出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
「スピードマスター プロフェッショナル新型は何がすごいの?」
「スピードマスター プロフェッショナルの新型と旧型の違いが知りたい」
月面着陸なる壮大なストーリーを有するオメガのフラグシップ「スピードマスター プロフェッショナル」。
ムーンウォッチの称号でも有名ですね。初代から受け継がれた意匠と機構は、多くの時計愛好家にとって特別な存在です。
2021年―さらに言うと年初のSpeedy Tuesday―そんなスピードマスター プロフェッショナルの新型がオメガからリリースされたことで、大きな話題となりました。
なんせ、由緒正しい手巻きクロノグラフに最新鋭のマスタークロノメーター認定 コーアクシャルキャリバーを背負っていたのですから。
そんなスピードマスター プロフェッショナル新型の魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
新型のスピードマスター プロフェッショナルは、コーアクシャル×マスタークロノメーター認定機を搭載させた最新世代のムーンウォッチです。
この記事では当店に入荷したスピードマスター プロフェッショナル新型の魅力について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
ゴールド製スピードマスター プロフェッショナルについても紹介しますので、スピードマスターの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
2021年新作 オメガ スピードマスター プロフェッショナル コーアクシャル マスタークロノメーター 42mm
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径42mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
ムーブメント: | Cal.3861(コーアクシャル、マスタークロノメーター) |
駆動方式: | 手巻き |
パワーリザーブ: | 約50時間 |
機能
防水: | 5気圧 |
定価: | 737,000円または847,000円(税込) |
ご存知スピードマスターは1957年に誕生した、オメガを代表するクロノグラフモデルです。
もともとはモーターレース用の時計として製造されましたが、後にNASAの公式装備品に採用されたこと。1962年のマーキュリー計画を始めジェミニ計画やアポロ計画における数々の宇宙開発計画に携行されたことで、「ムーンウォッチ」としての称号が周知されている伝説的なオメガウォッチですね。
その歴史の中で様々な派生コレクションがリリースされましたが、現代の代表的なスピードマスター プロフェッショナルはRef.311.30.42.30.01.005とRef.311.30.42.30.01.006。2014年の登場以来、長らくオメガの人気モデルとして君臨してきました。
しかしながら昨年末あたりから「後継機」の噂が飛び交っており、2021年1月5日―Speedy Tuesday―にその噂が実現する形となります。
※Speedy Tuesday…スピーディー・チューズデーとは、熱烈なオメガファンによって始まった試み。毎週火曜日に#SpeedyTuesdayのハッシュタグを付け、スピードマスターの写真やコメントが配信されている
新型スピードマスター プロフェッショナルは、どのようなモデルなのでしょうか?
次項で当店入荷個体をもとに、解説いたします!
オメガ スピードマスター プロフェッショナル 新型モデルを徹底解説!
左:新型スピードマスター 310.30.42.50.01.002 / 旧型 311.30.42.30.01.006
新型スピードマスター プロフェッショナルは、ステンレススティールモデルで計4種がリリースされました。
そのうち、基幹モデルがヘサライトガラス(プレキシガラス。プラスティック風防の一種)にソリッドバック仕様であるRef.310.30.42.50.01.001,そしてサファイアクリスタルガラスにシースルーバック仕様であるRef.310.30.42.50.01.002となります。
※他2モデルは、それぞれにナイロンストラップを搭載した仕様です。
今回、当店GINZA RASINに入荷したのは、後者のシースルーバックによってムーブメントを鑑賞できるRef.310.30.42.50.01.002。
画像を用いて、新型モデルの細部にわたるまでを解説いたします。
特徴①往年のヴィンテージデザインの復刻
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
基本的に、新型スピードマスター プロフェッショナルは旧型と比べても外装デザインは大きく変わっていません。
しかしながらその細部を見ると種々の変更が加えられており、それは「実用性の向上」を目的としたものもあります。一方「往年のヴィンテージデザインの復刻」のための変更も!これがまたマニアックで、スピードマスター好きは垂涎の代物ではないでしょうか。
この「復刻」、歴代スピードマスターで見られたいくつかの仕様が採用されているのですが、その模範は同シリーズ第四世代にあたるRef.ST105.012に見られます。
※ST105.012
スピードマスターの第四世代は1964年に製造がスタートし、現行モデルの土台を完成させたと言われています。
ケースが左右非対称となり、3時側にリューズガードが追加。また、1966年にNASAの宇宙飛行士標準装備品として正式採用されたことから、以降、文字盤に「PROFESSIONAL」と表記されるようになりました。
そんな往年の名作から範を取った新型スピードマスター プロフェッショナルの、まず大きな変更点と言えばステップダイアル―通称「段付き文字盤」―でしょう。文字盤に外周・内周で段差が設けられており、フラットなイメージの強かった顔立ちに立体感が加わりました。これに伴い、インダイアルにも段が付けられています。
また、オメガが「スピードマスターの愛好家や歴史あるディテールのファンの皆様のために」と称して復刻したのは、ドット・オーバー90およびドット・ダイアゴナル・トゥ70です。
これは、タキメーター90のドット印字が、従来は数字のすぐ横であったことに対し、最新作のスピードマスター プロフェッショナルでは、90の斜め上にドットが描かれています。また、70位置も変更され、数字に対して斜め位置にドットが打たれました。
さらにクロノグラフ針の根本は第三世代,第四世代に見られる菱形となり、また先端がかなり大胆に曲げられました。非常にノスタルジックですね。曲げ針はかつて視認性の向上のために用いられた仕様です。針とインデックスの距離を近づけるために、職人が手作業でデザインを損ねないよう、若干の曲げを加えていたのです。近年では文字盤や針・インデックスの質の向上からその必要性がなくなってきましたが、新型スピードマスター プロフェッショナルではあえて採用されているようです。
細かな違いですがケース厚が新型は若干薄くなっており、20g強も軽量化。これまた薄型の多い往年のヴィンテージウォッチを感じさせる仕上がりと言えるでしょう(もっともヴィンテージだと磁気や防水性への懸念がぬぐえませんが、当新型はそれには及びません。その理由は後述します)。
ちなみにこちらのサファイアクリスタルガラスはボックス型に加工されており、細部だけでなく俯瞰して眺めてみてもレトロ調を楽しめます(もちろん、プラスティック風防のドーム型も良い味わいですが)。
一方で旧型と変わらない点として、アルミベゼルによってヴィンテージ感を維持しているのも嬉しいですね。現行スピードマスター プロフェッショナルのアルミベゼルは陽極酸化処理が施されているため硬度が通常アルミに比べて高く、宇宙開発にふさわしい剛性を有していることも特筆すべき点です。
特徴②さらなるフェイスのアップグレード
さらなるフェイス部分のアップグレードとして挙げられるのが、新型スピードマスター プロフェッショナル 310.30.42.50.01.002のロゴ。アプライドへと変更になっています。プラスティック風防のRef.310.30.42.50.01.001の方は従来通りプリント仕様のようです。アプライドによって高級感がいや増していますね。
また、文字盤外周のミニッツトラックが従来の5メモリから3メモリへと変更されました。これはムーブメントの振動数に合わせた設計となります。
スピードマスター プロフェッショナルは21,600振動/時、つまり1秒間に6振動(3ヘルツ)となりますが、従来の5刻みでは緻密な精度を視認するには不十分とし、改良に至ったのでしょう。
※振動数…時計の心臓部であるテンプが振動する回数のこと。振動数が少なければ「ロービート」、多ければ「ハイビート」と称され、一般的にはハイビートの方が高精度を出しやすい。
特徴③ブレスレット・バックル
フェイス部分のみならず、ブレスレット・バックルもまた、大きく改良されたディテールです。
まず、コマが小さくなったことが見て取れるでしょう。これによってしなやかに腕にフィットし、装着感の向上に寄与しました。微調整しやすいのも、嬉しいところですね。ちなみにアンティーク時代のキャタピラブレスレットや、第五世代のブレスレット等、歴代スピードマスターは小さなコマが多かったので、この仕様もまたヴィンテージ感の演出に一役買っていると言えます。
なお、ブレスレットの中央2ラインにポリッシュ仕上げが施されているのが新旧スピードマスター プロフェッショナルの特徴ですが、プラスティック風防のRef.310.30.42.50.01.001はセンターライン部分もサテン仕上げで、落ち着いた印象が強まりました。
左:新型スピードマスター 310.30.42.50.01.002 / 旧型 311.30.42.30.01.006
さらに特筆すべきはバックルです。
これまでのスピードマスター プロフェッショナルには大きめのシンプルなバックルが搭載されていましたが、かなりスマートになりました。
ブレスレット幅に合わせており、シームレスに。また、新作でストライプのパターンがあしらわれ、さらにオメガのロゴがポリッシュ仕上げになったことも特徴です。着け心地アップはもちろんのこと、より際立ったデザイン性を獲得しましたね。
特徴④新型ムーブメントCal.3861
新型スピードマスター プロフェッショナルの最も特徴的な点は、ムーブメントにあると言っていいでしょう。
なぜなら、ついにコーアクシャル×マスタークロノメーター手巻きクロノグラフムーブメントを搭載させたためです。
スピードマスター プロフェッショナルは、基本的に手巻きクロノグラフです。
初代からヌーベル・レマニアという、由緒正しい老舗ムーブメントメーカーが製造した機械Cal.321をベースとしており、第五世代のCal.861⇒第六世代以降のCal.1861(またはCal.1863)といった系譜が綴られてきました。
第六世代の初出は1996年頃。以来、20年以上にも渡ってCal.1861がスピードマスター プロフェッショナル人気を下支えしてきたこととなります。
そして2019年、にわかにオメガから最新ムーブメントCal.3861が公開されます。そう、こちらのキャリバーですね。このムーブメントで以て、スピードマスターの手巻きクロノグラフも、ついにオメガが誇るコーアクシャル機構を搭載、マスタークロノメーター認定機となったのです!
※コーアクシャル…オメガが1999年から採用し始めた新しい脱進機。2007年以降、自社開発ムーブメントで順次採用を進めている。大きな特徴としてはパーツ同士の摩耗が少なく、従来ムーブメントのオーバーホール期間を大幅延長する、というもの。
※マスタ―クロノメーター…オメガがスイス連邦計量・認定局(METAS)と共同で制定した時計の品質規格。主にコーアクシャルムーブメントのための工業規格であったが、COSC認定の高精度であることはもちろん、15,000ガウスもの高耐磁性能が基準となっていることから、業界内でもきわめて高い注目度を有している。
このムーブメント、繰り返しになりますが何よりもすごいのがきわめて高い耐磁性能を有することです。にもかかわらずケースは従来品よりも薄くスタイリッシュ。これは、シリコン製ヒゲゼンマイを始め、一部パーツに非磁性素材を使っており、つまりケース側に磁気帯び対策を施す必要がありません。
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
また、緩急針ではなくフリースプラング機構が採用されたことも、新ムーブメントの大きな変更点です。フリースプラングとは精度調整のために用いる機構で、より精密な微調整を可能としています。
※緩急装置はパーツ同士のズレ等によって引き起こされる精度の狂いを調整するものです。オーバーホールといった大掛かりなものではなく、あくまで「調整」ですが、メンテナンス性が向上したと言えます。
さらに、約2時間とわずかながらパワーリザーブが延長されており、また21,600振動/時と決してハイビートではないにもかかわらず、オメガのテスト環境下では精度が日差0秒~+5秒までと追い込まれました。
Cal.3861は2019年リリース時には特別モデルのみの搭載に留まりました。しかしながらこの傑出した機械の登場によって、ついに今年、レギュラーモデルでも移行を果たしたこととなります。
なお、従来ソリッドバックモデルとシースルーバックモデルではムーブメントが異なりましたが(もっとも、違いはパーツカラーのみですが)、新型では統合されています。ムーブメントの仕上げレベルが向上しており、シースルーバックから見ても存分に堪能できるよう配慮されています。
オメガ 新型スピードマスター プロフェッショナルの定価と実勢相場
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
新型スピードマスター プロフェッショナルの税込定価は以下の通りです。
310.30.42.50.01.001:737,000円
310.30.42.50.01.002:847,000円
また、同時リリースされたナイロンストラップモデルは下記の通りです。
310.32.42.50.01.001:704,000円
310.32.42.50.01.002:803,000円
従来の311.30.42.30.01.005が定価605,000円、311.30.42.30.01.006が715,000円であることを鑑みると比較的大きな幅で値段が上がっていますが、コーアクシャル×マスタークロノメーター搭載機であるため、妥当と言えるでしょう。
気になるのは、実勢相場です。
時計業界の2021年新作発表は4月に集中していましたが、スピードマスター プロフェッショナルは早い段階で流通が始まりました。当店でも、4月初頭に入荷を果たしました。その際、未使用品として販売した価格は税込788,000円。オメガは並行市場では比較的お得に購入できるブランドの一つであり、だいたい定価からの割引率は65%強~75%程度(新品の場合)。そのため定価より若干お安いくらいのこの価格は、高値と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら待望の新型スピードマスターであり、きわめて高いスペックを有していることを鑑みれば、むしろコストパフォーマンスに優れていると言えます。新作発表直後にありがちなご祝儀価格も落ち着いてきたため、定価前後であれば買いの一本ではないでしょうか。
一方で旧型のスピードマスター プロフェッショナルは生産終了となったため、年数を経るに従って良好な個体の稀少性が高まっていくことは間違いありません。既に歴代スピードマスターが中古市場で高騰していることはご存知の通り。気になる方は、お早めに入手しておくことをお勧めいたします。
オメガ渾身のゴールド製スピードマスター プロフェッショナルも同時リリース!
スピードマスター プロフェッショナルとしては初のゴールドモデルも同時リリースされました。併せてご紹介いたします。
スピードマスター プロフェッショナル 310.60.42.50.01.001
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径42mm |
素材: | セドナゴールド |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
ムーブメント: | Cal.3861(コーアクシャル、マスタークロノメーター認定) |
駆動方式: | 手巻き |
パワーリザーブ: | 約50時間 |
機能
防水: | 5気圧 |
定価: | 4,114,000円(税込) |
スピードマスター プロフェッショナル 310.60.42.50.02.001
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径42mm |
素材: | カノープスゴールド |
文字盤: | シルバー |
ムーブメント
ムーブメント: | Cal.3861(コーアクシャル、マスタークロノメーター認定) |
駆動方式: | 手巻き |
パワーリザーブ: | 約50時間 |
機能
防水: | 5気圧 |
定価: | 5,346,000円(税込) |
スピードマスター プロフェッショナル初のゴールドモデルの一本目は、セドナゴールド製。
セドナゴールドはオメガ独自の合金によって形成されたカラーゴールドで、金75%に銅の他、パラジウムが含有されています。
これによってローズゴールドやピンクゴールドとはまた違った美しい赤みを演出しており、また銅合金であるにもかかわらず変色しづら特性を有します。
2013年の誕生以来、オメガの特別モデルに採用されてきた、まさに特別な素材です。
確かに新作スピードマスター プロフェッショナル セドナゴールドモデルも、ブラック文字盤・ブラックベゼルとの相性抜群。素晴らしい一本に昇華されていますね。
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
さらに気になるのが、カノープスゴールドなる素材があしらわれた一本です。
こちらもやはりオメガ独自のカラーゴールドで、ホワイトゴールドとプラチナを合金しているとのこと。
シルバー文字盤との組み合わせが大変上品で、従来どこか男らしさが強かったスピードマスターに新しい風を吹き込みます。
なお、どちらもブティック限定販売となります。
スペックはSS製と変わりません。
まとめ
2021年、Speedy Tuesdayに公開された、新型スピードマスター プロフェッショナルについてご紹介いたしました!
ついにコーアクシャル×マスタークロノメーター認定機を搭載させた最新世代のムーンウォッチ。最新世代」とは言え古き良き時代のスピードマスターをも思わせる仕上がりが、愛好家にはたまりませんね。
今後もまた入荷次第、当店ホームページにアップしていきたいと思います!
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年