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WEBマガジン, 新美貴之

腕時計の基礎知識・豆知識をまとめてみました。

最終更新日:

私たちの日常に息づき、仕事中もプライベートでも身につけていることの多い腕時計。

毎日身に着けているにもかかわらず、時計のことって意外に知らなかったりしませんか?

正規品、並行輸入品って何が違うの・・・?ムーブメントってどんな種類があるの・・・?ベゼルってどの部分だっけ・・。

今回はそんな方を対象に、東京銀座にある腕時計専門店のスタッフが、腕時計の基礎知識について解説いたします。

 

ロレックス

 
 

1.ムーブメント

時を刻み続ける腕時計の動力源―エンジン―は、腕時計の心臓とも言うべき大変重要な部分です。
大きく分けると機械式(手巻き、自動巻き)とクォーツ式に分かれ、様々なメーカーがこのムーブメントに心血を注いだ開発研究を行ってきました。

 

・手巻き式

機械式ムーブメントの基本型で、リューズを巻くと内部のゼンマイが巻き上げられて、さらにそのゼンマイがほどける力で針が進む。
手巻き式には巻き終わりである「巻き止まり」があり、それ以上リューズを回し続けるとゼンマイが切れてしまうことがある。

 

・自動巻き式

時計の基本構造は手巻きと同じで、内部に半円形の錘(ローター)が組み込まれており錘が回転しゼンマイを巻き上げる。
別名オートマティック(Automatic)とも呼び、時計を装着した腕を振ると、まさに自動的に錘が回転してくれる。

 

・クォーツ

クオーツ式とは、ゼンマイを使わず、電池の動力によって時計を動かします。

 
 

~機械式ムーブメント(手巻き、自動巻き)~

機械式時計は、巻き上げたゼンマイがほどける力を利用した仕組みで、複雑に組み込まれた内部の
歯車などを動かすことによって時間を刻みます。

細かい多くのパーツが大変に入り組んでおり、製造には技術者の熟練した技と魂が必要。
それゆえの高価格帯ではありますが、そこには腕時計ならではのロマンが内在。
現在多くの「高級腕時計」は機械式のムーブメントが採用され、ステータスシンボルとして認知されています。

ムーブメント

機械式時計の精度(時刻の正しさ)はテンプと呼ばれる部分の振動数によって決まります。
振動数が高ければ高いほど比例して精度は高くなりますが、様々なメーカーがこの精度向上について今なお研究を続けています。

機械式時計は日に数秒から数十秒ずれてしまうことが一般的。

対して後述するクォーツ式ムーブメントは、機械式時計よりはるかに高い精度を実現します。
さらに機械式時計と違って安価で大量生産が可能。

機械式時計はその機構を腕時計に内蔵するまでに、職人の手技に依るところが大きいです。
そのため、生産に時間がかかる、価格が高騰しがちである、というデメリットがありました。
また、多くのパーツが精密に組み立てられたうえで成り立っているため、定期的な内部の清掃や部品交換、
点検など(オーバーホール)維持コストがかかることも日用品としてはネックとなります。

しかし、機械式時計は20年30年と長く使えるものが多いです。長く愛用することで愛着が深まっていくということは機械式時計を使用していく中での醍醐味です。

機械式時計は工芸品と言いますが、まさにその通りだと思います。

時計技師が丹念に組み上げ、作り上げた時計。単なる時間を知るだけの道具の枠を超えて、人生にずっと寄り添ってくれるパートナーと言えるのではないでしょうか。

 
 

・スプリングドライブ

スプリングドライブとは、セイコーの上位ブランド、グランドセイコーが1999年に搭載した全く新しいムーブメントです。
ベースはゼンマイを使用した機械式でありながら、クオーツ並みの精度を誇る、という革新的なシステム。

巻き上げられたゼンマイは針を動かすと同時に発電し、水晶振動子を備えた調速機構を動作させます。
そのため、クオーツ時計とは違い電池が不要。
また、精度を司るパーツにテンプやガンギ車が使われている機械式に対して、誤差の少ない水晶振動子―クオーツ―を採用したことも機械式の問題点を克服する大きな鍵でした。

まさに自動巻きの味わい深さとクォーツ式の精度と、いいとこどりを叶えた夢のようなムーブメントです。

 

GSSD

 
 
 

2.腕時計各部位の名称

腕時計各部位名称

 

ケース

…ムーブメントとダイヤルを納める器のこと。
一般的にはステンレススチール製のものが多いが、金やプラチナなど、近年は様々な素材が使用される。

ダイアル

…文字盤、顔、などとも呼ばれる。時刻の表示板。
素材や色、装飾を組み合わせ個性を出すことが多い。

インデックス

…ダイアル上に記された時刻を示す数字や印。視認性(見やすさ)はここに依るものが大きい。

リューズ(竜頭)

…ゼンマイの巻き上げや時刻、日付の調整に使うつまみ。

ガラス

…風防とも言う。ダイアルを保護するガラス部分。サファイヤクリスタル、プラスチック製などがある。

ベゼル

…ケースの一部で、ダイアルや外側にあるガラスを固定する円状パーツ。
ダイヤやゴールドをあしらったデザイン性の高いものや、タキメーター(時速や平均速度などを測定するためのメモリ)
が記されたものなど用途によって様々。

ラグ

…バンドと本体をつなぐ部分。ケースの上下についていることが多い。

バンド

…金属のものはブレスレット、それ以外のものはストラップと呼ばれる。
ラグから伸びたブレスレットやベルトを、固定するための留め金をバックルという。

ムーブメント

…腕時計を動かす動力源のこと。大きく分けると機械式とクォーツ式とがある。
ケースの内部にあり目で見ることはできないが、機械式では裏やダイアルの一部がスケルトンになっていて、
その動きを覗くことができるものもある。

 

 

3.様々な特殊機能

今や時刻を告げるだけに留まらない腕時計。
ダイアル上では時代やニーズに適った様々な世界が展開しています。

奥深い歴史を持つ腕時計は、まだまだ進化・深化の歩みを止めません。
その一部をここでご紹介いたします。

クロノグラフ

デイトナ

クロノグラフモデルの王者・デイトナ
ストップウォッチ機能のことを、腕時計ではクロノグラフと言います。

30分積算計

…クロノグラフでの計測開始と同時に、経過時間を30分単位で積算表示するインダイアル。

スタート・ストップボタン・リセットボタン

…基本的にはスタート→ストップ→リセットボタンを押す、という一連の動作を行う。

12時間計

…クロノグラフでの計測開始と同時に、経過時間を12時間単位で積算表示するインダイアル。

スモールセコンド

…60秒計。クロノグラフではセンターではなくインダイヤルで表示することが多い。

タキメーター

…ダイアル外周やベゼルに細かく記されたメモリのこと。クロノグラフ秒針をスタートさせて、
時速や平均速度などを測定する。

~代表モデル ロレックス コスモグラフ デイトナ~

ロレックスデイトナ

非常に人気の高いモデルで、中古でも高価格で有名です。

 

GMT機能

GMTとは、Greenwich Mean Time―グリニッジ標準時―の略であり、かつての国際的な基準時刻および
世界各地域の標準時の基準でした。
転じて時計産業では、24時間針(GMT針)と24時間目盛によって、世界標準時をはじめ、複数のエリア
の時間帯を同時に表示できる機能のことを言います。

グローバル化が進む現在のビジネスマンに非常に人気の高い機能です。

操作方法は様々で、1つのリューズで現在の時間帯(ホームタイム)と第2時間帯(ローカルタイム)を
操作するものが一般的。

その他にも、回転ベゼルで第3時間帯を表示するもの、インダイヤルで第2時間帯を表示するもの、
さらにはこれら2つの時計を合体させた機能を持つ複合タイプなどもあります。

 

~代表モデル ロレックス GMTマスター~

GMTマスターⅡ

 

ムーンフェイズ

ムーンフェイズとは、ダイアル上に設けられた月齢表示機能。
回転ディスクを利用し、実際に月が満ち欠けしていく様子がわかります。

現在では装飾の一環として使用されますが、船が主な交通手段だった20世紀初頭までは、潮の満ち引き
などを知る為の重要な機能でした。

 

~代表モデル オメガ スピードマスター ムーンフェイズ~

オメガムーンフェイズ

出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/

 
 

パワーリザーブ

機械式ムーブメントにおいて、完全にゼンマイを巻き上げた状態からゼンマイが解けるまでの時間を
パワーリザーブと呼びます。
このパワーリザーブをダイアル上に表示し、ゼンマイの巻き上げ残量がわかる機能があります。

ローターの回転でゼンマイが巻き上がる自動巻き式では手巻きに比べてパワー残量がわかりにくいため、
この機能が必要になってきます。

 
 

ワールドタイム

ワールドタイムとは、、世界の主要都市の時刻を把握できる表示機構のこと。
インダイアルやダイアル外周などに都市名が記され、ホームタイムとそれぞれの都市の時刻を
一つのダイアル上で把握することができます。サマータイムに対応したモデルも多いです。

 

~代表モデル パテックフィリップ ワールドタイム~

パテックワールドタイム

 
 

年次カレンダー(アニュアルカレンダー)

年次カレンダーは1996年にパテックフィリップが特許を取得した画期的な機構で、月末が30日(小)と
31日(大)の月を自動的に判別することができます。

従来の日付だけを表示するシンプルタイプのカレンダーは、31日以外で終わる月の末日に手動で日付調整が必要でした。
しかしこの年次カレンダーでは自動的に小の月と大の月を把握、手動調整の必要がない実用性に富んだ複雑機能です。

2月の末日は判別しないため、1年に一度3月1日にのみ日付を調整する必要があります。

 

~代表モデル ランゲ&ゾーネ サクソニア アニュアルカレンダー~

ランゲ&ゾーネアニュアルカレンダー

 
 

永久カレンダー(パーペチュアルカレンダー)

パテックフィリップ 永久カレンダー

世界中で最も複雑であるというわれる機構のうちの一つ、永久カレンダー(パーペチュアルカレンダー)。
非常に複雑な構造で、使用されるパーツも多いため、超高級時計にカテゴライズされることがほとんど。

永久カレンダーとは、時刻の他に日付や曜日、月等の暦を確認することができ、大の月・小の月を自動的に
修正して表示することができるカレンダー表示機構です。

暦の上で1年は365.425日として計算しており、4年に一度その誤差を修正するために閏年が制定されていますが、
永久カレンダーはその閏年も調整するこができます。
1ヶ月の日数を30日、31日、28日、29日と月に合わせて表示することができる為、手動の修正が必要ありません。

最初に搭載されたのは懐中時計でしたが、腕時計の需要が上がるにつれて、永久カレンダー機構を腕時計に搭載する
為の開発が進められました。
1925年、史上初のパーペチュアルカレンダー搭載腕時計がパテックフィリップによって製作。

永久カレンダーは、止めてしまい何年も使用していないと、その年が閏年か調べた上でカレンダーを
調整しなければいけないことや、最高級で非常に高額のものが多いです。

そこで1996年に同社は前述の年次カレンダーを開発。
システムを簡素化して複雑機能をより実用的にすることに成功しました。

~代表モデル パテックフィリップ コンプリケーション パーペチュアルカレンダー~

パテック

 
 

4.正規品、並行輸入品

高級腕時計を正規店以外で買う時に気になるのが「どういった商品をどのように仕入れた」ではないでしょうか。

ここでは腕時計の仕入れの方法についてご説明したいと思います。

・正規輸入
・並行輸入

正規輸入とは、いわゆる「代理店ルート」のようなもので、海外メーカー(ロレックス、オメガなど)が
日本の正規代理店に品物を卸し、そこから日本の小売店や販売店を通して国内で流通していくものです。

対して並行輸入とは、日本の正規代理店は通らず、海外の直営店や正規代理店に卸された品物をメーカー
とは関係のない会社・人間が独自に買い付け国内に持ち込み流通させることです。

並行輸入のメリットは、何といってもその価格にあります。
正規代理店ではブランドイメージや値崩れ防止のために定価に近い価格で売られることがほとんどです。
しかし、海外での直接買い付けであればその縛りは少なく、為替変動で安くなることもあります。

また、もう一つ大きなメリットとして、日本では未発売の商品を仕入れることができます。

デメリットとしては、取扱説明書や保証書に日本語表記がない場合があること。
また、日本の正規代理店を通っていないため、返品が受け付けられなかったり、日本の正規販売店によってアフターフォローの可否ややり方に違いがあることです。

 
 

Column①:マニュファクチュールとエタブリスールについて

マニュファクチュールとは、「自社一貫生産」という意味です。

セイコー

 

自社一貫には様々な定義がありますが、ケースはもちろんネジの一本いっぽんに至るまでを製造している、というよりも、デザインや搭載する機能だけでなくムーブメントを自社で製造している、という意味で使われることが多いです。
対してエタブリスールとは、ムーブメントや部品を他社から仕入れて自社で組み立てを行う、という方式です。
スイスでは珍しくない分業スタイルです。

マニュファクチュールはその社オリジナルの製造を可能にします。
近年では、マニュファクチュールを採用する腕時計メーカーが増えつつあります。
日本のセイコーやシチズンなどは、腕時計メーカーとしての歴史は比較的浅いですが、
世界的にはまだまだ珍しいマニュファクチュラーとして有名です。

エタブリスールは、オリジナルの製造は難しいですが、分業のスタイルを採っているため
効率的で価格を抑えた生産を可能にします。
専用メーカーに依頼をする有名ブランドも少なくないため、決して精度や信頼性で劣ることはありません。

マニュファクチュールを付加価値として見る向きは多いですが、マニュファクチュールにはマニュファク
チュールの、エタブリスールにはエタブリスールの利点があります。

 

Column②:ロレックス三大機構について

腕時計にあまり興味がない方でも、ロレックスという名前は聞いたことがあると思います。
もし腕時計に現代史があるとしたら、その時代を牽引し続けてきたのはまさにロレックスと言えるでしょう。

腕時計の各部位に行われた、革新的な技術開発。
それがロレックス三大機構です。

①削りだされた金属塊とねじ込み式リューズにより、非常に高い防水・防塵性・そして―まるで牡蠣のような
硬度を実現し特許を取得した「オイスターケース」。
②半円形のローターが360度回転することで自動的にゼンマイが巻き上がるムーブメント「パーペチュアル」。
③0時ちょうどに日付表示がカシャっと瞬時に切り替わる「デイトジャスト」。

これらの発明は1920年代から1940年代にかけて行われ、今なお多くの腕時計に引き継がれている技術です。

とりわけオイスターケースは、スポーツやプロフェッショナル仕様の腕時計開発に先鞭をつける形となりました。

ロレックスは、現在でも様々な機構を発表しています。
ロレックスの成功の礎は、今なお連綿と築き上げられていっています。

ロレックス

 

終わりに

完成までに多くの人間の技術と情熱が注がれる腕時計の世界は、奥深く一言では言い表せないものがあります。

手のひらに収まるようなあの小さな世界への入り口に立つ、興味の一歩になれば幸いです。

当記事の監修者

新美貴之(にいみ たかゆき)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長

1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年


 

 

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