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実用性とステータス性。ロレックスのブランディング戦略が凄い!
最終更新日:
「ロレックスブランドって何がすごいの?」
「ロレックスのブランディングについて勉強したい」
誰もが知る腕時計ブランド「ロレックス」。
ロレックスはデイトナ・エクスプローラー・サブマリーナなど、数多くのロングセラーを持つ超一流時計ブランドです。
その機能性やデザイン性はどのモデルも素晴らしく、創業から現在まで世界中の時計ファンに愛され続けています。
そんなロレックスの凄さについて知りたいという人は多いのではないでしょうか。
ロレックスの最大の特徴は異常なまでに高い『知名度』です。
時計のクオリティだけでいえば、ロレックスよりもパテックフィリップ・オーデマピゲなどの雲上ブランドの方が高い位置づけとなっていますが、知名度で言えばロレックスが他を圧倒しています。
この記事ではロレックスのブランディング戦略について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
資産価値についても解説しますので、ロレックスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
1.ロレックスの誕生
ロレックスは世界一の知名度を誇る時計ブランドとして知られていますが、その歴史の始まりは1905年のロンドン。弱冠24歳だったハンス・ウイルスドルフと義兄弟のデイビスが、時計販売の専門商社「ウイルスドルフ&デイビス」を設立したことから時計ブランドとしての歴史は始まりました。
ウイルスドルフ&デイビス社は他社製の時計を仕入れて販売する「販売店」として事業をスタートさせましたが、当時の腕時計は外観上の美しさは素晴らしくても、時計としての性能は決してよいといえないものも多く存在していました。ハンスはその時計の性能に納得がいかず、すぐに自社で腕時計の製造を開始します。
出典:https://www.rolex.com/
ハンスが掲げた時計は見た目の美しさだけでなく「機能性や実用性」も重視した時計。1908年にはこの自社製造の腕時計に「ROLEX」という名前が与えられ、その後1915年には社名も「ロレックス・ウォッチカンパニー」に変更しています。
さらに1919年には、時計関税が高額だったイギリス ロンドンから拠点をスイスのジュネーブに移し、翌年「モントレ・ロレックス (Montres Rolex S.A.)」を設立。ここに、スイス時計メーカー「ロレックス」が誕生しました。
出典:https://www.rolex.com/
2.ロレックスの3大発明
ロレックスを現在の地位に押し上げた理由として、”腕時計の機能性”に関するロレックスの偉大な功績があげられます。それは「デイトジャスト機構」「オイスターケース」「パーペチュアル機構」という3つの発明。これらの発明は、腕時計の歴史を動かす画期的なものであり、腕時計の可能性を大きく開拓しました。
・「オイスターケース」は金属の塊をくり抜く事で高い耐水性を実現し、特許を取得した防水ケース。ロレックスの成功の礎を築きました。ねじ込み式の裏蓋とリューズによってケースがまるで牡蠣の殻のように固く閉じているということから、このネーミングがつけられました。
出典:https://www.rolex.com/
・「パーペチュアル機構」とは、自動でゼンマイを巻き上げるメカニズムのことです。それまでは手巻きで時間を合わせるのが当たり前だった機械式時計で、この発明はまさに革命的。身につけているだけでゼンマイを巻き上げるため、腕時計に関するわずらわしさが大幅に軽減されました。
出典:https://www.rolex.com/
・「デイトジャスト機構」は日付が変わるとともに自動的に日付が表示される機能です。日付表示の機能自体はそれまでにもありましたが、夜0時にカシャッと日付が切り替わる仕様は、ロレックスが独自に開発したものでした。
この3つの機構からみても、ロレックスはどの時計ブランドより実用性に拘りをもっていることが分かります。特にパーペチュアル機構とデイトジャスト機構は、他の時計ブランドの模範となり、世界のスタンダードとなりました。
モデル改良と新素材の開発にも力を入れている
また、ロレックスはモデルの改良を行うことも多く、より実用性のある時計を目指し試行錯誤を繰り返していることも特徴です。
例えば、サブマリーナ。見た目に大きな変更を加えないことで、普遍性と高めているロレックスですが、細かなパーツはより実用性が向上しています。
最新型サブマリーナではベゼルがステンレス製から「セラクロム・ベゼル」に変更。非常に硬いセラミックを素材とすることで対称性や紫外線による退色を防ぎ、過酷な状況下においても美しさと機能性を保持することに成功しています。
また、セラクロム・ベゼル以外にもロレックスが開発した画期的な素材や機構は数知れず。特に2005年には5年に及ぶ研究を経てブルーのパラクロム・ヘアスプリングを開発し話題を生みました。このパーツは常磁性合金を使用し、磁力に対する強度と、標準の10倍もの耐衝撃性を実現。この美しい青色は、時計史に輝く精度の証であり、ロレックスの精確さを保証します。
出典:https://www.rolex.com/
3.ロレックスのステータス性
ロレックスが生み出す時計は確かに高品質です。ですが、実用性重視のロレックスよりも”高品質”を追求した時計ブランドも世界には数多く存在します。
例えば、ロレックスが作らないトゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーといった複雑機構モデルを作り上げる”ブレゲ”や世界一の時計ブランドと称される”パテックフィリップ”はそれに当てはまるでしょう。
ブレゲ / パテックフィリップ
しかし、世間的に「高級時計の代名詞」になっているのはブレゲでもパテックフィリップでもなく、「ロレックスの時計」です。それだけ世の人々はロレックスに価値を感じ、ロレックスを買った自分に満足することができるのです。
では何故、それほどまでにロレックスの時計は人を魅了するのか。それはロレックスの時計自体の価値はもちろん、ブランド力だけでも人に満足感や充足感を感じさせることが出来るステータス性があるからでしょう。
そして、そのイメージを世間に植え付けた「ブランディング戦略」がロレックスを成功に導いた要因です。
メディアを利用した積極的なブランディング
ロレックスは創業当初からメディアを使ったイメージ戦略に長けていました。実行したメディア戦略は「公開実験」です。
ロレックスは開発したモデルの知名度を高めるため、数々の偉業に挑戦する人にロレックスの時計を同行させてもらい、メディアの注目を集める戦略を実行しました。
まさにそれは過酷な環境でロレックスの時計は壊れる事なく、最後まで役目を果たすことができるか試す公開実験とも呼べる戦略だったのです。
■メディアを通して公開実験を行ったモデルの一部
・シードゥエラー(当時はオイスターと呼ばれた):「ドーバー海峡の横断泳に同行」
・ディープシー:「深海実験への同行」
・エクスプローラー:「エベレスト登頂への同行」
上記のような偉業に同行したロレックスの時計は、メディアにて挑戦者と共に大きな話題を生みます。そして、壊れる事なく、挑戦者に寄り添い続けた時計を人々はこう思うでしょう。
「ロレックスの時計はどんな過酷な環境でも耐える最高の実用時計だ!」と。
富裕層向けに莫大な広告予算を投資
時計の実用性を世界に知らしめたロレックスは、次に世界初の広告会社として名を馳せた「ジェイ・ウォルター・トンプソン」と業務提携を結びます。その狙いは富裕層へのアプローチでした。
ロレックスは莫大な予算を投資し、富裕層向けの新聞や雑誌にロレックスの存在を大々的にアピールします。この際にボクシングのジャブのように効いていたのが「ロレックスは最高の実用時計」というイメージです。
どんな時計か分からない状態ではいくら広告を打っても効果は薄いでしょう。しかし、ロレックスは既にメディアをつかって「実用性」の部分で世界にその実力を証明してきました。そして今度はロレックスの時計を「成功者がつける時計」「時計の王様」といった高いステータスを誇る時計であることを世間のイメージに植え付けたのです。
やがて、そのイメージは世界的に定着し、現在のロレックスのステータス性・知名度に繋がります。
4.ロレックス時計の資産価値
圧倒的な知名度とステータス性をもつロレックスの時計には高い資産価値があります。その価値は時計界でずば抜けていており、中には投資目的で時計を購入する人も存在するほどです。
このような高値になる理由はロレックスのもつ「ステータス性」はもちろん、丈夫で長く使える「実用性」への信頼によるものでしょう。そして、ロレックスの資産価値の高さは、創業してから現在まで一貫して行ってきたブランディング戦略の成功を物語っています。
プレミア感の演出
ロレックスの凄いところは、売り方にも見え隠れします。なかでも一番注目したいのは「流通量」についてです。
人は希少価値というものを大切にします。もしロレックスの時計がいつどこでも買えるようなものなら、人はロレックスの価値を低く見積もったことでしょう。しかし、ロレックスはそれを良しとしませんでした。
ロレックスは時計の価値を下げないため、いくら人気だといっても大量に作るようなことを控えました。これだけ人気なのですから、作れば作るほど時計は売れるはず。それでも、ロレックスは流通量を抑えることでプレミア感を演出しました。なぜなら目先の売上よりも、ステータス性やプレミア感の方が大切だからです。
その戦略は功を奏し、ロレックスの時計は世界的に需要がありながらも、高い水準で買取相場が推移しています。特にエクスプローラー・サブマリーナなどの人気モデルはリセールバリュー(再販価値)75%~80%という驚異的な数字をたたき出すほどです。
飽きてしまって手放すときはもちろん、たとえ壊れていても大きく価値を下げずに売る事ができるのは、まさにロレックスだけ特権といえます。
ロレックスの「デイトナ」は常に品薄状態であり、特にプレミア感の強い時計として有名です。圧倒的に流通量が少ない為、正規店では予約することすら不可能。そのため、現在は並行輸入店や中古での購入がメインとなっています。
その希少価値からデイトナの相場は定価の1.4倍~1.8倍ほどで推移しており、人気モデルによってはそれ以上になることもあります。
例えば、旧型デイトナであるRef.116520。製造終了に伴い希少価値が上がったこのモデルは、中古品が定価の1.5~1.7倍で販売されるなど、今なお高い資産価値を誇っています。また、2016年に発売された新型デイトナの並行新品価格も、定価の1.6~1.8倍という驚愕の数字をたたき出しており、デイトナのプレミア感を更に強く証明しています。
ロレックス コスモグラフ デイトナ 116520
1959年に誕生したデイトナですが、24時間耐久カーレースで有名なデイトナ・インターナショナル・スピードウェイにちなみ命名されました。中でもデイトナRef.1165620は2000年~2016年まで、多くの時計ファンの憧れとして君臨したデイトナの定番ロングセラーモデル。製造終了に伴いその価値が上昇しています。
ロレックス コスモグラフ デイトナ 116500LN
2016年のバーゼルワールドで発表された、新型「コスモグラフ デイトナ」116500LN。ベゼルがステンレスから傷のつきにくいセラクロムへ変更され、文字盤のインダイヤルの縁取りもブラックとなり、より精悍なイメージになりました。
まとめ
ロレックスの時計は最上級の実用時計です。時計界に大きな影響を与えた3大機構開発を中心に、現在まで数多くの画期的な機構を開発し続けてきました歴史を持ちます。
また、時計作り以上に凄いのが一貫された「ブランディング戦略」。創業当初からロレックスは積極的にメディアや広告を駆使し、世間にロレックスの時計のステータス性を広く認知させることに成功しました。
「実用性」と「ステータス性」。2つの大きな拘りを貫いてきたロレックスが現在の地位にいるのは、まさに必然なのでしょう。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年
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