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速報!2023年A.ランゲ&ゾーネ新作モデルを発表!by Watches & Wonders Geneve
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出典:https://www.alange-soehne.com/jp-ja/timepieces/odysseus/odysseus-chronograph
常に完璧を求める、卓越した技術で世界中のウォッチファンを魅了するランゲ&ゾーネ。
息づく美術品、時を告げる工芸品と呼んでも過言ではないタイムピースを例年ローンチしてきたメゾンが、2023年のWatches & Wonders Geneveで放ったのは、たった1本の「黒い矢」でした。
もともと大量生産をしないことで知られるランゲ&ゾーネですが、2023年の今年、新作として発表したモデルは今のところ唯一です。もっとも「黒い矢」はわずか1本ですが、世界中のファンの心を射止め続けています。
それでは、メゾンが自信をもって世に送り出した至高の1本を、ご紹介しましょう。
目次
2023年ランゲ&ゾーネ新作①オデュッセウス・クロノグラフ Ref. 463.178
2023年のランゲ&ゾーネの新作は「オデュッセウス・クロノグラフ」です。
オデュッセウス・クロノグラフは、2019年10月にランゲ&ゾーネから突然ローンチされたスポーツウォッチ、「オデュッセウス」の系譜です。オデュッセウスはランゲ&ゾーネ初のステンレススティール製にして、初のスポーツウォッチでした。
そしてメゾン初のねじ込み式リューズにより、12気圧防水を実現したモデルでもあります。
優美で繊細なドレスウォッチを、卓越した設計力と技術力、熟達した職人技によって限定的に作成するメゾンは、時計業界で特別な立ち位置にありました。そのため、初のステンレススティールスポーツウォッチは大きな衝撃を世界の時計業界に与えたのです。
2022年にはチタン製オデュッセウスが新作モデルとして登場しましたが、2023年はステンレススティール製のクロノグラフ!
特筆すべきは、ランゲ&ゾーネ初の「自動巻きクロノグラフ」であるということ。
つまり「1つのモデルにつき、1つのムーブメント」を自社製造する大変稀有なブランドであるランゲが、初の自動巻きクロノグラフムーブメントを開発、搭載したということです。
出典:https://www.alange-soehne.com/jp-ja/timepieces/odysseus/odysseus-chronograph
まずは時計の「顔」、文字盤から詳しく見てみましょう。
とにかくシンプル。
特にクロノグラフでよくあるスタイル「2つ以上のインダイアル」が存在しません。
ランゲ&ゾーネのクロノグラフを紐解くと、これまでにダトグラフの系譜、そして1815の系譜が存在しています。いずれもクロノグラフらしい複数個のインダイアルを備え、スモールセコンドや分積算計、ある時はムーンフェイズまで表示します。
オデュッセウス・クロノグラフの文字盤には、6時位置のスモールセコンドのみレイアウトされており、9時・3時位置には何事もないようにアウトサイズデイトが鎮座しています。
シンプルすぎるこのクロノグラフ、しかし2本の色違いのクロノグラフ針がセンターから伸びていることがおわかり頂けるでしょう。1本はシルバー、1本はレッドに塗られて存在を控えめに主張しています。
なお文字盤外周には、フランジに細かなミニッツサークルが刻まれています。
出典:https://www.alange-soehne.com/jp-ja/timepieces/odysseus/odysseus-chronograph
多くのクロノグラフでは、一本のクロノグラフ針(ラップタイム計測が可能なラトラパンテを除く)、そして30分積算計が搭載されます。時には60分積算計であったり12時間積算計が搭載されます。この積算計は、前述の「クロノグラフによくあるインダイアル」で表現されます。
しかしランゲ&ゾーネでは新作において、1分で一周する一般的なレッドのクロノグラフ針とともに、60分で一周するシルバーのクロノグラフ針をセッティング。すなわち、センターのクロノグラフ針で60分積算計の役割を担えるような設計となっているのです。だからこそ、インダイアルのないスッキリとシンプルで上品な文字盤レイアウトを可能にしたわけです。
12時位置の赤い「60」の数字が誇らしげなのは、機構に秘訣があったのですね。
なお文字盤を彩る赤は、60の数字と「CHRONOGRAPH」表示、そしてクロノグラフ針のみ。あとはブラック文字盤にシルバーの針・ホワイトゴールド製アプライドインデックスだけのシンプル極まるクロノグラフです。
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特徴はそれだけではありません。
特に面白い運動が見られるのは、クロノグラフ機能をリセットしたときでしょう。積算が30分未満であれば逆時計回りに、30分以上であれば時計回りにクロノグラフ針(シルバー・赤ともに)がフライバックする仕掛けになっています。
その際、赤い方のクロノグラフ針は、進んだ距離だけ素早く何周も巻き戻るという、これまたユニークな挙動を見せます。
さらに、リューズとクロノグラフボタンにも大きな工夫がされています。その名もデュアルファンクション・ボタンです。
リューズが切り替えボタンの役割を担っており、リューズがねじ込まれて定位置の時、2時・4時位置のプッシュボタンはクロノグラフの制御を行います。しかしリューズを一段引きにすると、このプッシュボタンでカレンダー調整が行えるように。そしてリューズを完全に引き出すと、ボタン操作は行えなくなり(時刻合わせはリューズを使って行う)、これによって故障のリスクを抑えました。
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今回搭載されたムーブメントL156.1ダトマティックも、もちろん当モデルのための新作です。
ランゲ&ゾーネ初の自動巻きクロノグラフムーブメントは、同社のムーブメントファンを喜ばせるシースルーバックからあますことなく見られます。
肉抜きされたローターは、ブラックロジウム加工を施した、プラチナ製の分銅が用いられています。
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4本の偏心スクリューを備えた耐衝撃性テンプ、ゴールドシャトンを留める青焼きネジの色の深さ、優美なスワンネック速度調整装置が裏ブタからも見ることができます。
ブリッジと地板は無処理のジャーマンシルバー製です。
テンプ受けには繊細な波模様が手彫りで施され、防水機能の高さとスポーティな印象をプラスしています。
テンプは毎時2万8800振動し、完全に巻き上げれば50時間のパワーリザーブを誇ります。
516個の部品で組まれたクロノグラフムーブメントは、ランゲ&ゾーネの伝統にしたがい、すべて職人の手で二度組みが行われています。
ゴールドシャトンにはコート・ド・ジュネーブ(グラスヒュッテストライプ)が彫りこまれ、一分の隙もありません。
たとえオーナーが生涯目にすることがなくても、職人以外の目に触れることがなくても、516の部品すべてが美しい、と確信できるムーブメントです。
出典:https://www.alange-soehne.com/jp-ja/timepieces/odysseus/odysseus-chronograph
さて、オデュッセウス・クロノグラフはスポーツウォッチとして誕生し、ステンレススティール製のブレスレットを備えています。
丁寧に面取りされた5連ブレスとベゼルにはサテン仕上げ、面取り部分などにポリッシュ仕上げを施して動きと変化がついています。
クロノグラフにつきもののプッシュボタンですが、オデュッセウス・クロノグラフに関してはほぼ目立ちません。
それはケースの優美なアクセントのように見えますが、確かに3つの機能を担った重要なボタンです。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径42.5mm×厚さ14.2mm |
素材: | ステンレススチール |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.L156.1 |
パワーリザーブ: | 約50時間 |
機能
防水: | 12気圧 |
定価: | 要問合せ(世界限定100本) |
まとめ
2023年のランゲ&ゾーネ新作モデルをご紹介しました。
2023年の新作は1モデルとは言え、世界から衆目を集める歴史的なタイムピースです。例年通り限定販売で、100本しか作製されませんが、雲上メゾン渾身の1本を目に焼き付けたいですね。
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年