時計が好きな方であれば、一度は海外での腕時計の購入を検討したことがあるはずです。
アジア、ヨーロッパ、中東・・・。
いずれの国も日本国内とは相場や品揃えが異なるため、思いがけないモデルに出会うこともあるでしょう。
ただ、海外で時計を購入する際、帰国時に免税枠を超える分には税金(消費税)がかかります。免税店の買い物は非課税と思われている方が多いですが、残念ながら海外で時計を買っても非課税とはなりません。
今回は海外で時計を買う際に気を付けたい関税の基礎知識について解説致します。
海外で時計を買うのは得なのか?損なのか?この機会にぜひ知識を深めていきましょう!
※免税・課税をお約束する記事ではありません。詳細は税関へお問合せください
目次
海外で購入した時計の課税について
時計に限らず海外で買った商品を日本国内に持ち込む場合、免税枠を超える分に税金がかかります。
タバコや香水、お酒などには個別の免税の範囲が定められていますが、時計に関しては「合計額が20万円」を超える場合には課税対象となります。
なお、免税店で買った商品は全て非課税と考える方が多いですが、免税店は飽くまでも「渡航先での税金」が掛からないだけなので、非課税にはなりません。
免税店で20万円以上の時計を買った場合も、課税対象です。
渡航先の税金がかからない為、日本より安く買えますが、帰国後に結局は税金を払う必要があることを覚えておきましょう。
課税額の計算方法
さて、では具体的にどれくらいの税金が掛かるのかをシュミレーションしてみましょう。
海外で買った商品に掛かる税率や課税価格はモノによって大きく異なるので、ここでは腕時計に絞って解説していきます。
海外旅行で適用される税率は「簡易税率が適用されるもの」「一般貨物向けの関税率が適用されるもの」「関税等のかからない無税品」の3つが存在しますが、腕時計の場合は消費税・地方消費税のみが課税される関税無税品に該当します。
つまり、海外で時計を購入して日本に持ち帰った場合、消費税・地方消費税10%のみが課税されるということになります。
関税がかからないため、買い手にとっては有利な条件の商品であると言えるでしょう。
なお、具体的にどのくらい課税されるのかは以下の計算式の通りです。
- 400,000円(海外市価) × 0.6 = 240,000円(課税価格)
- 240,000円(課税価格) × 7.8%(税率) = 18,720円(消費税額)
- 18,720円(消費税額) × 22/78(税率) = 5,280円(地方消費税額)
- (消費税・地方消費税額 24,000円)
免税範囲を超える品物(腕時計)を持ち込む場合は、税関で上記の計算に基づく税金が課税されます。
注目したいのは購入した金額全てが課税対象というわけではなく、別途「課税価格」が設定されていることです。
課税価格は海外での小売価格(購入価格)の6割程度の額が定められており、税関では、課税価格をベースに税率をかけて税額を決定します。
※課税額は海外市価のおおよそ6%程度になることが多いです。
日本の消費税は10%ですから、日本と海外で同じ価格で時計を買ったと仮定した場合、最終的に掛かる税率は海外で買ってきた方が安いということになります。
海外で時計を購入するのは得なのか?
ここまで海外で時計を買った時に掛かる課税額を解説してきました。
さて、では海外で時計を購入するのは果たしてお得なのでしょうか?
結論からいうと旅費等や手間を考慮しなければ「お得」にはなりますが、それも購入するブランドや購入店によって大きく左右されるのが現状です。
海外で時計を購入する際に最も得となるのは20万円以下の時計です。帰国後に消費税・地方消費税が徴収されない為、日本よりも相場が安い国かつ免税店で購入すれば、額面でいえば非常にお得です。
高級時計で20万円以下で買えるブランドは限られていますが、これらを買う場合は海外で購入するのも有力な選択肢といえるでしょう。
また、ロレックスやパテックフィリップなどを正規店で買う場合もお得といえます。
ハイブランドの時計は全額課税対象になりますが、海外から持ち帰った場合は「課税価格」に対して課税されるため税額は安いです。
ただ、得と言えるのは飽くまでも国内正規店と海外正規店で比較した場合です。
日本国内には優良並行店が多く、正規店での購入に拘らなければ、そもそも国内で並行輸入品を買った方が断然安かったりもします。
優良並行店は商品管理もきちんとしているところが多いので、メンテナンスや保証も考えると、海外で時計を購入するメリットはそこまで大きくないかもしれません。
各種手数料も意識する
海外で時計を買う場合、各種手数料も意識する必要があります。
クレジットカードを利用して時計を購入する方も多いと思いますが、ほとんどのクレジットカードは2.2%ほど為替手数料が掛かる為、高級時計を購入する場合は手数料が高額になりがちです。
例えば1米ドル=100円のときに10,000米ドル(100万円分)使うと為替手数料は約22,000円ほどかかります。
海外で時計を買うと日本国内で時計を買うよりも消費税等は抑えられますが、結局為替手数料が掛かるとお得感は減ってしまうわけです。
ただ、クレジットカードによっては手数料が殆どかからないカードもあるので、一概に手数料が高いとはいえません。クレジットカードをうまく選定すれば、お得に時計を買うことも可能です。
また現金で購入する場合は、日本円を現地通貨に両替する必要があります。その際には交換手数料がかかりますので、それも計算しておかなければいけません。
高級時計の持出し届について
ここまで高級時計を海外で購入する際の知識を紹介してきましたが、高級時計を身につけて海外に行く際にも気をつけたいことがあります。
それは時計(外国製品)の持ち出し届を提出するか否かです。
何故持ち出し届を提出する必要があるのかというと、帰国した際に海外で買ってきたものと勘違いされて課税対象になる可能性があるからです。
海外に出国する際、20万円以上の高級時計を身につけていく場合は外国製品の持ち出し届を提出するのが安全です。
少しばかり手間はかかりますが、持ち出し届を書いておくと「日本で購入した物なのか?」「海外で購入した物なのか?」を税関職員が区別できるため、海外で購入した商品と判断されて課税される可能性がなくなります。
特にロレックスは他のブランドよりも目立つため、「ロレックスを持っている」と書面に残しておいた方が良いでしょう。
しかしながら、明らかに使用感がある場合は持ち出し届を出す必要はないかもしれません。持ち出し届を出さなくても帰国時に課税対象になることは殆どないからです。
ただ、近年の高級時計は傷つきづらく見た目が変わらないものも多いため、心配ならば念のため持ち出し届を出しておくのも良いでしょう。
まとめ
海外で時計を購入する場合、免税枠を超える分に消費税・地方消費税が課税されます。ただし腕時計は関税無税品に該当する為、免税枠をオーバーしたとしても課税額(消費税)は国内で買うよりも安いです。
正規店で時計を購入する場合は海外の方が得をすることになるため、並行輸入店で時計を買うのがどうしても嫌という方にとっては、お得に時計を買う良い選択肢になるでしょう。
しかし、なかなか手に入らないスポーツロレックスを定価で買うといった明確な目的がない限り、時計を買うためだけに海外に行くのは現実的ではありません。
余程の拘りがない限りは、優良並行店で時計を買った方が総合的なコストパフォーマンスは優れていると言えます。
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年