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WEBマガジン, 池田裕之, ロレックス

ロレックス エアキング 116900を徹底レビュー!歴史深い名機を語る

最終更新日:

ロレックス エアキング

ロレックス エアキングは、数あるロレックスの中でもっとも古いペットネームを持つ、歴史あるモデルです。

中でも12時位置に大きな三角形を置く現行116900は、計器然とした見た目が特徴となり、歴代エアキングの中でも異色なモデルです。

視認性も高く使い勝手も良いエアキング、デイトナやエクスプローラーと比べると決して定番ではありませんが、コアなファンにはたまらない魅力をたたえています。

そんなロレックス エアキング116900についてご紹介するとともに、生産終了の噂や実勢相場といった、気になる点をまとめてみました。

 

ロレックス エアキング 116900とは?

ロレックス エアキングは、「空の王者」という名が示す通り、ロレックスが航空業界発展へのオマージュとして発表したモデルです。

 

①概要

 エアキング Ref.116900

ロレックス エアキング 116900

素材:オイスタースティール
ケースサイズ:直径 40.0mm
全重量:79g
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3131
パワーリザーブ:約48時間
防水性:100m
定価:711,700円(税込)

現行のエアキングは、モデル史上もっともパイロットウォッチを意識しているといえるデザインです。

12時位置の大きな三角形のマーク、3時・6時・9時位置のアプライドインデックス、5分刻みの大ぶりなミニッツスケールを備えています。

磁気シールドやトゥインロック(二重密閉構造)のリューズ、傷防止サファイアクリスタル風防など、耐磁性・堅牢性にも優れたタイムピースでもあります。

ロレックスの王冠マークはイエロー、ロゴと秒針はロレックスグリーンに染められ、象徴的なメルセデス短針を備えていることがまた、ロレックスファンの心をくすぐりますね。

それではエアキングの歴史と、116900が誕生するに至った背景を次項でご紹介いたします。

 

②エアキングの歴史

エアキングは1946年に誕生してから2021年の現在に至るまで、実に75年間もの間「エアキング」というペットネームで親しまれてきたモデルです。

なお、エアキングはパイロットウォッチとして生まれたわけではありません。

世界の国々が飛行機で次から次へとさまざまな冒険を成功させていた、航空史の黎明期である1930年代。多くのパイロットたちは、ロレックスのオイスターウォッチを携えて空へ挑みました。エアキングはそんな空と人の歴史、それを支えたオイスターウォッチを讃えて作成されたのです。

特徴はロレックスにしては珍しい、軽やかな字体の「Air-King」のロゴです。

40年近くの超ロングセラーモデルとして人気を博した、Ref.5500が1950年代にデビューする前から、「Air-King」のロゴが文字盤に記されていました。

ロレックス エアキング 歴史

左:Ref.5500 右:Ref.14000

1950年代~1990年にかけて販売されたRef.5500は、オイスターパーペチュアルモデルのひとつとして登場しました。

バーインデックスなどを使用したシンプルな文字盤、ケースサイズも当時のスタンダード33mmと小ぶりで、現行モデルとは大きく印象が異なります。

その後の1990年頃にリリースされたRef.14000は、ケースサイズが34mmとひと回り大きくなりました。また、Ref.14000はRef.5500に採用されていたムーブメント1500系ムーブメント―Cal.1530やハック機能が搭載されたCal.1520―に代わり、3000番台のCal.3000が搭載されています。Cal.3000はノンクロノムーブメントですが、28,800振動のハイビートで、精度が大きくアップしました。

 

さらに2001年~2007年に製造販売されていたRef.14000Mには、この3000番台キャリバーに改良が加えられたCal.3130ムーブメントが搭載されます。

ツインブリッジを持つテンプなど、メンテナンス性が向上、精度向上にもつながりました。

 

ロレックス エアキング Ref.114200

2007年~2014年に製造販売された、6桁リファレンスのRef.114200では、Cal.3130がついにクロノメーター認定を受けます。

文字盤にはクロノメーター表示が加わり、 PRECISION表記が消えました。

何より、デザインが大きく変化します。これまでもオイスターパーペチュアルの一モデルだったこともあり、エアキングはデザインが豊富なタイムピースでした。しかしながらRef.114200からはアラビアインデックスやアプライド、文字盤にもコンセントリックと呼ばれるギョーシェ装飾が施された、華やかなデザインが登場することとなったのです。

また同世代のRef.114210はエンジンターンドベゼルを採用したり、Ref.114234はエアキング初のSS×WGコンビに、フルーテッドベゼルというドレスウォッチのようなデザインを用いたりする等、オイスターパーペチュアルの中でも異色の立ち位置として人気を博しました。

2014年までの7年間は、Cal.3130がクロノメーター認定を受けたことを祝うかのように、スポーティというよりドレッシーな進化が目立つ時期であったとも見て取れますね。

 

しかし、2015年のバーゼルワールドで、エアキングファンに衝撃が走ります。

これまでエアキングがオイスターパーペチュアルの一モデルであったことは前述の通りですが、文字盤にははっきりと「Air-King」のロゴが入っていました。

しかし2015年に登場したRef.114200・Cal.3130から、象徴である「Air-King」のロゴが消えてしまったのです。

他のスペックはすべて既出のRef.114200と同じだったため、オイスターパーペチュアルのマイナーチェンジという形で、唐突に「エアキング」の歴史に幕が下されました。

 

③エアキング 116900の誕生

2016年、エアキングは突然の復活を遂げます。

しかも、オイスターパーペチュアルの1モデルではなく、独立したスポーツロレックスのプロフェッショナルシリーズ「エアキング」として、新たなデビューを果たしたのです!

それが現行のエアキングRef.116900・Cal.3131です。

ロレックス エアキング

エアキングRef.116900は視認性の高さ、コストパフォーマンスの高さを持った、スポーツロレックスとして刷新されました。

そしてこれまではボーイズサイズの34mmだったケースも40mmケースとなり、男性の腕にちょうど良い、ロレックスらしいロレックスウォッチとなったのです。

もっとも手書きのような独特の風貌をもつ「Air-King」ロゴは、そのまま復活しました。

 

とは言え、エアキング 116900はこれまでのスポーツロレックスともちょっと変わった文字盤デザインが目を惹きますね。

このデザインコンセプトとなったのは、当時ロレックスが支援していたジェットエンジンカー「ブラッドハウンドSSC」と言われています。

ブラッドハウンドSSCのコクピットには、エアキング116900とそっくりなクロノグラフがはめ込まれているのです。

このブラッドハウンドSSCを彷彿とさせるエアキング116900の文字盤12時位置の三角形と針には、クロマライト夜光が使用されています。

 

また116900は、ミルガウスと同じインナーケース(磁気シールド)・同じムーブメントという点も特徴の一つです。

シンプルなスムースベゼルと重厚なケースは、エアキング116900のブラックにアラビアインデックスを配したダイアルをしっかり受け止め、バランスを保っています。

 

Cal.3131

出典:https://www.rolex.com/ja

ここでエアキング116900に搭載されているCal.3131についてさらに深堀すると、ミルガウスだけに搭載されていた高精度・帯磁性のクロノメータームーブメントです。

高い耐磁性が不可欠なパイロットウォッチとしても通用するブルーパラクロムヒゲゼンマイを使用し、常磁性ニッケルやリン合金製ガンギ車を採用しました。

インナーケースに磁気シールドも搭載したエアキング116900は、名実、そして見た目とすべてがパイロットウォッチとしての体裁を整えたのです。

象徴的なグリーンにカラーリングされたロレックスのロゴとイエローの王冠マークのファンも少なくありません。

長いオイスターパーペチュアルの一モデルという立ち位置から脱却し、プロフェッショナルシリーズとしての地位を確立したエアキング116900。

ジェットエンジンカーのコクピットで使用されたタフなタイムピースのデザインを継承し、ミルガウスの強靭なムーブメントを手に入れた、ハイスペックなスポーツロレックスです。

ロレックス エアキング 116900 生産終了の噂

ファンにはショックなお話ですが、エアキング 116900には常に生産終了の噂がつきまとっています。

ミルガウス 116400GVも生産終了の噂が絶えないモデルですが、エアキング116900と同じCal.3131を搭載しています。

エアキング116900とミルガウス116400GVは、古株の3100番台ムーブメントを今なお使用しているウォッチ同士。

一時期新作発表前には、存在を惜しむかのようにロレックス公式インスタグラムに画像がアップされるなど、ファンをざわめかせています。

ロレックス エアキング 116900

また、現行のエアキング116900がローンチされた2016年は、エアキング誕生70周年という記念の年でした。

そのために、エアキング史の中では異質な「特別記念モデル」的な立ち位置とも考えられます。すなわち、いつ生産終了してもおかしくはない、と。

オイスターパーペチュアルの一モデルとして扱われていたエアキングが、2014年を最後に一度生産が終了していることも、エアキング116900生産終了の噂に拍車をかけています。

なお、2021年8月現在、エアキング116900生産終了という正式発表はありません。

 

ロレックス エアキング 116900の実勢相場

ロレックス エアキング 116900の実勢相場を見てみましょう。

ロレックスは手に入りにくく定価よりも実勢相場が高いブランドとして知られていますが、それでも需要が止まない稀有なブランドです。

ロレックスは世界中に求めるファンがいるにも関わらず、近年では新型コロナウイルスの影響もあり、生産調整せざるをえない状況です。そのため正規店はおろか並行店ですら人気モデルが手に入らない・・・なんて市況が長らく続いてきました。

品薄ゆえに、需要と供給のバランスが崩れて一般には安くなるはずの並行輸入相場がグングン高くなってしまうのです。

下記が、直近6年間のエアキング 116900の並行相場の推移です。当店で販売した中古モデルの価格の年間平均を推移と致しました。

 

 

付属品 平均相場
2017年 箱/保証書 有 643,000円
2018年 箱/保証書 有 635,000円
2019年 箱/保証書 有 677,000円
2020年 箱/保証書 有 736,000円
2021年 箱/保証書 有 926,000円

プロフェッショナルシリーズとしてスポーツロレックスの仲間入りを果たしたエアキング 116900も、定価より実勢相場の方が高いモデルです。上記価格推移を見ると、2020年を契機にぐんと相場が上昇していることがおわかり頂けるでしょう。

エアキング 116900のロレックスによる定価は前述の通り税込711,700円ですが、最近では新品の実勢相場は110万円前後まで上がってきました。

エアキング 116900はコンディションによりますが、中古でも100万円前後で取り引きされています。

中古品ですら定価を上回るという点が、ロレックスならではの実勢相場と言えるでしょう。

ほんの1~2年前までは60万円~70万円ほどで手に入ったお手頃なモデルということを考えると、かなりの価格差に感じられるかもしれません。

しかし軒並み高騰を続けているスポーツロレックスの中では抑えられた価格で、手に入りやすいモデルと言えます。

前述のように突然生産終了となって完全廃盤になったり、大きなモデルチェンジでデザインががらりと変わるようなことがあれば、現行エアキング 116900の価値は一気にアップします。

腕時計をリセールバリューや資産価値で選ぶという方には、手頃な価格もあって人気が続きそうなモデルでもあります。

まとめ

オイスターパーペチュアルの1モデルとして登場したエアキングは、一時的な生産中止を乗り越え、プロフェッショナルシリーズ「エアキング 」116900として生まれ変わりました。

パイロットウォッチのように高い視認性やロレックスグリーンのロゴ、高級感あるブラックダイアルにアプライドインデックスなど、ロレックスらしい特徴が随所にちりばめられています。

エアキング 116900は時間の見やすさやロレックスらしさ、スポーツロレックスの中では手ごろな価格など、ファーストロレックスをお探しの方にもおすすめです。

一方、生産終了の噂が絶えない特殊な立ち位置から、完全廃盤になった際の価格の跳ねを期待する方も少なくありません。

しかしロレックスの一ファンとしては、最も古いペットネームを持つ、愛され続けた名機の進化形として、愛用して頂きたいと願っています。

当記事の監修者

池田裕之(いけだ ひろゆき)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長

39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年

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