ロレックスの保証書は、何度かの変遷を経てきました。
2000年代以前は紙ギャラ。2006年頃から紙製カード、そして2013年頃から今に至るまで現行品の多くに採用されている、プラスティック製のカードギャラです。
とりわけ現行カードギャラは重宝されており、デイトナ 116520など新旧保証書が購入年代によって入り乱れるモデルなどで、実勢相場に大きな影響を及ぼしている事実もあります。
そんなロレックス・そして弟分にあたるチューダーの保証書が、2020年を以て新しくなったようです!
当初、この新保証書は「海外の一部地域でじょじょに流通」といった程度でしたが、5月末頃から国内市場に出回り始め、当店GINZA RASINにもついに入荷しました!
さらに国内正規店でも、2020年7月以降に購入したモデルについては、新仕様の保証書が付属することに!
そうなってくると気になるのが、旧ギャラ・新ギャラによって相場は変わるのか?ということですね!
この記事では、新しくなったロレックスの保証書についてご紹介するとともに、今後のロレックス相場について考察してみました!
目次
ロレックスの新保証書の情報について
ご存知の通り、ロレックスは創業以来徹底した秘密主義を貫いています。
そのため付属品の仕様変更などはひっそりと行われることがほとんどで、「〇〇年頃に変更」程度の情報量となってしまいます。
しかしながら今はSNSが発達した時代。ご購入された方やロレックスファンなどからのインターネット上の報告で、比較的早い段階から仕様変更をキャッチすることが可能になってきました。
直近では、文字盤6時位置のクラウンマークの有無などが挙げられますね。
そんな投稿の一つに、気になる情報がありました。世界中から屈指のロレックスファンが集うRolex Forumnの一スレッドです。時期は、2020年4月初頭です。
デイトナ 116515LNをご購入されたと思しきユーザーが、見慣れないカードギャラを提示していたのでした。
それがこちらです。
出典:https://www.rolexforums.com/
従来のカードギャラは、表側にリファレンスとシリアルが表記されます。
そして裏側に販売店・オーナー名・購入日および国番号が記されるようになっております。
↑現在広く採用されているロレックス保証書
では、新保証書はどのような仕様となっているのでしょうか?
ロレックスの新保証書の仕様
こちらが、ロレックスが2020年より提供を開始した、新しい保証書です。かなり、従来の保証書と様子が違いますね。
なお、当店にご来店頂いたお客様よりお見せ頂き、写真を撮らせて頂きました。
さらに裏側は、さらに既存の保証書と大きく異なることが見てとれます。
「リファレンス」「シリアル」「購入日(こちらでは販売店のスタンプが押印されているようです)」の記入欄が確認できます。
ただ、既存のギャラにある「購入者名」「国番号」「販売店名」の記入欄がなくなっていますね。
恐らく、今後はシリアル等で顧客管理するのかもしれませんね。既にオーデマピゲ等、購入者名の記載が必要のないギャラが増えつつあります。もっとも、オーナー自身の名前がプリントされる、という正規店ならではのだいご味は低減してしまいそうですが・・・
しかしながら、新ギャラに面白いギミックが仕掛けられています。これは、ロレックスの過去のどの保証書にもなかった仕様。
どういたものかと言うと、スマートフォンを保証書にかざすと、NFCタグ(近距離無線通信)によってロレックスのホームページに遷移するのです!
ちなみにブラックライトを当てると、「ROLEXROLEX・・・」という文字列、すなわちコンピュータ柄が浮かび上がってくるところは、既存ギャラから引き継がれていました。お馴染み、ロレックスの偽造防止策ですね。
なお、冒頭でも述べたように、7月以降、新保証書が国内正規店購入個体にも付属されるようになりました。
今後流通が増えていけば、私たちの手元にも入りやすくなるでしょう。
また情報が入ったり、入荷が始まった際に、改めて詳報をお伝えしたいと思います!
チューダーの新保証書が入荷しました!
ロレックスの弟分・チューダーも、基本的にはロレックスと方針を同じくします。そのため、保証書仕様も新しくしていました。
そして、2020年6月12日の当店入荷のブラックベイに、新保証書が付属しておりましたので、画像とともにご紹介いたします。
表側はシックな黒です。
これまで赤×白のバイカラーに、両端だけが黒で彩られていましたが、ガラッと印象が変わりました。また、従来品はツヤツヤとした質感でしたが、新保証書ではツヤ消しされてよりスタイリッシュに生まれ変わっています。
気になる裏面ですが、前項でご紹介したロレックス新保証書同様、「リファレンス」「シリアル」「購入日」の記入欄がありますが、やはり既存ギャラの「購入者名」「国番号」「販売店名」は取り払われたようです。
スッキリとシンプルになりました。
サイドからはこちら。淵部分が赤く、やはりスタイリッシュな印象です。
思いのほかカッコイイ新保証書。ただ、前項で述べたようにオーナーの名前は入りませんので、こだわりのない方や並行輸入店でご購入頂く方はあまり気になりませんが、正規店で買う旨味が一つ減ってしまったようにも思います。
新保証書はロレックス・チューダーの実勢相場に影響を与えるのか?
特にロレックスに言えることですが、新仕様が出てきた時、特に気になるのが「実勢相場への影響」ではないでしょうか。
例えば先ほど軽く触れた「ノークラウン」。
ロレックスは2018年頃から6時位置の「SWISS MADE」の間に、クラウン(王冠)マークを施すマイナーチェンジを行いました。
そのため、2018年より前にリリースされていた個体は同リファレンス内に「ノークラウン」「クラウン有」が並存していることになりますが、とりわけシードゥエラー 126600の発表年は2017年。
つまり、ノークラウン個体がわずか一年ほどの製造と言うことで、「マークIダイアル」として稀少性が見出され始めているのです。
左:ノークラウン / 右:クラウン有
では、新保証書についても、同じことが言えるのでしょうか。
今後のロレックス相場を予測することは誰にもできませんが、新保証書の出回り始めは相場に多少なりとも影響があると考えられます。
一方で新保証書が十分出回った後、「保証書の仕様」だけで実勢相場に大幅な影響を与える、ということは考えづらいでしょう。
例えば国内入荷がまだちらほらの現在、「新しい保証書」への注目度が高まることで、より新しい個体への需要が集中する、ということは考えられます。同一モデルがあった時、「ちょっと高くても、せっかくだから新しい保証書の方を・・・」となるのは自然です。買取相場にも、多少は影響が出てくるでしょう。
また、ロレックス新品が正規店でも並行輸入店でも購入不可能なほど品薄になってしまっている今、二次流通市場では新しい個体ほど高値となります。こういった背景から、相対的に新保証書付属モデルが価格を上げる、ということは考えられます。
ただ、今後一年・二年が経過していくうちに、「新保証書が付属している」というだけで価格が何万も変わる、というのは考えづらいかな、と思います。
事実、先の保証書の仕様変更(2014年頃)によって、新旧どちらの保証書も付属するデイトナ 116520の相場が、その仕様の新旧で大きく変わるか、というと一概には言えません(116520は最終品番の相場が高く、製造年が若い個体に需要が集中しているため結果的に新ギャラ付属モデルが相場面で上昇している、という現象はありますが)。
もっとも、何が起きるかわからないロレックス相場。
今後、新保証書が出回るにつれて、2018年や2019年にリリースされたばかりのモデルは旧型保証書付属個体への稀少性がにわかに高まったり、2020年・2021年に生産終了になったモデルが、新保証書付属の個体が稀少だと言われたりする時が来るのかもしれません。
今後もロレックスの相場動向から目が離せません!
まとめ
ロレックスの新仕様の保証書についてご紹介いたしました。
文中でもご紹介したように、新保証書の出回り始めは実勢相場が変わる可能性があります。また、今後もあるいは稀少性によって大きな影響を与えるかもしれません。
つまり、現行品の全モデルが、「新旧どちらの保証書がついているかどうか」で売却時に価格が変わるかもしれない、ということ!
もちろん今の段階ではどちらが上とか下とか、あるいは本当に実勢相場に大きな影響が出るのかは明言できませんが、またしてもロレックスから目が離せなくなったことは間違いありませんね。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年