ロレックスの姉妹ブランドとして歴史をスタートさせ、現在は独自路線で高い評価を得ているチューダー。Watches & Wonders Geneve 2021においては、ブラックベイクロノやブラックベイ58といった人気コレクションの拡充を行い、魅力は増すばかり。
しかしながら、2021年新作はこれだけに留まりませんでした。
Watches & Wonders Geneve 2021から1ヶ月遅れで、マットブラックのセラミック製ケース「ブラックベイ セラミック」がコレクションに新たに加わります。
セラミックケースというレギュラーモデルにはあまり見られなかった素材使いもさることながら、そのムーブメントに驚くべきアップデートが行われ、早くも話題を呼ぶことに。
この記事では、2021年チューダー最新作ブラックベイ セラミックをご紹介致します。
出典:https://www.facebook.com/tudorwatch/photos/
目次
チューダー2021年新作ブラックベイセラミックとは?
①スペック
出典:https://www.facebook.com/tudorwatch/photos/
外装
型番: | m79210cnu-0001 |
ケースサイズ: | 直径41mm |
素材: | ブラックセラミック |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
ムーブメント: | Cal.MT5602-1U |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 最大70時間 |
機能
防水: | 100m |
予価: | 51万2600円(税込) |
②概要・ディティール
ブラックべイ セラミックは、チューダー2021年新作として新たにリリースされたモデルです。ブラックベイらしいスタイリッシュなデザインはそのままに、ブラックセラミック製ケースが採用されました。
冒頭でも述べたように、これまでの定番チューダーではあまり見られなかった素材使い。オールブラックモデルのRef.79230DKは存在しましたが、これはステンレススティールをPVD加工したものでした。
どうも、2019年、チャリティーオークション「オンリーウォッチ」のために製造されたブラックベイ セラミックワンがデザインベースとなっているようです。
※オンリーウォッチ・・・2年に一度開催される、チャリティーオークション。パテックフィリップ,オーデマピゲ,シャネルといった名だたる名門が参画する大規模オークションで、収益はモナコ・デュシェンヌ型筋ジストロフィー協会(Association Monégasque contre les Myopathies AMM)に寄付される
ブラックセラミックによって、力強さと美しさを両立させた高級感のある仕上がりとなりましたね。
ケースサイズは従来のブラックベイと同様に41mmサイズ。なお、ベゼルはセラミックではなく、ブラックPVD処理を施したステンレススティールに60分目盛り付きブラックセラミック製ディスクが採用されています。
ケース・ベゼルとも艶消し加工されており、シックな雰囲気を放つのもブラックべイ セラミックの大きな特徴です。
出典:https://www.facebook.com/tudorwatch/photos/
ベゼルを細部まで見ると、サンレイサテン仕上げが施されているのがわかります。エングレービングのマーカーと数字も非常に美しい仕上がりです。
文字盤、ラグとの統一感にも優れ、都会的でモダンな印象を与えます。
また、ベルトには機能性に優れるハイブリッドブラックアリゲーターレザーとラバーストラップが用意されています。なお、近年のチューダーはストラップタイプによって型番を分けていましたが、当新作はハイエンドの位置づけであるためか、二種ともに付属。これは嬉しい仕様ですね!
ケースによく馴染む質感に調整されており、マットブラックPVD処理が施されたフォールディングクラスプで統一感はバッチリです。
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ブラックベイ セラミックは堅牢性、耐久性に優れるセラミック素材を採用しているため、キズや腐食にも強く、金属アレルギーを持つ方にも着用いただけます。
視認性も申し分なく、時計としての性能は一級品です。
なお、ブラックベイ セラミックの時針の形状は「スノーフレーク」と呼ばれるチューダーの伝統的な時針が採用されています。
アワーマーカーと共に夜光塗料のホワイトが文字盤との豊かなコントラストを生み出しており、カジュアルシーンはもちろんのこと、ビジネススタイルにも似合うデザインと言えるでしょう。
※「スノーフレーク」針・・・グレードAのスイス製スーパールミノバを使用した、1969年に発表されたチューダー ダイバーズウォッチのトレードマークの一つ
オメガに続きチューダーも!?新作ブラックベイ セラミックはマスタークロノメーター認定 MT5602-1Uを搭載
スタイリッシュな見た目が注目されるブラックベイ セラミックですが、実は搭載ムーブメントに関しても大幅な進化を遂げています。
特筆すべきはやはり「マスタークロノメーター」認定機となった、ということ!
出典:https://www.tudorwatch.com/ja/black-bay-ceramic
ブラックベイ セラミックに搭載されるムーブメントはキャリバー MT5602-1U。従来の自社製基幹ムーブメントMT5602がベースとなっているようですが、その様相が大きく異なることがシースルーバックから見てとれます。キャリバー全体が外観に合わせてブラック加工されており、タングステン製ローターはサンドブラスト加工が施されたサテン仕上げとなっているのです。
さらに機能に関してはCOSC認定のクロノメーター、70時間のパワーリザーブと非常にハイスペック。
それに加え、最も栄えある15,000ガウスの耐磁性能も持ち合わせ、オメガに次ぐマスタークロノメーター搭載機となりました。
出典:https://www.chopard.jp/cosc
マスタークロノメーターについて簡単に解説すると、C.O.S.C.およびMETAS(スイス連邦計量・認定局)による認定をパスしたムーブメントに与えられる称号です。
C.O.S.C.においては精度に関する厳しいクロノメーター試験を。METASにおいては包括的な認証制度として精度、耐磁性、防水性、パワーリザーブなど、機能特性を検査します。繰り返しになりますが、とりわけ15,000ガウスという耐磁性能は業界人が驚かされるところです。
クロノメーター試験をパスするムーブメントは少なくありませんが、耐磁性能と両立させることは非常に難しく、これまでマスタークロノメーターの認定を手にしたのはオメガ一社だけでした。
しかし、このMT5602-1Uにおいてチューダーも二社目のマスタークロノメーター認定ブランドに。
ロレックスの姉妹ブランドとして成長を遂げてきたチューダーですが、今作においてはオメガをベンチマークしてる印象を受けます。
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MT5602-1Uの技術的特徴としては、まず2か所で固定されたトラバーシングブリッジによって支持される可変慣性テンプの採用が挙げられます。
可変慣性テンプを搭載することで精度の安定性はより高まり、同時に視覚的な美しさも向上しています。
また、ヒゲぜんまいには「耐磁性シリコンバランススプリング」を備え、磁力に対する圧倒的な耐久性を得ることに成功しました。
このような革新的な技術を盛り込んだ結果、MT5602-1Uは日差5秒以内(0、+5秒)という高い精度基準を満たしています。
パワーリザーブも70時間とロングパワーリザーブが実現されており、実用性に関しても申し分ないスペックです。
金曜日に時計を外しても月曜日にまだ動いていることから、「ウィークエンドプルーフ (週末耐性)」搭載機とも称されます。
チューダー2021年新作ブラックベイセラミックの定価と実勢相場
チューダーの新時代を感じさせるブラックベイ セラミック。
スペックが向上したことから大幅な値上がりが懸念されていましたが、定価は51万2600円(税込)と、従来よりはハイエンドラインに。とは言え単価の高いセラミック製×マスタークロノメーター認定機を搭載していることを考えれば、むしろ良心的な価格に落ち着いていると言えるでしょう。
既にブラックベイ セラミックは2021年5月26日(水)に全国一斉発売が開始されており、正規店において既に実機を手にされた方もいるようです。
なお、「良心的な価格」とは言え、近年のチューダーの実勢相場は本家ロレックスの血を感じさせるような高騰ぶりを描いています。
直近ではブラックベイ GMTやブラックベイ58等が、発売からしばらくの間は定価を大きく上回るプレミア価格で売買されました。
今作も、今後の出回り量にもよりますが(限定モデルではないとのこと)、しばらくの間は新品並行相場は定価を上回るような価格となるかもしれません。
チューダーのこれまでの魅力とこれからの魅力がふんだんに込められたブラックベイ セラミック。
今後の相場・流通動向に要注目ですね!
まとめ
今作ブラックベイ セラミックはチューダーの技術革新の象徴とも言えるモデルです。
高品質なセラミックケースに美しいブラック統一のデザイン。マスタークロノメーター認定機 MT5602-1Uの搭載。
ロレックスの廉価版というイメージはもはや無く、今となっては一流ブランドの風格を感じさせます。
これ程までに進化を遂げていながら定価51万2600円(税込)とリーズナブルな価格設定であることも大きな魅力で、この方向性はロレックスではなくオメガ寄りのブランディングにも思えます。
独自路線に進んでもリーズナブルな価格で高品質な時計を提供するチューダー。
その人気は今後も高まり続けることでしょう。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年