高級時計には一定の品質規格をクリアした時計にだけ与えられる称号があり、最も有名どころでは「クロノメーター」が挙げられます。
例えばロレックスには文字盤にクロノメーター「chronometre」と表示されているモデルがありますが、これはスイス政府が公認したクロノメーター規格をパスした証であり、15日にも及ぶ厳しい品質テストをすべてクリアした証明です。
現在は電池式クォーツや電波・GPS時計などが普及しており、時計の精度は高いのが当然とされていますが、ゼンマイで動く伝統的な機械式時計にとっては、その正確性を維持することに非常に高い技術とコストを要します。
しかし、だからこそ機械式時計の精度を始めとした品質向上の動きが近年高まっており、クロノメーター以外にも様々な規格が制定されるようになりました。
今回ご紹介するカリテフルリエにもその一つです。
この記事ではカリテフルリエが一体どのような品質規格なのかを詳しくご説明いたします。
出典:https://www.facebook.com/Chopard/
目次
カリテフルリエってどんな規格なの?
カリテフルリエは2001年に制定された時計品質の規格です。
時計製造が盛んなフルリエに工房を置くショパールやパルミジャーニ・フルリエ、ボヴェなどが共同プロジェクトによって規格を立ち上げました。
この規格は数ある時計の規格において最も厳格と言われており、ムーブメントの精度や外装の他、耐久性・耐磁性・耐衝撃など実用面でも高度な性能を求められます。
まさに、ありとあらゆる「時計に備わるべき」課題が突き詰められたテストといえるでしょう。
出典:https://www.chopard.jp/collections
優れた時計であることを証明する規格としてはクロノメーターが有名ですが、カリテフルリエはそれを超える時計品質の最上位の規格です。
つまり、カリテフルリエの称号を得た時計は世界でも屈指の品質を持つ時計であるといえます。
試験内容について
カリテフルリエの試験はスイスのフルリエで行われ、審査機関としてはカリテフルリエ財団(FQF)が行います。
試験対象
- 頭(ブレスレット・クラスプ以外)全てがスイス国内で製造された時計
- クロノメーター規格の認定を取得した時計
カリテフルリエはクロノメーター規格の上位規格となりますので、クロノメーター規格をパスした時計のみがカリテフルリエの試験対象となります。
試験概要
カリテ・フルリエでは、クロノフィアブル・テストと呼ばれる検査が非常に特徴的です。
これは、耐久性や耐磁性、耐衝撃性や耐水性といった時計の「実用性」を査定するものであり、クロノグラフのプッシュボタン操作や回転ベゼルの実用性も同様に測られます。
実用性のテストに合格したら、次はムーブメント及び外装の芸術面を査定します。
クロノメーター規格では芸術面については基準を設けていませんでしたが、カリテフルリエでは装飾や仕上げ、素材に一定の規準が設けられています。
出典:https://www.facebook.com/ParmigianiFleurier/
実用性・芸術面の審査が終わりましたら、最後にフルリテストというシミュレーションマシンにかけられます。
完成した時計の精度を調べるもので、24時間にわたり実際の装着に近い状態を再現のもと、日差0~+5秒以内というクロノメーター規格を上回る正確性が求められます。
これらの試験内容を全てパスした時計のみがカリテフルリエの称号を得るのです。
認定されると
数々の難関をクリアした時計は「カリテフルリエ」の称号を獲得し、認定機にはダイアル上やケースに「QUALITE FLEURIER」の表記がされ、ムーブメントのブリッジには「QF」の刻印が許されます。
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この刻印はカリテフルリエの称号をもつ時計だけに与えられた特権です。
ただの刻印といえばそれまでですが、実はこれ以上ないステータス性の証明だったりもします。
カリテフルリエ認定機について
最後にカリテフルリエの規格を見事にパスした認定機の一部をご紹介いたします。
これらのモデルは間違いなく世界最高品質の時計であり、誰が身に着けても最高級の存在感を放つでしょう。
ショパール L.U.C カリテフルリエ 16/1896
ショパール L.U.C カリテフルリエ 世界限定250本 16/1896
ショパールが「究極の美」を表現するために情熱と技術を注ぐ“L.U.C”コレクション。この16/1896は2007年に発売された限定モデルであり、カリテフルリエ規格を見事にパスしたモダンな3針モデルです。
裏蓋にはカリテ・フルリエ認定の時計だけに許されたQとFの刻印が刻まれています。
パルミジャーニ フルーリエ カルパ カリテフルリエ
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カルパ アルテフルリエは新興ブランド「パルミジャーニフルーリエ」が作り上げた2018年新作モデル。カルパの特徴は珍しいトノー型ケースを採用しながらも最高級の品質と実用性を誇っていることです。
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しずく型のラグ、美しいデルタ針。最高品質のトノー型ムーブメント。
そして人間工学に基づいた緻密なプロポーション。
フルリエのマニュファクチュールの根幹にある、一貫性とクラフツマンシップの精神を忠実に受け継いでいます。
パルミジャーニ フルーリエ トンダ39 カリテフルリエ
出典:https://www.parmigiani.com/en/watch/tonda/tonda-39-qf/PFC222-1602400-HA1431
あまりの複雑さから修復不可能とされてきたブレゲの歴史的銘品の修復に成功した天才独立時計師ミッシェル・パルミジャーニ氏。彼の卓越した技術によってパルミジャーニフルーリエでは多岐に渡るカリテルフリルエ認定機が世に輩出されました。
このトンダ39もカリテフルリエ認定機であり、美しき自動巻きムーブメント「PF331-QF」が搭載されています。
出典:https://www.parmigiani.com/en/watch/tonda/tonda-39-qf/PFC222-1602400-HA1431
素晴らしい職人技によって美しく仕上げられた22金ローターは効率良くエネルギーを伝達させます。
外観の美しさだけでなく、機能性もピカイチです。
ツインバレル構造・デイト表示・パワーリザーブ55時間・クロノメーター精度といったスペックを誇ります。
まとめ
クロノメーター規格・ジュネーブシール規格の遥か上を行く「カリテフルリエ」は、時計界の規格としては世界1位2位を争うのほどの厳密な規格です。
フルリエ地方に工房を持つブランド以外ではあまりお目にかからないため、コアな時計ファンでなければ中々この規格をパスした時計を手にすることはないでしょう。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年