出典:https://www.omegawatches.jp/
2021年明けてすぐ、オメガは新型スピードマスター プロフェッショナル―またの名をムーンウォッチ―を発表しました。そして9月、同一シリーズながら、新たに「クロノスコープ」をコレクションに追加するに至ります。
近年スピードマスターは様々な「周年」を迎えたことでますますその人気を高めていますが、この度のクロノスコープコレクションは最新作ということになります。
一見して計器然とした、そしてノスタルジーを覚えるデザインが、これまでのスピードマスターとはまた違った魅力を湛えます。
この記事では、2021年9月に発表された新作スピードマスター クロノスコープコレクションについて徹底解説致します!
目次
オメガ 新作スピードマスター クロノスコープコレクションとは?
①DATA
素材:ステンレススティールまたはブロンズゴールド
ケースサイズ:直径43mm×厚さ12.8m
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.9908
パワーリザーブ:60時間
防水性:50m
定価:979,000円~(詳細は後述)
②概要
スピードマスターの基幹モデル・プロフェッショナルとそう変わらないケースフォルム,タキメーターベゼルを持ちながらも、ノスタルジックなツーカウンタークロノグラフを備えるクロノスコープコレクション。
文字盤に描かれたテレメーターとパルスメータースケールによって、いっそうの独創性を放ちます。
いったいこのクロノスコープとは、どのような新作モデルなのでしょうか。
出典:https://www.omegawatches.jp/
クロノスコープとはオメガの造語ではありません。
クロノグラフなどと同様、ギリシャ語で「時間」を意味するchronosと「見る」を意味するscopeを語源としており、時間測定装置などと使われています。
2000年代にデ・ヴィルシリーズで同名のコレクションが製造されていましたが、さらに遡って19世紀、オメガの懐中時計にその範が見られるようです。
そんな歴史を持つクロノスコープ、「時間測定装置」の名前からもわかるように、数あるスピードマスターの中でも各種測定装置を搭載することとなりました。
各機能は後述しますが、クロノグラフ,テレメーター,パルスメーターです。
お馴染みの「速度」計測はタキメーターで、「距離」を計測するテレメーターは文字盤上の「カタツムリ」型サークルで、そして「心拍」を計測するパルスメーターはその直下のサークルを用います。
なお、文字盤またはインダイアルには各種スケールと同様に円状の美しいスネイル仕上げ(カタツムリの殻のような渦巻状の仕上げ)が施されていること。スピードマスター プロフェッショナルとは異なるリーフ針にアラビア数字のインデックスが採用されていることが、視認性を確保するとともにヴィンテージテイストに一役買っているように思います。
出典:https://www.omegawatches.jp/
ケースサイズは直径43mm。他のスピードマスターにはないサイズ感です。
ちなみにスピードマスター プロフェッショナルは直径42mmですので、クロノスコープの方がわずかに大きいと見受けられます。ツーカウンターというレトロ調でありながらも、モダンなサイズ感と言えるでしょう。
一方でケース厚はクロノスコープで12.8mm。スピードマスター プロフェッショナルは13.1mmとなるため、ボリュームは抑えられました。
バリエーションは全部で7種。
ステンレススティール6種の他、今年新素材としてシーマスターに採用されたブロンズゴールドがリリースされました。
ストラップはメタルブレスレットまたはレザーストラップ。
出典:https://www.omegawatches.jp/
メタルブレスレットは5mmの微調整ができるバックルが付属しています。
もともとスピードマスターはコマが小ぶりなため腕にフィットした調整がしやすいブレスレットでしたが、この工具いらずの微調整機能によって季節や使用環境下によって、さらに快適な着け心地が実現しそうですね!
なお、特筆すべきはラインナップにあるブロンズゴールドモデルです。
出典:https://www.omegawatches.jp/
2021年には新型シーマスター300がオメガから発表されたことでも大きな話題となりましたが、この時「ブロンズゴールド」なる新素材も、同時発表されました。ブロンズゴールドはオメガ曰く、独自のブロンズ合金であるとのこと。
ブロンズは近年の時計業界でトレンドの一つとなっています。
通常、日常使いの腕時計はゴールドやステンレススティールといった退色しづらい素材が用いられます。しかしながらあえて汗や湿気に弱く、変色しやすいブロンズ素材を用いることで、自分だけのエイジングを・・・といった楽しみ方が広まっているのです。
確かに変色したブロンズの渋みある風合いは、ヴィンテージ感が溢れます。
もっとも各社でそのままブロンズを使っているわけではありません。ブロンズは酸化しやすい特性上、肌に着け続けると金属アレルギーを誘発する可能性があるためです。
腕に直接あたる裏蓋部分はステンレススティール製としたり、コーティングしたりといった工夫を施しています。
そしてオメガではこのブロンズ特有の性質は活かしつつブロンズの課題を解決する方法として、銅に9Kのゴールド(含有率37.5%),そしてパラジウムとシルバーを混ぜ合わせた、と。「肌に直接着けられる」かつ「優れた耐蝕性によってゆっくりと時間をかけて風合いを変化させ、天然のツヤを生み出す」独自ブロンズを開発しました。
まだ実機でブロンズゴールドを見たことはありませんが、画像を見るとブロンズらしい風合いを湛えつつも、特有の美しさのようなものを感じますね。
出典:https://www.omegawatches.jp/
なお、新型スピードマスター クロノスコープのブロンズモデルは文字盤もオパーリン仕上げの,そして針やインデックスもPVD加工のブロンズが用いられており、ブラウンカラーのセラミック製タキメーターベゼルと併せて格調高いデザインに仕上がります。
ムーブメントは全てのモデルで手巻きムーブメントCal.9908を搭載しています。
これはスピードマスター レーシングやシーマスター ダイバー300Mのツーカウンタークロノグラフモデルなどで搭載されてきた自動巻きCal.9900をベースとしたムーブメントで、アラベスクモチーフが装飾された3/4プレートが新たに加えられました。
出典:https://www.omegawatches.jp/
オメガのお家芸であり、標準装備となりつつあるマスタークロノメーター認定機となっており、15,000ガウスという屈指の耐磁性能,またコーアクシャル機構による優れた耐久性を堅持しています。
このムーブメントはシースルーバックから鑑賞することが可能です。
税込定価はステンレススティール×革ベルトモデルが979,000円,オールステンレススティールが1,023,000円。ブロンズゴールド製モデルが1,661,000円となっております。
Column;「タキメーター」「テレメーター」「パルスメーター」とは?
オメガの2021年新作スピードマスター クロノスコープで搭載される「タキメーター」「テレメーター」「パルスメーター」。
いったいこれらは、どのような機能なのでしょうか。
タキメーターはクロノグラフでおなじみの、速度計測のためのスケールです。簡単に言うと「1kmを何秒で走行したか」を計測することで、平均時速を求められる、というもの。ちなみにタキメーターのタキとは、「速い」を意味するTachyが語源のようです。
出典:https://www.omegawatches.jp/
多くのクロノグラフモデルには1秒で1周するクロノグラフ針とタキメーターベゼルが搭載されているため、これを用いて速度を計測します。
移動を始めると同時にクロノグラフ針をスタートさせ、1km地点でストップボタンを押す。この時、クロノグラフ針が指し示しているタキメーターのメモリが平均時速となります。例えば「80」を指していたら、平均時速は80kmということになります。
また、ある作業を開始すると同時にクロノグラフ針を稼働させ、終了とともにストップします。
この時間が30秒だとすると、クロノグラフ針は120のメモリを指しています。すなわち、その作業を同一ペースで行うと仮定すれば、1時間に120回こなすことができる、と示唆します。
テレメーターは距離を計測するためのスケールです。
出典:https://www.omegawatches.jp/
現在では通信分野の遠隔伝送システムとして用いられることもありますが、もともとは遠隔地の測定方法の一つでした。
1秒で1周するクロノグラフ針を使って計測するのはタキメーターと同様ですが、テレメーターの計測対象は「光」「音」です。
例えば空がピカッと光った瞬間にクロノグラフを稼働させ、ゴロゴロと雷鳴が轟いた瞬間にストップする。この時クロノグラフ針が「2」を指し示していたとすると、雷との距離は2km先であることを示唆しています(マイル表記もあり)。
ちなみにこのスケールの表記間隔は音が空気中を進む速さに準じていますが、あくまで「おおよそ」となります。
最後のパルスメーターは心拍を計測するためのスケールです。
出典:https://www.omegawatches.jp/
パルスメーターはスケール以外に「15」とか「30」などといった数字が印字されていますが、これが心拍の基準値となります。
クロノグラフを稼働させるとともに、この基準値の数だけ脈を数えます。基準値に拍動が達したところでストップを押し、この時クロノグラフ針が指し示す数字が、1分間の脈拍数となります。例えば上記画像で30回脈を打った時、80位置にクロノグラフ針がきていると、1分間に80回脈拍することを示唆しています。
テレメーターとパルスメーターを搭載している時計は、そう多くはありません。
だからこそ新作クロノスコープの特別感は、所有欲を満たすのではないでしょうか。
なお、各種メーターについて、詳しくは下記記事が参考になれば幸いです。
まとめ
2021年9月にオメガが新しくコレクションに加えた、スピードマスター クロノスコープについてご紹介致しました!
ツーカウンタークロノグラフにテレメーター,パルスメーターが搭載されることで、えも言われぬ魅力を湛えた新型スピードマスター。また、ブロンズゴールドはもちろん、ブルーのタキメーターベゼルや白×黒を用いた正統派パンダダイアル等、他のスポーツモデルとは一線を画した独創性をも持ち合わせますね。
市場にはまだ出回っていませんが、これは一度手にしたいモデル。
オメガからのデリバリーを待ちましょう!
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年