモデルは、1960年代が中心となります。現行で発売されている復刻版の元となるモデルになります。
発売当時のムーブやケースなど復刻版とは違う趣きを楽しむ、またはグランドセイコーの歴史的な手巻き時計を求める人には、アンティークモデルから選ぶことは極めて合理的な手法です。
このアンティークモデルから選ぶ場合に重要なのは、実機を直に見てから選ぶようにしてください。
グランドセイコーの手巻き時計のおすすめモデル
実際に購入するグランドセイコーの手巻きモデルを絞り込む上で、具体的なおすすめモデルがあった方が比較検討がしやすい人もいるでしょう。
下記にいくつかのおすすめモデルを紹介します。
入手困難なモデルもありますが、もしお気に入りのモデルが見つかれば、ぜひ積極的に購入を検討してください。
グランドセイコー エレガンスコレクション SBGW281

素材:ステンレススティール
ケース:直径 37mm (リューズ含まず)
駆動方式:手巻き / Hand-Winding
エレガンスコレクション SBGW281は、37㎜と小ぶりなケースとシンプルな外観が特徴の手巻き時計です。
男性的で角張ったモデルが多いグランドセイコーの中では異質なモデルで、優しい雰囲気のシャンパンゴールドのダイヤルは晩冬のイメージを表現しています。
手巻き時計らしさを活かした、薄型のケースが特徴で、レザーストラップを採用することで、重量も更に軽く61グラムと軽量に仕上げています。一般的なグランドセイコーらしいモデルは苦手という人でもこのSBGW281なら問題ありません。
飽きのこないシンプルなベーシックウォッチは、シーンを選ばずに愛用できる時計です。グランドセイコーのDNAを継承していながら、コンパクトにまとめられたのは手巻きムーブメントを搭載できた事が、大きな要因だと考えます。
このモデルもコレクションに加わるラインナップが、より一層充実するでしょう。
ヘリテージコレクション 44GS メカニカル SBGW297

素材:ステンレススティール
ケース:直径 36.5mm (リューズ含まず)
駆動方式:手巻き / Hand-Winding
ヘリテージコレクション 44GS メカニカル SBGW297は、グランドセイコーのアイデンティティである44GSをベースにした、手巻き時計です。
1967年当時の雰囲気をそのままにケースサイズも36.5㎜に抑えています。インデックスはグランドセイコーならではの多面カットを採用した煌びやかなモデルです。「グランドセイコースタイル」を確立させたモデルになります。
ダイヤルは放射状に伸びる直線で、屛風や扇子に使われる模様を文字盤に刻んでいます。和の雰囲気を時計全体で表現したこのモデルは、グランドセイコーらしさと日本の伝統工芸のインスピレーションをコラボさせたようなモデルです。
白を基調とした、ブルースチールの秒針が差し色となっています。ブルースチールの秒針が入る事で、時計全体が単調にならないよう、凛とした美しさがこのモデルの魅力です。
9S メカニカル SBGK00

素材:ステンレススティール
ケース:直径 39mm (リューズ含まず)
駆動方式:手巻き / Hand-Winding
メカニカル SBGK007はグランドセイコーには珍しい、スモールセコンドとパワーリザーブ・インジケーターを備えた、珍しいクラシカルな雰囲気を持つドレスウォッチになります。
手巻きムーブメントによって、ケースを薄型に仕上げ、それだけに留まらず風防のサファイアガラスを曲線に加工(デュアルカーブ・サファイアガラス)しています。歪みの少ないかつ緩やかなカーブにすることで、上質で気品溢れる外装がこのモデルの魅力です。
また細部にも拘り、針は時計職人の手作業によって、丁寧に内側にカーブさせています。9時の位置にクラシカルなスモールセコンド、3時の位置にはパワーリザーブ・インジケーターが配されて、遊び心も忘れてはいません。
2019年に発表されたCal9SA4は、限られたモデルのためだけに製造された希少なムーブメントです。このムーブメントを搭載したモデルは皆、曲線が美しいモデルで真横から見ると美しさがより際立ちます。
グランドセイコー エレガンス コレクション 季春 SBGW283

素材: ステンレススティール / SS
ケース:直径 37mm (リューズ含まず)
駆動方式: 手巻き / Hand-Winding
エレガンス コレクション 季春 SBGW283は、春から夏にかけて季節の移ろいを文字盤に表現したモデルです。
サックスブルーに近い色合いで若い世代の人たちが付けても楽しめます。
ダイヤルに初夏の風の「青葉の色を含んだ穏やかな風を彷彿した」と公式HPには記載されています。季春(きしゅん)と呼ばれる季節を体現したモデルで、グランドセイコースタジオの周囲の自然の描写が伝わってくる色合いです。
このモデルのケースの厚みは11.7㎜と驚くほど薄く仕上げています。それにもかかわらず、パワーリザーブは72時間を保っている優れものです。
グランドセイコーの手巻き時計アンティークおすすめモデル
グランドセイコーの手巻き時計のアンティークおすすめモデルを紹介します。
グランドセイコーのアンティークモデルを購入する場合の注意点は、希望モデルの正確な情報です。
アンティークのモデルはあくまで、時計内部もアンティーク(骨董品)になります。
グランドセイコーは近年復刻版モデルが増えているため、外観がアンティークでも実用的な時計使いを希望する人であれば、復刻版モデルをおすすめします。
復刻版モデルは外観は1960年代でも内部ムーブメントは最新のムーブメントにアップグレードされていることが特徴です。
防水パッキンも最新のものに置き換えられているため、日常使いすることを考えている人には復刻版を選ぶ方が良いと思います。
アンティークは、あくまでも1960年代の時計ゆえに過度な防水性や耐久性は、期待しない方が賢明です。
使用する時も水濡れや振動に注意するようにしてください。
グランドセイコー 44GS 1967年製
画像引用:グランドセイコー 公式サイト
グランドセイコーのアイデンティティが確立されたモデル、44GSは現代に通じる外観であることが特徴です。
復刻版もリリースしていますが、当時のアンティークモデルは特別感が違うと思います。
ムーブメントはCal.4420で、当時のスイスクロノメーターと同等かそれ以上の精度を誇る高精度ムーブメントです。
おすすめ理由はシャープな現代に通用する時代を先取りしたデザインにあります。
いわゆる「セイコースタイル」が確立された歴史的モデルで愛好家にとっては、是非とも手に入れたいモデルです。
グランドセイコー 45GS 1968年製
1968年に自動巻きモデルが次々と投入された中で、登場した珍しい手巻き時計になります。
特徴としては、ハイビート(毎分36000振動)モデルで高精度を誇る、これもグランドセイコーを代表するCal.4520を搭載していることです。
金無垢モデルも存在して、デザインと性能が両立しているモデルとして愛好家たちからも高く評価されています。
手巻き時計らしく薄型に仕上げていて、時計全体をエレガントに仕上げた事がこのモデルの魅力です。
グランドセイコー グランドセイコー メカニカル19GS V.F.A
メカニカル19GS V.F.Aは1972年に女性向けのグランドセイコーとして発売されたモデルで、月差2分以内という、当時としては、最高水準の精度を誇る画期的なモデルでした。
ケース形状も八角形で文字盤の色もグリーンを基調とし、エレガントで上質な仕上がりがこのモデルの魅力です。
女性モデルならではの小ぶりなケースと、年代的にセイコーがクォーツムーブメントにシフトした時期と重なり生産数も限られ、結果的にかなりの希少な手巻き時計となりました。
グランドセイコーの手巻き時計の歴史を見る上でも価値のあるモデルで、名作と言われている製品です。入手は難しいですが価格的に高額なモデルでは無いため、もし見つけた場合はおすすめのモデルになります。
やはり評価の高いグランドセイコーの手巻きモデル
グランドセイコーの手巻き時計が高い評価を得ているのは、機械式時計の主流である自動巻き以外のムーブメントに気づいた愛好家たちが、手巻き時計の良さを再認識した事が、大きな要因だと考えます。
さらにデカ厚時計ブームの終息も、手巻き時計の追い風になっている可能性が高いです。自動巻きの場合どうしても、自動巻きローターをムーブメントに埋め込む必要があり、その分ケースの厚みが増します。
ケースの厚みを薄く仕上げて、時計全体の外観をドレッシー(エレガント)にするためには、まずムーブメントを薄くする必要があります。そのためにはローターを外して手巻き時計にする手法が一番合理的です。
シンプルなベーシックウォッチやドレスウォッチといったように、様々なシーンで時計を使い分けるという風潮も手巻き時計の後押しになっていると考えられます。
さらに技術者の育成や教育面においても、機械式ムーブメントを理解するためには基本となる手巻き式ムーブメントを理解することも重要です。
ムーブメントの基本をしっかり理解すれば、機械式時計全体の製造技術力の向上にも貢献できます。
グランドセイコーも技術者の育成や伝統的な技法の継承のために、手巻き時計をこれからも継続して生産していく可能性は高いです。
まとめ
グランドセイコーの手巻き時計は、現行では限定生産品やシリーズ品として販売しているモデルが多く見られます。海外からのコレクターは数が多い自動巻きでは無く、手巻きモデルを求めて日本国内の販売店を回っています。
特に中古品の手巻きグランドセイコーは、海外では取り扱っている販売店が少なく、わざわざ渡航費をかけて日本国内の中古販売店を巡っているのが実情です。
海外のコレクターも日本の中古店の質の高さに気づき始めています。
ぜひグランドセイコーの手巻き時計を見逃さないようにしてください。