「オーヴァーシーズの買い時はいつ?」
「オーヴァーシーズは市場評価はどうなっていくの?」
パテックフィリップ、オーデマピゲとともに、世界三大時計ブランドの一角を成すヴァシュロンコンスタンタン。
1755年の創業以来、時計製造の手を止めず、経営を連綿と続けてきた稀有なブランドでもあります。
この華麗なる歴史と伝統の一方でヴァシュロンコンスタンタンは、知名度といった面ではロレックスやオメガはもちろん、他の雲上ブランドと比べても後塵を拝している面があり、「知る人ぞ知る」といった立ち位置でした。
現代の時計ブランドでは珍しく、クラシックラインが多いことも関係しているのでしょう(この知ってる人は知っている、が、好事家のヴァシュロンコンスタンタンへの所有欲を刺激する一つの面でもあったのですが)。
しかしながら近年、雲上ブランドのスポーツモデル―ラグジュアリースポーツウォッチ、通称ラグスポ―の世界的な需要が高まって、ヴァシュロンコンスタンタンもまた知名度を上昇させてきています。
そう、同社のスポーツライン「オーヴァーシーズ」人気です。
そんなオーヴァーシーズの価格と資産価値について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
オーヴァーシーズはヴァシュロンコンスタンタンらしい作りこまれた外装と、スポーツウォッチらしい高い性能が魅力の逸品です。
知名度と人気が上昇するに伴い、実勢相場もまた急騰することとなりました。
この記事では歴代オーヴァーシーズの価格推移と資産価値について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
今後の動向についても考察しますので、オーヴァーシーズの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
出典:https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/home.html
※掲載している定価・相場は2023年1月現在のものとなります。
※当店に入荷した中古個体をもとに平均相場を採っており、状態・使用によっては価格は上下します。また、今後の価格高騰をお約束するものではありませんので、参考程度にお読みください。
目次
ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズについて知ると資産価値も見えてくる
ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズについて知ると、その資産価値が見えてきます。
では、いったいどのような時計なのでしょうか。
冒頭でもご紹介した通り、ヴァシュロンコンスタンタンは1755年に創業した、高級時計業界屈指の老舗企業です。
ヴァシュロンコンスタンタンよりも早い創業年のブランドはあります。現存する代表的な老舗ブランドとしては、ブランパンとジャケ・ドローが挙げられますね。しかしながら「連綿と経営を続け、時計作りの手を止めなかった」といった面では、ヴァシュロンコンスタンタンが最古の時計ブランドと言って良いでしょう。
もっとも、現在のブランド名ができたのは1819年、創業家のヴァシュロンにフランソワ・コンスタンタンが経営参画して以降となります。
かつて日本国内では「バセロン・コンスタンチン」として親しまれていましたが、1996年に現在のリシュモングループ傘下となったあたりから、ヴァシュロンコンスタンタンの名称で定着しました。
このように深い歴史、そして伝統に裏打ちされた高い格式を有するヴァシュロンコンスタンタンですが、リシュモン参画と同年にあたる1996年、オーヴァーシーズを生み出します。
※第一世代のオーヴァーシーズ
パトリモニーやマルタ等、どちらかと言えばクラシックなモデル展開をメインとしてきたヴァシュロンコンスタンタン。
同じ雲上ブランドのララグジュアリースポーツウォッチ(オーデマピゲ ロイヤルオークやパテックフィリップ ノーチラス)と比べると、オーヴァーシーズの誕生は後発となりました。
※ラグスポ(ラグジュアリースポーツウォッチ)について補足を加えると、特に定義はありませんが、「1972年にオーデマピゲが発表したロイヤルオークにルーツを持つ時計」のような意味合いで捉えられています。
ひとくちにスポーツウォッチと言っても様々ですが、オーデマピゲのロイヤルオークは、下記のようなポイントを備えていました。
すなわち「ケース・ブレスレットが一体型となり、シームレスになっていること」「きわめて薄く上品であること」そして「オーデマピゲのような
雲上ブランドが打ち出すステンレススティール製スポーツウォッチであること」。
1970年代当時、オーデマピゲのようなハイメゾンが手掛ける時計と言えば、ゴールド製ドレスウォッチであることがほとんどでした。そんな中でステンレススティールを使ったスポーツウォッチ、しかも39mmものケース直径(当時のメンズのスタンダードケースサイズは31mm~35mm程度)を有するモデルをオーデマピゲがリリースした・・・時計業界に非常に大きな驚きをもたらしましたが、その後ロイヤルオークへの対抗機が各社から―パテックフィリップ ノーチラスを筆頭に―打ち出されたことを鑑みれば、いかにラグスポが魅力に溢れたジャンルであるかが垣間見えます。
現在ではラグスポと言った時、必ずしも上記のポイントを押さえているものばかりを指しませんが、代表モデルとしてはショパール アルパインイーグルやジラールペルゴ ロレアート、ランゲ&ゾーネのオデュッセウス等が挙げられます。
そう、オーデマピゲやパテックフィリップのスポーツラインが1970年代生まれであることに対し、ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズは1996年と、少し「後発」なようにも見受けられるのです。
とは言え、実はオーヴァーシーズには原型となった歴史的モデルあり!
それは、1977年にヴァシュロンコンスタンタン創立222周年の記念モデルとして打ち出されたRef.222です(ただし、デザインとしてのDNAは1989年発表のフィディアスと言われています)。
※オリジナルのRef.222
ケースとブレスレットがシームレスになったフォルムはとても薄く、きわめてエレガントに仕上がったRef.222。なお、オーデマピゲ ロイヤルオークやパテックフィリップ ノーチラスはジェラルド・ジェンタ氏がデザインを手がけたことで有名ですが、Ref.222のデザイナーはヨルグ・イゼック氏です。ヨルグ・イゼック氏はブレゲ マリーンやタグホイヤー キリウム等もデザインしております。
このRef.222を引き継いだのが、オーヴァーシーズと言うわけです。実は他のラグスポ同様、そのDNAが1970年代から萌芽していたと言うわけですね。
1996年以降、オーヴァーシーズは二度のモデルチェンジを経て、現代では第三世代へとアップデートを果たしております。
では、オーヴァーシーズはどのようなラグジュアリースポーツウォッチであるのか。
他の「ラグスポ」同様、ケース・ブレスレットが一体型となったエレガントなフォルムを有し、かつその外装は雲上ブランドであるヴァシュロンコンスタンタンらしく、丁寧な仕上げが施されています。
「仕上げ」は、高級時計にとって欠かせない要素です。丁寧な仕上げが施されることによって、高級機として申し分のない風格が備わるためです。
また、ラグスポは薄いゆえに、のっぺりとした印象を持ちがち。そこで雲上ブランドではツヤ消し仕上げ・ポリッシュ仕上げのコンビネーションを外装に施すことで、高級機に欠かせない「立体感」をも備えますが、その点でもヴァシュロンコンスタンタンは抜かりありません。
現在では加工技術の発達によって、仕上げのオートメーション化が可能になってきてはいます。しかしながら、やはり雲上ブランドが丁寧に、そしてある程度の手作業に拠って実現するその様は、格別。スポーツウォッチを、ワンランクもツーランクも格上げしている技術と言えるのではないでしょうか。
一方で、ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズはスポーツウォッチとしての機能も優秀と言わざるをえません。
ラグスポに限らず雲上ブランドの薄型時計は、どうしても防水性や堅牢性は厚みのあるモデルと比べると、犠牲になりやすいものです。
しかしながらオーヴァーシーズは、「海を超える」というモデル名が示す通り、旅が一つのテーマとなったスポーツウォッチ。
そのため視認性の高い文字盤や、堅牢で扱いやすい外装を是としており、ケース厚11mmでありながらも150m防水・かつ高度な耐磁性能をも有しているのは、本当に素晴らしいですね。
なお、オーヴァーシーズはベゼルが非常にアイコニックであることも、特筆すべき点です。
これは、ヴァシュロンコンスタンタンのブランドロゴ「マルタ十字」に範を取っているのだとか(後述しますが、第二世代以降のブレスレットもハーフマルテーゼクロスなる、マルタ十字を模したコマデザインが採用されています)。
マルタ十字は1880年より、ヴァシュロンコンスタンタンのブランドロゴとして登場しております。
なお、「マルタ十字」の呼び名が定着しているためこのように記しておりますが、実際には機械式時計のムーブメントの、ゼンマイを収めている香箱のカナ形状がモチーフになっているのだとか(もっともヴァシュロンコンスタン自身も、マルタ十字を想起させるベゼルなどと表記しておりますが)。
さらに現行のシースルーバックからは、トラベルウォッチを象徴してか、コンパスモチーフがデザインされた22K製ローターをご鑑賞頂ける仕様に。
なお、第二世代まではソリッドバックでしたが、ここには大海原に出でゆく帆船―イタリアの探検家 アメリゴ・ヴェスプッチ帆船―がエングレービングされておりました。
こういった特別感溢れるディテールも、長い伝統と技術遺産を誇るヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズならではの魅力と言えるでしょう。
このように魅力溢れるヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズですが、では資産価値は高いのでしょうか。低いのでしょうか。
「資産価値」と言った時、様々な意味合いがあると思います。
「子や孫へ受け継いでいくことができる」「家宝になる」あるいは「再販時に、高値で売却することができる(リセールバリュー)」・・・
ことヴァシュロンコンスタンタンに関しては、このいずれもが当てはまり、資産価値はきわめて高いと言うことができます。
なぜなら非常によく作りこまれているため、年式を経てなお普段使いできる機構であること。また長い伝統に裏打ちされた盤石の修理体制が整っており、「永久修理」として生産終了後も面倒を見てくれる体制があること。
さらに近年では、ラグスポ人気の高まりによって世界的に非常に高い需要を有していることも、資産価値を押し上げる一端となっていることでしょう。
ヴァシュロンコンスタンタンは雲上ブランドの宿命か、作りこみが高いゆえ、大量生産とは無縁です。そのため供給量は限られているのですが、これを大きく凌ぐ圧倒的な需要によって、実勢相場が大きく上昇している現状があります。
実勢相場が高いということは、その分二次流通市場での購入金額も高くなります(正規店であれば国内定価が貫かれますが、あまりの人気ゆえ正規店で出会うことは難しく、最近では予約も受け付けていないのだとか)。一方で実勢相場の高さは再販価格の高さも示唆しており、こういった意味での資産価値は、近年、過去類を見ないほど上昇していると言えるのです。
もちろん「購入価格の何倍にもなって売却することができた」などは非常にレアケースとなりますが、高額品を買うなら、値崩れのしづらさや再販時に損をしないリセールバリュー、あるいは子々孫々に家宝として受け継げる資産価値も気にしておきたいところですね。
こういった「資産価値」の面でも、ラグジュアリースポーツウォッチとしての完成度の高さにおいても、ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズは時計ファンに強くお勧めしたい一大コレクションとなっております。
歴代ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズの価格推移と資産価値
それではヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズのこれまでの価格推移と、資産価値についてご紹介いたします!
前述の通り、資産価値と一口に言っても、様々な意味が含まれます。
ヴァシュロンコンスタンタンは家宝になるような価値を有することは間違いありません。しかしながら「再販価値」と言った時、知っておきたいのは過去どのような価格動向を経てきたか、ということです。
ここで言う価格とは高級時計の実勢相場(二次流通価格や並行輸入価格とも)を指しますが、「需要」によって左右されるところが多く、高い需要を誇る時計は、多くの場合で過去、高値安定あるいは上昇傾向を描いてきております。そして、この傾向は時計市場が拡大し続ける昨今、今後加速していく可能性が高いことも示唆しています。
すなわち、ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズの過去の価格推移を知ることで、これまでの資産価値が分析できることはもちろん、これからの資産価値についても考察することができる、ということ!これから購入をご検討されている方も、既にご所有されている方も、ぜひ知っておいて損はありません。
なお、現行オーヴァーシーズは第三世代となっております。
オーヴァーシーズは、下記のような系譜を辿ってきました。
初代:1996年~2004年
第二世代:2004年~2016年
第三世代:2016年~
長い歴史の中でケースサイズや素材、機構など幅広く展開されてきたオーヴァーシーズですが、本項では基幹機に当たるステンレススティール製3針モデルを中心に取り上げております。
また、価格推移については、当店GINZA RASINに入荷した中古モデルから一年間の平均相場を採り、グラフ化しております。
状態や仕様によって大きく価格が変動する場合もあるのであくまで平均とはなりますが、ぜひ動向をチェックしてみましょう!
①オーヴァーシーズ オートマティック 4500V
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.5100
防水性:150m
参考定価:3,190,000円
まず最初にご紹介するのが、現行の3針オーヴァーシーズ 4500Vです。
前項で「ラグスポ人気」について言及しておりましたが、それを牽引する一つがRef.4500Vと言えますね。
第二世代までは8葉であったベゼルが6葉へと変更され、デザインが一新。インデックスはシンプルなバータイプとなり、ブラック・シルバー・ブルーの三色展開となっております(2016年当時はブラウン文字盤も存在していましたが、現在カタログからは消えております)。
オーヴァーシーズらしい耐磁性能と150m防水は言わずもがな(裏蓋にはANTIMAGNETICの刻印が!)。
さらにムーブメントがツインバレル(ゼンマイを格納する香箱を二つ搭載すること)によって安定したトルクを供給し、かつ約60時間のパワーリザーブを搭載するCal.5100によって、いっそうの性能面のブラッシュアップがなされました。
第三世代からはシースルーバックを搭載しているため、雲上ならではの美しいムーブメントが鑑賞できるというのも、オーヴァーシーズの存在を格上げしています。
さらに言うと、第三世代からはインターチェンジャブル・ストラップが搭載されました。これは工具なしに、容易にストラップ交換ができる仕様!これに伴い基本のメタルブレスの他、ラバーストラップ・レザーストラップが付属するようになったため、一本で三度美味しいというお得感も現行オーヴァーシーズの魅力です。
そんなオーヴァーシーズ、文字盤カラーによって相場動向が大きく異なります。
◆ブラック文字盤
◆シルバー文字盤
◆ブルー文字盤
※ブルーは2018年の入荷個体が少なかったため、2019年以降より平均価格推移をご紹介しております。
いずれも凄まじい上昇率ですが、とりわけブルー文字盤の価格高騰が顕著となっておりますね。
ちなみに2022年10月に定価改定が行われ、3,190,000円へと値上がりしましたが、いずれもこれを凌ぐ実勢相場です。
もっとも、この相場上昇の要因は様々です。円安であったり、新型コロナウイルスの影響で、レジャーや飲食への消費の受け皿が高級嗜好品へとシフトした、などが代表的な背景として挙げられるでしょう。
加えて、何度か言及している「ラグスポ人気の過熱」も無関係ではありません。
ロレックスのスポーツモデルに需要が集中し、過去類を見ない実勢相場の急騰を我々は経験中ですが、ラグスポ市場でも同様の事象が発生しつつあります。とりわけオーデマピゲ ロイヤルオークとパテックフィリップ ノーチラスへの需要は未曾有のものとなっており、ステンレススティール製モデルでありながら、1000万円、あるいは2000万円超の値付けがなされることもあるといった状況です。
この「過熱」は、他のラグスポにも波及しており、結果として同じ三大時計ブランドのヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズも、いち早く相場高騰の影響を受けたものでした。
もともと作りもよし。デザインもよし。性能もよしのオーヴァーシーズですから、人気は致し方ないかもしれません。しかしながら近年では「売却時に高く手放すことができる」といった購買マインドも、見受けられるようになってきたのです。
こういった時流から、オーヴァーシーズもまた、資産価値を購買マインドとするユーザーからの買いが集中(もちろん、それだけではないケースも多いですが)。コロナ禍の消費動向の変化や円安がさらにこの傾向を後押しした結果、中古であっても300万円台後半~。ブルー文字盤に至ってはなかなか400万円を切らないような実勢相場を記録し続けることとなったのです。
最近では少し落ち着いてきた、といった声も聞こえます。
確かにロレックスや前述したラグスポなどといった、これまで相場が上がりすぎていた個体に関しては、2022年5月頃からジワジワと下落が見られていました。しかしながら2022年8月頃から、業者間の仕入れ価格は再び上昇。これから時計業界の繁忙期である12月を前に、また値上がり傾向を記録することとなったのです。これは、オーヴァーシーズも御多分に漏れず、です。
さらに言うと2022年10月からは日本への入国制限が緩和され、外国人観光客が増加することが見込まれます。円安の日本は外国人にとって、魅力的な市場!ヴァシュロンコンスタンタンのように海外でも人気の高い製品はこういったインバウンドの購入が目立ちますが、さらに品薄が加速することも想像に難くありません。
上記の価格傾向やラグスポ市場全体の相場動向を見るに、ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズの資産価値の高さが、見えてきたかと思います。
もちろん今後その時計が高くなるのか安くなるのかは誰にもわかりません。しかしながら、相場上昇の材料が揃っていることは事実です。これ以上高くなる前に、本当に欲しい方は購入しておきたい一本ではないでしょうか。
なお、現行オーヴァーシーズにはクロノグラフ Ref.5500V系やデュアルタイム Ref.7900V系等が存在しています。
複雑機構は入荷個体もそう多くなかったため各年の平均相場を算出することはできませんでしたが、3針モデル同様に人気が高く、一方でその稀少性ゆえに高値傾向となっております。
②オーヴァーシーズ Ref.47040/B01A
ケースサイズ:直径42mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.1126SC
防水性:150m
参考定価:1,890,000円
次にご紹介するのは、第二世代のオーヴァーシーズ Ref.47040/B01Aです。
現行と比べると、かなり印象が異なりますよね!
オーヴァーシーズのアーティスティック・ディレクターを務めるクリスチャン・セルモに氏は「第二世代のオーヴァーシーズは、現在では“アグレッシブすぎるデザイン”」と称していたとのことですが、確かに現行の洗練さとはまた違った、独創的な美しさを感じさせます。
なお、マルタ十字を模したベゼルやブレスレットの「ハーフマルテーゼクロス」のモチーフは健在ですが、ベゼルは現行の6葉と異なり8葉となっております。また、ケース直径も1mm大きい42mmサイズがスタンダードとなっており、飛びアラビアの文字盤と相まって、インパクトは抜群ですね!個人的にはオーヴァーシーズは第二世代が最も好みですが、こういった「遊び心」が散りばめられているからかなぁと思っております。
裏蓋はシースルーではなくソリッドタイプのため、前述の通りエングレービングされた帆船をお楽しみ頂けます。
ジャガールクルト製ムーブメントをベースとしたCal.1126SCを搭載しているため、上品な薄さを湛えているのも素晴らしいですね。
第二世代も様々なヴァリエーションが存在し、ストラップタイプのグレー文字盤・ブルー文字盤も大変人気の高い逸品です。
しかしながら本項では、基本のメタルブレスレットのブラック文字盤・シルバー文字盤の二機種の価格推移をご紹介いたします。
◆ブラック文字盤
◆シルバー文字盤
現行Ref.4500Vと同じく、価格上昇していますよね。しかも、急激なラインを描いて。
もともとヴァシュロンコンスタンタン自体が「知る人ぞ知る」といった立ち位置であったことも手伝って、並行輸入価格はお得感が強いものでした。
とは言え、近年の高級時計市場の拡大やラグスポ人気が高まって、第二世代も相場急騰が加速。さらに、こういった生産終了モデルというのは、年式を経るにつれて状態の良い個体がどんどん市場から減っていくもの。
ヴァシュロンコンスタンタンは雲上ゆえに、そう大量には生産していないことは前述の通りです。そのため、現在のような需要が衰えないまま年数を経れば、いっそう稀少性が上昇していくことが予想できるでしょう。
③オーヴァーシーズ ラージ Ref.42040およびミディアム Ref.42052
ケースサイズ:直径37mmまたは35mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.1310
防水性:150m
参考定価:966,000円
最後にご紹介するのは、初代オーヴァーシーズです!
初代モデルも8葉のベゼルを搭載しておりますが、ブレスレットはまだストレートな3連リンク。また、いくつかのバリエーションはあるものの、サイズ展開はラージ 37mm、ミディアム 35mmと、アンティークチックな小径ケースなのも味わい深いですね。
第二世代ではジャガールクルト製ムーブメントをベースとしたCal.1126でしたが、初代はジラール・ペルゴ製がベースのCal.1310を搭載しておりました。なお、初代から薄型上品な設計を見ることができます。
初代モデルは、文字盤種類にバリエーションがあり、アラビア数字と砲弾型インデックスタイプが楽しめます。
ちなみに砲弾型インデックスの方は12時位置のロゴが扇形になっていますが、アラビア数字インデックスだと水平に。
こういったバリエーションによる仕様の差が、90年代の独創的な雰囲気を感じさせます。
入荷個体が少ないため、現行・第二世代のような価格推移グラフは算出しておりませんが、35mmのミディアムサイズ Ref.42052が130万円台~。37mmのラージサイズ Ref.42040に至っては200万円前後~の値付けが中古であってもなされるようになっており、驚くべき上昇幅と言えるでしょう。なんせ、かつて初代オーヴァーシーズは50~70万円台ほどで購入できた時代があったのですから(ただし繰り返しになりますが、近年は時計市場自体が拡大するにつれてユーザーも格段に増えているため、中古時計が全体的に相場上昇しているという背景もあります)。
初代オーヴァーシーズは他の世代と比べて流通量もそう多くはありません。出会った時が買い時。まさにこのフレーズ通りの腕時計ではないでしょうか。
まとめ
ラグスポを代表する一つ「ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ」の価格推移と資産価値について、解説いたしました!
オーヴァーシーズは雲上ブランドのスポーツウォッチとしても非常に完成度の高い逸品に仕上がりますが、一方で「知る人ぞ知る」といった立ち位置であったことも事実です。近年の人気は古くからのファンにとっては嬉しいところですが、あまりにも価格が高くなってしまうと手が出しづらくなってしまうものですね。
円安やインバウンド増加、メーカーの定価改定、あるいはさらなる時計市場の拡大・・・高級時計の実勢相場が上昇する材料が出揃う昨今、繰り返しになりますが、欲しい方は早く買っておきたい一本です!
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年