「グランドセイコーのトゥールビヨンって何がすごいの?」
「コンスタントフォース・トゥールビヨン Kodoの魅力や特長について知りたい」
2020年にコンセプトムーブメントとして誕生し、その2年後には「現実の腕時計」として製品化した、グランドセイコー コンスタントフォース トゥールビヨン「Kodo(鼓動)」。
実用的な高級腕時計の名手として名を馳せてきたグランドセイコーにとっては、初のメカニカルハイコンプリケーションウォッチであり、かつ世界初のメカニズムを実現したモデルです。
そしてこのグランドセイコーのKodoが、時計業界のアカデミー賞と名高いGPHG(ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ)において、クロノメトリー賞を獲得しました!
世界も認めるグランドセイコー Kodoの魅力や特長について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
グランドセイコー初のハイコンプリケーションを搭載したKodoは、時計の心音を存分に楽しめる至極の一本です。
この記事ではグランドセイコー Kodoの魅力や特長を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
価格についても紹介しますので、グランドセイコーの複雑機構に興味がある方はぜひ参考にしてください。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
目次
冒頭でもご紹介した通り、GPHG2022年度クロノメトリー賞を、グランドセイコーが獲得しました!
GPHG(ジュネーブ・ウォッチグランプリ;Grand Prix d’Horlogerie de Geneve)をご存知でしょうか。
これは時計業界のアカデミー賞とも称される、栄えある祭典。2001年の創設以来、エントリーされたその年の新作ウォッチを対象に、ジャーナリストや時計師などといった時計業界のスペシャリストらが各部門のグランプリを選出します。
エントリーには料金が発生します。また、ロレックスやパテックフィリップのようにそもそもエントリーを行わないブランドも存在します。一方で大々的に開催され、かつ国際色豊かな時計スペシャリストらが参列するGPHGは、業界最大の名誉ある祭典であることは間違いありません。
現在、GPHGの部門は多岐に渡り、その数は20を超えます。
最高賞である「エギュイユ・ドール(金の針;Aiguille d’Or)賞」を筆頭に、「アイコニックウォッチ賞」や「トゥールビヨンウォッチ賞」、「レディースウォッチ賞」等が並びます。
受賞作にはアカデミー賞同様にトロフィーが贈られますが、なんと、「手」の形をしているのだとか!
出展:https://www.seikowatches.com/jp-ja
この手は、時計を製造する職人の手を表しています。金メッキされたブロンズで作られていますが、まさに時計グランプリといった趣ですね。
そしてグランドセイコーは過去、GPHGで二度の受賞を果たしてきました(セイコーも入れると、さらに四回の受賞を果たしています)。
一度目は、2014年度の「プティット・エギュィーユ(小さい針)賞」。これは8,000スイスフラン以下の時計を対象とした部門であり、グランドセイコーではメカニカルハイビート36000GMT SBGJ005で受賞。
続く2021年、ヘリテージコレクションSLGH005、通称「白樺」がメンズウォッチ賞を獲得。GPHGの中でもメンズウォッチ賞は、大賞と並んで花形。わが国の腕時計ブランドがメンズウォッチ賞を獲得したことは、日本時計業界に大いなる衝撃と感動をもたらしたものです。
この感動の翌年、さらにグランドセイコーはKodoで「クロノメトリー(Chronometry)賞」を獲得したのですから、驚きを禁じえません。
もともと素晴らしいブランドでしたし、2017年にセイコーから独立して以降、グランドセイコーの世界市場での競争力はみるみる高まっておりました。しかしながら、実際にこういった名誉ある国際的な賞で認められるというのは、ひとしおの嬉しさがありますね。
なお、クロノメトリー賞とは、時計の精度や正確性で審査されるカテゴリですが、ノミネート作品は少なくとも一つのトゥールビヨンまたは特別な脱進機等を含んでいるとされています。
ちなみに、トゥールビヨンウォッチ賞での受賞も期待されていたのですが、こちらはH.モーザーのシリンドリカル トゥールビヨンがその座に輝きました。
GPHGは、時計の機構やデザインのみならず、「時計全体」を評価し審査されると聞きます。
すなわちグランドセイコーのKodoは、ただ珍しい機構だからとか精度がすごいからなどといったことのみならず、世界が認める腕時計としての完成度の高さを有していると言えますね。
では、そんなKodoとは、いったいどのような時計なのでしょうか。
次項でご紹介いたします!
グランドセイコーのKodo(鼓動)は、2022年に発表された新作モデルです。
「新作モデル」とは言えその外観からもわかるように、グランドセイコーにとって、とても特別な一本となります。一目見て、ただものではない風格ですよね。
そう、Kodoとは、グランドセイコー初となるハイコンプリケーションウォッチであり、かつ世界初のメカニズムを備えた逸品なのです。
詳細をご紹介いたします。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/news/20220330-1
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径43.8mm×厚さ12.9mm |
素材: | プラチナ |
文字盤: | スケルトン |
ムーブメント
駆動方式: | 手巻き |
ムーブメント: | Cal.9ST1 |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 10気圧 |
定価: | 44,000,000円 |
2020年、グランドセイコーはあるコンセプトムーブメントを発表しました。それは、「T0(ティーゼロ)」です。
T0は、世界で初めてコンスタントフォース機構とトゥールビヨン機構を同軸上に、一体化して組み合わせるというメカニズムを備えたことで大きな話題となりました。
詳細は後述しますが、コンスタントフォースもトゥールビヨンも、突き詰めると「精度」のための機構です。1960年の創業以来、卓越した高精度を訴求し続けてきた、グランドセイコーの技術と歴史の集大成的存在と言えるでしょう。
しかしながら2020年時点では、まだコンセプトモデルに留まっておりました。
そして2022年、ついに「コンセプトモデルから現実の腕時計へ」として、グランドセイコーの様々な匠(たくみ)が一丸となり、実際の腕時計サイズにまで小型化!ケース直径43.8mm×厚さ12.9mmと、非常にコンパクトですよね。
とりわけ厚さ12.9mmというのは、驚きに値します。もちろん腕時計としては珍しくないサイズ感なのですが、機械式のコンプリケーション(複雑機構)はパーツ数が多く、後述しますがトゥールビヨンはキャリッジ(籠)を設けるため、そもそも実用的なサイズにすることが難しいのです。
しかしながら13mmに満たない厚さを実現する。さすが実用時計には一家言持ってきたグランドセイコーの仕事と言えますね。
腕時計としての製品化にあたり、T0ムーブメントはブラッシュアップされ、キャリバー9ST1と改められました。
さらにKodoは2022年10月より、限定生産とはなるものの、市販化も実現されております。
なお、Kodo(鼓動)のモデル名は、コンスタントフォースとトゥールビヨンによって奏でられるムーブメントの心音に由来しております。
ちなみにグランドセイコーではこの希代の鼓動をリリースするまでに、10年の歳月を経たとか。グランドセイコー渾身のハイコンプリケーションウォッチであることが、随所からにじみ出ております。
一目でわかる精密精緻なムーブメント、そして「世界初のコンスタントフォースとトゥールビヨンの同軸上・一体化」と聞くとなんだか凄そうですが、そもそもどういった機構なのでしょうか。
コンスタントフォースというのは、その名の通り「一定の力(ここでは、ゼンマイのトルク)を供給する」といった意味合いです。
機械式時計は、巻き上げたゼンマイがほどける力を利用して駆動します。この力は、ほどけていくにつれて弱まっていき、均一な力を各歯車に伝達しづらくします。この力をトルク(回転力)と呼びます。
そのため、一般的に機械式時計はゼンマイがフルで巻かれた状態で高い精度を保ち、トルクが弱まるとこれに比例して精度も落ちていく傾向にあります。
優れた精度を保つためには、手巻きであれば毎日同じ時間に巻き上げるとか、自動巻きであれば一日中身に着け、かつよく腕をふるなどと言われるのは、ゼンマイを程よく巻き上げるため、というわけです。
一方で、高精度を維持するのに別のアプローチに挑戦するブランドもあります。ゼンマイの、定力装置の開発です。ちなみにこの挑戦は、ゼンマイ時計が誕生した15世紀頃から、既に始まっていたとも言います。
有名どころでは、ランゲ&ゾーネやブレゲが搭載させた鎖引き(チェーン・フュージ)。あるいはそもそもゼンマイの持続時間(パワーリザーブ)を長くすることで一定のトルクを保つツインバレル等は、現在の主流になりつつありますね。
グランドセイコーのKodoで実現したコンスタントフォースも、この定力装置の一環です。
仕組みとしては、ゼンマイから伝わるトルクを別途小さい板バネ等に蓄え、このバネ等が元に戻ろうとするエネルギーでテンプを動かすといったものです。ちなみにテンプとは、機械式時計の脳とも心臓とも捉えられる部位で、ここの往復運動によって正しい時刻が刻まれています。すなわち、機械式時計の精度を司る肝です。
主ゼンマイがほどけ続けている限りは、そのパワーリザーブにかかわらずバネ等に力が送り続けられ、結果としてバネ等を介してトルクは一定となり、テンプに供給されるエネルギーも理論上は一定になります。
なお、似た機構でルモントワールがありますが、これよりもコンスタントフォースはテンプに近い(あるいは内臓された)設計となっております。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
さらにトゥールビヨンについても、説明を加えます。
トゥールビヨンとは、前述したテンプを構成する脱進機をキャリッジに収めて、キャリッジごと一定周期で回転させることでテンプにかかる姿勢差を解消し、精度誤差を抑えるための機構です。テンプは振り子の往復運動を行って精度を維持しつつも、キャリッジによって回転が加えられている、といった動きを見せることがトゥールビヨンの大きな特徴となります。
なぜ、このような機構が必要であったのか。
トゥールビヨンはかの有名なアブラアン=ルイ・ブレゲ氏が開発したと言われる機構で、1801年6月26日に特許が取得されました。
当時は懐中時計の時代。
長時間、垂直方向に重力がかかることが、テンプへの外乱となっていました。この外乱を姿勢差と呼びます。また、ムーブメントの潤滑油も下方向に溜まってしまいがち、といった事情もあったことでしょう。テンプは繊細なパーツ。こういった外乱によって精度に狂いが生じてしまうため、キャリッジを新たに設けて回転させ、姿勢差を解消しようという試みがトゥールビヨンであったのです。
しかしながら、トゥールビヨンは実用化には至りませんでした。とりわけ現代の腕時計は懐中時計と違って常に動かしているため、姿勢差については解消されていると言えます。
一方で、高級腕時計を中心にトゥールビヨン搭載モデルは非常に幅広いブランドで製造されています。コンプリケーションの中でも、人気の機構と言えるでしょう。
なぜか。現代のトゥールビヨンは必ずしも実用の意味合いを持たず、むしろ、キャリッジの動きを楽しむという趣味性ゆえに、時計好事家を中心に高いニーズを誇っているのです。
トゥールビヨンは、仏語で「渦」を意味します。キャリッジの渦のような動きを鑑賞することに、一種の愉悦を見出せるのが、トゥールビヨンの真髄であり魅力!
一般的にトゥールビヨンのキャリッジは1分間に一回転しており、この動きとテンプの振動を融合して眺められる様は、機械式時計の楽しみ方の一つと捉えられますよね。デジタルウォッチやGPSウォッチが市場を賑わせる中、あえて機械式トゥールビヨンを選ぶのは、この趣味性に価値を見出す好事家が少なくないためです。
そして忘れてはいけない、グランドセイコーでは、この二つの複雑機構「コンスタントフォース」と「トゥールビヨン」を、さらに同軸上に組み込むということをやってのけています。
ちなみに、コンスタントフォースを設置する「位置」は安定的な精度にとってきわめて重要。この一つの解をグランドセイコーは世界に提示したと言えます。
下の画像が、グランドセイコーが公開しているキャリバー9ST1の構成です。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
左の図がコンスタントフォースキャリッジ、右の図がトゥールビヨンキャリッジとなっています。確かに、見事に一体化していますね!
なお、繰り返しコンスタントフォースとトゥールビヨンを「時計の精度」の観点からお話したことに気づかれた方もいらっしゃるかもしれません。この二つの機構の出自は「精度維持」ゆえ、この話の構成は当然とも言えます。
しかしながら、Kodoに見られるグランドセイコーの本懐は、まさに「鼓動」。
Kodoで実現したコンスタントフォース トゥールビヨンによって、時計の心臓部にあたるテンプの動きと音を、力強く我々に示しているのです。
キャリバー9ST1(およびT0)のベースはグランドセイコーのハイビートムーブメント9S65です。9S65は同社の基幹ムーブメントで、テンプは28,800振動/時(8振動/秒)のビート設計。
そのためキャリッジ内に収められたテンプもまた、毎秒8振動を繰り返しており、トゥールビヨンキャリッジが滑らかに回転しています。さらに同軸上のコンスタントフォースキャリッジが追いかけるかのように1秒に1ステップずつ回転することで、テンプのハイビートな振動音とコンスタントフォースの1秒ステップがともに奏でられるという設計になっているのです。
なお、コンスタントフォースキャリッジのアームの一つにはルビーがセッティングされており、秒針代わりとして機能しています。
さながら温かな心臓の音を思わせる16ビートの刻音が耳に届く様は、まさにKodoです。
こういったコンスタントフォースやハイビート機はパワーリザーブが短くなる傾向にあります。ロービートやシンプルな機構と比べてエネルギーを使うためです。
しかしながらKodoは約72時間、コンスタントフォース作動時であっても約50時間の持続性を獲得しました。
もちろん、通常のグランドセイコーのように、厳格な独自規格が設定。Kodoのキャリバー9ST1には、新たに設定されたグランドセイコー規格検定が適用されているとのことです。
ちなみに文字盤8時位置にパワーリザーブインジケーターが搭載されております。
繰り返しになりますが、ケース直径43.8mm×厚さ12.9mmという心憎い演出。グランドセイコーが世界に打って出るにふさわしい、至極のハイコンプリケーションウォッチだと思います。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
グランドセイコーは精度や性能で先鞭をつけてきましたが、実は外装も畢生の出来栄え。
グランドセイコーの質実剛健ながら、丁寧な仕上げや高い作りこみによる美しく輝くケース・ブレスレット。あるいは文字盤にこそ、心奪われているファンも少なくないでしょう。
グランドセイコーのデザインの根幹には、セイコースタイルがあります。
1967年から続くセイコースタイルにはいくつかのデザイン文法が存在するのですが、目指すところは「燦然と輝く時計」。
光の陰影によってメリハリがつけられ、いっそうの美しさを増すグランドセイコーウォッチは、日本が大切にしてきた「美観」を高級腕時計に昇華していると言えます。
この「燦然と輝く時計」「日本の美観」が、Kodoにも存分に落とし込まれています。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
宣材写真からでもわかる、グランドセイコーらしい美しいケース意匠。グランドセイコーが「伸びやかなアーチを描く」と表現する通り、エッジを立てつつも優美なラインを描いていることが見て取れます。
なお、素材にプラチナとブリリアントハードチタンを組み合わせてスタイリングされているとのこと!ブリリアントハードチタンとはグランドセイコー独自の高性能チタンです。これらの素材にザラツ研磨による鏡面仕上げおよびヘアライン仕上げをコンビネーションさせることで、グランドセイコーが得意とする、美しく輝く高級機が完成されています。
さらに言うと、文字盤装飾は近年のグランドセイコーの十八番でしたが、Kodoでは文字盤・裏蓋ともに大胆にスケルトナイズ。
こうすることでムーブメントが構成する奥行を存分に感じさせることはもちろん、あえて光を透過させ、グランドセイコーが近年のコンセプトの一つとしている日本伝統の美を表現しています。ムーブメントを構成するパーツ一つひとつが丁寧に彫金・仕上げされることで、美しさと視認性を両立しているのも素晴らしいの一言ですね。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
裏蓋側からも、ハイコンプリケーションウォッチとしての精密・精緻さと丁寧かつ高度な「美」への仕事が存分に伝わります。
ストラップには「姫路 黒桟革(くろざんがわ)」を採用。「なめし」と「漆塗り」を融合させた、日本古来の伝統技法で製造された、きわめて上質なストラップです。さらにクロコダイルストラップも付属しており、Kodoの美しさを格上げしてくれることでしょう。
世界も認めるグランドセイコーのコンスタントフォース トゥールビヨン Kodo(鼓動)。
製品化されたとは言え、いったい価格はいくらなのでしょうか?
Kodoに付けられた国内定価は、税込みで44,000,000円です。
ハイブランドの作りこまれたコンプリケーションウォッチは1000万円超となることも珍しくありませんが、Kodoも驚くべき値付けとなりました。もっとも、世界初のコンスタントフォース×トゥールビヨンの同軸設計。そしてディテールにまでこだわり、仕上げと彫金を施し、美しく完成させた内外を見れば、さもありなんか。
2022年10月21日から発売されていますが、全世界で数量限定20本の生産となっており、なかなか一般市場には出回らないでしょう。
ちなみに同年12月10日に開催される、世界的な老舗オークション会社Philips(フィリップス)では、Kodoの特別モデルSLGT001(限定1本)が出品されるのだとか!
この特別モデル、どうもムーブメントやバンドの仕上げが異なり、かつケース素材にブリリアントハードチタンのみを採用しているというのですが、いったいいくらで落札されるのか・・・!12月のオークション結果を待ちましょう!
GPHG2022年度クロノメトリー賞を獲得したことで、また世界に名を轟かせたグランドセイコーの、ハイコンプリケーションウォッチをご紹介いたしました!
Kodoの名の通り、時計の心音を存分に楽しめる至極の一本が日本を代表する高級ブランドから打ち出されたことは、とても誇らしい思いがしますね。
Kodoで培ったノウハウによって、今後も新しく、そしてさらなる複雑さを備えたコンプリケーションウォッチが、またグランドセイコーから打ち出されるかもしれません。
今後のグランドセイコーの動向に、要注目です!