「ロレックスが水没したらどうすればいい?」
「ロレックス水没時の応急処置が知りたい」
ウォーターレジャーを楽しむ際にリューズのネジロックがしっかり閉まっていないことに気づいたり、時計の風防ガラスが曇っていることに気付いた場合、水没の可能性が考えられます。
このような状況で時計の故障を最小限に抑えるために、ロレックス水没時の対処方法が知りたいという人は多いのではないでしょうか。
正しい対処法を知っておくことで、万が一の際にも冷静かつ適切に対応することが可能になります。
この記事ではロレックス水没時にまずやるべき対処法を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
水没時にやってはいけないことについても説明しますので、ロレックスが水没して困った際はぜひ参考にしてください。
目次
ロレックスが水没時の対処法!まず何をする?
ロレックスが水没してしまった場合、慌てずに以下の手順で水気を取り除きましょう。
- 乾いたタオルで水気を優しくふき取る
- リューズを引っ張り開放し時計内部も乾燥できるようにする
- オーバーホールの依頼をする
- 修理に出すまでは湿気のない場所で自然乾燥させる
それぞれの手順を一つずつ詳しく解説していきます。
乾いたタオルで水気を優しくふき取る
まずは外側の水分を完全に拭き取ることが重要です。
乾いたタオルでケース全体を拭くことで、水の侵入経路となりえるリューズの穴や、使用時の衝撃によって生じた可能性のあるケースの歪みからのさらなる水の侵入を防ぎます。
なお、時計を落としてしまうリスクを減らすために、椅子に座って机の上で作業を行うことをお勧めします。
まず、机の上にタオルを1枚敷き、その上に時計を置き、もう1枚のタオルで拭き上げてください。
この方法なら、拭き上げる最中に時計を手から落としてしまっても落下距離が短く、敷いたタオルが衝撃を吸収してくれます。
リューズを引っ張り開放し時計内部も乾燥できるようにする
水が侵入した腕時計に対する初期対応として、リューズを引き出しておく方法が効果的です。
リューズを引き出すことにより、巻き真(まきしん:リューズと時計内部を繋ぐ棒)と巻き真が通っているパイプの間に隙間ができ、これが時計内部への唯一の乾燥経路となります。
これにより外気が内部に入り、少しでも乾燥を促進することができます。
ただし、この方法だけで完全に乾燥させることはできないため、これは錆びの範囲を抑えるための応急処置としてご理解ください。
リューズが開放されている間、時計の内部に埃が入るのを防ぐために、「伏せ瓶」と呼ばれる保護カバーの使用が考えられます。
伏せ瓶は、時計修理時に部品に埃が付着しないように覆う専門の道具ですが、一般家庭では伏せ瓶の代わりに乾いたコップなどを使って覆うことで、埃を防ぐ効果が期待できます。
オーバーホールの依頼をする
ロレックスの時計に水が入ってしまった場合は、必ず時計の修理専門家にオーバーホールしてもらい、場合によって修理も依頼する必要があります。
後程、どのようなところに依頼するかを記載いたしますが、まず自分で分解して点検・修理するということは発想はしない方が無難です。
ロレックスは専用工具も必要な場面がありますし、錆びを除去する薬品も部品の素材ごとに使い分ける必要があります。
なかなか自分で薬品や工具を揃えて修理するのは難しいと考えられます。
なお、水の侵入によるサビは時間が経つほど悪化するため、迅速にオーバーホールと修理を依頼することをお勧めします。
時計の修理専門家にオーバーホールの依頼をした後も、すぐに持ち込めない場合は引き続き実施しておきたい応急処置がありますので、次の項目でご紹介いたします。
修理に出すまでは湿気のない場所で自然乾燥させる
水没した腕時計の錆の進行を鈍化させるためには、湿気の少ない場所での保管が重要です。
時計の部品には、修正が容易なものと、交換が必要でコストがかさむものがあります。
修理に出すまでの間に交換が必要な部品を増やさないようにするため、リューズを引き出した状態で伏せ瓶を被せ、その中にシリカゲルなどの乾燥剤を置くことをお勧めします。
これにより、内部の湿気を効果的に取り除くことができます。
ただし、シリカゲルが水に直接触れると発熱する可能性があるため、最初にご紹介した外側の水気を乾燥したタオルでしっかりと拭き取ることが非常に重要です。
ロレックス水没時にやってはいけないこと
ロレックスを水没させてしまった場合に気が動転し、思いつきで対応してしまうことが考えられます。
しかし、その対応が大切なロレックスの故障状態をさらに悪化させることがあります。
ここでは、「やってはいけないこと」をご紹介いたします。
ドライヤーで乾かすのはNG
リューズを開放して、その隙間からドライヤーで乾かそうと考える方も多いかもしれません。
しかし、ドライヤーで熱い風を当てると、時計内部の部品や潤滑油に悪影響を与える可能性があります。
また、埃やチリをリューズの開放した部分から時計内部に送り込んでしまうことも考えられますので、ドライヤーでの乾燥は絶対にNGです。
自然乾燥のまま放置
リューズを引いて自然乾燥させると、曇りが取れて外観からは水没していることが分からなくなることがあります。
そのため時計が動き続けている場合は、湿気が取れていると安心して放置してしまうケースがあるかもしれません。
しかし、内部では錆びが進行しています。
放置開始から一定期間が経過すると、リューズまで錆びが進行し、固着してリューズを引けなくなるという恐ろしい事態が起こり得ます。
これを避けるために、必ず時計の修理専門家にオーバーホールと修理を依頼しましょう。
ロレックス水没時の修理依頼はどこにする?
ロレックスが水没してしまったら、どこに修理依頼をしたらよいのでしょうか?
具体的にお探しされるポイントをお知らせいたします。
まず、ロレックスは専用工具が必要な場面もあるので、ロレックスの修理実績のある時計修理の専門業者に依頼するのが順当です。
昨今、時計を送ると修理内容を見積もりしてくれるサービスなどもあります。
お店に足を運ばなくても受け付けてくれる業者様もいらっしゃいますので、近隣の状況によってはWebで郵送による引き取りをしている業者様を探してみるのもおすすめです。
また、ロレックスはモデルによってスイス本国でないと修理できないものもあるため(古いモデルや部品が手に入りにくいモデルなど)、その場合は正規メーカーの修理依頼が必要となります。
メーカー(日本ロレックス)に依頼する
ロレックスでは国内にサービスセンターがありますので、お問い合わせをして状況をお話ししてみることをお勧めします。
サービスセンターで修理見積もりを作成し、お客様がお見積もりを承認してから修理を進める形が一般的です。
急に修理が始まり、金額の予想がつかないまま進行してしまうことはないと考えられます。
オーバーホールには約1ヶ月かかるとされていますが、精度の調整なども行った上でお手元に戻ってくることを考えると、必要な時間と捉えることができます。
また正規のサービスを受けると公式HP(2024年時点)では「ロレックスのサービスセンターによるオーバーホールを終えた時計は、ロレックス サービスカードとともにお客様に返却されます。」とあり、2年間の国際保証書もついてくるとのことです。
まず、修理を依頼する先として候補に挙げておきたいところです。
時計修理業者に依頼する
ロレックスの場合は特殊工具が必要とされることが想定されますので「ロレックス修理が可能な時計修理業者」も選択肢としてあります。
正規のサービスセンター以外にも、日本国内にはWeb検索をすると数多くの修理業者が存在します。
多くの修理店はしっかりしたサービスを提供していると思いますが、あまりに安価な業者を選ぶことはお勧めしません。
理由は基本的に時計修理店では修理作業時間の長さによって損益が決まりますので、当然安くしているところでは作業時間を短くするために工程を省くことも考えられます。
ご心配な場合は、何店舗か相見積もりを取り、相場感を掴むことをお勧めします。
相場感がつかめれば、安すぎるのかどうかをご判断いただけると思います。
ただし、相見積もりで修理業者の選定をするにはそれなりの時間がかかってしまいますので、普段から信頼できる修理業者様に見当をつけておくか、ロレックスオーナーのお友人がいらっしゃいましたら信頼している修理業者を知らない聞いてみるのも良いでしょう。
ロレックス水没時の修理費用
水没した時計の修理は水が少量で時間が経っていない場合、分解洗浄やパッキンの交換などで済む比較的安価な修理で済むこともあります。
一方、水没から時間が経過し部品交換やサビが広がってしまうことで機械ごと交換の必要がある比較的高額な修理もあります。
なので実際はオーバーホールを依頼してみないと明確な修理費用というものは分かりません。
今回はWeb上で散見される修理費用を参考に、ケースごとにおおよその費用をご紹介いたします。
実際に皆様がお問い合わせされる修理業者様とは異なると思いますが、ひとつの目安程度にご覧いただければ幸いです。
点検のみ
修理のための点検見積もりであれば無料の修理業者様も散見されます。
また、オーバーホールと呼ばれる分解洗浄組み立てですと、25,000円から100,000円くらいが想定されます。
モデルによって金額が異なりますが、クロノグラフなど複雑機能を有するモデルは分解部品数が多く、組み立てにも時間がかかるため、高額になる傾向にあります。
サビ取り
実際にはサビ取りだけの費用で済むことは少なく、オーバーホールとセットであることが多いと思います。
敢えてサビ取り作業だけを抜き出すとおおよそ10,000円から30,000円が想定されます。
サビの状態によってはパーツ交換まで必要になるケースもあります。その場合はパーツ代金なども加算されます。
それにオーバーホールを加えると約10万円前後まで費用が掛かるケースがあります。
リューズの交換
リューズは多くのモデルで3時位置に設置された小さい部品です。
防水機能を担保している部分であり、時刻の修正などの操作にも利用する重要な部品です。
衝撃によるリューズの折れや曲がりによる交換も多い部品ですが、リューズの交換は20,000円から50,000円程度と想定されます。
風防交換
サファイアガラスを用いた風防は一般的には割れにくいのですが、ハードな使い方や不慮の衝撃で欠けてしまうことがあります。
サファイアガラスの価格は外径や厚みによって異なりますが、交換費用は20,000円から30,000円程度が考えられます。
針の交換
水没によってシミがついてしまったり、修正できない場合には、針は交換が必要になります。
針は小さい部品ですが、時刻表示をする重要な部品です。
交換費用は5,000円から30,000円程度が考えられます。
ロレックス水没の原因を知って気を付けよう
水の侵入を許してしまうと、応急処置から修理依頼まで手間とお金がかかりますので、できれば避けたいものです。
よく耳にする水没原因についてお知らせしますので、ご参考になれば幸いです。
リューズの閉め忘れ
最も多いのが「リューズの閉め忘れ」です。
ご自分で閉めたつもりでも、最後までネジロックを締め込めていなかったという事例や、ダイバーズモデルを装着して防水性への信頼感から海に入ったところ、泳ぐ前に時刻を修正をしてリューズを引き出したままだった。といった具合です。
特に申し上げておきたいのは、水に入る前にリューズを締め込んだか確認をすることです。
温泉、海、プール、釣りの場面などでご注意ください。
気が散漫になりがちですので、事前に時刻を合わせておくと安心です。
服と一緒に洗濯してしまう
こちらも大変多いケースになっています。
帰宅して入浴する際に、外したロレックスの置き場に迷い、傷を防止するために洗濯物の上に置いてしまうことがあります。
次に入浴する家族がその上に洗濯物を置いてしまい、時計は誰の目にも触れぬまま洗濯機の中に入ってしまうこともあります。
腕時計は帰宅したら、置く場所を決めておきましょう。
また、盗難の可能性も考慮し、玄関に置くのは避け、脱衣所やリビングに毎日必ず置く場所を決めておくことが水没防止に役立ちます。
アウトドアで時計が浸水してしまう
トレッキングや釣りなどで岩や木にぶつけた衝撃でケースが歪み、雨などで水が入ってしまうケースがあります。
また、サファイアガラスの風防でも、河原で転倒などすると風防を石にぶつけて割ってしまうこともあります。
ロレックスのスポーツモデルは頑丈に製造されていますが、風防が割れていれば簡単に水の侵入を許してしまうので、注意が必要です。
これらのリスクがあるので、アウトドアでロレックスを着用していくことはよく検討しましょう。
ロレックスの防水性能はどのくらい?
ロレックスの現行品は全て防水性は100m(10気圧)以上になっています。
他社の時計では5気圧防水や3気圧防水、非防水などもあるので、非常に高い防水性が備わっていることがわかります。
ただし、100m防水だから100mまで潜れるわけではありません。
100m防水は水深100mの場所に時計が静的に置かれた場合に、その水圧に耐えられることを意味します。
つまり、水深100mで時計を激しく振り回した場合100mに置かれた状態以上の水圧がかかり浸水する可能性があります。
一般的に、現行製品のロレックスは全て、雨や少々のウォーターレジャーでは浸水することはありませんので、リューズを締め込み正しく使えばその性能を発揮します。
ただし、時計自体には防水性がありますが、レザーバンドなどは水に漬けると痛んだり染みになるなどの弊害があるため、水場での使用は控えた方が無難です。
ロレックスの中でもダイバーズウォッチに区分されるサブマリーナは300m防水、シードゥエラーは1220m、ディープシーは3900mと、一般製品よりも厳しい防水性や耐衝撃性の規格をクリアしていると言われ、ダイビングにお使いいただけるとされています。
まとめ
ロレックスが水没した際には、時計自体の頑丈さなどを過信せず早めに対処することが大事です。
できることなら、すぐにでも乾燥材などを購入して当記事で紹介した応急処置をし、時計の修理専門業者へオーバーホールしてもらうと良いでしょう。
また、海水などで水没した場合は早急な水気除去と洗浄をおこないましょう。海水の場合は真水よりもサビが早く進行します。
ムーブメントやリューズなどにサビが広がると、本格的な修理が必要になるため、時間も費用もその分多くかかってしまいます。
ロレックスのような高級時計は基本的に水没のリスクのない場所で使用する方が良いかもしれませんが、もしもアウトドアなどで付けていく際には気を遣って使用しましょう。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年