「墨田区にあったセイコーミュージアムはどんな場所だった?」
「セイコーミュージアムの展示が知りたい」
国産時計の最高峰と言われ、その名を世界に知られる「グランドセイコー」。
1981年、セイコー社創立100周年を記念して墨田区に誕生した「セイコーミュージアム」ですが、2012年にリニューアルが行われました。
そんな墨田区にあったセイコーミュージアムの展示が知りたいという人は多いのではないでしょうか。
この記事ではセイコーミュージアムの一部を除き撮影OKとなっていた展示を、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
画像付きで詳しく紹介しますので、セイコーウォッチに興味がある方はぜひ参考にしてください。
出典:https://museum.seiko.co.jp/index.html
目次
アクセスと見学方法
所在地:〒131-0032 東京都墨田区東向島3-9-7
TEL:03-3610-6248
見学は無料ですが、電話もしくはインターネットで事前の予約が必要となります。
希望すると説明員の方がついて、約60分間展示の説明をして回ってくれます。
iPadで案内を見ながら回ることもできるので、一人でじっくり見て過ごしたい方はこちらのiPadレンタル(60分)がおすすめ。
詳しくは、セイコーミュージアムの公式ページを参照してください。
展示品の一部をご紹介します
セイコーミュージアムでは腕時計以外にも歴史的な時計が数多く展示されています。どの時計もなかなか目にする事ができない貴重な時計なので、時計好きな方は勿論、歴史が好きな方にも大変オススメです。
ミュージアム1階では、時計の進化をテーマとした展示物を見ることができます。自然の力を利用した古来の時計や時計塔の中身、更には欧州製の懐中時計など時を知る手段としての時計の歴史を感じる事ができる為、時計ファンに特に人気のあるフロアです。
2階は和時計やセイコーの歴史的モデル展示がされており、日本における時計の進化を目にすることができます。
【古来の時計】赤道型(コマ型)日時計
太陽の位置により時間を読み取る「日時計」は人類最古の時計で、紀元前4000年頃エジプトで発明されたと言われています。
その頃の日時計は、地面に垂直に棒を突き立て、影の長さや角度で時を知るというもの。
こちらは18世紀に中国で造られた「赤道型日時計」と呼ばれるもので、棒の先端は北極星を指し、文字板面は赤道と平行になるよう作られています。
十二支の目盛は表と裏に刻まれており、日の長い春分から秋分は表面、夜が長くなる秋分から春分の間は裏面にできる影で時刻を判断したといいます。
【古来の時計】香盤時計
こちらは「燃焼時計」と呼ばれるものの一種。
一定のスピードで燃焼するお香の性質を利用して、木枠の中で燃え進んだ長さにより時刻を読み取っていました。
中国から渡来し、江戸時代に日本で作られた物が展示されています。
【多様な機構の機械式時計】鉄枠塔時計
1500年頃にイギリスで製造された機械式時計。
重錘式動力、冠型脱進機、棒テンプ、時打ち付きと、世界最古の機械式時計と同じ機構を備えています。
この頃の日差は30分程度。その後振り子式の時計が登場し、精度は飛躍的に向上していきます。
【多様な機構の機械式時計】振り子式時計塔(ビッグベンのプロトタイプ)
1859年に完成となったイギリスのビックベン時計塔。
1854年に制作されていた時計部分の試験機が、セイコーミュージアムに展示されています。
振り子の振り幅が狭く設計されたことで精度は日差一秒程度を実現。風や天候の影響を受けにくい構造に工夫されています。
【多様な機構の機械式時計】ブロンズ人形不思議時計(ミステリークロック)
外部から力が加わっていないにも関わらず、人形の持つ振り子が一定の間隔で揺れ続ける様子から「ミステリークロック」と呼ばれる振り子時計。
実は人形の台座が内部のゼンマイに繋がっており、人形自体が僅かな左右運動を続けている為に振り子が揺れ続けるという仕組みだそうです。
【多様な機構の機械式時計】からくり押打ち鍵巻懐中時計
1800年代フランス製の懐中時計。
12時位置のリューズを押すと、中の人形が鐘を打ち、その音と回数で文字盤を見なくても今の時刻(15分単位)を知ることができます。
セイコーミュージアムのサイトに動画がありましたので、ご覧ください。
両脇の人形が鐘を打つ様子が可愛らしく、その精巧な作りには驚かされます。
3時側の人形が「カン、カン」と鳴らす音が6回、9時側の人形が「カコン、カコン」と鳴らす音が3回聞こえることから、現在時刻が6時45分~7時の間である事がわかります。
【多様な機構の機械式時計】ホールクロック
全高2.9mのパイプ音響式大型クロック。
時刻ちょうどになると時計内部のパイプが叩かれ、学校のチャイムのような音階を奏でます。
文字盤の上には半円形の窓があり、月齢を表すビジュアルが描かれています。
【個性的な和時計】 二挺天符目覚付袴腰櫓時計
江戸時代の日本の時刻制度は「不定時法」と呼ばれ、現代で当たり前に使われている「定時法」と大きく異なる点があります。
一日を均等に24分割して「1時」「2時」と呼ぶ定時法と異なり、一日をまず昼と夜に分け、それぞれを6等分し、「子の刻」「丑の刻」等と呼ぶというものです。
昼と夜の長さは同じではない上に、冬になれば夜が長くなるなど季節によっても異なるという大変複雑な仕組みです。
時刻が一区切りつくまで、つまり子の刻から丑の刻に変わるまでに実際にかかる時間が昼と夜で異なる為、それまでの和時計は毎日朝と夜に天符のおもりの位置を掛けかえ、針の進むスピードを変える必要がありました。
そこで「昼用」「夜用」の2つの天符を備えた「二挺天符」が開発され、昼夜の区切り時間に自動で天符が切り替わるようになりました。
今まで「一日に2回」行っていた調整が、季節の移り変わりに合わせた「一年に24回」で事足りるようになったのです。
こちらの時計には、さらに時打ち機構と目覚しの機能が付き、江戸時代の産業の技術力の高さを感じさせます。
【個性的な和時計】べっ甲蒔絵枠時打印籠時計
江戸時代後期、ヨーロッパで懐中時計が流行したのに対し、日本では薬を持ち運ぶ印籠を模したケースに時計を入れた印籠時計が考案されました。
こちらはべっ甲製で全面に蒔絵が施され、蓋の中には日時計と磁石が仕込まれているという豪華な一品。
水戸藩主 徳川斉昭の所持品であることを示す箱書が残ります。
【個性的な和時計】卦算時計
「卦算(けさん)」すなわち文鎮としても使用できる時計として、文人墨客に好まれた卓上時計。
動力はゼンマイで、漢数字が刻まれた四角の枠の上を一直線に指針が進んでいくことで時刻が進む仕組みです。
【精工社初期の製造品】八日巻掛時計
1892年、精工社で初めて製造・販売された掛時計。ゼンマイを一杯に巻くと、8日間動き続けます。
【精工社初期の製造品】日本初の目覚時計
1899年、日本初の目覚まし時計として販売された精工社の時計。
当時世界を席巻していたドイツ製の目覚まし時計は錆びの出やすい鉄製。
セイコーは真鍮のケースにニッケルメッキを施した錆びにくい素材を使用した事でドイツ製を凌駕し、国産目覚まし時計の普及に繋がったといわれています。
その他、1895年製の精工社初の懐中時計「タイムキーパー」や、1913年製 日本最初の腕時計「ローレル」、1960年製の「初代グランドセイコー」等の偉大なウオッチの数々や、最新のGPSソーラーウオッチまでもがミュージアム内に所蔵・展示されています。
1階にはスポーツ計時コーナーもあり、9.58秒(100m水泳男子の世界記録)ぴったりでタイマーを止めると記念品がもらえるゲーム等が用意されています。
まとめ
セイコーミュージアムは国内最大の時計ミュージアムとして有名です。時計の歴史や進化を実物を見ながら学ぶことができため、時計ファンのみならず多くの歴史ファンやアンティークファンにも人気の施設となっています。
東京スカイツリーから2駅でたどり着けますので、興味がある方は観光のついでに訪れてみるのも良いのではないのでしょうか。
当記事の監修者
南 幸太朗(みなみ こうたろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ
学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴13年。