「グランドセイコーとセイコー、同じセイコーなのに何が違うのか、疑問がある」
「同じセイコーグループ内のブランドなのに、なぜか違う」
グランドセイコーとセイコーの時計は、どちらも同じと考えている人たちは、多いはずです。
時計愛好家であっても両者の違いを正確に理解している人は、少ないかも知れません。
しかし、両者の間には明確な違いがあり、しっかりと線引きして製造している事が特徴です。
この記事では両者の明確な違いを、様々な面から考察して紹介します。
目次
グランドセイコーとセイコーは何が違う?
グランドセイコーとセイコーは何が違うのかと言えば多岐に渡ります。
結論から言えば、セイコー(SEIKO)という共通の名詞はありますが両者は全くの別物です。
歴史的な側面と製造のコンセプトも異なります。以下で詳しく解説しますので、参考にしてください。
見た目の違い
まず決定的な違いは、見た目の違いです。かつて、グランドセイコーの文字盤には、「Grand Seiko」のロゴと「SEIKO」のロゴが必ず併記されていました。
しかし2017年にグランドセイコーの独立以降はSEIKOのロゴは廃止され、「Grand Seiko」のロゴのみが12時に移動して現在に至ります。
このロゴの廃止は、同社のグランドセイコーの独立への成功に賭ける、並ならぬ意気込みとも感じられます。
もう一つの見た目の違いを生んでいる要因は、採用している素材と製造技法の違いです。
グランドセイコーの時計はラグジュアリー感や高級感を前面に出している事が特徴です。そのため、素材もブリリアントスチールやブリリアントハードチタンという高級な素材を使用しています。
グランドセイコーは、最高品質の素材をセイコーグループがこれまで培ってきた最高の技法で、仕上げていることも見逃してはいけません。
グランドセイコーを語る上で欠かせないザラツ研磨はその代表格です。
ザラツ研磨は、元々スイスの研磨機メーカーの機器に由来します。スイス発祥の技術にも関わらず、今やセイコーを始めとする日本の時計産業しかできない、極めて日本らしい技術とまでなっている事が特徴です。
ザラツ研磨はシンプルに言えば、磨き仕上げのひとつになります。ただこの技術は一般的にわかりにくいものです。
価格の違い
グランドセイコーとセイコーとの違いには、価格の違いを加えない訳にはいきません。
グランドセイコーの製品はおおよそ約40万円から高いモデルで、数100万円以上です。
一方のセイコーの時計はプロスペックでは、高い物で数10万円ほどになります。
このようにグランドセイコーとセイコーの腕時計との間には2倍以上もしくは、3倍近い開きがあるのが特徴です。
コンセプトやブランド方針の違い
グランドセイコーとセイコーとの違いにはコンセプトやブランド方針の違いもあります。
グランドセイコーは1960年の初代モデルが誕生した時、「世界に挑戦する国産最高級の腕時計をつくる」がセイコーのコンセプトでした。
この国産最高級の腕時計には、前述した価格や最高級のグレードの素材を贅沢に使用するというコンセプトがあったことは間違いありません。それと同時にグランドセイコーには、「世界最高レベルの精度探求」があったのも事実です。
その証拠にスイスクロノメーター検査基準優秀規格に準拠した、国産初の腕時計でもありました。その後も精度の探求は、グランドセイコーのブランド方針だったことは間違いありません。
グランドセイコーの歴史
グランドセイコーの歴史は、1960年代の初代モデルから始まります。その歴史には2017年からの「ブランド独立」以降と、それ以前に分かれます。
しかし、その間にクォーツムーブメントが誕生した事によってグランドセイコーには製造中止期間がありました。
スイス時計業界に多大なる影響な影響を与えたクォーツショックは、グランドセイコーにとってもブランドの存続を揺るがす転換期となりました。
グランドセイコー黎明期から、クォーツ時代
1960年に誕生した初代グランドセイコーの時代は、セイコーの腕時計に高級ラインを投入させたい想いが強く感じられました。
この年代のモデルは、高度経済成長期の勢いにそのまま乗って発売された印象を受けます。
しかし、その後の1967年の44GSでは、現代のグランドセイコーの礎となる「グランドセイコースタイル」を確立させています。さらに1969年には、世界初となるクォーツムーブメントを搭載した腕時計を発表します。
以下にその時期のグランドセイコーの歴史をまとめましたので、参考にしてください。
西暦 | モデル名 | 特徴 |
---|---|---|
1960 | 初代グランドセイコー | スイスクロノメーター検査基準優秀規格 |
1967 | 44GSと62GS | グランドセイコースタイルの確立 |
1968 | 61GSと45GS | ハイビート(10振動)ムーブメント |
1972 | 19GS V.F.A | 初の女性用機械式時計 |
クォーツ搭載のグランドセイコーから、機械式時計復活以降
クォーツムーブメントを搭載した腕時計を発表したにも関わらず、クォーツ搭載のグランドセイコーは1988年まで発売されませんでした。
西暦 | モデル名 | 特徴 |
---|---|---|
1988 | 95GS | クォーツ搭載のグランドセイコー |
1992 | 3FGS | クォーツ搭載の女性用グランドセイコー |
1998 | 9S5シリーズ | 「機械式復活」の記念モデル |
2004 | 9R6シリーズ | スプリングドライブ搭載のモデル |
2017年ブランド独立からGPHGグランプリ受賞
1998年に機械式時計復活、そして2004年にはスプリングドライブを搭載したモデルを発表し、世界では数少ない3つのムーブメントを搭載したカテゴリーを持つブランドへと成長しました。
そして2017年にはグランドセイコーは独立ブランドへと登り詰めます。
西暦 | モデル名 | 特徴 |
---|---|---|
2017 | 初代グランドセイコーリミテッド | セイコーブランドからの独立 |
2018 | V.F.A復活モデル | Cal.9S85搭載 |
2021 | SLGH 005(白樺) | GPHG メンズグランプリ受賞 |
グランドセイコーと派生ブランドのクレドールの違いは?
画像引用:セイコー クレドール 公式サイト
グランドセイコーとクレドールの違いは、実用性と芸術性のどちらかに趣をおいているかです。
グランドセイコーは近年芸術的な美しさに注目が集まっています。しかし、グランドセイコーは実用性を深く追求したブランドです。
それに対してクレドールは、芸術性を追求しています。
「時計をジュエリーの域まで昇華させる」がクレドールのコンセプトです。
宝飾性の高い貴金属を贅沢に使い、価格帯も最低で100万円以上に値付けされています。
同様に複雑機構(コンプリケーション)を搭載したモデルもラインナップに並べているのが特徴です。
グランドセイコーがジャパンオリジナリティを探求したブランドに対して、クレドールはオートオルロジュリーを実践したブランドになります。
グランドセイコーとセイコーどちらを選ぶ?
グランドセイコーとそれ以外のセイコーを選ぶポイントで重要な点は、時計の使用目的を絞ることです。
黎明期の腕時計は、時間を知るためだけのツールでした。20世紀後半より携帯電話(スマートフォン)を持つことが日常となり、腕時計の位置づけも変化しています。
そのため腕時計はアクセサリーとしての位置づけが、年々強くなってきていることが特徴です。
とはいえジュエリーのような、装飾品ではなくファッションの一部として、腕時計をつけるユーザーが年々増加しています。
以下にグランドセイコーとセイコーの選び方を解説しましたので、ぜひ参考にしてください。
アウトドアやスポーツテイストな時計を選ぶならならセイコーの腕時計
腕時計をアウトドアやスポーツで使用するなら、セイコーの腕時計です。
セイコーにはスポーツ用のラインナップとして、プロスペックスがあります。国産初のモダンダイバーズウオッチはセイコーのプロスペックスから販売されています。
他にもアルピニストといった登山に特化した腕時計もあり、価格もリーズナブルです。
もし、腕時計の使用目的をスポーツに特化するなら、グランドセイコーよりセイコーの腕時計がおすすめです。
ラグジュアリーな腕時計を選ぶならグランドセイコーの腕時計
腕時計をファッション(身だしなみ)の一部と考えて選ぶならグランドセイコーがおすすめです。
グランドセイコーは時計にラグジュアリー感があり、実用性も兼ね備えています。品質の高い素材を採用しているため、高級感があり耐久性も高いことが魅力です。
さらに高級腕時計を所有した時に感じる特別感が感じられます。所有する事への満足感やある程度の資産価値がある事も忘れてはいけません。
グランドセイコーのおすすめモデル
具体的にグランドセイコーとセイコーの違いを理解するために、まずはグランドセイコーのおすすめモデルを紹介します。
これによって両者の違いをより明瞭にすることができるはずです。
グランドセイコー エボリューション9 コレクション スプリングドライブ5デイズ SLGA021
素材: ステンレススティール / SS
ケース:直径 40mm (リューズ含まず)
駆動方式: スプリングドライブ自動巻き / SpringDrive-SW
グランドセイコー エボリューション9コレクション スプリングドライブ5Days SLGA021は、「信州時の匠工房」の南東に位置する諏訪湖の水面(みなも)から、着想を得た幻想的な文字盤を持つモデルです。
諏訪湖の水面の風の揺らぎによるさざ波を表現しており、グランドセイコーらしい高い加工技術を見て楽しむことができます。またこのモデルはスプリングドライブというセイコー独自の技術によるムーブメントを搭載しています。
スプリングドライブ独特の流れるような秒針の動きは、諏訪湖の水面を表現した文字盤とシンクロするかのようです。スプリングドライブは機械式とクォーツの良いところを融合させたハイブリッドムーブメントになります。
電池の代わりにゼンマイで発電して、水晶振動子を動かす技術によって電池交換が不要でクォーツが持つ高精度を実現させました。
グランドセイコー メカニカルハイビート36000 キャリバー9S GMT マスターショップ限定 SBGJ249
素材: ステンレススティール / SS
ケース:直径 39.5mm (リューズ含まず)
駆動方式: 自動巻き / Self-Winding
グランドセイコー エレガンスコレクション メカニカルハイビート36000 キャリバー9S GMT SBGJ249は、二十四節季の梅雨明け間もない季節の移ろいを文字盤にイメージしたモデルです。
梅雨明けに吹く「白南風(しらはえ)」によって生じた波を表現しています。
ハイビート(10振動)のGMT機能を加えたムーブメントを搭載しており、異なる2つのタイムゾーンの時間帯がわかるモデルです。前述したモデルより水面の模様がハッキリと見ることができ、白樺モデルを彷彿させてくれます。
グランドセイコーの二十四節季シリーズは、文字盤が美しくハンドメイドを思わせるような微細な加工をしていることが特徴です。日本の四季の移ろいを体現しており、後世へこの美しさを伝えるべきモデルでもあります。
セイコーのおすすめモデル
セイコーの腕時計らしいモデルと言えば、プロスペックスです。最近はメジャーリーガー大谷翔平をアンバサダーにしています。
元々国産初のモダンダイバーズウオッチを輩出しており、ダイバーズウオッチだけに注目すれば、グランドセイコーを凌駕するモデルも多い事は忘れてはいけません。
今回は特にプロスペックスに注目して具体的なモデルを紹介していきます。
セイコー プロスペックス ダイバーズ 1965復刻デザイン 55周年記念 SBDX039
素材: ステンレススティール / SS
ケース:直径 40mm (リューズ含まず)
駆動方式: 自動巻き / Self-Winding
SEIKO PROSPEX1965 メカニカルダイバーズ 復刻デザイン SBDX039は、1965年国産初のモダンダイバーズウォッチとして発売されたモデルの復刻モデルです。
外観は当時の雰囲気はそのままにして、ムーブメントやケースは最新の物に置き換えています。
1965年に発売されたオリジナルモデルは、南極越冬隊員用に贈答された時計で、第9次越冬隊と第10次越冬隊の観測員たちが南極の昭和基地という過酷な環境下で使用しました。その当時のスピリットを引き継いだモデルです。
限定1700本という希少なモデルで、おそらく新品での入手は不可能だと思われます。
グランドセイコーとは異なり、タフな環境下の使用にも耐えうるモデルです。
セイコー プロスペックス ダイバー スキューバー SBEJ011
素材: ステンレススティール / SS
ケース:直径 42mm (リューズ含まず)
駆動方式: 自動巻き / Self-Winding
セイコー プロスペックス ダイバー スキューバー SBEJ011はプロスペック200M防水の ダイバーズウォッチにGMT機能を加えたモデルです。ダイバーズウォッチでありながらGMT機能も兼ね備えた、機能豊富な実用時計になります。
このモデルはメジャーリーガー大谷翔平がアンバサダーとしてこの時計(正確にグリーン文字盤の SBEJ009)をつけて各種宣伝媒体に登場していることもあり、2024年末にかけては、販売店ではかなりの品薄状態になったそうです。
ベゼルにセラミックを採用している事で耐久性も高く、グランドセイコーも顔負けのスペックを誇ります。精度はグランドセイコーより若干劣るものの、実用性に欠ける訳では無く1日で数秒程度の日差がある程度です。
販売価格も正規店で、218,900円というグランドセイコーの半額もしくは3分の1の販売価格で、これだけ実用的なダイバーズウォッチが手に入るなら、許容範囲だと考えます。
まとめ
グランドセイコーとセイコーの腕時計との違いは、両者が目指す腕時計に対する方向性の違いです。
グランドセイコーが目指すのは、「ラグジュアリーな腕時計」で、目指しているのはスイス時計ブランドと同じ、世界マーケットだと思います。
そのため、世界を意識した時計製造を行い、スイス時計が真似できない「日本らしさ」や「グランドセイコー・スタイル」を探求している事が特徴です。グローバルな戦略に基づき時計をデザインして、世界市場で通用する腕時計を製造しています。
その中でもターゲットにしている顧客層は、世界の時計愛好家たちです。彼らを満足させる素材や品質を採用しています。
現在のグランドセイコーの主要なマーケットはアメリカですが、将来的には欧州の愛好家達も納得させる、時計ブランドを目指しているはずです。
一方のセイコーの腕時計は国内の一般ユーザー向けに製造している印象を受けます。
プロスペックスはアウトドアユーザー向け、クレドールは富裕層向けに分けていますが、両者がカバー仕切れない顧客には、グランドセイコーが補っている印象が強いです。
2017年のグランドセイコーのブランド独立発表の舞台は、当時世界最大の時計の見本市であった、バーゼルワールドでした。ここで独立を発表したことは、乱暴な言い方をすれば、世界の時計業界に対する宣戦布告とも捉えられます。
グランドセイコーが世界化を目指すと、当時のセイコーウォッチ社長であった服部真二氏が自ら壇上に立ち宣言したことは、声明文一枚をメディアに配布するよりも強いインパクトがあったと想像できます。
これらを理解してグランドセイコーとセイコーの腕時計を購入するとより楽しみが増すはずです。ぜひグランドセイコーとセイコーの時計の購入を検討してください。