「ロレックスってなんで高いんだろう?」
「一体ロレックスはどこまで値上がりするんだろう」
世界で最も有名な時計ブランドの一つ・ロレックス。
実用性・デザイン性・ステータス性は業界の中でも頭一つ抜きんでており、長らくファンから愛され続けてきました。
もともと話題性の高いロレックスですが―製品の完成度や開発力の高さにおいて―、近年では時計業界内外でセンセーションを引き起こしています。
そう、過去類を見ない価格高騰です。
ロレックスはなぜ高いのか、価格高騰を続けているのか知りたいという人は多いのではないでしょうか。
価格高騰の要因としては、圧倒的な需要や資産価値への関心の高まりなどが挙げられます。
この記事ではロレックスが高い理由を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
ロレックスの買い時と買うべきモデルについても考察していますので、ロレックスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
※2023年1月現在の情報をもとに執筆しております。今後のロレックス相場の高騰をお約束するものではございません。
目次
なぜロレックスは価格高騰を続けているのか?2022年に起こっていたこと
まず最初に、なぜロレックスは価格高騰を続けているのか。現状と背景についてご紹介いたします。
①ロレックス相場の現状
現在に続くロレックスの価格高騰が顕著となったのは、2017~2018年頃よりです。
しかしながらロレックスは、もとより資産価値の高い(値崩れしない)ブランドの一つでした。
ちなみに、ロレックスはよく「知名度」「ステータス」が取り沙汰されることがありますが、徹底した実用時計の王者であると時計業界では認識されています(もちろん広告戦略においても、凄まじい歴史を有してきたからこその知名度ですが)。また時計業界をあらゆる面で牽引してきた存在でもあります。
そのため、この「値崩れしない」は、ロレックスの製品が時代やTPOを超越したデザイン性を獲得しており、老若男女から幅広いシーンで愛用されていること。また高い信頼性・機能性を有しており、デイリーユースに最適であることに起因していると言えます。
とりわけ「信頼性・機能性」は年式を経た個体ですら当てはまり、メンテナンスを行えば末永く愛用していけることから、確固たる中古市場を築き上げている要因になっているでしょう。
中古市場がしっかりしているということは、「売買しやすい」ということ。この売買しやすさは、時計の資産価値を語るうえで極めて重要なトピックです。
上記画像は、かつてロレックスで製造されていた手巻きデイトナです。アンティーク市場で絶大な人気を誇ってきましたが、生産終了から日が経つにつれてグッドコンディションな個体の流通量が減少。今ではSSモデルながら1000万円超の値付けが行われることが当たり前であるにもかかわらず、それでも欲しいというファンを多数抱える不朽の名作です。
※ロレックスってどんなブランド?
ロレックスは1905年、ドイツ人実業家のハンス・ウィルスドルフ氏によって創業されました。創業当初はイギリス ロンドンに本拠を構えていましたが、1919年にスイス ジュネーブへと移転しております。
ロレックスの歴史を振り返ることは、現代時計史を知ることに他なりません。とりわけロレックスの「三大発明」は、以降の腕時計に大きな影響を与えました。
この三大発明とは、「オイスターケース」「パーペチュアル機構」「デイトジャスト」です。それぞれを簡単に解説すると、オイスターケースは牡蠣に名前を由来する防水ケース。パーペチュアル機構は腕の振りのエネルギーをゼンマイ巻き上げに利用する自動巻きの、巻き上げ効率を大きく飛躍させた機構。デイトジャストは日付が午前0時に切り替わる機構ですが、3時位置にデイト窓を備えることでスーツの袖口に時計の一部が隠れていたとしても視認性に長けた、画期的なレイアウトとなります。
以降もロレックスはムーブメント・外装ともに性能向上の手を止めることはなく、2015年以降は最新世代Cal.32系を基幹ムーブメントに、ユーザーにとにかく使いやすくて、性能がよくて、カッコいい至高の腕時計を提供し続けています。
なお、この「カッコいい」とはきわめて主観的な言い回しのように思うかもしれません。ロレックスはロングセラーについて、デザインにあまり大きな変更を加えてこず、性能アップデートによるモデルチェンジは繰り返し行うものの、多くのモデルが初号機と酷似したデザインに収まっています。これこそが「不変にして普遍的なカッコよさ」の証左ではないでしょうか。ロレックスは市場のニーズを徹底的に調査したうえで、ユーザーの嗜好に合ったデザインを時計に落とし込んできた歴史があります。近年ではニュアンスカラーや装飾が美しい文字盤開発に力を入れており、現代の時計ユーザーの心をわしづかみにしていますが、これにはロレックスの高度な審美眼と文字盤製造技術なくしては成しえません。
このように資産価値の高さについては定評のあったロレックス。しかしながら、従来とは全く異なる値動きを見せていることは事実です。
下記に、2017年~2022年の間(それ以降に誕生したモデルは初出年)で、上昇率の高い人気ロレックスの価格推移グラフを掲載いたします(当店に入荷した中古個体の販売価格から平均を採っております)。
デイトナ 116500LN 白文字盤
型番:116500LN
定価:1,757,800円
製造期間:2016年~現在
文字盤:白
ケースサイズ:40mm
デイトナ 116500LN 黒文字盤
型番:116500LN
定価:1,757,800円
製造期間:2016年~現在
文字盤:黒
ケースサイズ:40mm
GMTマスターII 126710BLRO
型番:126710BLRO
定価:1,296,900円(ジュビリーブレス)/1,271,600円(オイスターブレス)
製造期間:2018年~
文字盤:黒
ケースサイズ:40mm
エクスプローラーI 214270
型番:214270
定価:687,500円
製造期間:2010年~2021年(2016年にマイナーチェンジ)
文字盤:黒
ケースサイズ:39mm
◆後期型(2016年~2021年)
◆前期型(2010年~2016年)
非常に大きな値上がりをしていることが、見て取れるのではないでしょうか。
※エクスプローラーI 214270の「前期型」「後期型」は2016年に行われたマイナーチェンジです。
2017年(または2018年)と比較すると、各モデルの上昇率は下記の通りです。
モデル | 上昇率 |
---|---|
デイトナ 116500LN 白文字盤 | 275% |
デイトナ 116500LN 黒文字盤 | 247% |
GMTマスターII 126710BLRO | 181% |
エクスプローラーI 214270(後期型) | 192% |
エクスプローラーI 214270(前期型) | 189% |
ちなみに定価も何度か改定されて値上がりしていますが、現在でもデイトナ 116500LNは1,757,800円、GMTマスターII 126710BLROは1,296,900円(オイスターブレスレットモデルは1,271,600円)、エクスプローラーI 214270は687,500円(2022年に生産終了)・・・定価と実勢相場が大きく乖離していますね。
もっとも定価はあってないようなものと言っても良いかもしれません。正規店では人気モデルを中心に品薄続きで、所望のモデルを追い求めてブティックをはしごする「ロレックスマラソン」といった用語が一般化しつつあります。このロレックスマラソンは4年ほど前からあったように思いますが、現在、白熱の一途を辿っている状況です。ワイドショー等でも紹介されるほどとなっており、ブティックによっては開店前に長蛇の列を作るところも少なくありません。
先日、ゴールデンウィークが明けた頃、都内のロレックスブティックを覗いてみたところショーケースに並んでいる品数自体が少なくなっておりました。
なお、2019年の半ば頃までは上記で挙げたデイトナやGMTマスターIIなどの人気スポーツモデルで価格高騰がよく取り沙汰されていましたが、2019年末になるとその他のスポーツモデルにも波及。これまではお得感が強かったミルガウスやエアキングなどはもちろん、デイトジャストなどといったドレスウォッチも相場がジワジワと高騰してまいりました。
2022年3月、ウクライナ危機などが影響してか一時ロレックス相場が全体的に落ち着きを見せ始めるものの、下落とまでは言えず。むしろこれからボーナス時期を迎えるため、例年通りにいくと実勢相場はまたジワジワと上がることが予測されます。
②ロレックスの価格高騰の背景には「圧倒的な需要」あり!
繰り返しになりますが、資産価値の高さは従来から定評のあったロレックス。
とりわけデイトナなどは品薄モデルの代表的存在で、高い相場を維持してきました。近年でデイトナが定価を下回ったのは、リーマンショックとここに続いた円高が影響した、2010年前後くらいであったと記憶しています。
そうは言っても、当時のデイトナ 116520の実勢相場は120~150万円ほど。2016年のモデルチェンジによって116500LNがリリースされた折は、定価1,274,400円に対して200万円の初値が付けられたことに大きく驚かされたものですが、現在のように定価の3.5倍超にもなるとは、いったい誰が想像したでしょうか。
この価格高騰の背景にあるものは、ロレックスの供給量をはるかに上回る世界的な需要です。
ただし、ロレックスは高級時計ブランドの中では決して供給量が少ないとは言えません。また長らく実用時計を安定的に市場に投入してきた歴史があり、流通量も少なくありません。
ロレックスは上場企業ではないこと。加えて創業時から徹底した秘密主義を貫いてきたことから実際の売上高や生産本数などはわかりませんが、2022年に行われたモルガン・スタンレーの調査によると、ロレックスの2021年売上高は80.5億スイスフラン。売上本数は1,050,000本、そして市場でのシェアは28.8%に及ぶと概算されています。
確かに高級時計である以上、年間数百万本といった大量生産とは無縁です。例えばロレックスの現行ステンレススティールモデルはただのステンレスではなく高性能スティールSUS 904Lを用いており、かつここに丁寧な仕上げを施しています。また針やインデックス、そして文字盤はよく作り込まれており、いかにロレックスの生産体制が優れていようと、一定の時間と職人技を要することは間違いありません。
一方でパテックフィリップやオーデマピゲといった、雲上ブランドは年産数万本に留めていると考えられ、ここまでの限定生産はロレックスの製品には見受けられません。
なお、ロレックスは秘密主義ゆえ、めったにメディアの取材に応じないことでも知られています。
しかしながら2021年9月、供給量に関して、アメリカのYahoo!ファイナンスにロレックスが異例のコメントを寄せることとなりました。ロレックス曰く「品薄は戦略的な供給調整ではない。妥協のない品質のために必要な時間を(生産に)かけており、現在の生産体制では全ての需要を満たすことはできない」と。
このように、ロレックスは高級時計ブランドの中では比較的供給を安定して行っており、またロレックス自身も意図して供給制限を行っているわけではないと言います。
にもかかわらず品薄がこうも続いているのは、世界的な需要の高まりが凄まじいからに他なりません。
下記のグラフは、スイス時計協会(FH)が公開している、スイス時計輸出額の過去20年間の推移です。2020年に新型コロナウイルスの影響で一時下落するも、伸びていることが見て取れますね。なお、2021年のスイス時計輸出高はコロナ以前を上回り、過去最高値に付けることとなりました。
さらに2015年以降、成長が顕著に見られるのが中国を中心としたアジア圏です。
そう、時計市場全体が成長しており、各国で時計ユーザーが増えていることが示唆されています。
もちろんメーカー側も生産体制を増設し続けてきたとは思いますが、中国やインドといった大国での需要を賄いきれるほどまで達するのは、なかなか至難の業でしょう。前述の通り、こと高級時計と呼ばれるプロダクトはどうしても製造に手間も時間もかかってしまうためです(この特別なプロダクトこそが、時計愛好家を増やしているとも言えるのですが)。
さらに、近年の需要の高まりには「訳」があります。
と言うのも2020年以降、新型コロナウイルスの影響によってユーザーの消費行動がやや異なる傾向を見せているためです。
新型コロナウイルスはご存知の通り、感染経路の一つに「飛沫」があります。そのためヒトとヒトとの距離を保ったり接触を減らしたりといった対策が有効とされてきました。これに伴い、大勢での会食やウイルスを移動させてしまう可能性のある旅行といったレジャーへの自粛が進んでいる現状です。
一方で経済活動は再開していることから、これまではレジャーに使っていたお金が手元に残り、結果として高級嗜好品への消費意欲が高まってきています。
これは何も時計だけの話ではありません。高級食材や酒、あるいは高級車に宝飾品などの市場が、コロナ禍にあって成長を見せていると言うのです。
こういった時代背景がロレックス需要に対して追い風となり、結果として供給がとても追いつかないような市場のニーズを形成しております。
③「資産価値」に重きを置く購買マインドの増加
もう一点、これまでの「時計が欲しい」とは異なる需要がロレックス相場に散見されます。それは、ロレックスの資産価値に重きを置き、投機対象として購入するような購買マインドです。
前項でも解説しているように、ロレックスはもともと値崩れしづらいブランドです。
しかしながら近年の相場の狂騒は、ちょっと前例がないほどです(もちろん、一部のアンティーク個体がオークションで超高額にて競り落とされたことはありましたが、一般市場でここまでの上昇率を見せているのは過去例がありません)。
例えば2022年5月18日現在、当店GINZA RASINではロレックス デイトナ 116500LN 白文字盤の中古モデルを5,300,000円でお買取りさせて頂いております(ちなみに黒文字盤は430万円)。すなわち、ロレックスの正規店で購入できたデイトナをそのまま買取店で売却すれば、300万円以上の売却益を手にすることとなるのです。
これは現行モデルの極端な例ですが、数年前に購入したロレックスを買取に出したら、購入時よりも数十万円も高い査定が出たといった話は今では珍しくありません。
ロレックスの生産終了モデルは、昔から価値が上がりやすいと言われてきました。
中古市場を確立しているロレックスは売買しやすいことに加えて、生産終了によってどんどん流通量が減っていくであろう個体は、稀少価値が上がっていく傾向にあったためです。
そして近年では、この「値上がりするかも」を購買マインドとするユーザーが増えてきました。
長年、時計の売買に長けた愛好家がこういった買い方をしてきましたが、「どうせなら、とことん使った後にも高値で売れる時計が欲しい」「色んな時計を楽しみたいので、下取りに出せるようなモデルが欲しい」といったマインドが、多くのユーザーで見受けられるようになってきたのです。
高級時計は売買しながら、何世代にも渡って継承していけるという利点があります。そのためこういった購買マインドはむしろ個人的には嬉しいところです。また円への信頼度が高い日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、他国では高級時計を「持ち歩ける資産」として扱うことも少なくありません(余談ですがロシアでプーチン政権を下支えする一部オリガルヒという財閥が貯蓄を時計・宝飾品に替え、資産を守る行為等を阻止するため、各ラグジュアリ―ブランドはロシアでの販売を一時休止しました。ロレックスもそのブランドの中の一つです)。
一方で「時計としての資産価値」が「投機対象」へとシフトしつつあることも事実で、結果として投資目的のユーザーが殺到して、実勢相場を急騰させているといった背景も存在します。
前述したレジャーから高級嗜好品への消費行動のシフトに加えて、各国の金融緩和制作で貯蓄から投資へと資金を振り向ける傾向が続いていること。
加えてCtoCマーケットが成長し、個人でも気軽に腕時計の売買が行えるようになりつつあることなどが同じく背景として大きいでしょう。
※2003年には、高級時計専門のECプラットフォーム「Chrono24」が設立。越境ECを行っており、2022年、その規模は世界最大級。出品者には各国の業者・個人が連なっており、一般的な時計屋に並ばないような稀少個体が出ることも。独自の買手保護制度を導入し、手厚さにも定評がある。
ここに加えて「時計店の仕入れ先の変遷」も挙げられます。
新型コロナウイルスの影響によって、国内高級時計は海外仕入れが大きく減少しました。コロナ以前に比べるとヒト・モノの国際間交流が制限される傾向が長らく続いていましたね。現在ではほとんどの地域で経済活動が再開しているものの、今度はウクライナ危機なども相まって原油・原材料が高騰。
海外仕入れコストは上昇傾向にあり、これに加えて世界各国での需要の高まりから世界中のバイヤーがロレックス争奪戦を繰り広げることから、国内バイヤーは海外調達から個人買取へと仕入れをシフト。各時計店、ロレックスは絶対に在庫を切らせない商材の一つです。そのため買取価格を上げざるを得ず、結果として買取価格(資産価値)が吊り上がっていく・・・といったスパイラルが続いているのです。
資産価値の高さが需要を喚起し、さらなる価格高騰を呼び起こす・・・
ロレックス相場は、圧倒的な需要と資産価値上昇のシナジーによって、右肩上がりの高騰を描いてきたのです。
④2022年現在、供給・流通量への懸念はある
「ロレックスの供給は比較的安定している」と申し上げましたが、2022年に入り、市場の様相が全く異なってきていることが見て取れます。
とりわけ新品ロレックスの流通量に関しては、既に枯渇している状況が続いています。
日本ロレックスでは2018年頃から、いくつかの転売防止対策をスタートさせています。その一環として、新品販売時に個体に貼られているメーカー保護シールを剥がすことが行われています。ちなみにこれは、現在では世界標準となっているようです。また購入時にブレスレット調整を強く勧められるなどといった話も聞き、並行輸入市場にかつてよりも新品は一時激減することとなりました。現在では必ずしも保護シールを貼っていることが新品の条件にはなりませんが、保護シール付き個体などは通常よりも高値で売買されることがほとんどです。
※なお、日本ロレックスでは購入時に顔写真付きの身分証の提示を求める。人気モデルに関しては、同一顧客への販売を一定期間行わないなどといった購入制限も設けています。
また、かつてよりもロレックスの日本への割り当てが減るのでは、などといったことも噂されています。
現在、アジアでの高級時計市場の要と言えば中国です。事実、前述したスイス時計協会(FH)が発表したスイス時計の主要輸出先では、米国に次いで中国が二位につけました。
なお、かつてフリーポートである香港が主要輸出先としてトップに君臨しており、日本も香港からの仕入れが顕著でした。しかしながら2019年以降の政治危機を中心とした混乱によって、現在では輸出高は減少傾向に。日本国内市場へのロレックスの流通量の、懸念事項の一つとなっています。
すなわちメーカー側(ロレックスに限らず)は、市場として大きい国への供給を優先しているのではないか、と。
ここに加えて、年式を経たモデルの流通量も気になるところ。
ロレックスは巨大な中古市場を抱えているとは言え、生産終了したモデルは年々グッドコンディションの個体が減っていくことは前述の通りです。ここへきて時計ユーザーが増えていることから、流通の枯渇はじょじょに始まっていると言えます。
近年では文字盤やブレスレット、ムーブメントなどのパーツも価格高騰傾向にあり、今後の相場動向が気になるところです。
ロレックスの価格高騰はどうなる?買い時と買うべきモデルを考察する
ロレックスの近年の価格高騰を振り返ったところで、最後にこれからのロレックスの話をしたいと思います。
「買い時」を考察する。今後ロレックス相場はどうなるのか?
これからのロレックス相場がどうなるかは、誰にも言い当てることはできません。しかしながら近年の社会情勢や価格推移などといったデータから、ある程度の予測を立てることは可能です。
本稿を執筆するにあたって、当店のバイヤー5人それぞれに意見を募ったところ、満場一致で「よっぽど経済が落ち込まない限り、ロレックスの高値傾向は続くだろう」との声が上がりました。
過去、ロレックス相場は右肩上がりを続けてきたことは紛れもない事実です。
それは前項でも何度も述べているように、世界的に時計ユーザーが増加し、市場自体が成長していること。またロレックスそのものの魅力にせよ投機目的にせよ、需要が需要を呼ぶようなスパイラルになっていることが要因として挙げられます。
もちろん、多少のアップダウンはあるでしょう。事実、ウクライナ危機や新作発表が完了して以降、じょじょに落ち着いてきた相場高騰モデルはいくつかあります。
しかしながら例年ロレックスは、春の新作発表前後で価格高騰し、その後相場がいったん落ち着き、また夏にかけてジワジワ上がっていく・・・そんな相場を描く傾向にあります(もっとも最近は例年通りをはるかに凌駕するような相場動向になっておりますが)。そのためこれからボーナス月を迎える夏にかけて相場がジワジワとまた高騰していくシナリオは十二分に考えられることです。
さらにメーカーの定価改定―すなわち値上げ―も相場を上昇させる一つの因子になっております。
これはロレックスに限った話ではありませんが、近年メーカーは定価改定をとみに行うようになりました。前述した原材料高騰などによって製造コストが上がっていること。原油高騰によって輸送コストも上がっていること。とりわけ現在のロシアを取り巻く環境は、高級時計の製造ラインに大きな影を落とすものです。ロシアは原油のみならず鉱物もよく採れる地域となっており、高級時計の素材となるニッケルやパラジウムにプラチナ、あるいはダイヤモンドの一大産地です。ここからの供給が不安定となれば、いっそう原材料高騰は免れないと考えて良いでしょう(事実、2022年5月19日付のイギリス ロイターからパラジウム・ロジウムの供給不足およびプラチナの余剰が減る旨が報じられています)。
※プラチナ製デイトナ 116506。もともと稀少な個体で1000万円超の実勢相場が当たり前といったモデルですが、ウクライナ危機によって今後の相場がまた変わってくることを示唆しています。
ちなみに2022年以降、パテックフィリップやオーデマピゲ、ジャガールクルトにオメガなどといった人気時計ブランドが定価改定に踏み切っています。ロレックスも2020年・2021年に続き、2022年明けてすぐに値上が敢行されました。
従来、定価が改定されたからと言って、すぐに実勢相場に影響するといったことはありませんでした。しかしながら仕入れ値が上がることは避けられないため、現状の圧倒的需要とともに鑑みれば、ロレックス相場が今後下落する要因が見当たらないというのは事実です。
さらに今後、新型コロナウイルスにかかる規制が緩和され、外国人観光客の入国が再開されるようになれば、またインバウンドの爆買いによって品薄となることは必至。
2017年頃から「さすがにもうロレックス相場は下落するだろう」と言われ続けてはや5年。
いっこうにその気配はなく、また相場が上昇する因子はあっても下落する要因は見受けられないとなれば、「買い時」を考えた時、それは「今」と答えざるを得ないのではないでしょうか。
買い!のモデルは「ちょい古」にあり!
ほとんどのモデルで価格高騰しているロレックス。これは現行モデルでより顕著ですが、中古モデルも例外ではありません。
とは言え時計は精密機器。確かに「生産終了モデルは相場が上がる」とは昔から言われているロレックスの現象ですが、一部の人気モデルや稀少個体を除いて、基本的には新しい方に人気は軍配が上がります。
また生産終了モデルの中でも、高年式は値付けが高くなるものです。中には年式の違いだけで数十万円~価格差が出ることも!
もし「お得」を狙いたいなら、ちょい古モデルをご購入頂くのがお勧めです。
例えばエクスプローラーI。
2021年にモデルチェンジを果たしたことで注目度を集め、実勢相場もいっきに上昇しました。とは言えエクスプローラーIはもともと「価格の優等生」。40~50万円程度で入手できるロレックスとしても親しまれてきた歴史があります。
そのため現在は比較的相場が落ち着きを取り戻してきております。
そうは言っても、新型エクスプローラーI 124270や先代の214270は130万円台~となっており、他の人気スポーツロレックスに比べればお求めやすいものの、躊躇される方もいらっしゃるでしょう。
そこでお勧めは、さらに先々代の114270または14270。前者は2001年~2010年、後者は1990年~2001年まで製造されていた個体ですが、100万円以下で入手できる個体も存在します。
ただし14270に関しては、かつて夜光として使われていたトリチウム、そして旧式となるシングルバックルを今なお備えた個体が稀少価値を持って高くなっているので、注意しましょう。
また付属品が揃っている個体は高くなる傾向にあります。
ロレックスは保証書がなくてもメンテナンスを受け付けてくれるので(ただし改造品や年式があまりにも古い個体は受け付けられない可能性があります)、特にこだわりがなければ付属品が揃っておらず、値下されているモデルを選ぶのも手でしょう。
ただし買取時には、付属品完品の方が当然査定額は高くなります。
もっとも、一番良いのは「好きなモデル」「欲しいモデル」を買うことです。
前述の通り、今後相場が下落する要因があまり見受けられず、今欲しいけど高い・・・と迷っているモデルが価格高騰してしまう可能性もあります。また中古モデルの場合は、いつも同様のコンディションに出会えるとは限りません。
ロレックスの購入をご検討されている方は、後悔のない選択をして頂きたいなと思います。
まとめ
ロレックスの価格高騰の要因やこれからのロレックスについてご紹介いたしました。
圧倒的需要や資産価値を重視した購買マインド、そして流通の枯渇など、様々な要因がからまって相場を上げ続けてきたロレックス。
2022年の新作モデルの入荷も始まっていることですし、今年もロレックスを本サイトでは追いかけていきたいと思います!
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年