「パネライのルミノールとラジオミールにはどんな種類があるの?」
「ルミノールとラジオミールのおすすめモデルの選び方が知りたい」
シンプルなのに、一目で「パネライだ!」とわかる独創性。
それがパネライの何よりの魅力です。
視認性が高く、重厚でありながらもさ気品をまとうパネライウォッチの人気は根強く、「パネリスティ」と呼ばれる愛好家を生み出すほど。
しかし一方で「パネライはどのモデルも似ている」というご意見を頂くこともあります。
それもそのはず、パネライウォッチは特別モデルを除いては「ラジオミール」と「ルミノール」のみの二本柱。
でも、実はその二つのモデル、似て全く非なる魅力をそれぞれ持ち、とりわけ「ケース」はパネライの独創性を創る根幹のような存在なのです。
そんなルミノールとラジオミールのおすすめモデルの選び方が知りたいという人は多いのではないでしょうか。
パネライは機能も魅力的ですが、好みのケースフォルムやデザインで選ぶことをおすすめします。
この記事ではこの2つのモデルの魅力的なケースフォルム・デザインを、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
おすすめモデルの紹介もしますので、自分に合ったパネライをお探しの方はぜひ参考にしてください。
目次
パネライとは
イタリアはフィレンツェ。
1860年創業と古い歴史を持ちますが、当初は時計販売店のかたわら温度計や気圧計といった精密機器の製造で名を上げていました。
イタリア海軍はその名声を聞きつけ、潜水特殊部隊用の軍用ダイバーズウォッチの製造を依頼することに。
これが、パネライのウォッチメーカーとしての始まりです。
出典:https://www.panerai.com/ja/about-panerai/history.html#1860年
パネライは長らくイタリアやエジプトなどの軍に納入する軍需製品を取り扱ってきましたが、第二次世界大戦の終結により次第に軍需要がなくなっていきます。
経営を立て直すため、1993年頃より一般市場へ向けた時計の製造や販売を開始。
1997年には数々の高級時計ブランドを傘下にしている巨大資本”リシュモングループ”へと加入しイタリア国内で安定した流通ネットワークを確立、時を同じくして国際デビューを果たします。
パネライは元来軍事利用を想定し、過酷な状況下でもその機能を発揮できる堅牢さと高い品質を持ち合わせた時計を製造していました。
その優れたスペックは他ブランドにはないもので、差別化に成功。
加えて、シンプルでありながら大ぶりで厚みのある外観が大ヒット。
デカ厚ウォッチと呼ばれ、1990年代後半に起きたデカ厚時計ブームの火付け役となりました。
冒頭でパネライのメインモデルは二つ、と述べましたが、ラインナップ自体は何百と展開しています。
しかし、世界有数の有名高級ブランドとなった今なお、いずれのパネライウォッチにも「軍需用に耐えうるスペック」がDNAとして引き継がれています。
見た目でわかる「ラジオミール」と「ルミノール」の違い
パネライの二本柱、ラジオミールとルミノール。
一見すると両者のルックスは大変よく似ていますが、実は決定的な違いがあります。
それは、「リュウズプロテクターがついているかいないか」という点。
左:ラジオミール PAM00337 右:ルミノール PAM00177
ついているものがルミノール、ついていないものがラジオミールです。
また、ルミノールは当世風でパネライの代名詞でもある「デカ厚」なことに対し、ラジオミールはクラシカルで小ぶり・薄型のラインも展開。
それぞれに多数のモデルがあり、ルックスや機能、発売年などによって価格が大きく異なります。
パネライの独創的で、似て全く非なるケースデザインの数々をまとめてみました。
ラジオミール
1938年、イタリア海軍からの要請を受けて誕生したダイバーズウオッチがラジオミール。
ラジオミールの魅力は、クラシカルにあります。
戦前より軍用として使われたという歴史、デカ厚が基本のパネライでありながら薄型のものもラインしている点、そしてベルトは革製のみを採用しているためです。
ちなみにベルトは可変式ワイヤーループベルトアタッチメントにより、簡単に交換・カスタマイズできます。
①ラジオミール・基本型
クッションフォルムのケース、オニオンシェイプのリューズ、そしてラグを持たないことによって特徴づけられるラジオミール。
リューズプロテクターやラグがない分、ルミノールと比べてすっきりした印象を持つかもしれません。
一目でパネライとわかる見た目ですが、ラインナップによってそのケースデザイン性は様々です。
例えばサイズ。
パネライの大きいフェイスを好んで愛用される方も多いですが、ラジオミールは現行モデルで45、47mmとかなりボリューミー。
過去には40、42、44mmのケース径も製造されており、スポーツウォッチというよりもクラシカルな印象を持つラジオミールならではと言えます。
また、ケース素材についても、定番のステンレススチールの他に高級感あるゴールド、傷つきづらく精悍なブラックセラミック、そしてパネライが開発したコンポジット(アルミをベースにした複合材料)があります。
左から ゴールド / ブラックセラミック / コンポジット
②ラジオミール1940
パネライ ラジオミール 1940 PAM00512
ラジオミールからルミノールへと変遷を遂げた1940年代に着想を得て、2012年より展開しているラジオミール1940。
その過渡期を表すような、ラジオミールとルミノールが融合したケースデザインが特徴です。
ラジオミールの特徴でもあったオニオンシェイプのリューズはなくなりました。
代わってラグがケースからしっかり突き出し、強度はアップ。また、ルミノールほどではないもののしっかりめのボリューム感があります。
ラジオミール1940は新型ケースでありながら、ラジオミールが持つクラシカルさをより強くしています。
ケース径は45、47、48mmの他に42mmと万人受けするサイズを多くラインナップ。
42㎜のモデルは薄型のため、フォーマルシーンでも活躍できるでしょう。
ラジオミール1940はラジオミールより比較的値段は高めで、かつラジオミールが持つ独創性がないと言われることもありますが、その誕生の背景や汎用性の高さは、パネリスティにもパネライ初心者にも実はおすすめです。
ルミノール
現在のルミノールが完成したのは1950年頃のことです。
軍から求められるスペックが厳しくなった1940年代前後から研究・開発された、パネライ技術の集大成のようなモデル。
パネライは1993年、民間向けに時計製造を開始しますが、まず注力されたのがルミノールでした。
その高度な機能とシンプルなのに一目見たら忘れられないデザインが大ヒット。
ラジオミールより歴史は浅いものの、パネライのフラグシップとしてまず思い浮かべるのはこのルミノールではないでしょうか。
①ルミノール・基本型
ルミノールの特徴でありパネライの象徴でもあるのは、何といっても重厚な「ロックレバー式リューズプロテクター」。
現在の防水時計はロレックスが開発した「ネジ込み式ロックリューズ機構」が主流ですが、パネライはロックレバー式リューズプロテクターを採用し続けています。
また、クッションフォルムのケースやフラットで幅の広いベゼルもその独創性をより強調。
ルミノールもまた初代モデルを踏襲し、デザインに大きな変化はありません。
ケース素材も基本的にはステンレススチールやゴールドなど定番素材が一般的で、モダンでありながら奇をてらわない、パネライの遺伝子を感じさせられます。
ケース径は現行モデルでは44mmが主流ですが、40mmサイズも人気があります。
パネライ ルミノールマリーナ PAM00048
また、ルミノールは多彩なラインナップを展開していることも魅力。
デザインはそのままに、クラシカルなもの、時代に即した機能が加えられたものなど様々なコレクションを製造しています。
9時位置にスモールセコンドを配したルミノール マリーナが最もベーシックなモデルですが、他に以下の派生モデルが存在します。
■ルミノール クロノ
■ルミノール パワーリザーブ
■ルミノール GMT
■ルミノール ベース(ルミノールのベースとなったモデルの復刻で、2針のみのもの)
■ルミノール サブマーシブル(本格ダイバーズウォッチ)
パネライが欲しいけど、人と少し違いを出したい方におすすめです。
②ルミノール1950
パネライ ルミノール マリーナ 1950 3DAYS PAM00392
2005年、ルミノールの新型ケースとして登場したルミノール1950。
ルミノールが誕生した1950年代当時のモデルへのオマージュ、そしてパネライのハイエンドコレクションとして製造されたモデルです。
ケースサイズは44mm、47mmと大きく、当時ムーブメントにも注力されたことから人気を博し、定番となりました。
ケースデザインについて基本的にはルミノールとの大きな違いはありませんが、そのディテールはより洗練されていることがわかります。
特徴の一つ目は、やや丸みを帯び立体感が増したこと。
二つ目は、多くのダイバーズウォッチ、そしてルミノールにも採用されている日付拡大レンズがないこと。
そして三つ目は、リューズガードにREG.T.M.のロゴが入っていること。
これは Registered Trade Markの略で、パネライのリューズガードが特許を取得していることを意味します。
ルミノール1950は革ベルトの他にステンレスやセラミックのブレスタイプをラインしているため、シーンに合わせた着こなしが可能です。
③ルミノール ドゥエ
出典:https://www.panerai.com/
2016年、デカ厚の代名詞とも言うべきパネライが薄型のルミノールを発表したことで話題をさらいました。
そのモデルが、ルミノール ドゥエです。
ルミノールの特徴であるケースシェイプはそのままに、厚さは11mmにも満たないという、従来のパネライはおろか他のスポーツウォッチと比べてもかなりスリムな新作です。
その秘訣は自社製ムーブメントに。
手巻きと自動巻きをラインしていますが、いずれも4mmしない薄さ。
パネライの厚さで躊躇していた方も、選択肢が増えたのではないでしょうか。
~Column 歴史で見るモデルの違い~
出典:https://www.panerai.com/
パネライのモデル名は、ダイバーズウォッチとして必要不可欠な「夜光塗料」に由来します。
創業当初、精密機器メーカーであったパネライは、そのノウハウを活かし時計のダイアルを光らせる夜光塗料の研究開発に着手しました。
今ほど電気が発達していなかったことに加えて、軍事下では光の届かない環境で時刻を視認する必要性があったためです。
1916年、ラジウムをベースとした粉末塗料「ラジオミール」の特許を取得、そこからラジオミールというモデル名をとりました。
後、ラジウムが放射性物質によることの健康被害が深刻化し、「ルミノール」という蛍光塗料を新たに開発します。
ルミノールはトリチウムを原料とした化合物で、放射性同位体であるものの人体には影響のない塗料。
1949年、この夜光塗料からインスピレーションを得て、長年親しまれ続ける「ルミノール」というモデルの完成に至りました。
パネライおすすめモデル紹介
シンプルでベーシックでありながら、「精密機器」としての実力をも備えるパネライウォッチ。
長年の歴史で培われたそのブランド力は、男心を刺激してやみません。
そんなパネライの人気モデルをいくつかご紹介いたします。
①ルミノール パワーリザーブ PAM00090
2001年に発表されたルミノール パワーリザーブのセカンドモデル。
高い技術を要し、専門家の間でも評価の高いパワーリザーブインジケーターを搭載します。
視認性を壊さずシンプル、しかし斬新なダイアルデザインはパネライならではと頷ける一本です。
②ルミノール フライバッククロノグラフ PAM00060
パネライ ルミノール フライバッククロノグラフ PAM00060
2000年に世界300本限定で発売されたスペシャルエディション。
ムーブメントにはゼニス社の”エルプリメロ”をベースにしたフライバック機能(クロノグラフ計測中、中間タイムを測定できる機能)付きクロノグラフCal.OPVIを搭載。
シルバーに黒のインダイアルを配したデザインは、このモデルのみの仕様となっており希少性の高い逸品です。
③ルミノール サブマーシブル PAM00024
300m防水機能に加えて、本格派ダイバーズウォッチに必要不可欠な回転式ベゼルを搭載。
44mmの特大ケースに取り付けられたそのベゼルは、ドットのマーカーがあしらわれユニークなデザインです。
ムーブメントにはクロノメーターを取得した自動巻きムーブメントCal.OP IIIを搭載しています。
9時位置のスモールセコンド、3時位置の日付が絶妙なバランスで配され、視認性とエレガンスを見事両立した逸品と言えるでしょう。
④ルミノールGMT オートマティック アッチャイオ PAM01088
パネライ ルミノール GMT オートマティック アッチャイオ PAM01088
ロングセラーモデルであるPAM00088のマイナーチェンジモデル。
変更点はムーブメントがCal.OPVIIIからCal.OPXXXIに、パワーリザーブが約50時間になりました。
ブラックダイアルにアラビア数字とバーインデックスの基本デザインは健在。
GMT針とインデックス外周に第二時間帯のための24時間表示を備え、より現代に即した機能性を追求した一本です。
⑤ラジオミール GMT G番 PAM00184
クラシカルなラジオミールに、モダンなGMT機能を搭載させたモデル。
2時位置のリューズでインナーベゼルを操作し、第二時間帯を把握することができます。
42mmとパネライウォッチにしては少し小振りのサイズで、スッキリとした外観と併せてオールシーンに対応。
裏蓋はシースルーになっており、ジャガールクルト製ムーブメントをご覧いただけます。
まとめ
パネライについて考えた時、高機能であること、軍需用品というロマン溢れる過去があることなど様々な魅力を思いつきます。
しかし、やはり何と言っても一目でパネライだとわかるシンプルかつ独創的なケースデザインに集約されるものが多いのではないでしょうか。
パネリスティも、どの高級時計にしようか検討中の方も、ぜひ「ラジオミールかルミノールか?」から始めてみることをおすすめします!
当記事の監修者
南 幸太朗(みなみ こうたろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ
学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴13年。
タグ:パネライ