「アナログとデジタルを両立させたG-SHOCKってどんな時計?」
「G-SHOCK AW-500・AWM-500の魅力や特長について詳しく知りたい」
「アナログ時計の常識を打ち破った」としばしば称される、G-SHOCKのAW-500。
このAW-500とは1989年に登場したG-SHOCK初のアナログ表示を持ったモデルです。
アナログでありながら耐衝撃構造を確立していたこと。
また既存のG-SHOCKとは異なる、真円を基調としたスタイリッシュさを有していたことから、ファンは少なくありませんでした。
アナログ表示モデルが進化するにつれてAW-500はカタログから姿を消していましたが、2020年11月、約30年の時を経て、カシオがこのAW-500をオリジナルに忠実に復刻することとなりました!
そんなデジタル G-SHOCK リバイバルモデルの魅力や特長について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
さらに同一モデルのフルメタル化を果たしたAWM-500も同時リリースされており、これは近年のカシオ人気を、またさらに底上げするであろう銘役者が揃いました。
この記事ではG-SHOCK AW-500・AWM-500の魅力や特長を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
画像付きで詳しく紹介しますので、G-SHOCKのリバイバルモデルをお探しの方はぜひ参考にしてください。
出典:https://gshock.casio.com/jp/products/full-metal/awm-500/
目次
初のアナログ×デジタルG-SHOCK AW-500とは?
冒頭でもご紹介致しましたが、AW-500はG-SHOCK初のアナログ×デジタル表示モデルです。G-SHOCKが発売された6年後にあたる1989年に開発されました。
「カシオ計算機」の社名からもわかる通り、同社は時計専業メーカーではありません。電池式計算機によって一時代を築いてきましたが、1970年代、成長著しかったクォーツ時計産業に目をつけ、新たに事業参入するに至りました。
とは言え既に国内市場には海外ブランドの他、セイコーやシチズンといった老舗がシェアを占めている状況でした。そこで他社との差別化を図るため、また計算機事業で培ったエレクトロニクス技術を強みとするためデジタル表示時計に目をつけ、1974年に「カシオトロン」を発売します。
このカシオトロン、オートカレンダーを搭載した、これまでの伝統的な時計とは全く異なるデジタル時計。時分秒の他にプッシャー操作によって月・日付・曜日表示が可能でしたが、大の月・小の月・閏年を自動計算することで、電池が稼働している限りは手動修正不要という機能を実現したのです。
こうして時計市場に打って出たカシオは、1983年にG-SHOCKをリリースしました。
出典:https://products.g-shock.jp/_detail/DW-5000C-1A/
G-SHOCKは「落としても壊れない」、すなわち耐衝撃構造を有していることがアイデンティティです。この構造は、デジタル式であったからこそ実現できたと言われています。
と言うのも、アナログ式はどうしても時分針やそれを動かす歯車といった機械的構成物が多くなってしまい、衝撃によって取れてしまったり破損してしまったりするのです。とりわけ「落としても針が落ちない」ことは至上命題でした。
しかしながら、創業者の「発明は必要の母」を今なお価値として提供するカシオ。これは、良いものを発明すればおのずと人々はそれを必要とする、といった意味です。
1980年代当時は機械式時計が再び市場に返り咲き(1969年、セイコーが市販化した安価で便利なクォーツ時計によって、一時機械式時計は大きくシェアを奪われていた)、その価値が改めて見直されていたことから、カシオはデジタル駆動のアナログムーブメント開発に着手することとなりました。
出典:https://products.g-shock.jp/_detail/AW-500-1E/
そうして1989年に誕生したのが、AW-500です。上記画像が、初代モデルとなります。
G-SHOCK初のアナログ式であり、かつデジタル表示も搭載した、視認性に富んだ一本でした。
もちろんG-SHOCKの名前が示すように、耐衝撃構造付き。「落としても壊れない」を実現するため内部構造を見直したり、パーツ類を軽量化したうえで、さらに20気圧の防水性能を獲得しました。今でこそ耐衝撃性に考慮された腕時計はよく出回りますが、1980年代当時にアナログ時計で実現していた―しかもカシオの価格帯で―AW-500が、いかに常識破りであったか。
また、AW-500はその機能のみならず、既存のG-SHOCKよりも真円を基調としたシンプルフォルムであったことも大きな特徴です。G-SHOCKはスクエアや八角形フォルムが基調であり、またゴツゴツした男らしさのイメージが強かったかもしれません。そのイメージを打ち砕くベーシックなフォルムは、カジュアルすぎない落ち着いた腕時計が欲しいといった層のニーズによくマッチしていたように思います。
実際、AW-500のデザインをカシオは「シンプル&ミニマル」と表現しています。
その後、1992年にはオリジナルG-SHOCK5000系に代表される八角形フォルムのアナデジ表示AW-550が登場。また2005年にG-SHOCK初となるデジタル表示を持たない多針アナログモデルGS-1000が登場していくなど進化の過程でAW-500は生産終了となりました。
しかしながらこのAW-500特有のシンプルさに惹かれる方は少なくないでしょう。
そんな根強い声を受けてか、2020年11月、ついにG-SHOCKラインナップに復刻されることとなりました。
復刻盤AW-500およびAWM-500については、次項で解説致します。
帰ってきたアナログ×デジタルG-SHOCK AW-500とは?
出典:https://www.casio.com/jp/watches/gshock/product.AW-500E-1E/
2020年に復刻されたAW-500。「シンプル&ミニマル」な初代モデルを踏襲した真円フォルムのデザインは、他のG-SHOCK製品とひと味違う雰囲気を湛えました。
「初代モデルを踏襲した」とは言えシンプルであるがゆえに、あるいはG-SHOCKのデザイン力の高さは早い段階で確立されていたがゆえに、古臭さは全く感じさせませんね。今なおベーシックなデザインと言えます。
AW-500は正面から見るとプッシャーが見えないような設計になっていることから、本当に真ん丸フォルムであることが際立ちます。ただ単調なイメージになってしまうことを避けるため、ケースは円錐型となっており、文字盤がシュリンクして見えます。また文字盤に奥行きがあることから画像からはわかりづらいかもしれませんが、かなり躍動感のある仕上がりになっています。
ケース直径は47.7mm,縦方向で55.2mm,厚みは14.7mmとなりますが、実際に見ると大きさをあまり感じさせません(このサイズは、オリジナルと僅か0.1mmしか変わりません)。
ちなみに復刻版の外装は、1989年当時の図面をもとに再設計しているとのことです(しかも、デジタル化されていなかったがために過去の図面から掘り起こしたとか)。
出典:https://gshock.casio.com/jp/products/aw-500/aw-500e/
文字盤も初代モデルに範を取ったデザインが見て取れます。
まず目に飛び込むのは、形状の異なる時分針ではないでしょうか。
分針は指針の方にホールが穿たれ、またお尻の方には矢印が加えられています。時針の方は台形が象られています。これは、独創性を醸し出すのと同時に、矢印モチーフがあることによって分針・短針がともに12時位置にきたときでも、文字盤6時側が間延びしないように取られた工夫とのことです。
ちなみに、針の中心の留め具が他のアナログモデルと比べて大振りであることにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。これはAW-500開発当時に「落としても絶対に針を落とさないために」しっかりとした留め具が必要であったことが背景にありますが、逆にAW-500のデザインアイデンティティの一つにもなっている、とし、2020年版でもリバイバルされました。
出典:https://gshock.casio.com/jp/products/aw-500/aw-500e/
インデックスはG-SHOCKの基本スペック「20気圧防水」にちなみ、ダイバーズウォッチが逆回転防止ベゼルに採用している三角スケール(12時位置)や視認性の高いアラビア数字を採用することとなりました。
とは言え当然ながら、最先端テクノロジーによってチューンアップされています。
とりわけオリジナルAW-500はムーブメントの構成上針位置が中心を外れてオフセットされていましたが、復刻版は見事センターに。バランス感覚の良いレイアウトとなり、よりシンプル&ミニマムが引き立ちますね。
また、G-SHOCKをG-SHOCKたらしめた耐衝撃構造―中空構造にしたケースとモジュール間に緩衝パーツを入れ、衝撃吸収する―はそのままに、インナーケースやパネルバックを軽量化させることでさらに頑強に。またモジュール自身にも耐衝撃設計を施しました。
シンプルゆえ、電池寿命が約7年と非常に長持ちなのも嬉しいところ。
なお、フルオートカレンダーやELバックライトといった便利機能が搭載されているのも、「G-SHOCKらしさ」ですね。
AW-500は初代モデルを再現したAW-500E-1EJFの他、ワンカラ―とバーインデックスによってよりミニマルになったオールブラックのAW-500BB-1EJF,鮮烈なレッドのAW-500BB-4EJFをラインナップ。
定価は税込14,300円と、初代からそうであったように優れたコストパフォーマンスを発揮してくれるところも、ユーザーライクなG-SHOCKらしさですね。
待望のフルメタル化!アナログ×デジタルG-SHOCK AWM-500も登場
出典:https://gshock.casio.com/jp/products/full-metal/awm-500/
近年のG-SHOCKのトピックの一つがフルメタル化です。すなわち、外装やブレスレットをオールメタルにする、というものです。
1996年、カシオは第二のマテリアルとして「メタル」を掲げており、近年では積極的にG-SHOCKを始めとした自社製品に素材として用いています。
しかしながらG-SHOCK製造初期は樹脂が素材のメインであり、メタルでの実現は難しいとされていました。メタルは樹脂に比べて重量があるため、緩衝効果が薄く、衝撃によって破損してしまうためです。
もっとも繰り返すようにカシオは「発明は必要の母」を精神としています。
メタル用の耐衝撃構造を開発することで、1996年に初のフルメタルG-SHOCK「MR-G」をリリース。近年では高級化路線の一環もあり、MR-GやG-STEELといったメタルをメインに据えたコレクション展開はもちろん、既存モデルでもメタル製品を意欲的に輩出することとなりました。
出典:https://gshock.casio.com/jp/products/full-metal/awm-500/
そんな中においてAW-500もまた、ファン待望のフルメタル化が図られたこととなります。
AWM-500はフルメタル仕様のモデルとして、専用の耐衝撃構造が用いられます。これは、ベゼルとケースの間に樹脂製緩衝パーツを搭載させることで衝撃を分散させる、というもの。これによって堅牢で重量のある外装においても上手に衝撃を分散させ、樹脂製G-SHOCKと遜色のない堅牢性を獲得するに至りました。
ちなみにこの構造は、2018年に登場した通称フルメタル5000と親しまれるGMW-B5000シリーズで確立した最新テクノロジーです。この構造のみならず、外装の無駄を徹底的に省いた結果、軽量化に成功したことも耐衝撃性獲得の要因として大きいでしょう。
出典:https://gshock.casio.com/jp/products/full-metal/awm-500/
この構造のみならず、AW-500のフルメタル化に当たって、オリジナルから随所をリファインしているようです。
と言うのも、AWM-500はケース直径44.5mm×縦51.8mm×厚さ14.2mmと、AW-500と比べてボリュームがシュリンクされています(AW-500のケースサイズは直径47.6mmでした)。これは、フルメタル化によって膨張して見えがちな外観を考慮したうえでの敢えてのダウンサイジング。
また、樹脂バンドではなくメタル製ブレスレットへ換装したため、3コマ目までを立体的な曲線とすることで、ケースとの一体感に配慮しました。
AWM-500に限らず全てのフルメタルG-SHOCKで特筆すべきは、そのメタルの質感です。
よくG-SHOCKは「カジュアルさ」がイメージとして語られることがありますが、メタル製品はむしろその逆。ヘアライン仕上げや鏡面仕上げといった加工・装飾がしっかりと施されることによって、高級機としての風格をまとうこととなりました。
商売柄、高級時計を触る機会が多いですが、フルメタルG-SHOCKの丁寧な作り込みは決して見劣りするものではありません(もちろん100万円のモデルと比べて・・・というわけではありませんが)。
フルメタルの外装に合わせて文字盤もメタル蒸着によって質感を向上させ、高級感に一役買うこととなりました。
出典:https://gshock.casio.com/jp/products/full-metal/awm-500/
AWM-500はシルバー二種とゴールドカラーの計三種がラインナップされています。
定価はシルバーが66,000円、ゴールドが74,800円(いずれも税込)。
AW-500と比べると高価格帯に設定されていますが、フルメタル特有の丁寧な仕上がりを楽しめること。加えてAWM-500の方は、やはりG-SHOCKのお家芸とも言える「マルチバンド6」「タフソーラー」を搭載させたことで、お値段以上の価値を獲得していると言えます。
マルチバンド6とは、世界の6局に対応した標準電波時計です。通常電波時計は標準電波が届かない地域ではクォーツとして機能しますが、カシオは2008年にこの多局受信機能を確立。日本の二か所のみならず中国,北米,ドイツ,イギリスの標準電波に対応することで、世界中の多くの地域で常に正確な時刻を提供することとなりました。
さらにタフソーラーは1998年に同社が開発したソーラー充電のことですが、超低消費電力であることが大きな特徴です。マルチバンド6のようにエネルギーを多く消費しがちな機能と併用することで、電池消耗を防ぎ高効率な稼働に大きく貢献しています。
なお、通常ソーラー時計は光の取り込みのために文字盤の透過率を高めています。しかしながらAWM-500では、前述の通りメタルの質感を活かすためのメタル蒸着技術が施されています。
そこでカシオは遮光分散型ソーラーパネルを装備。これによって低い文字盤透過率においても稼働電力をしっかり確保できるようになりました。また、電波受信アンテナを大型化し、さらにメタルケースから隙間を作ることで感度の向上も配慮しています。
まとめ
30年の時を経て復刻した、往年の名作AW-500およびフルメタル化されたAWM-500を徹底解剖いたしました!
文中でも言及しているように、カシオ創業者メンバーの精神「発明は必要の母」が息づく同社だからこそアナログ×デジタル表示のG-SHOCKを生み出し、2020年の今フルメタル化も果たした。そんな息遣いが感じられるリバイバルではないでしょうか。
スクエア液晶のオーセンティックなG-SHOCKも素晴らしいですが、オンオフ問わずに身に着けられるシンプル&ミニマルな一本はいかがでしょうか?
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年