現代人は誰しも少なからず時間を意識しながら生きているものですが、中でも「時間を正確に把握していないといけない」職業があります。そのひとつが、パイロット。そんな彼らのために開発されたのが、「パイロットウォッチ」と呼ばれる腕時計です。
目次
パイロットウォッチの誕生と進化
―飛行とともに変化する気象や気圧の中でも、正確に時を刻み、視認性に優れ、タフであること―
それが、パイロットウォッチに託された役目です。
そんなパイロットウォッチが時計メーカーによってはじめてつくられたのは、1936年のこと。スイスの時計メーカー「IWC(International Watch Company)」が軍人パイロットのための腕時計を開発したのが最初だといわれています。この初代パイロットウォッチには、離陸時刻を記録するための矢印マーカーのついた回転ベゼルや、飛行機を操縦する際に磁力の影響を受けないための対磁ムーブメントなどが搭載されていました。
しかし実は、パイロット用の腕時計は、それ以前の20世紀初頭から世界各国で開発が進められていたのです。その背景には、ライト兄弟やアルベルト・サントス・デュモンによる飛行技術の発明と開拓、第一次世界大戦における飛行機の発達などがありました。当時、男性が身に付ける時計は懐中時計が主流でしたが、これでは両手で飛行機を操縦する際に不便が生じます。また、事故を防ぐために、飛行中には、太陽の位置と飛行経過時間から自分が現在いる位置を割り出す必要がありました。このように、飛行機の需要が高まるにつれて、時計の必要性も切実になっていったのです。つまり、パイロットウォッチの歴史は、飛行機の歴史とともにあったというわけです。
その後も、パイロットウォッチは、さらに高性能で実用的なものへと進化。飛行速度や燃費、上昇・下降距離などの計測ができる「回転計算尺機能」や、世界各国の主要都市の現在時刻がわかる「ワールドタイマー機能」、ストップウォッチのついた「クロノグラフ機能」、時速を計測できる「タキメーター機能」などを搭載したモデルが登場しました。
パイロットのためだけのものじゃない!パイロットウォッチの魅力とは
当初は過酷な状況下でも正確に時間を把握しなければならないパイロットのために開発されたパイロットウォッチでしたが、その精巧なつくりと視認性の高さ、ハイスペックさゆえに、一般層にも人気が広がっていきました。
■視認性の高さ
パイロットが過ごす上空は、照明を消したら昼間でも真っ暗な世界。そこで、時刻をひと目で判断できるよう、インデックスや針には夜光塗料を使用するなどの工夫が凝らされています。
■耐衝撃性、対傷性の高さ
飛行機の操縦席は、磁気を発するマシンだらけ。また、大幅な気圧変化もあります。そんな環境下で正確な時間を刻めるように、パイロットウォッチは非常にタフなつくりになっています。
■操作性の高さ
パイロットは、旅客機のように空調が整った環境で飛行機を操縦するとは限りません。例えば、戦闘機の航空士は、極寒の中で操縦を行うこともあります。そのため、伝統的なパイロットウォッチは、グローブを装着していてもリューズやボタンが操作できるよう設計されていました。その名残は現在のパイロットウォッチにも継承されており、それゆえ高い操作性が実現されています。
■ギア感あふれるルックス
機能性の高さはもちろん、ルックスにほれてパイロットウォッチを手に取るという男性は多数。武骨で精巧なデザインは、戦闘機やジェット機などのマシンが好きという男性にとって非常に魅力的なものでしょう。手元で主張する圧倒的な存在感は、パイロットウォッチならではだといえます。
このように、パイロットウォッチには、パイロットでなくとも手にしてみたいと思わせる腕時計としての魅力がたくさん詰まっているのです。
パイロットウォッチの人気ブランドは?定番モデルは?
現在では、先のIWCをはじめ、さまざまな時計メーカーがパイロットウォッチを展開しています。
ここからは、人気ブランドの定番パイロットウォッチをピックアップしてご紹介します。
IWC パイロットウォッチ クロノグラフ スピットファイア
https://www.rasin.co.jp/SHOP/N-IW377719.html
パイロットウォッチのパイオニアともいえる、IWC。このモデル名の由来は、1936年に生まれたイギリスの戦闘機から。軟鉄製のインナーケースにより、高い耐磁性を実現。また、6気圧の防水加工が施されています。視認性の高い文字盤、デイトジャスト機能はデイリーユースに最適。シンプルなルックスは、ジャケットスタイルに合わせても違和感がありません。
ブライトリング ナビタイマー01
https://www.rasin.co.jp/SHOP/N-A022B01NP.html
パイロットウォッチの草分け的存在としてIWCと双璧をなす、スイスの時計メーカー「ブライトリング」。こちらのモデルは、1952年の発売以降、人気の衰えることない定番モデル。世界で初めて航空計算尺を搭載したクロノグラフとしても知られる名作です。
ハイスペックでメンズライクな腕時計を探している方は、ぜひパイロットウォッチをチェックしてみてください。
当記事の監修者
南 幸太朗(みなみ こうたろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ
学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴13年。