「チューダーの新作ペラゴスFXDって何がすごいの?」
「ペラゴスFXDの魅力について知りたい」
その堅牢性と信頼性の高さから、軍用時計としても愛されてきたチューダー。
2021年11月、フランス海軍―Marine Nationale―とのパートナーシップが同社より公開され、続いてコラボレーションモデルのローンチに至りました。
その新作モデルはペラゴス FXDですが、魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
ペラゴス FXDは既存のペラゴスの雰囲気はそのままに、随所にチューダー×フランス海軍の関係性の歴史を示すようなディテールが加えられており、畢生の出来栄えといって過言ではありません。
この記事ではペラゴスFXDの魅力について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
価格についても紹介しますので、チューダーの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
出典:https://www.tudorwatch.com/ja/pelagos-fxd
目次
チューダー×フランス海軍。新作ペラゴス FXDとは?
スペック
外装
型番: | 25707B |
ケースサイズ: | 直径42mm×厚さ12.75mm |
素材: | チタン |
文字盤: | ブルー |
ムーブメント
ムーブメント: | MT5602 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 最約70時間 |
機能
防水: | 200m |
予価: | 443,300円(税込) |
2021年11月初旬、フランス海軍マリーン・ナシオナル―Marine Nationale―とのパートナーシップを発表したチューダーは、この海軍での使用を想定した新しいダイバーズウォッチ「ペラゴス FXD」を発売しました。
冒頭でもご紹介した通り、チューダーは過去、軍用時計としてのアイデンティティを持つブランドでもあります。ちなみにフランス海軍へは、1956年~1980年代にサブマリーナを納入していました。
2019年には、1950年代にアメリカ海軍へ供給していた幻のダイバーズウォッチ「P01」がリバイバルされたことで話題となりましたが、この度は実際のフランス海軍とのパートナーシップが正式に、そして30年以上ぶりに復活した形です。
そんなパートナーシップの結晶とも言える新作ペラゴス FXD。フランス海軍の戦闘ダイバー部隊「コマンドー・ユベール」との共同開発のもと、製作されています。
既存のペラゴスに範を取っているものの、両方向回転式ベゼルのスケールがカウントダウン形式になっていたり、ファブリックストラップが搭載されていたり・・・詳細は後述しますが軍事下での特殊任務を想定した、計器としてのダイバーズウォッチであることがわかります。
出典:https://www.tudorwatch.com/ja/pelagos-fxd
なお、FXDはFixedのことで、ケースにストラップを引き通すためのバーが固定されていることからちなむようです。
こちらも詳細は後述しますが、かつてフランス海軍はチューダーから時計のフェイスのみを受け取り、軍人らはおのおのでストラップを引き通して着用していたという背景に則ります。1970年代、軍事同盟「NATO軍」に加盟していたイギリス国防省が、海軍用腕時計のための引き通し式ストラップを「NATOストラップ」として調達品カタログに追加したエピソードはご存知の方も多いかもしれません。
NATOストラップでも親しまれるこの引き通し式ストラップは、ラグのバネ棒で固定するタイプのストラップよりも落下のリスクを大きく低減し、かつ腕にもよくフィットするがゆえに軍人らの御用達として親しまれた歴史を持つのです。
ちなみにペラゴスについて補足しておくと、バーゼルワールド2012で発表されたチューダーの上位ダイバーズウォッチコレクションです。
初出から3年後の2015年にフルモデルチェンジされ、青文字盤がラインナップに追加されたこと。加えて素材をチタンへと完全移行したことから、その地位を確立していくこととなります。なお、このモデルチェンジではチューダー初の自社製ムーブメントが併せて搭載されました。同年に自社製ムーブメント搭載機として発表されたのは、ペラゴスとノースフラッグのみ。チューダーにとってもペラゴスが特別な立ち位置であることがわかりますね。
余談ですが、2015年当時は様々なブランドから自社製ムーブメントが登場していましたが、軒並み既存コレクションと比べると大きく価格が跳ね上がっているものでした。しかしながらチューダーはこのペラゴスの定価を汎用ムーブメント(ETA)搭載の旧型と比べて僅か250スイスフランの値上げ、という良心的な差に抑え、並行市場での相場も30万円台後半~40万円台を長らく維持。全体的な相場が上がった今なお新品並行相場で43万円台~44万円台となっており、屈指のコストパフォーマンスには驚きを禁じ得ません。
そんなペラゴス自体が、チューダーの歴史を象徴するような逸品です。特徴的なイカ針(海外ではスノーフレーク針)は1969年から同社が製造していたノンデイトRef.7016およびデイト付きRef.7021、通称イカサブ―正式名称はプリンス オイスターデイト サブマリーナ―を彷彿とさせる意匠で、さらに優れた視認性を誇るスクエア型のインデックスもイカサブ譲りです。この針とインデックスはチューダーらしさの一つとして語られますが(ロレックスとの大きな違いとしても)、夜光塗料をたっぷりと施せるようになり、機能面のスペックアップも兼ね備えています。
当時のイカサブは200m防水でしたが、ペラゴスでは9時位置にヘリウムエスケープバルブを搭載することで500mもの高防水を獲得。また、特許取得のバックルはダイビングスーツを着用したままサイズ調整が可能なエクステンション式となっており、チューダー屈指のハイスペック・ダイバーズウォッチとして親しまれてきました(伸縮するラバーベルトモデルもあり)。
そんなペラゴス、いったいどのような新作として登場したのでしょうか。
事項よりご紹介致します。
チューダー×フランス海軍。新作ペラゴス FXDを徹底解説!
それではチューダー×フランス海軍渾身の、新作ペラゴス FXDについて解説致します。
①歴史を感じさせるデザイン
出典:https://www.tudorwatch.com/ja/pelagos-fxd
基本的に既存モデルのデザインを崩していないペラゴス FXD。2015年以降採用されているチタンケースは落ち着いたツヤ消しのサテンで仕上げられており、直径42mmのサイズ感と合わせてどちらかと言えばモダンさを感じさせる一本です。
一方でそのディテールを見るとチューダーの歴史を感じさせる仕様が随所に散りばめられています。
前述の通り、1956年からフランス海軍との関わりを密にしていたチューダーは、やはり同時代からダイバーズウォッチ製造を意欲的に行っていました。
もともとチューダーは、ロレックスから供給されたオイスターケースモデルの普及機を市場で展開していました。1947年からオイスターモデルの製造を始め、1954年にはチューダー初のダイバーズウォッチ オイスタープリンス サブマリーナ Ref.7922が登場しています。当時から信頼性や耐久性、堅牢性に富んでいたこのダイバーズウォッチは、アメリカ海軍・フランス海軍などで用いられていくこととなります。
1969年には第二世代としてサブマリーナ Ref.7016およびRef.7021(前者がノンデイト、後者がデイト付き)が正式リリースされ、以降、チューダーらしいイカ針とスクエアインデックスの顔立ちが確立していきました。
※ただしベンツ針が全くなくなったわけではなく、ベンツ針やベンツマークのないロリポップ針(通称タコサブ)が搭載されたモデル。あるいはボーイズサイズ等、ロレックスとは違ったバリエーション展開をしていたことも、チューダー サブマリーナの魅力の一つです。
もっとも、フランス海軍での同社製品の制式採用は1970年代のことのようです。
1974年、既に第二世代となっていたチューダー サブマリーナRef.7016の裏蓋に、M.N.(Marine Nationaleということ)の文字がエングレービングされることとなります。このM.N.の後には納品された年を示す2桁の数字も同様に刻印されており、フランス海軍とのパートナーシップのアイコンともなりました。
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そして翌1975年、ムーブメントにハック機能(秒針停止機能)を備えたRef.9401/0へとモデルチェンジしますが、この時カラーバリエーションとしてブルーまたはブラックが存在しました。当時の濃いブルーはチューダーブルーなどと称されてフランス海軍でも愛され、この度のペラゴス FXDのカラーリングとしても採用されたのでしょう。ブルーはどちらかと言えばモダンな印象ですが、ノンデイトの顔立ちと相まって、ヴィンテージテイストをも感じさせます。
Ref.9401/0もまた、裏蓋には、M.N.と採用年のエングレービングが施されています。
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なお、フランス海軍御用達サブマリーナの意匠は、新作ペラゴスに継承されています。そう、ねじ込み式の裏蓋には1970年代当時のM.N.ロゴと、新たな採用年となった21(2021年)がともに蘇っているのです!これはチューダー好きにはたまらないディテールと言えるのではないでしょうか。
フランス海軍のロゴでもあるアンカー(錨)マークと併せて、オーナーに嬉しい仕様となっています(チューダーは裏蓋に装飾を施すことが少ないので、なおのこと)。
ブレスレットモデルが基幹機であったペラゴスを、あえてファブリックストラップとしたのもフランス海軍御用達仕様。
前述の通り当時のフランス海軍はサブマリーナにおのおので引き通し式ストラップを採用することで、落下を防止したり、時計に軽量感を添えたりしていましたが、その歴史がオマージュされることになりました。Ref.9401/0ではラグがケースにはんだ付けされていたようなのですが、新作では完全一体型となっております。
ちなみに当時のフランス海軍はファブリックストラップの他、フランス製パラシュートを再利用した手製の弾性バンドを搭載させていたとか。このパラシュートバンドはイエローやグリーン,レッドのラインが入っており、豊かなデザイン性を楽しめそうですね。
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新作ペラゴス FXDでは、ネイビーブルーにグレーが入ったファブリックストラップと、ネイビーブルーのラバーストラップが用意されています。ファブリックストラップはフランスの老舗リボンメーカージュリアン・フォール社が手掛けており、上質さはもちろんのこと、フランス海軍の過酷な任務にも耐えうる仕様となったとのこと。なお、ジュリアン・フォール社もまた長い歴史の中で、フランス海軍の水兵帽(赤いポンポンを見たことのある方も多いでしょう)の装飾リボンを手掛けていました。
ファブリックストラップは現代においても、着用感を高めたり気軽にカジュアルダウンしたりといったアイテムで大人気です。古臭さは一切感じないのにチューダーの歴史の重みが随所に散りばめられている。
デザインとっても、裏蓋意匠とっても、ストラップとっても、「さすがチューダー」と感嘆に値する新作ではないでしょうか。
②ディテールも素晴らしきダイバーズウォッチ
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チューダーの歴史の多くから範を取っているとは言え、もちろんスペックは最新にアップデートされています。現代チューダーの、こだわりを随所に感じるディテールです。
200m防水と既存の500m防水ペラゴスからはスペックダウンされてはいるものの、堅牢性は十二分。サテン仕上げがメインとなったチタン製42mmケースはノンデイトが採用されたこともあり、既存モデルよりも1mmほど薄い12.75mmとなりました。また、200m防水への変換に伴い、9時位置のヘリウムエスケープバルブも取り払われています。
しかしながら、ダイナミックな印象は既存モデル以上と言っていいかもしれません。
まず何より目を惹くのが、名前の由来になったと思しきストラップバー。ラグの部分が接続されてケースと一体化し、ストラップがより強固に着用できる仕様になっています。なぜ引き通し式ストラップが落下のリスクが低いかと言うと、12時側・6時側のバネ棒にそれぞれ一本のストラップを引き通して繋げたうえで、腕に固定しているためです。これによって片方のバネ棒が外れたり破損したりしても時計はすぐに落下しない仕組みとなります。
さらにバネ棒部分をバー式に固定することで、そもそもここが破損するリスクすら低減したことを意味します。ペラゴスの計器としてのアイデンティティを感じさせますね。なお、画像を見る限りでは引き通しの余裕も十分なように見えるため、ケースやストラップ同士の摩擦も低減できそうですね!
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さらに言うと、両方向回転ベゼルもダイナミックと言わざるをえません。
このチタンでできた回転ベゼルは既存モデルよりもやや幅広かつケース本体よりも大振りに作られており、外周の溝の粗さも変わって計器然とした印象です。
面白いのが、ベゼルの60分スケールはカウントダウン式に数字が配列された仕様。これは、フランス海軍の水中ナビゲーション任務のための仕様とのことです。
水中ナビゲーション任務では、事前に決められた水面下のルートを緻密に辿りつつ、ポイントへと到達するものです。この任務はダイバー二名で敢行されますが、両名はライフラインと称される紐で相互に繋がれており、磁気コンパスを用いながら連続した直線をダイビングしていきます。
ダイビング中は一定の速度で各セクションを辿っていく必要があるため、各セクションに入るたびに正確なカウントダウンを行いながら任務を進めていきます。そこでペラゴス FXDではベゼルスケールをカウントダウン形式とし、ダイバーらが各セクションごとの所要時間に応じてベゼルの数字を分針の位置に合わせてカウントダウンを行い、また次のセクションに入ったらカウントダウンをスタートさせる・・・といった性能を添えました。
なお、回転ベゼルは前述の通り大きくなったのみならず、グリップもまた既存モデルよりも向上しています。グローブを着用しながら、かつ長いダイビング中にかじかんでしまった手でも難なく操作できるようにしたチューダーらしい配慮です。
ベゼルのメモリおよび三角マークには針・インデックス同様にグレードX1のスーパールミノバを塗布しているため、暗所においても強く発光し、視認性を確保します。
出典:https://www.tudorwatch.com/ja/pelagos-fxd
文字盤レイアウトはデイトがなくなったことに加えて、6時位置の印字も4行となり、すっきりした印象に。さらにインデックスのフレームを排したことで、よりヴィンテージテイストに磨きがかかります。
ムーブメントはチューダーの自社製キャリバーMT5602です(既存モデルに搭載されるMT5612の、ノンデイト版)。クロノメーター認定の優れた精度もさることながら、約70時間パワーリザーブや耐磁性を獲得していることも特徴であり魅力です。
コンセプトも一流であり、内外ともにスペックは十二分。またチューダー人気が飛躍的に高まりそうですね!
チューダー 新作ペラゴス FXDの定価と発売時期
新作ペラゴス FXDの定価は税込443,300円。200m防水となっていること。ファブリックストラップを搭載したことから、既存モデルの521,400円よりも安価な設定となっております。
限定販売という話も聞かないので、今後ブラックベイと並んでチューダーの新定番になりそうな予感ですね!
とは言え、近年のチューダーは新作発表からしばらくの間は、ロレックスを彷彿とさせるような高相場が続くもの。例えば2021年5月にリリースされたブラックベイ セラミック。オールブラックの精悍な意匠と、チューダー初となるマスタークロノメーター認定ムーブメント(そしてこれに伴うシースルーバック)を備えた超注目の新作ですが、じょじょに出回ってきたとは言え定価539,000円を上回る70万円前後の実勢相場となっております。
新作ペラゴスの発売は11月11日~とのことですが、しばらくは品薄が続くこと必至。
これも人気ブランドの宿命か。
当店でも入荷できるよう、頑張っていきたいと思います!
まとめ
チューダー×フランス海軍のパートナーシップから生まれた、ペラゴス FXDについてご紹介致しました!
1950年代から続く両者の関係性とその歴史を随所に散りばめながらも、現代の海軍御用達スペックをも持ち合わせた逸品であり、チューダー好きにとっては最強の銘品と言えます。
品薄が続くことが予想され、出回りまでは時間がかかるかもしれません。しかしながら、早く実機を見て、新生ペラゴスのディテールを細かにチェックしていきたいものです!
当記事の監修者
南 幸太朗(みなみ こうたろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ
学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴13年。