1960年、セイコーから生み出されたグランドセイコー。スイス製時計を超える高精度を志して誕生したグランドセイコーは、国産初の高級時計ブランドでもありました。今なお日本の時計市場を牽引する存在であるのは、ご存知の通りです。
そんなグランドセイコーは高精度のみならず、きわめて優れた外装・デザインにおいても世界で名を馳せていますが、これは「セイコースタイル」に拠るところが大きいでしょう。
セイコースタイルとは、1967年に発表された「44GS」から受け継がれるデザイン文法です。グランドセイコーは現在もこのセイコースタイルに則った、唯一無二の高級時計を世に送り出し続けています。
そして2022年、44GS誕生55周年ということもあり、いくつかの44GSにちなんだ特別なモデルがリリースされています。
中でもひときわ目を惹くのが、2022年8月に発表されたSBGW291です。
このSBGW291、ケース直径が36.5mmと、44GS史上最小径となる通好みなサイズ感が大きな魅力となっております。
この記事では、2022年新作ヘリテージコレクション 44GS現代デザイン SBGW291について解説いたします。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgw291
目次
グランドセイコー ヘリテージコレクション 44GS現代デザイン SBGW291 スペック
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径36.5mm×厚さ11.6mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | シルバー |
ムーブメント
駆動方式: | 手巻きメカニカル |
ムーブメント: | Cal.9S64 |
パワーリザーブ: | 約72時間(約3日間) |
機能
防水: | 日常生活用強化防水(10気圧) |
定価: | 605,000円(税込) |
グランドセイコー ヘリテージコレクション 44GS現代デザイン SBGW291とは?
冒頭でも言及しているように、2022年は44GS誕生55周年。そのため44GS現代デザインは過去いくつか誕生していますが、2022年はいっそう多くの44GS現代モデルがリリースされてきました。
本稿でご紹介するSBGW291もまた、44GS現代モデルのうちの一つです。しかしながら他と一線を画しているのが「44GS史上、最小径となる36.5mmケースの採用」です。
現代グランドセイコーは、ケースサイズ40mmがスタンダードです。
実直さを大切にしてきた、グランドセイコーらしいオーソドックスなサイズ感と言えるでしょう。
そのため過去、打ち出されてきた44GS現代デザインのケースサイズの多くが直径38mmまたは40mmです。もっとも、オリジナルの44GSもまたケース直径38mmでした。
そんな中で36.5mmという思い切った小型サイズのグランドセイコー。後述しますが、手巻きムーブメントを積んだ上品な薄型モデルであることも相まって、クラシックかつドレッシーな装いを実現しました。
なお、実際には同年にSBGW289でケースサイズ36.5mmモデルが登場しておりますが、こちらは限定。今回発表されたSBGW291は、特に生産本数を限定しないレギュラーモデルとなっております。
①44GSとは?
そもそも44GSとは何なのか。
これは、前述の通り1967年にグランドセイコーから発表された手巻きモデルです。
ちなみに読みは「よんよんじーえす」「よんよんグランドセイコー」で、手巻きムーブメントCal.4420系を搭載していたことから、このように呼ばれています。
現在ではヘリテージコレクション SBGW291などといったような型番が付けられていますが、当時はムーブメントのキャリバーナンバーの2桁を取った名称が用いられていました。
※1967年発表 グランドセイコー 44GS(画像出典:https://www.seikowatches.com/jp-ja)
44GSのオリジナルモデルは製造期間が2~3年と短かったこともあり、現在ではアンティーク時代のグランドセイコーの中でも稀少性の高い存在として知られています。
グランドセイコーでは後に高精度を訴求してハイビート(テンプの振動数のこと。振動数が高ければ高いほど高精度を出しやすい)ムーブメントを量産していくこととなりますが、44GSはハイビート化は行われていません。そのため「ロービートの最高傑作」などと称されることもしばしばです。
これに加えて、繰り返し言及しているように、44GSはセイコースタイルを確立した元祖とも言える存在です。
セイコースタイルはデザイン文法で、このスタイルを踏襲するためには9つのデザイン要素が存在します。
この要素には「平面を主体に二次曲面でデザインを構成すること。三次曲面は原則採用しない。そしてケース・文字盤・針の全てで平面部の面積を基調とすること「各面は原則ポリッシュで、そのポリッシュには歪みを生じさせないこと」「12時位置のインデックスは他のインデックスの2倍の幅を持たせること」・・・等々が挙げられますが、目指すところは「燦然と輝く時計」です。
日本人が古くから大切にしてきた「光」と「影」を巧みにデザイン要素に取り入れることで、美しく輝く高級機としてのデザインをグランドセイコーは確立するに至ったのです。
実際、現在グランドセイコーの外装や文字盤は、時計業界できわめて高い評価を獲得しています。
丁寧に仕上げられたケース・ブレスレットは美しく、また切り立って鋭利に輝く針・インデックスはこれぞ高級時計!グランドセイコーのデザインは、決して派手さはありません。しかしながら、こういった高い技術力と職人技によって仕立てられた高級時計は、唯一無二の存在感を放ちます。
そして、この唯一無二を作り上げた立役者が、ほかならぬ44GSなのです。
前述の通り、44GS自体の製造期間はそう長くありません。
しかしながら「44GS 現代デザイン」として過去、リバイバルされた銘品は枚挙にいとまがなく、グランドセイコーにとって44GSがいかに大切な存在であるかがわかります。
②新作概要
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgw291
さて、44GS現代デザインとして2022年に打ち出されたSBGW291。やはり何と言ってもケース直径36.5mm×厚さ11.6mmのサイズ感が特筆すべき点でしょう。
2000年代のデカ厚ブームを経て、近年では直径40mm前後のケースサイズがスタンダードとなってきました。
40mmサイズも存在感があって扱いやすいとは思いますが、クラシカルでドレッシーなサイズ感の時計が欲しい。こういったニーズが、特に日本市場では根強かったように思います。
そこへきての、36.5mmサイズ。しかもデイト窓を持たないため、すっきりとシンプル、純然たるクラシックウォッチに仕上がっています。
こういったクラシカルな腕時計は、どうしても仕上げや作り込みのレベルが見られてしまうもの。しかしながら「セイコースタイル」を確立してきたグランドセイコーですから、実機を見る前ですが不安はないと言って良いでしょう。
事実、グランドセイコーが得意とするザラツ研磨によって、歪みのない平面と直線を主体に、逆傾斜のケースサイドの面・そして稜線が繋がったシャープな造形美を醸し出しているとのことです。
※ザラツ研磨
ザラツ研磨とは、研磨機の回転円盤正面で研磨を行う特殊な機器を用いる手法。この研磨機を使いこなすには熟練の技術が必要とされており、どのブランドも採用できるといった代物ではありません。
ザラツ研磨による歪みの無い完璧な鏡面と、完璧な角。そして組み合わさった丁寧なヘアライン仕上げのコンビネーションによって、セイコースタイルは完成していると言えます。
なお、ザラツは今は無いスイス工作機械メーカーに由来します。
セイコースタイルらしく放射模様のシルバー文字盤上の、針・インデックスも光り輝きますが、小径ケースに合わせて少し細めに設計されていることも特徴です。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgw291
なお、ボックス型のサファイアクリスタルガラスを採用しているのも、好きな方には堪りません。
往年のオールドセイコーを思わせるボックス型のガラスは、古き良きテイストを備えるのみならず、腕時計の存在感を高めるためです。
もっともボックス型ガラスはどうしても厚みが出てしまうものです。しかしながらSBGW291は厚さ11.6mmとのことなので、上品なサイズ感は健在と言えるでしょう。
搭載するムーブメントは手巻きキャリバー9S64です。
グランドセイコーの基幹ムーブメントの一つでもある薄型手巻きの9S64。過去、セイコー創業130周年記念モデルや初代グランドセイコー復刻モデル等にも搭載されてきた名機となります。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
どのブランドも、現行は自動巻き×デイト窓付モデルが多いものです。
確かに利便性は高いのですが、純粋な「美」を楽しみやすい手巻きノンデイトが、新たにグランドセイコーのラインナップに加わったと思うのは、どうしても胸が躍ります。
もちろん「美」のみならず、9S64は高い精度と信頼性を誇っているのも、さすが「ものづくり」のグランドセイコームーブメント。
約72時間のロングパワーリザーブを備えているため、性能面も申し分ないと言えますね。
防水性は10気圧。
黒クロコのストラップが付属しており、重量も66gと装着感の良さが伺えます。
発売は2022年9月9日~。国内定価は605,000円。
これは絶対に実機を確認しなくてはならない、グランドセイコー2022年の新作モデルです。
まとめ
グランドセイコー 44GS現代デザインとして発表された、小型ケースのSBGW291をご紹介いたしました!
非常にクラシカルでドレッシー。グランドセイコーのセイコースタイルが活きる逸品に仕上がっているのではないでしょうか。
なお、海外市場ではブラウン文字盤も同時発売されるようです。なかなか通好みな手巻きノンデイトですが、今後国内外で人気を博し、ぜひバリエーション展開を豊富に行っていってほしいものですね!
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当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年