「ヴァシュロン・コンスタンタンなぜ高いの?」
「ヴァシュロン・コンスタンタンが高価格な理由について知りたい」
ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)は、世界的に知られる高級腕時計ブランドのなかでも、トップクラスのステータス性を誇ります。
時計業界には「世界三大腕時計メゾン」と呼ばれる雲上ブランドが存在しますが、ヴァシュロン・コンスタンタンはその一角を担う存在です。
実際にタイムピースを目にしても、たった4cm前後のケースに収まるものが、なぜそんなに高価なのかよくわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。
ヴァシュロン・コンスタンタンは時計業界でもずば抜けて長い歴史と伝統、最新鋭の機械技術、芸術の域に達する工芸技巧、そして時代のトレンドを掴むデザイン性、すべて揃った雲上メゾンであるため高価格となります。
この記事ではヴァシュロン・コンスタンタンが高価格な理由について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
資産価値についても解説しますので、ヴァシュロン・コンスタンタンの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
ヴァシュロン・コンスタンタンはなぜ高い?
スイスを、そして世界の腕時計業界を代表する存在であり、高級腕時計界隈でトップ3に数えられるヴァシュロン・コンスタンタン。
ロレックスやオメガほど日本での知名度が高いわけではなく、街中の腕時計店で見かけることもほぼないでしょう。
しかし、抜群の存在感とステータス性を誇り、資産価値の高さはトップクラスです。
なぜヴァシュロン・コンスタンタンはそんなに価値があるのか、解明していきます。
ジュネーブ・シール認定されるほど品質が高い
ヴァシュロン・コンスタンタンは、ジュネーブ・シール認定を受けるほど高い品質の腕時計を製造しています。
ジュネーブ・シールとは、1886年に創設されたジュネーブ市の時計検定局が認証している制度で、腕時計製造に関して場所・品質を保証するものです。
- 場所に関する認定:ジュネーブ州(かつてのジュネーブ共和国)内で製造されたムーブメントを使用
- 品質に関する認定:ベースプレート・ブリッジ・調整システム・輪列・宝石・形状部品すべての製造工程に厳格な伝統技術の基準を設け、さらに美的に優れている
その内容は大変厳しく、ジュネーブシールを取得しているブランドは雲上ブランドと呼ばれる超高級メゾンなどごく一部に限られます。
ジュネーブ・シールを取得した腕時計はジュネーブ市の紋章をかたどった印が施されるのですが、その紋章は「称号」として認識されているほどです。
時計都市・ジュネーヴが認めるクラフトマンシップと、最高品質を保証するジュネーブ・シールを受けた腕時計は、傑作として大変高い価値を有します。
ヴァシュロン・コンスタンタンは1901年にジュネーブ・シールを初めて取得し、それ以降も数多くのモデルが認定を受けてきました。
1755年に創業以来ずっと途切れない継承経営
ヴァシュロン・コンスタンタンは、1755年にスイス・ジュネーヴで創業した大変歴史のあるブランドです。
世界三大腕時計メゾンには、パテックフィリップとオーデマピゲが名を連ねますが、ヴァシュロン・コンスタンタン群を抜いて古い歴史を誇ります。
さらに、創業者であるジャン=マルク・ヴァシュロンからずっと、名を途絶えさせることなく約270年間経営を続けてきました。
創業以来途切れることのない継承経営の縁起をかつぎ、世界の経営者や実業家から愛されています。
王侯貴族や為政者を虜にするステータス性
ヴァシュロン・コンスタンタンは、創業より早い時期から、世界中の王侯貴族や為政者たちを虜にしてきました。
その糸口のひとつが、1851年のロンドン万博への出展でした。
当時「太陽の沈まぬ国」と称された大英帝国を統治していたヴィクトリア女王は、ヴァシュロン・コンスタンタンを大変気に入り、英国貴族たちも女王にならって手に入れます。
絶大な権力を持つヴィクトリア女王の慧眼に認められたことで、ヴァシュロン・コンスタンタンは一気に世界中のセレブリティに広まりました。
英国をはじめ各国の王室御用達となり、日本の昭和天皇も愛したヴァシュロン・コンスタンタンは現在、世界的セレブや新富裕層にも人気のブランドです。
永久修理を行っている
ヴァシュロン・コンスタンタンは、腕時計業界でも数少ない「永久修理」を行っているブランドのひとつです。
永久修理とは、創業から現在に至るまで、そして今後製造される未来の腕時計に関しても、自社で販売した時計であれば修理を永続的に受け続けるサービスです。
一般的な腕時計ブランドでは腕時計自体の保証期間に加え、パーツの保有期間を設けており、パーツが保有されている間のみ修理を受け付けます。
パーツがあれば修理ができますが、パーツが残っていなければできない修理も増えてくるためです。
一方、ヴァシュロン・コンスタンタンでは、パーツ保有期間を設けず、創業から製造された腕時計に使用されているすべてのパーツを再現できるツールを継承しています。
修理には時代によってどんどん変化する機械や器具などのツールも必要ですが、それらも継承し続けていく、という途方もないサービスなのです。
莫大なコストと技術力が必要なサービスゆえ、永久修理を行っているメゾンはヴァシュロン・コンスタンタンを含めパテックフィリップやオーデマピゲなど雲上メゾンに限られます。
永久修理のようなサービスが根底にあるため、価格も高くなりますが、未来永劫使い続けられる腕時計は一生ものとなることはもちろん、子孫へと大切に受け継ぐ家宝となりますね。
類まれなる外装技術
画像引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式HP
ヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計には、大変美しい外装が施されています。
数あるメゾンのなかでも頂点に君臨するレベルの外装技術は、ヴァシュロン・コンスタンタンの価値を押し上げている要素のひとつです。
ヴァシュロン・コンスタンタンの装飾を請け負う工芸芸術部門、そしてそこで製造される特別なタイムピース「レ・キャビノティエ(屋根裏のアトリエ)」。
メゾンが脈々と受け継いできた工芸技術を守り、さらに磨き上げるために2006年に設置された部門です。
そして、「レ・キャビノティエ」はその工房で技術の粋を極めて制作される特別な1本を指す名称でもあります。
時計産業は農閑期にあたる冬、時計職人が雪明りが差し込む屋根裏部屋(cabinet)でコツコツと時計作りを行ってきた歴史があります。
そのため、18世紀のスイスでは高度な技術を有した時計職人をレ・キャビノティエと称するようになりました。
現在では、ヴァシュロン・コンスタンタンでは、卓越した職人が集う部門、そしてそこで製作される特別な腕時計を、レ・キャビノティエと呼んでいます。
メゾンが誇るメティエダールの逸品
ヴァシュロン・コンスタンタンの社屋の最上階に設けられたアトリエでは、さんさんと降り注ぐ光の中で、時計工芸の伝統を受け継いだ当代の名工たちが日々腕を競っています。
レ・キャビノティエで施される工芸技術はメティエ・ダール(職人技の芸術)と呼ばれ、美術的価値の高い装飾です。
これまでに製作された、メゾンが誇るメティエダールの逸品をいくつかご紹介しましょう。
世界的名画、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』やルーベンスの『アンギアーリの戦い』を完璧に模写したミニアチュールは、触れることをためらうほどの逸品です。
また、中国や日本をはじめ、東・東南アジアの干支にちなんだ作品も毎年発表し、小さなサークルに彫りこまれた龍は風雲を呼び、今にも飛び立ちそうな風情ですよ。
さらに、テーマを決めて作り出す独特な絵画・彫刻の世界や、顧客の注文通りに仕上げるオートクチュールの「ビスポーク」など、素晴らしい美術品を生み出し続けています。
レ・キャビノティエの職人たちによるメティエダールは、いくつもの芸術的工芸技術を駆使して作成されています。
ヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計を彩る、芸術的工芸技術の基礎をいくつかご紹介します。
エマイユ(エナメル技法)
画像引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式HP
エマイユとは、フランス語でエナメル技法のことで、日本の七宝焼きや琺瑯と同じ、金属などの土台にガラス質の塗料を焼き付ける技術です。
非常に古い歴史のある技術で、ヴァシュロン・コンスタンタンは幻とされる技法を再現するなど、技術伝承にも貢献しています。
また焼成を重ねるためひび割れやすい繊細な工芸で、世界的名画の模写などをしてのける技術は世界的に見てもトップクラスのクオリティです。
ギヨシェ彫り
画像引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式HP
ギヨシェ彫りは腕時計の装飾として用いられる、メジャーな伝統技法のひとつです。
金属の表面に幾何学模様を彫り出す技法で、文字盤などに使用されます。
しかし、高級メゾンではオーナーでさえ眼にすることのほとんどない、ムーブメントにもびっしりと彫りこみます。
ヴァシュロン・コンスタンタンのギョーシェ彫りは、伝統技法に加え、新たに進化した技法で複雑な幾何学模様だけでなく、繊細な描写の動植物や風景まで表現します。
彫金
画像引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式HP
細密版画などに用いるエングレービングという、ギヨシェ彫りとは異なる彫金技法も優れています。
エングレービングはビュランというダイヤ製の細いノミでひとつずつ手作業で施され、ミニアチュールやアラベスクといった繊細かつ複雑な紋様を描きます。
1/10ミリ単位の細密な彫刻を手掛けるのは、エングレーバーという専門の職人たちです。
エングレービングは文字盤だけでなく、ケースやムーブメント、ローターといった部分にも用いられています。
ジェムセッティング(石留め)
画像引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式HP
腕時計とジュエリーは切っても切れない関係にあり、ヴァシュロン・コンスタンタンでも例外ではありません。
腕時計の文字盤やケース、ブレスレットなどに、様々なカットを施した細かな宝石をセットしていく作業は繊細さを要求されます。
メゾンのジェムセッティング(石留め)は、腕時計業界のなかでも突出しており、特に「インビジブルセッティング」が有名です。
インビジブル=目に見えないセッティングとは、宝石を留める地金が、セッティング後には全く見えなくなる技法で、宝石の透明感や輝きが際立ちます。
インビジブルセッティングが可能な職人はメゾンでも限られており、貴重な技術力です。
自社製造ムーブメントと複雑機構
ヴァシュロン・コンスタンタンは、腕時計の心臓であり頭脳でもあるムーブメントから自社で製造する、マニュファクチュールメゾンです。
もともと、ヴァシュロン・コンスタンタンはコンプリケーション(複雑機構)を得意とするブランドでした。
1810年代には、三大複雑機構のひとつであるミニッツリピーターを超えて、2種類のメロディーを奏でるミュージカルウォッチを発表しています。
ほかにも、トゥールビヨン、クロノグラフ、パーペチュアルカレンダーなどの複雑機構、複数の複雑機構を搭載したグランドコンプリケーションを多数手がけています。
また、1839年には同メゾンの機械技師で、大変優れた発明家でもあったジョルジュ=オーギュスト・レショーが、「パンタグラフ」を発明します。
画像引用:wikimedia commons
パンタグラフとは、腕時計の多様で繊細な部品を全く同じように模写し、製造できる技術です。
それまでひとつずつ部品を手作りするしかなかった時計業界に、レショーの発明は革命を起こします。
品質や精度の高い、信頼性のある部品の連続生産を可能にし、部品交換もできるようになったことで、腕時計の寿命をぐっと延ばしました。
2015年には、メゾンの創業260周年を記念した、途方もないグランドコンプリケーションがリリースされています。
三大複雑機構のなかでも特に高い技術が必要とされるトゥールビヨンを初め、パーペチュアル(永久)カレンダー、ムーンフェイズなど57もの複雑機構を搭載した超グランドコンプリケーションです。
ヴァシュロン・コンスタンタンの特徴や歴史
ヴァシュロン・コンスタンタンの歴史と、メゾンならではの特徴について解説します。
どのような歴史を歩み、なぜ世界中で愛されるのか、理由を探ってみましょう。
ジュネーヴの地で刻み続ける歴史
ヴァシュロン・コンスタンタンは、1755年にまだ若い時計技師だったジャン=マルク・ヴァシュロンが創設しました。
まだ24歳だったジャン=マルク・ヴァシュロンは、ジュネーヴ中心街のサン=ジェルヴェに工房を開きました。
ジャン=マルク・ヴァシュロンは若くして卓越した腕を持つ時計技師で、初期に彼が手がけた懐中時計が今も伝えられていますが、当時からムーブメントに精巧なアラベスク文様が施され、技術の高さがうかがえます。
ヴァシュロン・コンスタンタン-メゾンの歴史-
さて、ここで創業者から工房へと視点を変えて、メゾンの歴史を眺めてみましょう。
最初に開いた工房も、2004年に新設した本拠地、プラン=レ=ズゥアトの本社とアトリエも、ジュネーヴに位置しています。
ジュネーヴに拠点を持つことは、スイスの雲上ブランドにとって非常に重要なことなのです。
ヴァシュロン・コンスタンタンの価値を示すジュネーブ・シールには、場所に関する要件があり、ジュネーブ州(かつてのジュネーブ共和国)内で製造されたムーブメントを使用していることが求められます。
そのため、ジュネーヴのプラン=レ=ズゥアトにはパテックフィリップやピアジェ、ロレックスなど名ブランドが本社や工場を置き、スイスの時計産業の中心地となっています。
途絶えることのない永久のブランド
ヴァシュロン・コンスタンタンは現在に至るまで一度も歴史が途絶えたことのない、稀有なブランドです。
二代目を継いだのは、初代の次男、アブラアン・ヴァシュロンで、彼はフランス革命など激動の時代にブランドを守り、当時斬新だったオープンフェイスモデルの懐中時計をリリースしています。
三代目のジャック・バルテルミー・ヴァシュロンの時代、メゾンは非常に大きな転換期を迎えました。
まず、フランス・イタリアへの輸出を開始します。
また、輸出業で出会ったひとりの商人、フランソワ・コンスタンタンは、ブランド名に刻まれるほどの功績を残します。
コンスタンタンはジュネーヴ出身の商人で複雑機構時計をこよなく愛し、三代目のジャック・バルテルミー・ヴァシュロンと意気投合、共同経営をスタートさせます。(ヴァシュロン・コンスタンタンの誕生)
コンスタンタンの時計愛と類まれなる商才はメゾンの発展に大きな影響を及ぼし、ヨーロッパへの販路拡大とその成功に大きく貢献します。
誇り高きマルタ十字
ヴァシュロン・コンスタンタンを語るうえで、避けては通れない存在、それは紋章となっているマルタ十字でしょう。
マルタ十字は、キリスト教の騎士修道会、十字軍時代から続く聖ヨハネ騎士団(マルタ騎士団)が紋章として使用した十字の意匠で、アマルフィ小共和国の紋章でもあります。
マルタ十字はV字を4つ組み合わせた特徴的な意匠で、外周に8つの鋭角を持っており、それぞれの角が騎士道の8つの精神・信条を示しています。
なぜヴァシュロン・コンスタンタンの紋章が、イタリアにあるアマルフィ、そしてマルタ騎士団の紋章であるマルタ十字なのかというと、実はひとつのパーツに理由がありました。
ヴァシュロン・コンスタンタンで、主ぜんまいの巻き過ぎ防止のために香箱へ入れているパーツが、マルタ十字と同じ形だったそうです。
宗教上、また歴史的なつながりはないヴァシュロン・コンスタンタンとマルタ十字ですが、マルタ十字が示す騎士道精神は、ヴァシュロン・コンスタンタンの企業信条として受け継がれています。
代表的なモデルや人気コレクション
ヴァシュロン・コンスタンタンの代表的なモデルや人気コレクションをご紹介します。
長い歴史と常に最先端を追い続ける技術革新、誇り高き工芸技法により作成された傑作をご覧ください。
パトリモニー
パトリモニーは、ヴァシュロン・コンスタンタンの伝統を形にした、正統派ドレスウォッチです。
1950年代の名機をベースに、現代的に洗練されたモダンなデザインで、スーツによく合う優雅で落ち着いた雰囲気が特徴です。
現在のモデルは2004年に新規リリースされたものですが、伝統を今に受け継ぎつつ、現代的に洗練した正統派のドレスウォッチです。
「パトリモニーオートマティック85180/000J-9231 40 MM イエローゴールド」は、シンプルな3針、ギリギリのサイズで窓が切られたデイト表示、18Kゴールドのパールアワーマーカーなど、ヴィンテージな魅力がたっぷり詰まっています。
パトリモニーとは英語で「継承」「遺産」を意味し、まさにヴァシュロン・コンスタンタンが積み上げてきた美学の結晶といえるモデルです。
トラディショナル
画像引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式HP
トラディショナルは「伝統的な」という意味の言葉で、その名のとおり1930年代から50年代の名機にスポットを当て、伝統のスタイルを重視しながら現代風な解釈も加えたコレクションです。
ここ数年、時計業界で非常に人気の高い、グリーンモデル・マニュアルワインディング82172/000R-H008 38 MM ピンクゴールド(上画像)がトラディショナルからもリリースされています。
コンテンポラリーな薄型ケースに、人気のグリーンダイアルを合わせつつも、落ち着いたモスグリーンとピンクゴールドケース、レイルウェイ分目盛りが、バンカーズランプのようなレトロさを醸しだします。
オーヴァーシーズ
オーヴァーシーズは、1996年に発表されたヴァシュロン・コンスタンタンの人気ラグジュアリースポーツウォッチです。
ベゼルにあしらわれた、ヴァシュロン・コンスタンタンの象徴、マルタ十字が特徴で、薄くて付け心地が良く、現在大変人気のあるモデルです。
ラグスポ人気にあおられる形で人気・価格ともに高騰しており、資産価値もアップしているモデルです。
鬼才、ヨルグ・イゼック氏が手がけたデザインで、「旅のスピリット」をイメージ、シースルーバックから見える金のローターには方位図が描かれます。
オーヴァーシーズ 4500V/110A-B128(上画像)は、ステンレススティールのケースとブレスレット、ベゼルにはマルタ十字、そして文字盤は水平線の青、という爽やかなデザインです。
また、ブレスレットもマルタ十字をかたどっており、独特の形状で人気です。
さらに、ブレスレットとレザーベルトなどを簡単に付け替えられるインターチェンジャブル・システムが採用され、ますます日常に近いラグジュアリーとして受け入れられていくでしょう。
マルタ
画像引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式HP
2000年に登場したマルタは、メゾンの現コレクションでは珍しいトノーケースにコンテンポラリーな美学と最先端の複雑機構を乗せた、個性の火花散るモデルです。
懐中時計の昔から時計製造を続けてきたメゾンでは、懐中時計から腕時計への過渡期にラウンドケースから離れる傾向がありました。
腕時計がメインとなったこの100年ほどの歴史で、メゾンが培ってきた美学はトノーケースにもしっかりと根付き、個性的なシェイプを描きながら腕の曲線に沿うデザインを生み出します。
現行のマルタ マニュアルワインディング82230/000R-9963 42X36.7 MM ピンクゴールド(上画像)は、肌なじみの良いピンクゴールドケースがなまめかしく湾曲する、エレガントな1本です。
2針とスモールセコンドという非常にシンプルなデザインが、却ってマルタが持つ絶妙な曲線美を際立たせています。
フィフティシックス
フィフティシックスは、名作と名高いRef.6073へのオマージュとして、その年代である1956年を名前に持つシリーズです。
クラシカルなラウンドケース、丸みを帯びたユニークなアラビア数字のインデックス、三角形のくさびのようなアワーマーカーにレイルウェイ分目盛りのトラックが特徴的なモデルです。
フィフティーシックスオートマティック4600E/000A-B442 40 MM スティール(上画像)は王道のデザインのうちのシルバーで、ヴァシュロン・コンスタンタンカラーのディープブルー文字盤タイプも人気です。
オーバーシーズよりドレッシー、でもパトリモニーよりはスポーティーという、絶妙な立ち位置のモデルでもあります。
さらにラグにあしらわれた3角形を4つ組み合わせると、マルタ十字になるというパズルは、ファンの心をくすぐるアレンジですね。
現代ではボックス型のサファイアクリスタル風防を備え、ますます個性が際立ってきました。
価格も抑えめで、ヴァシュロン・コンスタンタンデビューの方におすすめです。
ヒストリーク
画像引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式HP
ヒストリークは、ヴァシュロン・コンスタンタンの歴史の中で特に人気があったモデルや、歴史の転換点となったモデルを現代に蘇らせて新たな価値を見出しているシリーズです。
オーバーシーズの原点となった、ヨルグ・イゼックデザインの222も、ヒストリーク222として登場しています。
しかし、ヒストリークで人気が高いモデルは、やはりヒストリークアメリカン1921シリーズでしょう。
クッションケースにはめ込まれたラウンドのダイアルは、なんとななめに傾いています。
一般的な12時位置は、10時と11時の間にあたり、12時は右上の隅にあって、真上にリューズがちょこんと乗っています。
なぜこんなに妙な角度がついているのか——それは、1921年がアメリカの「狂騒の20年代」に当たり、その時代にアメリカに向けて製作されたモデルだからです。
ヒストリークアメリカン 192182035/000G-B735 40X40 MM ホワイトゴールド(上画像)は、ハンドルを握った状態で、腕の時計がまっすぐ見えるよう工夫されています。
レトロなブレゲ針とブレゲ数字、レイルウェイ分目盛りは、胸をキュンとさせるエモーショナルなアンティーク味にあふれています。
ヴァシュロン・コンスタンタン人気の「ラグスポ」とは
ヴァシュロン・コンスタンタンの現在の人気を支える柱のひとつが、世界的な「ラグスポ」ことラグジュアリースポーツウォッチ人気です。
ラグジュアリースポーツウォッチとは、高級ドレスウォッチのようなエレガントさやスマートさと、スポーツウォッチの機能性をあわせ持つ時計で、大変な人気を誇ります。
ラグスポに厳格な定義はありませんが、共通する特徴を挙げてみました。
- 超高級メゾンが手がけるステンレスウォッチ
- ドレスウォッチのような薄型
- スポーツウォッチのハイエンドモデル
- ノーチラス・ロイヤルオークもしくはオーバーシーズのようなフォルム
ラグジュアリースポーツ人気の原点ともいえる、オーデマピゲのロイヤルオーク、パテック フィリップのノーチラス人気に、ヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーシーズも並んでいるのです。
1972年発表のオーデマピゲ・ロイヤル オークと、1976年発表のパテックフィリップ・ノーチラスは、いずれも天才デザイナー、ジェラルド・ジェンタの作品です。
一方、ヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーシーズは1996年リリースと、他の雲上メゾン2社に比べてかなり遅れをとっているように見えますね。
しかし、オーバーシーズ発表に先駆け、ヴァシュロン・コンスタンタンでは1977年に222という初代ラグジュアリースポーツウォッチを発表しています。
222はメゾン生誕222周年を祝って制作された作品で、鬼才のデザイナー、ヨルグ・イゼックによりデザインされました。
超薄型ケースに2針という、ドレスウォッチのようにシンプルなスポーツウォッチは、すでに人気を博していた他のラグスポよりもエレガントでスマートでした。
オーバーシーズは222をベースに、現代的解釈と最先端技術を加えて誕生した、ヴァシュロン・コンスタンタンのラグジュアリースポーツモデルです。
21世紀に入り、時計のトレンドはデカ厚スポーツウォッチへ、そして2010年代にはラグジュアリースポーツウォッチへと変化していきました。
ラグスポが人気となったトレンド変化の背景は?
ラグスポが人気となった背景にあるものを、仮定してみます。
- ビジネスマンを取り巻くIT化による電磁波
- SUV車人気に代表されるスポーティ・ユーティリティ人気
- スーツを身につけず高級品を日常使いする新富裕層の誕生
- 地球温暖化による高温多湿化
以上のような社会背景が、よりスマートで機能的、丈夫で軽やかなラグスポ人気を牽引したと考えられます。
ラグスポ人気を当初率いていたのは、ロイヤルオークやノーチラスでした。
しかし、あまりの人気で品薄が続き、次に注目されたモデルが、ヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーシーズだったのです。
エレガントで機能美にあふれ、スーツにもTシャツにも合うラグスポ、オーバーシーズは、これからも時代に合ったタイムピースとして愛されていくでしょう。
ヴァシュロン・コンスタンタンの資産価値は?投資対象になり得るのか
ヴァシュロン・コンスタンタンは価値が高く、リセール率も高いため、投資目的での購入に向いていると言えます。
それでは、中古価格と資産価格の割合についてピックアップしてご紹介します。
※これらの価格はGINZA RASINで取り扱う時計を参考にした価格です。
※各価格については記事執筆時点の価格となりますので、変動する可能性があります。
オーヴァーシーズオートマティック4520V/210A-B128 41 MM スティール
定価:3,586,000円(税込)
買取:3,200,000円~3,300,000円(RASIN参考)
中古:4,280,000(税込)(RASIN参考)
◆リセール率:89.23%~92.02%
オーヴァーシーズデュアルタイム7900V/110A-B334 41 MM スティール
定価:4,444,000円(税込)
買取:3,500,000円(RASIN参考)
中古:4,580,000円(RASIN参考)
◆リセール率:78.75%
フィフティーシックスコンプリートカレンダー4000E/000A-B439 40 MM スティール
定価:3,916,000円(税込)
買取:2,200,000円(RASIN参考)
中古:2,780,000円(RASIN参考)
◆リセール率:56.17%
パトリモニーマニュアルワインディング1110U/000R-B085 42 MM ピンクゴールド
定価:3,498,000円(税込)
買取:1,400,000円(RASIN参考)
中古:2,250,000円(RASIN参考)
◆リセール率:40.00%
世界的な物価高騰や金の価格高騰、円安などの影響から定価も買取価格も変動しますが、ラグスポに類するオーバーシーズのリセール率が飛びぬけて高いことがわかります。
その他のモデルも他のブランドと比較するとかなり高めで、資産価値から見てもおすすめのブランドです。
歴史の長さと永久保証により、大変古いモデルが市場に出ることもありますが、アンティーク・ヴィンテージ人気により安定的な人気があります。
なかには、サザビーなどのオークションで高額落札される個体も存在します。
価格の高さは格の高さ!すべてが雲上級のヴァシュロン・コンスタンタン
ヴァシュロン・コンスタンタンはどうして高価なのかという疑問から、さまざまな観点で解説してきました。
時計業界でもずば抜けて長い歴史と伝統、最新鋭の機械技術、芸術の域に達する工芸技巧、そして時代のトレンドを掴むデザイン性……すべてが揃った雲上メゾンゆえ、格の高さに従い価格も高くなっています。
現代に入ると、時計業界三大コングロマリットのリシュモングループ傘下となり、マーケティングや経営戦略も強化されました。
さらに主な工房をジュネーヴ市内に、緻密な部品工場を時計の谷、ジュラ地方に建設し、ジュネーブ・シールに相応しい品質維持のための環境整備も行いました。
機能性でスマートなオーバーシーズ人気は、ラグスポ人気とともに冷めることを知りません。
ヴァシュロン・コンスタンタンの快進撃は、まだまだ続くのではないでしょうか。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年