出典:https://quillandpad.com/2016/11/19/behind-lens-patek-philippe-reference-5078p-minute-repeater/
ミニッツリピーターは「音で時刻を告げる」というロマンティックな機能です。ハンマーが機械内部に備えられた円環状のワイヤーゴングを叩くことで、美しい音色を奏でます。
この機構は世界三大複雑機構の一つに数えられ、機械式時計の最高峰に位置する技術としても有名です。
永久カレンダーやトゥールビヨンよりも起源が古く、時計製造技術の伝統を強く感じられる機構でもあります。
この記事ではミニッツリピーターがどのような仕組みで動いているのか、どのような搭載モデルが存在するのか、詳しく解説していきます。
機械式時計がお好きな方、ミニッツリピーターのことを詳しく知りたい方。ぜひこの機会にご一読ください。
目次
ミニッツリピーターとは
出典:https://www.patek.com/en/home
ミニッツリピーターは、まだ夜光塗料が一般化されていない時代に「鐘を鳴らして時刻を告げる」機構として開発されました。
17世紀末にイギリスで発明され、その後天才時計師・ブレゲがその小型化に成功、ルイ・ブラン&フィルズ社(現在のオメガ)が1892年、腕時計に初めて搭載させました。
技術が大きく進化した現代においては、生活に用いられることはなくなりましたが、その製造難易度の高さから世界三大複雑機構の一つとされています。
ミニッツリピーターの魅力はなんといっても機構自体の美しさと、その複雑さです。
ミニッツリピーターには音を鳴らすためのゴング(鐘)とハンマーが大小1つずつ付いていて、大きいハンマーがゴングを鳴らす回数によって「何時」を、小さい方が回数によって「何分」かをあらわします。
基本的には音の高さによって時・分が分かり、大きいハンマーが低音を担当、「低音6回⇒6時」といった具合に時刻を知らせてくれます。
30分といった時刻は大小両方のハンマーを同時に鳴らすことで表現され、高音と低音の2連続の音で15分と換算されます。
8分などの一桁の「分」に関しては小さいハンマーが高音を担当し、「高音8回⇒8分」といった表現方法で時刻を知らせるのが一般的です。
上記の動画は、6時38分を示します(動画の1分46秒あたり)。
例:2時53分の場合
低音×2回=2時
高音と低音の2連続の音×3回=45分
高音×8回=8分
時計によって仕様は異なりますが、一連の操作を制御するために、プッシュボタンやスライドピースまたはレバーなどが時計本体に取り付けられているのが一般的です。
このような複雑な制御を機械のみの力で行なっていることが、ミニッツリピーターの凄さであり、魅力です。
ミニッツリピーターの仕組み
ミニッツリピーターは三大複雑機構の中でも製造が難しく、組み上げるためには高い技術と膨大な作業時間がかかります。
機械式ムーブメントの直径は大きくても35mm前後ですが、この狭いスペースの中でゴングとハンマーを搭載させ、音をクリアに響かせるためには緻密な設計が必要です。
しかも、時計としての耐久性や精度も両立させなくてはならないため、実用に耐えうるミニッツリピーターを作り上げるのは至難の技です。
出典:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html
ミニッツリピーターの仕組みについて解説します。
ミニッツリピーターには「スネイル」と呼ばれるカムが機械に搭載されており、針の位置情報を伝達します。
カムにはミニッツスネイル・クォータースネイル(15分用)・アワースネイルの3種類が存在し、ミニッツとクォーターは分車、アワースネイルは時車と連動しています。
ちなみにスネイルは手裏剣のような形状をしているのが特徴です。歯車と精巧に噛み合うようになっています。
ミニッツリピーターを作動させると搭載されたレバーが各スネイルの位置に動き、スネイルの段差によって現在時刻を読み取ります。
読み取られた時刻はレバーのラック(円形歯車)に伝わり、その時刻分ハンマーを動かします。
これらの動きは一切電子制御が行われず、動力は全てゼンマイのみ。
卓越した技術によって作られるまさに美術工芸品です。
近年では文字盤や裏蓋をシースルーとし、ゴングとハンマーの動きを楽しませるブランド。ゴングやハンマーに工夫をこらし、音色にこだわり抜くブランドなどなど・・・ミニッツリピーター独自の魅力はますます広がりを見せています。
ミニッツリピーターとソヌリの違い
音によって時刻を知らせる機能として、ミニッツリピーターの他に「ソヌリ」という機構があります。
ミニッツリピーターと同じく、こちらも時計愛好家にとって垂涎の的となっています。
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ソヌリはフランス語で時鐘を意味し、自動で毎正時とクォーター(15分おき)に自動的に音を鳴らして時刻を告げてくれる機構です。
こちらもミニッツリピーターと同様、非常に複雑なメカニズムで動作しており、800~1200にも及ぶ部品によって組み上げられます。
なお、毎正時とクォーター(15分おき)に音を鳴らす機構をグランドソヌリと呼び、毎正時と30分おきに鳴らす機構をプチソヌリと呼びます。グランドソヌリ搭載モデルは2,000万円以上の価値をつけられることも珍しくなく、その価値はミニッツリピーターを上回ります。
しかしながら、オーバーホールを行える技術者が少ないため、メンテナンス費用に100万円ほどかかることもあります。
ミニッツリピーター搭載モデルを一挙紹介
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ミニッツリピーターを手掛ける代表的なブランドはパテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンタン、ジャガールクルトといった技術力に定評のある超一流ブランドばかりです。製造が極めて難しいミニッツリピーターを作り上げることは、ブランドにとってのステータスとも言え、同機構を搭載するモデルはどれも最高品質の時計となっています。
パテックフィリップ グランドコンプリケーション 5078G
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ミニッツリピーターといえばパテックフィリップ。5078Gは同社を代表するコンプリケーションウォッチで、温かみのあるクリーム・エナメルを持つ話題作です。ストライク機構を作動させると、教会の鐘の音を彷彿とさせるミニッツリピーターの美しい音色が鳴り響き、現在時刻の時、クオーター(15分)、端数の分を知らせれてくれます。なお、パテックフィリップのリピーターはカセドラル・ゴングと呼ばれ、従来のおよそ2倍の長さを有します。残響の美しさに優れ、その存在感は圧巻です。
詳細
素材: | ホワイトゴールド |
ケースサイズ: | 直径38.0 mm×厚さ10.18 mm |
基本機能: | ミニッツリピーター |
その他機能: | 時、分針、スモールセコンド |
防水性: | 非防水 |
定価: | 時価 |
ヴァシュロンコンスタンタン パトリモニー エクストラフラット ミニッツリピーター 30110/000P-9999
出典:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html
世界三大時計ブランドの一角を担うヴァシュロンコンスタンタン。こちらもミニッツリピーターの製造に力を入れているブランドで、時計界屈指の実力を誇ります。代表的な搭載モデルは2013年から手掛けるパトリモニー エクストラフラット ミニッツリピーター 30110/000P-9999。ケース径41mm、ケース厚わずか8.1mmというスマートなデザイン性を持ちながらも、ミニッツリピーターが組み込まれています。約3日間のロングパワーリザーブを誇り、実用面に関しても申し分ありません。時計としての美しさとミニッツリピーターの機械美をこれほどまでに両立させることができるのは、雲上ブランドだからこそなし得る技です。
詳細
素材: | プラチナ |
ケースサイズ: | 直径41.0 mm×厚さ8.10 mm |
基本機能: | ミニッツリピーター |
その他機能: | 時表示, 分, スモールセコンド |
防水性: | 非防水 |
定価: | 時価 |
オーデマピゲ ロイヤル オーク ミニッツリピーター スーパーソヌリ 26591TI.OO.1252TI.02
出典:https://www.audemarspiguet.com/com/ja/watch-collection/royal-oak/26591TI.OO.1252TI.02.html
パテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンタンと同じく世界3大ブランドの一角として世界的人気を誇るオーデマピゲ。美しい音色を響かせるスーパーソヌリを搭載した「ロイヤル オーク ミニッツリピーター スーパーソヌリ」もまた、最高峰の名機です。オーデマピゲの「スーパーソヌリ」は、スイス連邦ローザンヌ工科大学(EPFL)と8年の歳月をかけて共同研究され、理想の音色と音響を追求した「楽器」とも称される機構に仕上がっています。
同機構は音響板にゴングを設置し、ハンマーが打った振動音を音響板が共鳴し、さらに裏蓋との空洞で増幅されるシステムが採用されています。ヴァイオリンやギターの構造に似ており、深みのある豊かな音色を響かせるのが特徴敵です。ミニッツリピーター搭載機の中でも屈指の芸術性の高さをもつモデルと言えるでしょう。
詳細
素材: | チタニウム |
ケースサイズ: | 直径42.0 mm×厚さ14 mm |
基本機能: | ミニッツリピーター |
その他機能: | 時表示, 分, スモールセコンド |
防水性: | 20m |
定価: | 時価 |
ブレゲ クラシック グランドコンプリケーション ミニッツリピーター 7637BB/12/9ZU
出典:https://www.breguet.com/jp/node/952
数々の複雑機構を開発したアブラアン・ルイ・ブレゲの名を引き継ぐ超一流ブランド ブレゲ。機械式時計の伝統を感じさせる「クラシック グランドコンプリケーション ミニッツリピーター 7637」はブレゲのミニッツリピーター搭載モデルにおいて、特別な存在感を放ちます。18Kホワイトゴールドケースに手彫りギョーシェ模様を施した美しい銀色仕上げのゴールドダイヤル。ムーブメントには異なる数種類のエングレービングが刻まれ、ブレゲが誇る最高峰の技術を体験することができます。ミニッツリピーターの音色も温かみがあり、他のコンプリケーション同様、歴史的名器の一つと高い評価を得ています。
詳細
素材: | ホワイトゴールド |
ケースサイズ: | 直径42.0 mm×厚さ12.35 mm |
基本機能: | ミニッツリピーター |
その他機能: | ダブルセコンド、デイアンドナイト24時間表示 |
防水性: | 非防水 |
定価: | 28,226,000円 |
ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター 147.028F
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/timepieces/zeitwerk-minute-repeater/zeitwerk-minute-repeater-147028
ツァイトヴェルク・ミニッツリピーターは、瞬転数字式時刻表示と十進式ミニッツリピーターを初めて同時搭載した機械式腕時計です。ランゲ&ゾーネとしては珍しい近未来的なデザインが採用されており、時刻表示窓に見える数字と同じ数のチャイムが鳴り響きます。ゴングを叩くハンマーにはブラックポリッシュ仕上げのスチール製ハンマーが採用され、10時位置にあるリピーター用ボタンを押すと左ハンマーが時を、右ハンマーが分を打ち鳴らします。2015年にプラチナモデル「147.028」が発売され、2020年にはブルー文字盤を採用したホワイトゴールドケースの限定モデル「147.028F」が展開されました。
詳細
素材: | ホワイトゴールド |
ケースサイズ: | 直径44.2 mm×厚さ14.1 mm |
基本機能: | 瞬転数字式の時および分、十進式ミニッツリピーター付きハンマー打ち機構 |
その他機能: | ストップセコンド機能搭載スモールセコンド、パワーリザーブ表示、ゼンマイ巻上げおよび時刻調整用リューズ、リピーター用ボタン、 |
防水性: | 30m |
定価: | 時価 |
ジャガールクルト ハイブリス・メカニカ 1313520
出典:https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/watches/master/master-ultra-thin-minute-repeater-flying-tourbillon/1313520.html
時計界の技術屋と称されるジャガールクルトもまた、ミニッツリピーターへの取り組みに並々ならぬ情熱を注いでいます。その象徴であるのが、「ハイブリス・メカニカ 1313520」です。このモデルは優雅で気品溢れるホワイトゴールド製ケースにミニッツリピーター・フライングトゥールビヨンを搭載したコンプリケーションで、厚さはわずか7.8mmしかありません。ミニッツリピーターを搭載した世界で最も薄い腕時計の1つに数えられており、その美しさは超一級品です。また、特許技術であるサファイアゴングによって奏でられる豊かな音色にも定評があります。
サファイアゴング:サファイアクリスタル風防にゴングが溶接されることで、風防そのものが増幅器となったもの。ハンマーとの接触面が増え、力強い音を奏でることが可能となっている。
詳細
素材: | ホワイトゴールド |
ケースサイズ: | 直径41.0 mm×厚さ7.8 mm |
基本機能: | ミニッツリピーター, フライングトゥールビヨン |
その他機能: | 時、分表示 |
防水性: | 30m |
定価: | 時価 |
ショパール L.U.C フルストライク ミニッツリピーター
出典:https://www.chopard.jp/luc-full-strike
L.U.Cフルストライクは、ショパール マニュファクチュール20周年を記念して製造された、初のミニッツ・リピーターウォッチです。約6年にも及ぶ開発期間をかけ、ジャガールクルトと同じ「サファイアゴング」を違うアプローチから見事に作り上げました。このモデル最大の特徴はなんと言っても音色の透明感。打刻のスピードをコントロールするシステム「ガバナー」の動作音がほぼ無音となっており、音色の透明感がより鮮明になっています。C.O.S.Cクロノメーターの精度も兼ね備え、実用性に関しても非常に優れています。
詳細
素材: | ローズゴールド |
ケースサイズ: | 直径42.5mm ×厚さ11.55mm |
基本機能: | ミニッツリピーター |
その他機能: | 時、分表示, パワーリザーブインジケーター, スモールセコンド |
防水性: | 30m |
定価: | 32,443,200円 |
ジラールペルゴ ミニッツリピーター トライアクシャル トゥールビヨン 99830-21-000-BA6A
出典:https://www.girard-perregaux.com/jp_jp/99830-21-000-ba6a.html
ミニッツリピーター トライアクシャル トゥールビヨンはジラールペルゴの時計製造技術の集合体です。直径48mm のチタンケースにはミニッツリピーターとトゥールビヨン、2つの複雑機構を備えます。このモデルの最大の特徴は、文字盤が全面スケルトン加工されていること。視覚的にもミニッツリピーターが楽しめるようになっており、数ある同機構搭載モデルの中でも強烈なオリジナリティを持っています。チャイムの響きがより大きくなるよう緻密な設計で作り込まれており、時計を着用しているときでもしっかりとした音を響かせることができます。
詳細
素材: | チタニウム |
ケースサイズ: | 直径48.0mm ×厚さ21,24mm |
基本機能: | ミニッツリピーター, トライアクシャル トゥールビヨン |
その他機能: | 時、分表示(スモールセコンド) |
防水性: | 30m |
定価: | 55,792,000円 |
パルミジャーニ・フルリエ トリックコレクション ミニッツリピーター
出典:https://www.parmigiani.com/jp/watch/toric/0/PFH439-2004100-HA1441
トリックコレクションはクラシカルな美しさと複雑機構を両立させたパルミジャーニ・フルリエの話題作です。トゥールビヨン、クロノグラフ、パーペチュアルカレンダーといった個性豊かなモデルがラインナップされていますが、とりわけ強い存在感を放つのが、このミニッツリピーターです。ゴドロンとローレット装飾を交互に施したケースを採用。独創的な文字盤はギリシャ神話に出てくるミステリアスな迷宮がモチーフとなっています。メカニズム全体の静音性に拘り抜かれており、音色の豊かさも抜群です。
詳細
素材: | プラチナ |
ケースサイズ: | 直径46.0mm ×厚さ13,3mm |
基本機能: | ミニッツリピーター, |
その他機能: | 時、分、秒表示, パワーリザーブインジケーター |
防水性: | 10m |
定価: | 時価 |
フランクミュラー トノーカーベックスミニッツリピーター トゥールビヨン 7880RMT
出典:https://franckmuller-japan.com/watch/detail/?id=217
フランクミュラー トノーカーベックスの最上位モデルに位置する 7880RMT。ミニッツリピーターとトゥールビヨンを配したコンプリケーションモデルです。漆黒に煌めくブラック文字盤に、洗練されたビザン数字。ケースにはプラチナがあしらわれ、圧倒的な技術力もさることながら、フランクミュラーらしい豊かなデザイン性も楽しめます。
詳細
素材: | プラチナ |
ケースサイズ: | 縦50.4mm × 横36,0mm |
基本機能: | ミニッツリピーター, トゥールビヨン |
その他機能: | 時、分表示, パワーリザーブインジケーター |
防水性: | 10m |
定価: | 51,150,000円 |
ハリーウィンストン ミッドナイト ミニッツリピーター MIDMMR42RR003
出典:https://watch-yoshida.co.jp/products/41/10452
宝飾ブランドのイメージが強いハリーウィンストンですが、時計製造技術も世界トップクラスの実力を秘めています。このミッドナイト ミニッツリピーター MIDMMR42RR003は文字盤の一部がくり抜かれた設計となっており、ゴング部分が表からも裏からも見えるユニークなデザインが採用されています。美しいアシンメトリー設計と共にミニッツリピーターの動作が存分に味わえることから、時計ファン垂涎の一本として大きな注目を集めました。18Kレッドゴールドと18Kホワイトゴールドの2種類が存在し、それぞれ世界20本限定で発売されています。
詳細
素材: | ピンクゴールド / ホワイトゴールド |
ケースサイズ: | 直径 42.0mm |
基本機能: | ミニッツリピーター |
その他機能: | 時、分表示 |
防水性: | 30m |
定価: | 37,345,000円 |
ブルガリ オクト フィニッシモ 102559
出典:https://www.bulgari.com/ja-jp/102559.html
近年ブルガリの時計が注目されています。ブルガリは1970年代から時計製造に乗り出し、複数の名門ブランドを傘下に加える事で機械製造技術のノウハウを蓄えてきました。同ブランドの特徴は複雑機構を搭載しながらも極薄設計であること。このオクト フィニッシモ ミニッツリピーターは厚さ6.9mmの極薄設計でありながらも、ミニッツリピーターの搭載に成功しています。搭載ムーブメントは同モデルのために開発されたBVL 362。ミニッツリピーターとして、世界最薄の記録を持ちます。
詳細
素材: | チタニウム |
ケースサイズ: | 直径 42.0mm × 厚さ 6.85mm |
基本機能: | ミニッツリピーター |
その他機能: | 時、分表示 , スモールセコンド |
防水性: | 30m |
定価: | 18,160,000円 |
パネライ ラジオミール ミニッツリピーター トゥールビヨン GMT PAM00600
力強さとミリタリー感に溢れるパネライの時計。おそらくミニッツリピーターのイメージはないかと思います。しかし、受注生産ではありますが、コンプリケーションモデルが用意されているのをご存知でしょうか?そのモデルは「ラジオミール ミニッツリピーター トゥールビヨン GMT PAM00600」。パネライの最高級モデルです。
出典:https://www.panerai.com/jp/ja/
このモデルに搭載されるミニッツリピーターは従来のモノと大きく異なります。最大の特徴は「カリヨン」と呼ばれる内部機構です。時計の内部に配置された3本のリングと3つのハンマーを備え、3つの音色をメロディのように連続して奏でることから「カリヨン」と呼ばれるようになりました。また、リングとハンマーが1つ多い設計となっているため、15分でなく、10分の単位で時刻を鳴らしてくれます。製造にかかる期間は2年以上。価格は4,000万円以上と破格のプライスとなっています。
詳細
素材: | ピンクゴールド |
ケースサイズ: | 直径 49.0mm × 厚さ 10.35mm |
基本機能: | 時・10分・分単位の現地時間とホームタイムのミニッツリピーター、トゥールビヨン |
その他機能: | 時、分、スモールセコンド, GMT 12/24時間表示, 裏側にパワーリザーブ表示 |
防水性: | 30m |
定価: | 時価 |
ロトンド ドゥ カルティエ ミニッツリピーター ミステリアス ダブルトゥールビヨン
出典:https://www.cartier.jp/ja/
メンズカルティエウォッチの最高峰に位置するロトンド ドゥ カルティエ。スケルトン文字盤を採用した機械美溢れる一本で、ミニッツリピーターだけでなく、ダブルトゥールビヨンも備えるコンプリケーションです。6時にミニッツリピーターを配置した珍しい設計となっており、ベゼルにはダイヤが張り巡らされています。10時にはトゥールビヨン、中央から少しズレた位置に時針・分針が備えられており、通常のカルティエとは一味違う独創的な世界観を味わうことができます。パワーリザーブは3.5日のロング設計。ケースはプラチナが採用されており、実にラグジュアリーな仕上がりです。
詳細
素材: | チタニウム |
ケースサイズ: | 直径 45.0mm |
基本機能: | ミニッツリピーター、ミステリアス ダブル トゥールビヨン |
その他機能: | 時、分、表示, パール状の飾り付きリューズにサファイアカボション |
防水性: | 30m |
定価: | 58,320,000円 |
シチズン カンパノラ ミニッツリピーター AH7060-53F
近年は国産ブランドにおいてもミニッツリピーターを搭載した複雑機構モデルが増えています。特にシチズンはミニッツリピーターの製造に力を入れており、カンパノラの最上位シリーズ「グランド・コンプリケーション」において、その実力をいかんなく発揮しています。
出典:https://campanola.jp/collection/AH7060-53F.html
シチズンのミニッツリピーターは機械式ではなく、クォーツ式です。伝統的な機械美を味わうことは出来ませんが、その代わりにリーズナブルな価格でコンプリケーションが楽しめます。アラームは朝、昼、夜で異なる3種類の音色が用意されており、時刻は高い音、低い音、高低2種類の音色で表現。まるで本物の鐘を叩くような、心地よい音色を持ち、スイス時計とは異なる魅力を味わえます。
詳細
素材: | ステンレススティール |
ケースサイズ: | 直径 42.5mm × 厚さ15.5mm |
基本機能: | ミニッツリピーター パーペチュアルカレンダー |
その他機能: | ローカルタイム, ローカルタイムアラーム, 24時間表示機能 |
防水性: | 30m |
定価: | 484,000円 |
まとめ
ミニッツリピーターは技術が進歩した現代においては、実用性のある機構とはいえないかもしれません。
しかし、大人のロマンと遊び心。各社のミニッツリピーターには、これらが詰まっているように思います。
同機構が搭載されているモデルは、機械式であれば最低でも1,000万円以上の価値があり、手にすることができる人はごく限られた人です。ただ、ミニッツリピーターには、見ているだけでも心奪われる独自の世界観があります。
時刻を告げる以外の機能も極めて高い次元でまとめられており、その圧倒的な機械美は高級時計でしか味わえません。
たとえ手に入れることができなくても、その存在だけでワクワクさせてくれる。これからもミニッツリピーターは時計ファンにとってのロマンであり続けることでしょう。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年