出典:https://www.patek.com/en/home
世界最高峰の呼び声高いパテックフィリップ。
工芸品とも捉えられる美しくも高貴な、それでいて工業製品としても完成された腕時計を世に輩出し続けてきました。
近年では「ラグジュアリー・スポーツウォッチ(通称ラグスポ)の中でも、さらに最高峰と称されるノーチラスが最も有名なモデルとなりつつありますが、同社の真髄とは「複雑機構(コンプリケーション)」。
2021年10月、この事実を象徴するかのように、複雑機構を搭載した見事な新作三部作がパテックフィリップより発表されました!詳細をお伝え致します。
目次
2021年パテックフィリップ新作 コンプリケーション アニュアルカレンダー クロノグラフ 5905/1A-001
出典:https://www.patek.com/en/home
スペック
外装
型番: | 5905/1A-001 |
ケースサイズ: | 直径42mm×厚さ14.13mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | グリーン |
ムーブメント
ムーブメント: | CH 28-520 QA 24H |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 最大55時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
予価: | 6,798,000円(税込) |
アニュアルカレンダー(年次カレンダー)×クロノグラフを備えたCal.CH 28-520 QA 24Hは、パテックフィリップのコンプリケーションムーブメントの一つです。
当該機構が発表されたのが2006年。
その年はパテックフィリップが初めて完全自社製クロノグラフをリリースした年でもあり、派生キャリバーとして同時リリースされました。
2006年に搭載されたモデルはRef.5960系でしたが、2015年には5905系へとモデルチェンジ。パワーリザーブ表示が廃されるなどディテールは変わったものの、ベースキャリバーはCH 28-520。またきわめてモダンなレイアウトの文字盤もそのまま受け継がれることとなり、パテックフィリップのコンプリケーションモデルと聞いて、この顔立ちをまず思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
つまり、Ref.5905自体は傑出した逸品ではあるものの、特段新しいモデルと言うわけではありません。
しかしながらこの2021年新作の驚くべき点は、なんとステンレススティール製ケースかつブレスレットを搭載した、きわめてスポーティーなモデルだと言うことです!
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このアニュアルカレンダー×クロノグラフモデル、現行Ref.5905ではローズゴールドまたはプラチナ製がラインナップされていますが、5960時代に一度ステンレススティールモデルが登場しました。
2014年に発表されたRef.5960/1A-001は2018年に生産終了。パテックフィリップ自体が大量生産とは無縁のブランドであることも寄与して、そう出回りは多くない一本です。しかしながら同社のコンプリケーションでは非常に珍しいカジュアル感,スポーティー感に虜になった方は少なくないでしょう。
※2014年発表のSSコンプリケーション Ref.5960/1A-001
この5960/1A-001の生産終了以来、当該機構でステンレススティール製モデルは出ていませんでしたが、今年の春先の新作発表でアニュアルカレンダーのRef.4947/1Aで、次いでこの度Ref.5905/1A-001にて新登場と相成ったわけです。
2021年新作モデルの一つのトピックともなったグリーン文字盤を湛えているのも、特筆すべき点ですね。
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かつて、時計の文字盤と言うとブラックやホワイト,シルバー等がベーシックでした。次いでブルーやブラウンなどのスタイリッシュなカラーリングも好まれますが、今年のトレンドは、なんと「グリーン」。各社がグリーン文字盤をおのおのリリースしているのですが、そのいずれもこれまでの文字盤にはないアヴァンギャルドさと、シックさの両面を持ち合わせています。
パテックフィリップでも、2021年4月にノーチラスで見事なグリーン文字盤をローンチしました。
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やや深めのオリーブグリーンはソレイユ仕上げが施されており、えも言われぬ色気を醸し出します。
このオリーブグリーンが、新作5905/1Aでも採用されるに至りました。5960時代のスポーティーさとはまた違った、気品ある顔立ちに仕上がっていますね。
ケースサイズは直径42mm×厚さ14.13mm。やや肉厚とはなるもののサテン仕上げとポリッシュ仕上げのグラデーションが美しく、またやや湾曲したフォルムが上品です。
バックルは5960/1A時代も折り畳み式でしたが、再設計されているようです。
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「新しさ」についつい目を奪われてしまいましたが、もちろん熟成したCal.CH 28-520 QA 24Hも当新作の目玉です。
フライバック式クロノグラフを備えた当ムーブメントはパテックフィリップ・シールに準拠しており、しっかりと丁寧な仕上げ・装飾が施されて見るのも楽しい逸品です。
なお、6時位置のインダイアルは60分積算計となり、このモデルには秒針がついていないことになります。しかしながらパテックフィリップのCal.CH 28-520 QA 24Hは、クロノグラフ針を常時稼働させ、秒針代わりにするもよし。通常のクロノグラフ個体でこの使い方はパーツ摩耗を促進するためご法度なのですが、パテックフィリップでは常時差動を可能にしているのです。こういった性能のブラッシュアップも、さすがパテックフィリップですよね!
さらに言うと、このモダンな文字盤もパテックフィリップのアニュアルカレンダーを語るうえでは欠かせないトピックです。
12時位置に扇形にデイト・デイ・月が居並び、レイアウトとしてモダンな印象を与えるのみならず非常にスッキリと視認性高いコンプリケーションにまとまります。昼夜インジケーターが6時位置のインダイアル位置に収められているのも、この視認性の高さに一役買っていますね。
これだけ完成されたパテックフィリップの新作コンプリケーション。一つ難点を挙げるのなら、「買えるのか」でしょうか・・・
既にご存知の諸氏も多いように、近年パテックフィリップのステンレススティールモデルは、異常とも言える高値更新を続けています。生産終了が決まったブルー文字盤のノーチラス Ref.5711/1A-010などは1700万円超。グリーン文字盤の5711/1Aも出回りはほとんどないようで、セカンダリーマーケットで5,000万円超えの値付けが行われたとか。
前述の通り、そうたくさんは生産しないパテックフィリップではあるものの、近年は国内外で需要が高まっているためか品薄は加速するばかりです。
しかしながら、一度は目にしたい新作モデルの一つです。
2021年パテックフィリップ新作 グランド・コンプリケーション パーペチュアルカレンダー クロノグラフ 5204R
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スペック
外装
型番: | 5204R |
ケースサイズ: | 直径40mm×厚さ14.3mm |
素材: | ローズゴールド |
文字盤: | スレートグレー |
ムーブメント
ムーブメント: | CHR 29-535 PS Q |
駆動方式: | 手巻き |
パワーリザーブ: | 最大65時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
予価: | 35,596,000円(税込) |
2020年に引き続き、パテックフィリップの最高傑作グランドコンプリケーション パーペチュアルカレンダー×クロノグラフの、新作モデルが登場しています!
前項でご紹介したアニュアルカレンダーは年次カレンダーの呼び名からもおわかり頂けるように、こちらが一年に一回のカレンダー手動修正が必要であることに対し、パーペチュアルカレンダーは文字通り「永久」。時計が動き続けていることを前提とすれば、手動での日送り調整は基本的には不要となります。
パーペチュアルカレンダーは「世界三大複雑機構」に数え上げられます。そしてこのメカニズムを構築するためには、卓越した時計製造技術が必須となります。
パテックフィリップは早い段階からコンプリケーションづくりに一家言持っていましたが、さらにここにクロノグラフを搭載させているという事実には、同社の底知れぬものづくりの力を感じさせられます。
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そんなパテックフィリップのパーペチュアルカレンダー×クロノグラフの歴史は、1941年まで遡れます。
初代Ref.1518から続いてRef.2499,Ref.3970,Ref.5970と続き、2011年に誕生したRef.5270で完全自社製ムーブメントを搭載するに至りました。
意外と「完全自社製としては歴史が新しい」と思うかもしれませんが、これは長らくパテックフィリップのクロノグラフがレマニア製(古くはヴィクトラン・ピゲ製)であったことに由来します。クロノグラフは名門サプライヤーがその市場の大きい部分を占めていたことから、パテックフィリップのように汎用機をベースに改良してきたブランドは名門の中でも少なくないのです。
しかしながら2005年に前述の通り、完全自社製クロノグラフCal.CH 29-535を開発。グランドコンプリケーションに載せるクロノグラフキャリバーも、このCal.CH 29-535がベースとして採用されることとなりました。
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2011年にRef.5270としてローンチされたCal.CH 29-535 PS Q(ちなみにユーチューバーのヒカキンさんがRef.5270/1Rを所有されているとか)。その後Ref.5170やRef.5270に搭載されていきますが、今回新作として登場したRef.5204は2012年にラインナップに加わりました。
そのため決して真新しいとは言えないかもしれませんが、やはり特筆すべきは文字盤でしょう。
ソレイユ仕上げのスレートグレー文字盤が本当にオシャレで、ローズゴールドの上品な色味とよくマッチしていますね。
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なお、Cal.CH 29-535 PS Qの機能について解説すると、前述の通りパーペチュアルカレンダー×クロノグラフ搭載のグランド・コンプリケーションとなりますが、さらにクロノグラフにラトラパンテ機構が搭載されています。
ラトラパンテ(またはスプリットセコンド・クロノグラフ)とはラップタイム計測を実現するクロノグラフで、そのため針はクロノグラフ針・ラトラパンテ針の二本を搭載することとなります。
針が増えると当然エネルギー消費は大きくなります。さらに当Ref.5204Rは、パーペチュアルカレンダーを積んでいるため、なかなかゼンマイ消費が激しいところ。しかしながらCal.CH 29-535 PS Qは、最大65時間のパワーリザーブを確保しました。
ちなみに6時位置がムーンフェイズおよびポインターデイト,3時位置が30分積算計、9時位置がスモールセコンド。4時位置小窓がうるう年周期で、7時位置小窓は昼夜インジケーターとなっております。
これだけの複雑さを有しながらも、視認性の高いレイアウト,そしてケース直径40mm×厚さ14.3mmの常識的なサイズ感を実現しているのは、さすがパテックフィリップか。
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こちらもパテックフィリップ・シールに準拠しており、裏蓋側から見事な装飾・仕上げをお楽しみ頂けます。
一本3,000万円超と気軽に入手できる時計ではありませんが、パテックフィリップの魅力の真髄を味わえる新作であることは間違いありません。
なお、エンボス加工されたアリゲーターストラップと、スレートグレーのカーフストラップが付属するとのことです。
2021年パテックフィリップ新作 コンプリケーション ワールドタイム クロノグラフ 5930P
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スペック
外装
型番: | 5930P |
ケースサイズ: | 直径39.5mm×厚さ12.86mm |
素材: | プラチナ |
文字盤: | グリーン |
ムーブメント
ムーブメント: | CH 28-520 HU |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 最大55時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
予価: | 11,555,000円(税込) |
2016年、パテックフィリップが誇るワールドタイムとクロノグラフを組み合わせるという、なんともゴージャスな銘品がリリースされたのが、2016年でした。これは、1940年に同社が製造したユニークピースから着想を得たと言います。
ちなみにワールドタイムは時差を利用した第二時間帯表示機能で、表示形式は様々ですが、アナログ式では文字盤上に主要都市名を配置したものが代表的です。この都市は経度ごとに配置されており、パテックフィリップでは都市ディスクを動かすことが可能です。さらにこのディスクと時分針は連動しているため、ディスク上の都市と並んだ外周の数値が、当該地域の時間であることを示します。
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例えば上の画像だと、ローカルタイムは10時過ぎ。東京は19時過ぎ。北京は18時であることを示します(そして12時位置にロンドンがきていることからもわかるように、センター針はイギリス時間です)。この機構は1930年代、パテックフィリップによって市販化されたと言います。
そんなワールドタイムとクロノグラフの夢のコラボを果たしたRef.5930、初出時はホワイトゴールド製ケースにブルー文字盤が備わったモデルのみでした。
しかしながらこの度、プラチナ製ケースにグリーンを基調としたギョーシェ装飾を備える、アヴァンギャルドな一本が登場したこととなります。都市名もグリーンで印字されているため、これまでのパテックフィリップとはまた違った独創性に溢れますね。
なお、10時位置のプッシャーで都市ディスクを、反対側のプッシャーでクロノグラフ制御を行います。
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ケースサイズは直径39.5mm×厚さ12.86mmと、控えめなのが嬉しいところ。もちろん、シースルーバックから見事なムーブメントをご鑑賞頂けます。
なかなか旅行に出づらい昨今、世界の都市に思いを馳せられる名作ではないでしょうか。
まとめ
2021年10月、コンプリケーション三部作として新たにラインナップに加わった銘品をご紹介致しました!
既に4月に開催されたWaches & Wonders Geneveでパテックフィリップの新作発表は行われていましたが、さらに10月にも圧巻の名機を用意していたようです。
なお、2022年には既にWaches & Wonders Geneveの、パテックフィリップの参加が決定しているようです。開催時期は2022年3月30日~4月5日。当店GINZA RASINでは、今年も速報記事をお伝えしていきたいと思います!
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年