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雲上時計を超える究極の芸術性。ジャケ・ドローってどんなブランド?
最終更新日:
18世紀に名を馳せた天才時計職人「ピエール・ジャケ・ドロー」。
この名を知る方は相当な時計が好きな方ではないでしょうか?
時計の黎明期に活躍した彼は一流の時計職人であったのと同時に、オートマタ(からくり人形)の製作を得意としていました。そして、その2つを融合して生まれた時計はヨーロッパ中の貴族に愛された歴史を持ちます。
今回は知る人ぞ知る時計ブランド「ジャケ・ドロー」の魅力に迫ると同時に、先日入荷した世界限定で8本しか存在しない「グラン・セコンド パイヨン J003034215」についても紹介したいと思います。人とは違うハイブランドを探している方は必見の内容です!
出典:https://www.jaquet-droz.com/
目次
天才時計師 ジャケ・ドローについて
時計ブランド ジャケ・ドローはスイスに1721年に生まれた時計職人「ピエール・ジャケ・ドロー」によって作られました。彼が活躍した時代は、後に時計の歴史を大きく変える”アブラアム=ルイ・ブレゲ”よりも前の時代ですので、時計の黎明期とも呼べる時代に活躍した人物といえます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ピエール・ジャケ・ドロー
まだトゥールビヨン・ミニッツリピーターといった複雑機構が存在しなかった時計界において、彼は”高度なエナメル技術”を用いた懐中時計を貴族に提供し、その名を博してきました。
加えてムーブメント製造技術でもジャケ・ドローは類まれな才能を発揮し、当時最高レベルといわれた技術のほとんどを20代にして作り上げたとされています。文字盤仕上げからムーブメント製造まで、彼は当時の時計界において最高レベルの技術の持ち主であったことは間違いありません。
そして、彼は一流時計技師としての顔以外に”もう一つの顔”を持っていました。それは「オートマタ」の製作。いわゆるカラクリ人形の製作者としての顔です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ピエール・ジャケ・ドロー
手前の作品は「音楽家」と呼ばれる女性のカラクリ人形。約2,500個のパーツからによって成り立っており、人形の指が鍵盤を押すことでオルガンが実際に演奏されます。
右奥の作品は「ライター」と呼ばれる作品。約6,000個のパーツによって作られた男の子の人形は、羽根ペンを使って紙に最大40文字の文章を書くことができました。
このような作品をいくつも作り上げたことにより、ジャケ・ドローは時計技師としての名声に加え、オートマタ技師としての名声も確立したのです。
優れた時計製造技術に加え、類まれなオートマタ製造技術。ジャケ・ドローはこの2つを組み合わせた画期的な時計「シンギングバード」、「噴水」「ミュージックウォッチ」といった個性的な時計を展開します。そして、その時計たちはヨーロッパ中の宮廷で大絶賛を受けました。
その後、彼はスイス・パリ・ロンドンと渡り歩き、自身の名を冠したブランドの発展させていきます。これが「時計ブランド ジャケ・ドロー」の誕生となりました。
休眠から再建まで
現在の時計ブランド ジャケ・ドローはスイスのラ・ショー・ド・フォンに時計製造工場を構え、天才時計師ジャケ・ドローが作り出した世界観を現代に継承し続けています。
ただ、ジャケ・ドローは時計ブランドとして決して順風満帆な道を歩んできたわけではなく、19世紀半ばに戦争により閉鎖に追い込まれた歴史を持ちます。残念ながらパテックフィリップやオーデマピゲのように、創業から現代までブランドを継続させることができなかったのです。つまり、かなり長い間休眠していたブランドということになります。
ジャケ・ドローが時計ブランドとして本格的に復興したのは1996年。ブレゲ・ブランパンといった老舗時計ブランドの再建が次々と行われていた時期に、ジャケ・ドローはフランソワ・ボデらの尽力により再建を果たします。
2000年には「ブレゲ、オメガ、ハリーウィンストン、ブランパン」といった有名ブランドを傘下に収めるスウォッチグループに加入し、本格的に時計ブランドとして再出発。2010年にはラ・ショー・ド・フォンに大規模な時計アトリエを建設しています。
ルーツ自体は非常に歴史がありますが、休眠期間が長すぎたため”新興ブランド”ともいえる存在になっているのが現在のジャケ・ドローです。
時計ブランド ジャケ・ドローが作り上げる時計
生まれ変わった”時計ブランド ジャケ・ドロー”では、主に彼が活躍した18世紀に作られた懐中時計を現代的に解釈した時計作りを展開しており、現行モデルとしては「オートマタ」「アトリエ・オブ・アート」「グラン・セコンド」「グラン・セコンド SW」「アストラル」「プティ・ウール ミニット」「レディ 8」という7つのコレクションを生産しています。世界限定100本以下で製造されるモデルも多く、どのモデルも非常に希少価値が高いこともジャケ・ドローの特徴です。
動画:ジャケドローの最上位コレクション”オートマタ”より
時計ブランド ジャケ・ドローは天才時計師ジャケ・ドローが得意とした「オートマタ」と「エナメル文字盤」に強いこだわりを持っています。最高の彫金技術にエナメル技術、電気を一切使わず機械だけで動くオートマタギミック。ジャケ・ドローの時計にはトゥールビヨン・ミニッツリピーター・永久カレンダーといった複雑機構を超える究極の芸術性が秘められているのです。
もちろん価格も超ド級。最上位コレクション”オートマタ”は当たり前のように1000万円を超えます。
出典:https://www.jaquet-droz.com/
オートマタ以外のコレクションは「エナメル文字盤」に拘った美しいデザインの時計が基本的なラインナップとなっています。特に「グラン・セコンド」 コレクションはクラシカルな雰囲気を持ちながらも現代的なデザインをなっており、ジャケ・ドローのフラッグシップともいえるモデルです。雰囲気的にはランゲ&ゾーネやグラスヒュッテオリジナルのようなドイツ時計を彷彿させます。
現代でここまでエナメル文字盤に拘りを持つ時計ブランドは少なく、コアな時計ファンの間ではパテックフィリップを代表とする世界三大時計ブランドすら凌駕する芸術性があるとまで言われています。
ジャケドロー グラン・セコンド パイヨン 世界限定8本 J003034215
今回はジャケドローのコレクションの中でも高い人気を誇る「グラン・セコンド」から僅か世界限定8本で発売された”J003034215″を紹介します。
ジャケドロー グラン・セコンド パイヨン J003034215
ジャケ・ドローならではの拘りが込められた”グラン・セコンド パイヨン J003034215″
世界限定8本で発売されたこのモデルは「機械としての時計の美しさ」と「色彩の美しさ」の融合を堪能できるタイムピースです。
文字盤は2つの異なる大きさのインダイヤルが重なりあう芸術的なデザインです。上下のインダイヤルには青く焼かれたブルースティール針が配置されており、エナメルで焼き上げられたインダイヤルと非常に美しいハーモニーを放ちます。
上インダイヤルのインデックスにはローマ数字が使われていますが、下のインダイヤルと重なりあう「5・6・7」時はアラビア数字となっているのも見逃せないポイントです。
下のインダイヤルは10/20/30/40/50/60の数字がインデックスに刻まれています。また、よく見ると秒針が三日月型になっているのも特徴です。
細かな点ですが、上下のエナメルインダイヤルは”青いビス”で留められていることで美しさを引き立てています。もしこれが一般的なビスだった場合、印象は大きく変わってしまうことでしょう。
そして、文字盤全体に美しく焼き上げられたエナメルダイアルはまさに工芸品としかいえません。
ガラス質のエナメル粉末を文字盤の上に載せ、800度近くの熱で焼成を繰り返し作り上げられる「パープルカラー」はパイヨンエナメルダイヤルと呼ばれ、唯一無二の美しさを誇ります。
このパイヨンエナメルダイヤルは陶器とも呼べるようなツヤがあり、高貴な存在感を放つのです。
加えて金箔や筆を使い丁寧に描かれた美しい柄も魅力です。アクセントとなっている赤い点や白い花が上品な印象を与えます。
ケースバックはシースルーバックとなっており、アンクルの動きまで楽しむことができます。
ムーブメントには22kゴールドローターを搭載した自動巻きムーブメントCal.2663を搭載。28,800振動・68時間パワーリザーブのスペックを誇ります。ローターには[J:D]のロゴが刻まれており、機械部分はテンプやアンクルの美しい動きを眺めることが可能な設計です。
装着してみました!
定価4,935,600円、世界に8本しかない”グラン・セコンド パイヨン J003034215″を実際に腕に装着してみました!
グラン・セコンド パイヨン J003034215のケース径は43.0mm。見た目よりも大きなサイズ感となっています。重量は115gと程よい重量感。時計の美しさを引き立てるホワイトゴールドケースが採用されていることも魅力です。
スーツに合わせても意外とキッチリ決まります。ブラックやグレーのスーツとは相性が良さそうです。
まとめ
美しく焼かれたエナメルダイヤルに精密に動くオートマタギミック。天才時計技師ジャケ・ドローのDNAは長い年月を経て現代に復活しました。新生ジャケ・ドローは本格的なアトリエが建設されてからは僅か7年しか経過していませんが、拘りぬいた最高級の時計を世に送り出しています。
雲上時計ブランドを超える究極の時計を作るブランドとして、これから名を馳せていくことに違いありません。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年