出典:https://www.omegawatches.jp/
人類の宇宙開発の歴史に、いつも寄り添ってきたオメガ スピードマスター。1965年にNASAの公式装備品となって以降―厳密には、これ以前にも―、頑強な構造と確かな信頼性によって、宇宙飛行士らの活動をサポートしていくこととなりました。
とりわけ1969年のアポロ11号計画による月面着陸への携行。その翌年のアポロ13号ミッション中の爆発事故での功績は、今なおスピードマスター譚として語り継がれていますね。
とは言え「宇宙開発を想起させるスピードマスター」というと、手巻きのオーセンティックなクロノグラフモデルが思い浮かぶのではないでしょうか。
レマニアの系譜を引く手巻きクロノグラフのロマンももちろん素晴らしいのですが、一方で宇宙開拓のためのスピードマスターとして、絶対に忘れたくない存在がX-33です。
そして2022年9月27日―もちろん、Speedy Tuesday―、最新のスピードマスター プロフェッショナル X-33の最新作がオメガよりリリースされました!
今作のテーマは、赤い惑星とも称される「火星」。
「マーズタイマー」のモデル名を持つ、とにかくかっこいい新作スピードマスターとは?
目次
オメガ スピードマスター X-33 マーズタイマー スペック
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スペック
外装
ケースサイズ: | 直径45mm×厚さ約14.9mm |
素材: | チタン |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | クォーツ |
ムーブメント: | Cal.オメガ5622 |
機能: | 高精度、耐熱、デジアナ、アラーム、パーペチュアルカレンダー等 |
機能
防水: | 30m |
定価: | 880,000円 |
オメガからローンチされた新作スピードマスター X-33 マーズタイムは、なんといってもデジタル×アナログ表示が際立った一本です。
また、少しくすんだような渋いレッドカラーとつや消し仕上げが基調となったチタン製外装が、計器然としていますね。宇宙開発史を彷彿とさせるようなデザインと言えるでしょう。
がX-33は、ESA(欧州宇宙機関)とともに共同開発した歴史あるため、この度の新作でもESA認定の特別な機能を備えたクォーツムーブメントが搭載されることとなりました。
過酷なミッションには欠かせない耐熱性・高い信頼性は言わずもがな。アラームやパーペチュアルカレンダー、さらには火星時間・宇宙時間の切り替え機能まで搭載しているというプロフェッショナルぶりです。
次項より、新作スピードマスターの詳細を解説いたします。
オメガ スピードマスター X-33 マーズタイマーってどんな新作?
それでは2022年9月に発表された、オメガの新作スピードタイマー X-33 マーズタイマーについてご紹介いたします!
①スピードマスター X-33とは?
スピードマスター、あるいはオメガの中でも異色の存在にあるのがX-33です。
伝統的なアナログ表示が多い同社ラインナップの中で、アナログ×デジタルのハイブリッド表示であるためです。いわゆるデジアナですね。
ちなみにオメガのデジタルウォッチの歴史を紐解くと、1979年に遡れます。
1969年にセイコーがクォーツ式時計「アストロン」を開発して以降、クォーツ式時計が伝統的な機械式時計から市場シェアを奪っていくこととなります。クォーツは大量生産可能な一方で、高速振動が可能な水晶振動子で制御を行うため、安価な製品であっても精度や耐久性が担保されるといったメリットを抱えていたためです(もちろん実用性だけが時計の全てではありませんが)。
同時期のスイス時計業界の不振も影響して、この1970年代~1980年代前半をクォーツショックなどと呼ぶこともあります。
このクォーツ式時計の発展とともに、デジタル式時計も発展していくこととなります。
1972年にはハミルトンが世界初のデジタル腕時計「パルサー タイムコンピュータ」を。1973年にはセイコーが世界初6桁液晶ディスプレイのデジタル腕時計「セイコー クォーツ LC V.F.A. 06LC」を。そして1970年代後半にはデジタル表示で一般化したLCD液晶ディスプレイが用いられ始めたことなどから、デジタル式腕時計もまた市場で大きな存在感を放っていきました。
こういった激動の時代、長らく機械式時計を製造してきた老舗ブランドも様々な試行錯誤を繰り返していきます。
もちろん、オメガもごたぶんに漏れず。名門でありながら数々のイノベーションを起こし続けてきたオメガは、この時流を巧みに読み、ブランド初となるデジタル式のスピードマスター プロフェッショナルを開発するに至ります。
しかしながら消費電力が高かったり、定番にはならなかったことから、2年ほどで生産終了となりました。
そこから約20年の年月を経て、1998年。「デジアナ」として市場にリリースされたのがスピードマスター プロフェッショナル X-33でした。
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液晶ディスプレイにオメガらしい力強いアナログ針が用いられているのもX-33の大きな特徴ですが、加えてチタン製であることもミソ。
ケース直径42mmと比較的大振りでしたが、チタン製であるがゆえに軽量。すなわち長時間のミッション中であっても、快適な装着感をオーナーにもたらしたのです。
また、1/100秒計測可能なクロノグラフや任務経過時間計測機能、任務経過時間アラーム、カレンダー、UTC表示等を搭載した多機能機であり、実際のNASAのミッションにも用いられました。
この最初のX-33は2006年に生産終了しますが、2014年、カタログにその名を復活させます。
それが、現行としても愛されているスピードマスター スカイウォーカー X-33です。
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デジアナ表示はそのままに、バックライト機構を備えたLCDディスプレイを採用。
ケース直径は45mmとダイナミックになった一方で、チタン素材が踏襲されたため着用感は快適です。
計器を思わせる特徴的なフォルムに、肉厚のベゼルや力強い針も大きな魅力ですね。
なお、このX-33はESAと共同開発されるようになったことでも知られています。
オメガのスピードマスター プロフェッショナルといえばNASAの名前がまず挙げられるかもしれませんが、X-33と言えばESAです。
ESA(イーサとも)は欧州宇宙機構のことで、1975年にヨーロッパ各国で共同設立された機関となります。
このESAの認定を受けたX-33は、宇宙という過酷な環境下でのミッションコンプリートを前提にしているため、新しく開発された温度補償回路を備えた多機能クォーツクロノグラフCal.5619を搭載。なお、Cal.5619はESAの宇宙飛行士ジャン・フランソワ・クレヴロワ氏により申請されたESA特許をベースにしているとのこと。どこまでも、宇宙開発者目線というわけですね。
さらに先代X-33の機能をアップデートさせており、クロノグラフやタイマー、パーペチュアルカレンダー、三つの異なるタイムゾーンやアラームの他、打ち上げ後経過時間(MET)・途中経過時間(PET)をも表示させます。
もっとも、高級腕時計ブランドを代表する存在であるオメガ。
「宇宙開発者目線」とは言え、もちろん高級機としても申し分なく、一般的には加工が難しいとされているチタンで複雑な造形を実現し、また丁寧な仕上げも施しているところに名門の技術力を感じさせます。
肉厚なユニーク・ケースも、随所に効いたエッジや立体感が洗練さを醸し出しますね。
このX-33には「ソーラーインパルス」や「第35回アメリカズカップ」といったリミテッドエディションもありますが、基本モデルはレギュラーです。
しかしながら生産量が少なく、あまり一般市場に流通していないレアモデル。そのため二次流通市場でも相場は高めですが、新作の登場でさらに注目度が上がれば、市場価格の高騰が予想されます。
②新作スピードマスター X-33 概要
それでは新しいスピードマスター X-33を見ていきましょう!
「マーズタイマー」と題されていることからも予測できるように、テーマは「火星」です。
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「赤い惑星」とも称される火星をテーマにしたことがわかる、少しくすんだレッドベゼルがまず目に飛び込んでくるのではないでしょうか。
ちなみに「くすみ」が渋さを増して大人のデジアナになっていると個人的には思いますが、これは火星の赤が酸化鉄に起因し、赤みを帯びた土や岩で覆われていることから着想を得たのでしょう。
シーマスターのような洗練されたセラミックベゼルではなく、アルミ製のベゼルリングであるところにもこだわりを感じますね。なお、特別な陽極酸化処理が施されているため、高い硬度を有すると言います。
加えてヘマタイトの秒針はブラックから「火星」の色へと変遷していること。10時位置のプッシャーにも同色があしらわれていることから、良いアクセントになっております。
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チタン製ケースのサイズはダイナミックな直径45mm×厚さ14.9mm。ミッション中に着用しても疲れない軽量さを実現していることはもちろん、加工難易度をものともせずに丁寧に仕上げられ、作りこまれているのは、スカイウォーカーに同じくですね。
独特なリューズやリューズガードも、X-33を象徴する一つです。
とは言え、ただ「火星のカラー」をデザインに落とし込んだだけではいかないのが、オメガです。
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「マーズタイマー」の名前の通り、なんとこの新作X-33は、火星の計時(MTC:Timekeeping on Mars)をも表示させるというのです。
地球から遠く離れた火星は、当地よりも時間経過が異なります。
オメガでは、地球より2.7%長い火星日の日時を本初子午線(ほんしょしごせん。地球上を経度で測る際の基準。もともとはイギリスのグリニッジ天文台跡を通るグリニッジ子午線を示していましたが、現在はやや東にズレているとのこと)を用いて表示。さらに地球上および火星で真北の方角を正確に示すという、画期的なソーラーコンパスをも搭載させているというのです。
すなわち、「マーズタイマー」の名の通り、火星でのミッションを想定した作りとなっている、と。さすが、宇宙開発との結びつきが強固なオメガだけありますね!
もちろん地球時間(UTC)と火星時間表示を選択できる仕様ですので、特に火星に行く予定のない方もご安心を。とは言え、「火星時間を表示させる」というロマンは計り知れません。
さらにスカイウォーカー版と同様に打ち上げ後経過時間(MET)・途中経過時間(PET)、アラームにパーペチュアルカレンダーが搭載されているため、利便性に優れていることはもちろん、「多機能」というロマンも味わえますね。
なお、搭載するムーブメントはCal.5622と、新しくなっております。
電池寿命は約24か月。こちらも耐熱機能を有しているため、急激な温度変化―宇宙空間で発生しうるような―の中でも、高い精度と信頼性を発揮しますね。
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ソリッドバックには伝統のシーホースとともに、「SPEEDMASTER X-33 MARSTIMER、ESA TESTED AND QUALIFIED」の文言とともに、ESAのマークも付されました。
オメガ スピードマスターとESAの手によって生み出された傑作機であることがわかるソリッドバックですね。
さらに特筆すべきは付属品です。
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オメガの基本モデルはボックスが共通していますが、ことスピードマスター プロフェッショナルでは特別な付属品をお楽しみ頂けます。
新作スピードマスター X-33 マーズタイマーもまた、ウォッチロールには火星にあるヘベス谷をイメージした表面処理が施されているとのこと。ちなみにヘベス谷とは、火星のグランドキャニオンとも称されるマリネリス峡谷から延びた大峡谷のこと。レッドカラーのステッチが入っているのも、火星を彷彿とさせる仕様ですね。
また、NATOストラップとストラップ交換工具も付属しているので、気分やファッションに合わせてブレスレット・ストラップそれぞれを付け替えるのも良いでしょう。
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国内定価は税込み880,000円。
限定モデルではありませんが、スカイウォーカーが稀少なモデルであることを鑑みれば、今後の出回りが気になるところ。
欲しい方は、オメガの動向に要注目です!
まとめ
2022年9月のSpeedy Tuesdayに発表された、スピードマスター X-33 マーズタイマーについてご紹介いたしました。
手巻きクロノグラフがアイコニックなスピードマスター プロフェッショナルでしたが、計器然とした高級デジアナは特別感満載。
ダイナミックケースながら、丁寧に作りこまれたチタン製であることも、さすがオメガと言うべき新作でしたね。
文中でも述べているように、X-33自体の製造量がそこまで多くはありません。そのため、今後の出回りや実勢相場には要注目です!
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年