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WEBマガジン, 田中拓郎, セイコー

セイコーミュージアム 銀座が移転オープン!さっそく行ってみました!

最終更新日:

「銀座に移転オープンしたセイコーミュージアムはどんなところ?」
「セイコーミュージアム銀座の魅力について知りたい」

2020年8月19日、セイコーミュージアム銀座がオープンしました!

これまで墨田区向島に位置していた同施設ですが、創業者である服部金太郎生誕160周年にあたる2020年、東京中央区銀座へ移転。

近年のセイコーブランドの躍進と併せて、オープンへの注目度はきわめて高まっていました。

そんなセイコーミュージアム銀座の魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。

展示は時計愛好家やセイコーファンにお勧めなのは勿論、近現代の国内産業のあゆみにご関心がある方も楽しめるものとなっています。

この記事ではセイコーミュージアム銀座の魅力を、GINZA RASINスタッフ監修のもとレポートします。

階数ごとに詳しく紹介しますので、セイコーウォッチに興味がある方はぜひ参考にしてください。

 

セイコーミュージアム銀座 概要

住所:東京都中央区銀座4丁目3-13セイコー並木通りビル
営業時間:10:30~18:00(三部制・詳細は後述)
入館料:なし
休刊日:月曜・年末年始
最寄り駅:東京メトロ「銀座」「銀座一丁目」,JR「有楽町」等

 

セイコーミュージアム銀座は、「時計通り」とも称される銀座の並木通りに位置します。

東京メトロの銀座駅やJR有楽町駅からだいたい徒歩7~8分と、好立地。入館料も無料とあって、立ち寄りやすいのではないでしょうか。

 

エントランスでは、まず「RONDEAU LA TOUR(ロンド・ラ・トゥール)」がお出迎え。この高さ約5.8mの屋外用大型振り子時計はからくり式となっており、毎正時8秒前から人形が動き出し、正時にメロディが流れる仕掛けとなっています。

セイコー自身が「新しいランドマーク」と称するように、現地では館内に入らずとも足を止めてロンド・ラ・トゥールを眺める通行人の姿が目立ちました。

ちなみに外壁の絵はウォッチとクロックのパーツで描いた樹木とか!隠れアイテムもあるとのこと。

 

そんなセイコーミュージアム銀座の建物は地下1階から5階までの6フロアから構成されます。

さらに、それぞれでコンセプトを有し、それに合わせた展示物を楽しめることが特徴です。
各階のコンセプトは、以下の通りとなっております。

 

地下1階:極限の時間
・・・アスリート,探検家等、極限に挑む人々にまつわるセイコー技術が展示。オリンピックでも活躍している、セイコー計時技術も楽しめます。

1階:はじまりの時間
・・・受付およびミュージアムショップ

2階:常に時代の一歩先を行く
・・・セイコー創業者・服部金太郎の軌跡とセイコー創業史にまつわる品々を展示。

3階:自然が伝える時間から人がつくる時間
・・・有史以来の時およびその歴史,和時計にまつわる品々を展示。

4階:精巧な時間
・・・セイコー史を彩る製品群を展示。

5階:いろいろな時間
・・・1970年代~現在に至るまでの製品群を展示。

 

 

なお、館内は1階から2階への移動を除き、エレベーター移動となります。

展示数は約500点。

銀座という土地柄もあるかもしれませんが、そこまで広い敷地ではありません。しかしながら引き出しに展示物が隠されていたりと、スペースを最大限生かし、稀少な展示品の数々が所蔵されています。

 

また、新型コロナウイルス対策の一環で、10:30〜12:30,13:00〜15:00,15:30〜17:30の三部制・事前にホームページからの予約が必須です。

受付時には、事前予約の際に取得した名前・番号が必要です。

 

※当サイトへの写真掲載は許可済です。

※一部展示物・映像は写真撮影禁止となっております。お気を付けください。

 

Column:セイコーミュージアムとは?

1981年、セイコー創業100周年記念事業として設立されたセイコーミュージアム。当時、東京都墨田区向島に位置していた精工舎内に入ることとなりました。

設立当初は「時と時計」に関する資料や標本、そしてその収集や保存・研究のための資料館から出発します。その後2012年にセイコーミュージアムとして一般公開されるように。

その所蔵数は約1万7千点と言われており、さらに全国的にも珍しい時計の博物館とあって、ここでしかお目にかかれない稀少品は少なくありません。

なお、2020年8月に銀座に移転するにあたり、向島のセイコーミュージアムは閉鎖しています。

各階の詳細は、次項よりご確認ください。

 

 

セイコーミュージアム2階:常に時代の一歩先を行く

このフロアから、創業者・服部金太郎の物語が始まります。

服部金太郎はセイコー創業者としても有名ですが、「東洋の時計王」などと称されており、日本時計産業の近代化に大きく貢献した立役者です。

意外に思うかもしれませんが、古来、日本人は時間について非常に無頓着と言われていました。

江戸時代末期のお雇い外国人らは、「なんて悠長なんだ」と嘆いたり驚いたりだったとか。

しかしながら明治維新を迎え、急速に近代化が進む中で、「時間」という概念は日本人の中できわめて重要な立ち位置を占めるようになります。とりわけ鉄道や学校、工場といったインフラ設備が整う中で、時間厳守は倫理的な重要性のみならず、安全管理という性質もはらむようになったのです。

冒頭で「近現代の国内産業のあゆみにご関心がある方も、ぜひ足を運んで頂きたい」と言ったのは、このため。当フロアだけに限った話ではありませんが、日本国内の近代産業がどのようにして正確な時刻を求めていったか、その一端を垣間見ることができるでしょう。

 

※服部金太郎、30歳当時

展示品によると、服部金太郎は明治維新前夜の1860年に誕生しました。11歳で京橋の雑貨問屋に奉公に出た彼は、近所の時計店で時計屋を志します。

「常に時代の一歩先を行く」という精神のもと、1881年、同地に服部時計店を創業。

当初は輸入時計の仕入れを行っていましたが、1892年、ついに悲願の時計製造工場「精工舎」を設立(東京都墨田区)。精巧な時計製造を志してこの名づけが行われています。

 

ちなみにこの精工舎、当時ではまだ珍しかった自社一貫製造(垂直統合方式)を採用していることが特徴です。

ムーブメントやパーツ、外装部品の製造をサードパーティーに任せることなく自社で全て行うことで、自社の理想とする高品質製品を作れることはもちろん、開発スピードが飛躍的に高まり、いっきに精工舎が日本一の時計メーカーへと上り詰める大きな強みとなりました。

 


※ローレル

「良品は必ず需要者の愛顧を得る」を信念に新しい価値や技術を積極的に取り入れていき、ついに1913年、国産初の腕時計「ローレル」を発売するに至りました。

ちなみにこのローレルは他フロアでも楽しむことができ、いかにセイコーの思い入れが強いかがわかりますね。

しかしながら1923年、関東大震災にみまわれて工場は全焼・ショップも燃えてしまい、大損害を受けたとのことです。

※関東大震災で焼けた懐中時計。被害の大きさがわかる

 

この損害により、一度は時計製造を断念するものの、金太郎は復興を決意。

翌3月には掛け時計を出荷できるまでに回復し、ついに1924年12月、SEIKOの名を冠した腕時計を販売しました。

実はこの時までのセイコーウォッチに、SEIKOの名前はありません。各製品ごとのモデル名が文字盤にプリントされていました。

しかしながらSEIKO誕生以降、ブランド名はこちらに統一され、今に愛されるセイコーブランドへと成長していくこととなります。

2階は、そんな服部金太郎の軌跡とセイコーの黎明をお楽しみ頂けるでしょう。

 

 

セイコーミュージアム3階:自然が伝える時間から人がつくる時間

こちらのフロアは、人類の「時と時計の歴史」にスポットが当てられています。

時を知るための歴史は、7000年ほど前のエジプトで誕生したとのこと!

当初は天体や季節の移ろいを活かした時計で、エジプトの日時計が最も古い時計として語られますね。日時計はその名の通り、太陽の光によってつくられる影の長さや角度で一日の時間を判断する道具です。

しかしながらこの日時計、太陽が出ていないと用をなしません。

そこで、紀元前1550年になると、エジプトでは水時計が用いられることとなりました。さらに漏刻や香盤時計、ランプ時計等・・・本当に、様々な形の「時計の黎明」を一挙に見れるのは、セイコーミュージアムならではでしょう。

出典:https://museum.seiko.co.jp/collections/timepieces/collect017/

 

その後時代を下っていくと、時計の精度や信頼性への訴求が始まっていきます。

1300年頃に機械式時計が開発され、人々はより正確な時計へのあゆみを進めていくこととなりました。

 

このフロアは、そんな時計の歴史とともに、日本での時間の概念や和時計が紹介されています。

※左が振り子円グラフ式文字盤掛け時計、その隣は尺時計

日本も室町時代に機械式時計が伝来し、江戸時代には製作されるに至りました。

もっとも、当時の日本では不定時法と呼ばれる時刻制度が用いられており、現代のそれとは時刻表示を異にするものでしたが・・・

 

 

 

 

セイコーミュージアム4階:精巧な時間

このフロアは、主に1970年頃までのセイコー製品が展示されています。

ここは、セイコー好きにはたまらないはずです。前述したローレルはもちろん、エンパイヤ,初代セイコー,マーベル,クラウン,スポーツマチック5,ロードマーベル等・・・ファン垂涎の、レアな品々をご確認頂けるでしょう。

当店でも、セイコーアンティーク品は何度か取り扱ったことがありますが、当時国内産業の最先端を走っていたセイコー製品は、今見ても決して色あせるということがありません。

※初期精工舎の石原町工場で製造された八日巻き掛け時計「四つ丸」

もちろん、腕時計だけではありません。

まだ腕時計が主流でなかった黎明期の稀少な製品群が時系列に並んでおり、どんどん進化していくセイコーの歩みを目の当たりにしました。

※左:タイムキーパー。1895年製の同社初の懐中時計 右:ローレル

 

※左:国産初のレディース時計 中央:視覚障碍者用懐中時計 右:電話交換手用時計

 

 

個人的にとても興味深かったのが、引き出しに展示された当時の広告やカタログ!

 

 

時計業界を震撼させ、セイコーの名を世に広めた世界初クォーツ時計アストロンも目立つ位置に展示されていました!

当時はまだクォーツの量産体制は整っておらず、高級機だったこともあり、とても美しい顔立ちです。繰り返しになりますが、今なお古さは感じさせず、風格のある佇まいをしていますね!

このフロアは国内メーカーとしての地位のみならず、世界に名を広めていくセイコーの軌跡。

ちなみに私はこのフロアに1時間くらい滞在してしまいました!

 

 

セイコーミュージアム5階:いろいろな時間

このフロアは1970年代~現在のセイコー製品が展示されています。

ちなみに中央にはキャラクターの目覚まし時計等も展示されており、子どもが楽しそうに眺めていました。ご家族向けにもお楽しみ頂けるフロアでしょう。

 

現行品も少なくなく、グランドセイコーを始めプレサージュやクレドール,そしてアストロンの歴代製品がずらっと並んだ様は圧巻。

※プレサージュ

 

※クレドール

 

※クレドールに用いられる、彫金を施したムーブメント

 

このフロアは、現在も市場に出回っている時計が少なくないため、ついつい欲しいモデルが出てきてしまいそうですね・・・それだけ、セイコーの見事な製品群が並びます。

 

 

セイコーミュージアム地下1階:極限の時間

最後にご紹介するのは、最下層の「極限の時間」。

2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックは延期となってしまいましたが、実は同大会、セイコーの計時テクノロジーが活用されていることをご存知でしょうか。

計時はスポーツには欠かせない技術。現在はオメガがオリンピックの公式計時を務めていますが、セイコーも過去6度の国内・国外開催五輪でオフィシャルタイムキーパーを担った経験があります。

その「初」は、東京五輪1964。もともと1940年に東京での開催が決定していましたが、第二次世界大戦の影響で中止に。そうして1964年、アジア地域で初めてオリンピックが開催されることとなりましたね。

セイコーは、この大会でこれまでの手動計時から、電子計時を初めて採用。初めて計時や順位に関してノークレーム、ノートラブルで大会を終えた、という記録が残っています。

そんなセイコーの記念すべき計時テクノロジーや、アスリート向けに開発されたスポーツウォッチ、同じく極限に挑む探検家・冒険家のための製品等が並びます。

 

なお、当フロアには雑誌閲覧コーナーとともに、和光時計塔の文字盤レプリカも展示されています。しかも原寸大!

遠目から見るのと全く異なる大迫力となりますので、ぜひその目でお確かめくださいね!

まとめ

銀座に移転オープンした、セイコーミュージアムについてレポートをお届けいたしました!

なお、今回ご紹介している画像はほんの一部。また、実物は、本当に美しく素晴らしい出来栄えです。

繰り返しになりますが、ぜひ足を運んで、ご確認ください!きっと、知れば知るほどセイコーが好きになるはずです。

当記事の監修者

田中拓郎(たなか たくろう)

高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター

当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年

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