「ランゲ&ゾーネのダトグラフって何がすごいの?」
「ランゲ&ゾーネ ダトグラフの魅力について詳しく知りたい」
多機能クロノグラフであるにもかかわらず、どこまでも優美で端正な「ダトグラフ」。
大胆なシンメトリックダイアルの外周をタキメーターが上品に並び、シースルーの裏蓋からは非常に緻密ながらやはり美しいムーブメントが現れます。
この最高傑作機は、ドイツきっての名門・A.ランゲ&ゾーネが手掛けます。
ダトグラフの功績はクロノグラフに気品を添えただけでなく、高度な技術を要する複数の機能・機構を見事制御、調和させたムーブメントを実現したこと。
そんなランゲ&ゾーネ ダトグラフの魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
世界最高峰の高級クロノグラフであるダトグラフは、A.ランゲ&ゾーネ自身、「決して立ち止まらず、機械式時計作りの限界に挑み続けるというA.ランゲ&ゾーネの大きな志」の象徴としています。
この記事ではランゲ&ゾーネ ダトグラフの魅力を、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
人気モデルの紹介もしますので、ランゲ&ゾーネの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
1. A.ランゲ&ゾーネ ダトグラフとは
ダト―ドイツ語でデイトのこと―を備えたクロノグラフ、という名前でドイツのA.ランゲ&ゾーネが1999年より手掛ける多機能クロノグラフウォッチ。
多くの時計専門家から「高級クロノグラフの傑作」と呼び声高いモデルです。
その大きな理由は全部で二つ。
一つ目はダイアルデザインです。
通常のクロノグラフはダイアル内にタキメーターやサブダイアルを配さなくてはならないため雑然としがち。
そこにデイト表示まで入れるとなると、視認性の確保が大変難しくなります。
しかしA.ランゲ&ゾーネが手掛けるこの傑作のすごさは、寧ろ端正なまでのダイアルデザイン。
最も特徴的でありA.ランゲ&ゾーネの象徴とも言うべきは12時位置のアウトサイズデイト。
アウトサイズデイトとはA.ランゲ&ゾーネ特許取得のデイト表示機能で、大型窓が12時位置に君臨します。
一般的なクロノグラフのサブダイアルは3時と9時位置にあしらわれますが、ダトグラフでは4時8時位置、と若干下げられた配置に。
これにより、アウトサイズデイトの斬新な特徴が活きるだけでなく、デイト、二つのダイアルが三角を成し、調和のとれたシンメトリックを実現したのです。
A.ランゲ&ゾーネらしい気品もあわせて備わり、スポーティーテイストの強いクロノグラフに「高級機」という価値を与えるに至りました。
二つ目は、ダトグラフの真骨頂とも言うべきムーブメント。
他モデルの一切をベースにせず、完全自社製造により生み出されたという異例のCal.L951.1系は、さらに驚くべきことに世界初のプレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターアウトサイズデイトフライバック機能が付いたクロノグラフとして1999年の誕生と同時に世界中で話題をさらいました。
ちなみにA.ランゲ&ゾーネは一度休眠を余儀なくされ、40年間の空白から目覚めてまだ5年後のことでしたから、いかに驚異的であったか想像に難くないと思います。
プレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターとはクロノグラフにありがちな計測誤認を解消するための機構で、積算分針が60秒経過するごとに正確に目盛りのひとつ先に進む設計となっています。
そのため、たまたまクロノグラフ針が0の瞬間にタイム計測を停止した場合にも、積算分針は進むためラグが発生することがありません。
この技術は世界最高難度に分類されるものでありながら、高精度クロノグラフには欠かせません。
A.ランゲ&ゾーネの1815クロノグラフにはこの機構が搭載されていましたが、ダトグラフに至ってはアウトサイズデイト及びフライバック機能(計測中にリセットボタンを押すと、ただちに新しいタイム計測を行う機能)をも付されているというのだから驚きです。
ランゲ&ゾーネ 1815 クロノグラフ 402.026/LS4023AJ
これら全ての機能を制御するL951.1系は、全て熟練した職人たちの手作業により、伝統的なグラスヒュッテ様式に則った組み立てや仕上げが施されています。
さらに現在、このダトグラフはブラッシュアップが施され続けているほか、永久カレンダーやトゥールビヨンなど、様々な超複雑機構が搭載されたモデルが発表されています。
「完璧」でありよもや改良の余地なし、と思われたL951.1はA.ランゲ&ゾーネにとっては通過点でした。
これからも進化の手を止めないと思うと、感嘆で呻らずにはいられません。
2.凄すぎるダトグラフムーブメントの歩み
ダトグラフは、他のA.ランゲ&ゾーネのクロノグラフモデルと同じく、L951系ムーブメントがベースとなり、改良を加えられています。
ちなみにA.ランゲ&ゾーネはキャリバーの末尾に「.0」「.1」のように小数点で枝番が付されますが、これはベースムーブに変化が施された、という意味。
この項では、ダトグラフムーブメントを第一世代からご紹介したいと思います。
①L951.1
1815クロノグラフで話題をさらったL951系にアウトサイズデイト・フライバック機能を付し、ダトグラフの伝説の第一歩となったムーブメント。
ちなみに第一世代にあたるL951.1もありますが、モックアップ(模型)のため実際に市場に出回ってはいません。
グラスヒュッテ様式に則った伝統的なムーブメントであることがわかります。
丁寧に面取りが施され、パーツ一つひとつにエッジがきいていますね。
L951.1はその後何度か再びブラッシュアップを経ます。
パーツの改良や配分が考慮され、さらにその精度や信頼性を上げていきました。
L951.1が搭載されたモデルはケース径39mm、パワーリザーブ約36時間です。
②L951.6
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/timepieces/saxonia/#datograph-updown/movement-insights/350
クロノグラフの最高峰と謳われたL951.1をさらに改良したのがL951.6です。
モデル名も進化ました。「ダトグラフ アップ/ダウン」。2012年のことです。
この新しいムーブメントが搭載されたモデルは、ケース径が2mmアップし41mmと存在感を放ちます。
パワーリザーブは大幅に長くなり約60時間、6時位置にその表示機能をも追加するという、内外ともに妥協しないA.ランゲ&ゾーネならではの傑作。
パーツは451個に及びながら、全てが緻密な設計のうえで組み立てられ、さながら美しい工芸品のよう。
当ブランド自身も、「機械式クロノグラフの模範」と自負するほどの名機です。
③L952.1
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/timepieces/saxonia/#datograph-perpetual
2006年に発表された、ダトグラフにムーンフェイズ、そして世界三大複雑機構のうちの一つ・永久カレンダーを搭載させたムーブメント。
パーツ数は556個、全て入念な仕上げや装飾が施され、熟練職人たちの魂とA.ランゲ&ゾーネのものづくりへの情熱を体現したかのような傑作機です。
永久カレンダーは日付・曜日・月・うるう年を表示し、2100年にまで日付修正の必要はありません。
メイン調整プッシャー一つでカレンダーのすべての表示要素を一斉に進めることができ、加えてそれらを個別に修正するための埋め込み式プッシャーも備えます。
ちなみにこのプッシャーにはリューズを引いた状態でないと機能しないセキュリティ機構がついていることも、永久カレンダーにありがちな誤作動を防ぐ嬉しい気遣いですね。
④L952.2
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/timepieces/saxonia/#datograph-perpetual-tourbillon
L952.1が発表された時、これ以上多重複雑なムーブメントはないのではないかと称されましたが、そのL952.1をさらに上回るムーブメントが2016年のジュネーブサロンで発表されました。
ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨンです。
これは、L952.1にやはり世界三大複雑機構のうちの一つ、トゥールビヨンを搭載したもの。
トゥールビヨンは通常の機械式時計では固定されている「がんぎ車」と振り子の役目を担う「テンプ」を、特殊なキャリッジ(籠)に収め、キャリッジそのものを回転させることによってパーツにかかる重力を分散させる機構です。
そのためどうしてもパーツが通常のそれより多くなってしまい、かつ緻密な組立を要すことから、この機構自体を構築できるブランドは非常に限られています。
そんな複雑機構をダトグラフに搭載させ、しかも一つひとつのパーツをグラスヒュッテ様式に則った仕上げ・装飾が施されているということに、知る人ぞ知る・世界最高級時計メーカーであるA.ランゲ&ゾーネの実力を垣間見る思いです。
ちなみにパーツ数は729個とのこと。
トゥールビヨンを毎時18,000振動というロービートにあえて抑え、ダトグラフの1/5秒測定を守っていることもこだわりを感じます。
パワーリザーブ約50時間。
ドイツ南方に位置する小村・グラスヒュッテに端を発するグラスヒュッテ様式とは、当地の時計産業の伝統に則ったムーブメントの組立や仕上げ、ケーシング、精度検査などを指します。
ドイツブランドはこの様式を採用することがままあり、有名どころではA.ランゲ&ゾーネの他ノモスやグラスヒュッテオリジナルが挙げられます。
ちなみにグラスヒュッテで誕生したA.ランゲ&ゾーネが考案したテイストも少なくありません。
ムーブメントの装飾や仕上げを挙げれば、4分の3プレート、ネジ留めシャトン、ブルースチールネジ、スワンネック緩急針などがあり、いずれも美しさやその精度を保つため非常に有用性高いもの。
ダトグラフなどは、4分の3プレート上にクロノグラフのパーツが集中していたり、それらにシャントンビス留めがふんだんに施されていたりと、この特有の様式美を存分に堪能することができます。
スイス時計とは全く違った味わい深さがありますね。
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/timepieces/saxonia/#datograph-updown/watch-gallery/cover
さらに、A.ランゲ&ゾーネはこのグラスヒュッテスタイルムーブメントに一般的な「真鍮」ではなく「洋銀」を採用しています。
洋銀は真鍮よりも硬く、強度にも優れ、銀白色の美しい輝きを持つ高級素材。
その分素材コストは高くなり、硬さゆえ加工も難しいという特徴があります。
しかしA.ランゲ&ゾーネはそこに、自社伝統の模様を丹念にエングレービングします。
フリーハンドで作業を行うため、一つひとつのムーブメントは世界で唯一無二。
オーナーがまず絶対見ることの出来ないパーツの裏側まで磨き込み彫り込み、装飾を入れているのです。
A.ランゲ&ゾーネの時計が高価格帯なのは外装だけでなく、時計の命とも言えるムーブメントにこそ一切の妥協をしていないから、ということがわかります。
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/inside-our-manufactory/#finish-and-engraving/267
3. A.ランゲ&ゾーネ ダトグラフ モデル紹介
①ランゲ&ゾーネ ダトグラフ 403.032F
1999年に登場した、L951.1を搭載したダトグラフ。
発表から20年近く経つ今でも古さを全く感じさせない、まさに不朽の名作。
シースルーバックから渾身のムーブメントを見ることができます。
ちなみに同じL951.1を細かにブラッシュアップして再び発表された403.041F。イエローゴールドが採用され、ブラックダイアルと合わせて上品ながら飽きのこないデザイン性が魅力です。
②ランゲ&ゾーネ ダトグラフ アップアンドダウン 405.035(LS4052AD)
2012年に発表されたL951.6搭載機。
ダトグラフの特徴であるシンメトリックなダイアルにパワーリザーブ表示が加わりましたが、そのデザインコンセプトを全く壊さず、視認性も気品も両立されたまま。
ケース径も41mmとボリュームが増え、存在感抜群。
ちなみに定価は9,795,600円・・・
世界最高峰のクロノグラフは価格もまた最高峰クラスに位置しました。
2015年にはピンクゴールドモデルが新たにラインナップされています。
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/news-and-more/page-5531/
③ランゲ&ゾーネ ダトグラフ パーペチュアル 410.038
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/timepieces/saxonia/#datograph-perpetual/introduction/410-038
L952.1の多機能性もさることながら、当ブランドでは珍しいグレーカラーのダイアルで話題作となった一本。
ホワイトゴールドケースに各表示機能がくっきりと映える様はダトグラフが連綿と継承してきた対称性を存分に活かしているように思います。
ケース径41mm、パワーリザーブ約36時間。
定価は14,839,200円です・・・
④ランゲ&ゾーネ ダトグラフ パーペチュアル・トゥールビヨン 740.036
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/news-and-more/datograph-perpetual-tourbillon/
2016年に発表されたL952.2搭載機。
ムーブメントに729個ものパーツを使用しながら、ケース径41mm、厚さわずか14.6mmとダトグラフが持つ上品さ、ドレスウォッチの装いを全く崩さない一本です。
ちなみにアップ/ダウンとの厚さの違いはわずか1.5mm。
多くのトゥールビヨン機はダイアルをシースルーにし、その動きを楽しめるようにしていますが、A.ランゲ&ゾーネのL952.2はその意匠をシースルーバックから鑑賞することができます。
初代ダトグラフから受け継がれてきたダイアルデザインはそのままにするための気遣いですね。
ケースはプラチナ仕様、世界限定生産100本。
まとめ
どこまでも優美で端正なA.ランゲ&ゾーネ ダトグラフ。
世界最高峰の高級クロノグラフは、A.ランゲ&ゾーネ自身、「決して立ち止まらず、機械式時計作りの限界に挑み続けるというA.ランゲ&ゾーネの大きな志」の象徴とし、まだまだ進化の途上であることを示唆しています。
このことからも、いかに世界最高クラスの技術とこだわり、そして情熱によって作り上げられていることがわかるのではないでしょうか。
なかなか日常使いをする腕時計ではありませんが、いつかは手にとってみたい時計の一つです。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年