「ヴァシュロンコンスタンタンのメティエ・ダールって何がすごいの?」
「メティエ・ダールの魅力について知りたい」
約3世紀もの歴史を持つヴァシュロンコンスタンタン。
パテックフィリップ、オーデマピゲと並んで世界三大腕時計に名を連ねる時計界の大御所です。
オーヴァーシーズやパトリモニーが有名ですが、メティエ・ダールという、ヴァシュロンきっての傑作コレクションをご存じでしょうか。
質実剛健な時計製造技術と、工芸品のような美しさが共存するメティエ・ダールの魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
メティエ・ダールは美しさと、腕時計本来の価値を極限まで高めたコレクションです。
この記事ではメティエ・ダールの魅力について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
人気モデルの紹介もしますので、ヴァシュロンコンスタンタンに興味がある方はぜひ参考にしてください。
目次
メティエ・ダールシリーズとは
1755年創業と、約3世紀の歴史を持つ、正真正銘世界最古の時計ブランド・ヴァシュロンコンスタンタン。
時計愛好家で「マルタ十字」のロゴに憧れを持つ方は少なくないと思います。
流れるようなラインとエッジが共存した、大人のスポーツウォッチ・オーヴァーシーズ。
正統派クラシカルのパトリモニー。
この二つのシリーズが主力商品として有名ですね。
左:オーヴァーシーズ 49150/000A-9745/パトリモニー 86060/000R-9640
職人気質な趣を持つヴァシュロンコンスタンタンは、コンプリケーションを始めムーブメントに定評のあるブランドです。
その連綿と続いてきた時計製造技法を芸術に昇華したシリーズが、メティエ・ダールなのです。
メティエ・ダールとは、フランス語で「職人技の芸術」という意味。
シャネルのアパレルやブランパンのハイエンドウォッチでも同名のコレクションがあるほど、職人たちにとっては栄えある称号です。
出典:https://www.vacheron-constantin.com/en/home.html
メティエ・ダールではその芸術性から、一本いっぽんにコンセプトのようなものが存在します。
例えばアジアや日本などをモチーフにしたもの、テーラーや著名な陶芸家などその道の巨匠とコラボレーションしたもの・・・
一本の時計でまるで一つの物語を読んでいるかのような気分にさせられるのは、ヴァシュロンコンスタンタンならではと言えます。
メティエ・ダールに使われる技法
ヴァシュロンコンスタンタンはメティエ・ダールを守り抜くことを、”拘り”ではなく「義務」と表現しています。
その言葉通り、大量生産のため機械化され失われつつある技法を連綿と受け継ぐ、ものづくりの歴史に非常に意義あるシリーズと言えます。
①彫刻(エングレービング)
出典:https://www.vacheron-constantin.com/en/home.html
時計の装飾で非常に一般的なエングレービング。
近年機械化著しい装飾技法ですが、メディエ・ダールでは職人が手作業によって彫り込んでいます。
ただの絵と違い、モチーフを彫ることにより立体感が生み出され、唯一無二の独創性や高級感を持つことが特徴。
ケースやダイアルはもちろん、ヴァシュロンコンスタンタンの「魅せるためのムーブメント」には細かなパーツにまでエングレービングが施されており、重みある芸術品が刻み込まれていきます。
②ギョーシェ
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エングレービング同様大量生産化が進む分野ですが、18世紀の天才時計師ブレゲに端を発する、由緒正しい時計装飾技法です。
ギョーシェは繊細かつ規則的な凹凸を専用の機械によってダイアル上にあしらう手法で、独特の質感や美しさを加えるだけでなく、光の反射を抑えてダイアルの視認性を高めるという役割をも持つもの。
凹凸のモチーフは多彩で、クル・ド・パリ、ヴァーグ、ソレイユなど様々。
ギョーシェがあしらわれた腕時計は非常に上品で端正な面持ちとなり、メディエ・ダールには欠かせない手法と言えます。
③エナメル
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3500年を超える歴史を持ち、時計だけでなく様々な美術品にあしらわれる工芸手法・エナメル加工。
金属板の表面に釉薬(ゆうやく)を塗り高温で焼き上げる技法ですが、その難易度の高さはトップクラスと言われており、熟練した職人たちでしか成しえない技術です。
なんと言っても質感が見事で、陶器のようなツヤと美術工芸品のような美しさを腕時計に添えます。
メティエ・ダールではクロワゾネやシャンルベ、グランフーエナメルなど、伝統的なエナメル技法を取り入れており、他ブランドとは一線を画すダイアルデザインを打ち出しています。
④ジェムセッター
ダイヤモンドウォッチというとハリーウィンストンやヴァンクリーフ&アーペルなど、宝飾ブランドの名前がまず挙がるかもしれません。
実は、18世紀より時計製造を手掛けるヴァシュロンコンスタンタンは、その当時の瀟洒な社交界でアクセサリーの役割を果たすジュエリーポケットウォッチにかけては現在のどのブランドにも先駆けて先鞭をつけていると言えます。
ヴァシュロンコンスタンタンは熟練のジェムセット職人が貴石を見極め、各モデルでダイヤモンドを最も美しく見せるセッティング方法を採用します。
パヴェダイヤやブリリアントカットダイヤ・・・
一つひとつのダイヤモンドを細心の注意をはらって扱うには、長い経験と豊富な知識が必要なことは言うまでもありません。
⑤時計製造
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メティエ・ダールの、そしてヴァシュロンコンスタンタンの全ての時計の神髄。
どんなに装飾美しいものであっても、時計本来の機能性が損なわれては本末転倒となってしまいます。
ヴァシュロンコンスタンタンは世界最古のブランドとして伝統技法を守り続けていますが、最先端のノウハウを取り入れ時計を洗練させることにも余念がありません。
非常に厳格な時計品質規格・ジュネーブシールの獲得に意欲的で、ほとんどのモデルが認定機。
高精度・高性能はもちろんのこと、美しさも筋金入り。
手のひらの大きさに満たない世界で繰り広げられる精密・精緻な動きは、いつまででも眺めていたくなるものです。
メティエ・ダールの美しいモデル
メティエ・ダールは限定やアニバーサリーモデルではなく、例年奥深いコンセプトのもと、魅力的な新作が発表されています。
ここでは、そのいくつかのモデルをご紹介させていただきます!
メティエ・ダール・レ・アエロスティエ SIHH2018新作
出典:https://www.vacheron-constantin.com/en/home.html
SIHH2018(ジュネーブサロン)で発表された、メティエ・ダールの新作5モデル。
コンセプトは「気球乗り―アエロスティエ―」。
18世紀後半、フランスで1783年~1785年の間に飛ばされた世界初の熱気球。
空への憧れ、畏れ、人々の喝采・・・
そんな当時の夢と希望が込められた作品です。
ダイアル中央にはパウンス装飾と呼ばれるエングレービングでゴールドの気球が描かれており、これは、原画にはない立体感を出しながらも原画ならではの色彩感を仕上げによって伝えなくてはいけないという、非常に高難度の技法。
一つの気球彫刻におよそ3週間にもわたる手作業が必要だったと言います。
さらに、プリカジュール・エナメルと呼ばれるやはり高度なエナメル技法によってスペクタクルな大空が表現されており、まさに歴史的偉業を時計製造における歴史的偉業で再現した傑作。
もちろんムーブメントも美しく高性能なジュネーブシール取得の自社製自動巻きキャリバー2460 G4/1を搭載、パワーリザーブ約40時間。
2018年4月以降にブティックのみ各5本生産限定で販売予定です。
メティエ・ダール・メカニカル・アジュレ
2針のシンプルなモデルでありながら、その針さえスケルトンで装飾され、ジュネーブシール取得の自社製手巻き式キャリバー4400 SQが垣間見える一本。
スケルトンダイアルには、実は超絶エングレービングが施されており、精密・精緻な世界観を如実に表しています。
さらにその周囲には、グランフーエナメル装飾もまたあしらわれ、メティ・ダールを象徴するかのような完成した傑作と言えます。
パワーリザーブ65時間。30m防水。
メティエ・ダール・レディ・キャラ
出典:https://www.vacheron-constantin.com/en/home.html
メティエ・ダールの中でもロングセラーとなりつつあるキャラ。
キング、ロードもありますが、こちらはレディースのレディ・キャラです。
キャラは大振りのダイヤモンドがこれでもかとあしらわれていますが、最高級のクオリティのダイヤモンドがもつ輝きを、最大限引き出すためにデザインされており、極上のハイエンドジュエリーウォッチに仕上がりました。
メティエ・ダールの、そしてヴァシュロンコンスタンタンの長きに渡る歴史の集大成とも言えるモデルです。
メティエ・ダール・シャガール・エ・ロペラ
出典:https://www.vacheron-constantin.com/en/home.html
パリ国立オペラ座の天井に描かれているマルク・シャガールの絵画を、グランフーエナメル細工によってダイアル上に再構築・再現した美しい芸術モデル。
シャガールが表現した柔和で、でもどこか幻想的な世界観が見事に表現されており、ヴァシュロンコンスタンタン自身も「過去1世紀の間に製造された腕時計の中でもまれに見る傑作」と自負するほど。
メティエ・ダールは一つひとつ全く異なるデザインながら、必ず見る人を魅了してくるという、まさに絵画に共通するすばらしさを有します。
メティエ・ダール・エレガンス・サルトリアル
出典:https://www.vacheron-constantin.com/en/home.html
イタリア語で仕立て職人という意味を持つサルトリアル。
その卓越した技法を連綿と受け継いできた老舗生地メーカー「ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(Vitale Barberis Canonico)」とのコラボレーションモデルです。2016年新作。
ダイアルには紳士服で使用される様々な生地をモチーフにしており、さらにその織り模様はギョーシェ彫りの手法を用いて手作業で製造、さらにグラン・フー・エナメルによってコーティングされたことにより、一層の高級感が醸し出されています。
サルトリアルと時計製造の伝統手法を見事融合した傑作として、今なお評価の高い銘品と言えます。
ムーブメントはジュネーブシール取得の自社製手巻きキャリバー1400を搭載、パワーリザーブ約40時間。
ホワイトゴールドおよびピンクゴールド製ケースのラインナップ。30m防水。
まとめ
メインストリームではないものの、確実な実力と美しさ、そして腕時計本来の価値を極限まで高めたヴァシュロンコンスタンタンの傑作シリーズ「メティエ・ダール」。
もちろんその工芸品のような外観や高い作り込みも驚嘆に値するものですが、機械化の波に流されず、職人たちが誠実に守り続けてきた伝統技法を受け継ぐという、歴史的な意義深さも決して少なくありません。
腕時計としても美術工芸品としても至高の一本。メディエ・ダールの製造は最古のブランドだからできる美技と言えるでしょう。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年