サブマリーナと並び、ダイバーズウォッチの定番として君臨するロレックス シードゥエラー。
ヘリウムガスエスケープバルブを搭載したプロユースの本格派で、現行モデルで1,220m、上位機種であるディープシーでは、なんと3,900mもの防水性を誇ります。
そんなシードゥエラー、実はサブマリーナと外観がそっくりで違いがわからない・・・なんて声をよく聞きます。
確かに「ダイバーズウォッチ」としてはサブマリーナの陰に隠れがちですが、実は今ねらい目なのはシードゥエラー。モデルによっては、近年価格上昇が著しいものもあるのです。
この記事では、そんなロレックス シードゥエラーを総ざらいします!
歴史や現在の価格動向に現行モデルの定価、そして今買うべきモデルなどなど・・・シードゥエラーを徹底解説いたします!
画像引用:ROLEX
目次
シードゥエラーとは?~進化の歴史~
「海の居住者」という名称を持つシードゥエラーは、1967年に誕生した、サブマリーナの上級モデルです。
シードゥエラーの魅力は、何と言ってもその防水性でしょう。
1970年代当時のサブマリーナの現行モデルRef.5513や1680は200m防水。
日常的な生活防水には十分すぎるスペックでしたが、深海ダイビングの際、水圧変化に耐えきれずサブマリーナの風防が吹き飛んでしまうという事故が見られました。
そこでロレックスはシードゥエラーを新たに打ち出します。
1967年、ファーストモデルにあたるシードゥエラーRef.1665は610m、1980年に登場したセカンドモデルにあたるRef.1660は1,220mまでの深海ダイビングができる防水モデルを実現。
世界中で大きな話題を呼ぶこととなりました。
ロレックスは防水技術に関して時計メーカーの中で群を抜いていましたが、さらにその腕前を見せつけることとなります。
画像引用:ROLEX
しかしながら当時は今ほどスポーツロレックスはメインストリームではありません。
また、もともとあったサブマリーナと外観に大きな違いがなかったことから、爆発的な人気には至りませんでした。
加えて、サブマリーナとケースサイズは変わりませんでしたが、ケース厚が15mmほどとシードゥエラーは若干ボリューミーで頑丈。
デカ厚という概念がまだなかった当時は万人受けする代物ではなかったことも大きな要因でしょう。
そうは言ってもそこはロレックス。
逆にこのボリュームがイイ!といった層や実際のプロダイバーから愛されており、ロングセラーの仲間入り。
着々とスペックアップを果たしていきました。
↑1980年頃から1991年まで製造されたRef.16660の厚み
さらに2008年、シードゥエラーとサブマリーナが一線を画す出来事が起こります。
それは、シードゥエラーの中でさらにハイスペックなディープシーRef.116660が発表された、ということです。
大幅サイズアップした44mmのケースはなんと3,900m防水と、そのスペックを大きく進化させてきました。
厚みは18.1mm、重量は200g近くにまで及びますが、この頃はパネライやウブロが既にデカ厚人気に火を付けていたことにより、多くの層から支持を得ることとなります。サブマリーナと差別化できたことも良かったのでしょう。
2014年にはディープシーに大人気D-BLUE文字盤が追加されたことでさらに人気は加速。
デイトナやGMTマスター、そういった定番モデルと遜色ない知名度を獲得しました。
なお、1,220m防水のシードゥエラーはディープシーの登場によりいったん生産終了となりますが、2014年にシードゥエラー4000(Ref.116600)として復活します。
ディテールをスペックアップさせて「ダイバーズウォッチの真のパイオニア」が市場に戻ってきたことにより、シードゥエラーへの熱視線はより高まります。
さらに2017年、初代シードゥエラーに採用されていた赤シードを、新キャリバー・43mmケースサイズを用いてRef.126600として新たにラインナップ。
このRef.126600が出たのはシードゥエラー50周年ということもあり、多くのロレックス愛好家たちが注目していました。
2018年にはディープシーが型番を一新、Ref.126660として登場します。
このように、発表当初は伸び悩む時期もありましたが、今ではロレックス屈指のハイスペックモデルとして、年々進化を遂げていっているのです。
他のスポーツロレックスにはないシードゥエラー特有の仕様
サブマリーナにはない、シードゥエラー特有の使用やスペックをご紹介いたします。
- シードゥエラーは1,220m防水、ディープシーは3,900m防水
- ヘリウムエスケープバルブ
・・・飽和潜水時、時計に入り込んでしまったヘリウムを逃す仕組みのこと。 - フリップロックとグライドロッククラスプのダブルエクステンションシステム
・・・ウェットスーツの上から時計を着用する時、ブレスレットサイズを容易に調整できるようにしたシステム。 - 逆回転防止ベゼルの目盛り
・・・ダイビングタイムを測定するためのベゼル。60分まで1分刻みとなったプロユース仕様。 - 厚さ5.5mmのドーム型サファイアガラス
・・・ディープシーのみの仕様。
シードゥエラー歴代モデルとそのスペック、市場での価格動向
シードゥエラーの歴代モデルと、そのスペックや市場での価格動向をご紹介いたします。
シードゥエラー歴代モデル①初代Ref.1665
型番:1665
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:40mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自社製自動巻き(Cal.1570)
製造期間:1967年~1980年頃
こちらは初代シードゥエラーです。
サイクロップレンズがなく、ヘリウムエスケープバルブを搭載。その分ケース・風防に厚みがあります。
初期の頃に製造された一部の個体に、「赤シード」と呼ばれるレアロレックスが確認できます。
さらにその中でマークI~マークIVの4つに細分化され、どの文字盤かによって相場が大きく変動します。
もっとも、赤シード自体がきわめて高い稀少性を誇っており、200万円超えは当たり前、中には700万円などという値付けが行われる個体もあるほどです。
シードゥエラー歴代モデル②Ref.16660
型番:16660
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:40mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自社製自動巻き(Cal.3035)
製造期間:1980年~1991年頃
防水性を大幅スペックアップさせ、キャリバーを一新した第二世代のシードゥエラーです。
ベゼルも逆回転防止機能が搭載され、サファイアクリスタルガラスを採用。現在のプロユースダイバーズの地位を確立しました。
型番に6が三つ並んでいることから、ロレックス愛好家たちからは「トリプルシックス」の愛称でも親しまれていますね。
製造期間が10年だったせいか若干陰が薄い気もします。
しかしながら2017年に入ると、他のヴィンテージロレックス同様に値上がりが顕著なモデルとして目立ってきました。
とりわけ生産期間の途中からフチ有りインデックスに変更されたものの価格は190万円を超え、個体によっては高値が付く傾向にあります。
もっとも、フチ有個体も状態にもよりますが150万円超えが当たり前の相場感です。
※フチ有
全ての中古・アンティークロレックスに言えることですが、年々状態の良い個体が少なくなっており、価値が上がり続けている傾向にあります。
一方でシードゥエラーは堅牢な設計のため、中古・アンティーク市場でも経年劣化が比較的少ないものが多いことも事実。
本当に欲しい方は、お早めに上質な個体を探してみましょう!
シードゥエラー歴代モデル③Ref.16600
型番:16600
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:40mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自社製自動巻き(Cal.3135)
製造期間:1990年頃から2008年
よく前項でご紹介したRef.16660との違いがわからない!型番も似てるし!と言われがちな三代目は、新キャリバー3135を搭載していることが何よりの特徴です。
このムーブメントは今なおロレックスで現役活躍している名機で、サブマリーナの116610LVや116610LN、ヨットマスターの116621などで使用されています。
つまり三代目シードゥエラーは、耐久性やメンテナンス効率がアップし、より実用に適した逸品に仕上がったことを意味します。
なお、夜光もトリチウムからルミノバへと変更されました。
外観からは前モデルの16660とさして変わらないことから、生産終了した後も大きな値上がりを見せてはいませんでしたが、ここ4年ほどで価格は50万円以上の値上がり。
とりわけ生産本数が少ないM品番やV品番の価格高騰が顕著です。
2008年にディープシーが登場すると、惜しまれつつもいったん生産終了となりました。
廃盤から10年以上経つ今なお、完成されたダイバーズウォッチの規範として語り継がれているモデルでもあります。
シードゥエラー歴代モデル④ディープシーRef.116660
型番:116660
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:44mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自社製自動巻き(Cal.3135)
製造期間:2008年~2017年(D-BLUE文字盤は2014年~2017年)
サブマリーナと一線を画し、独自の「プロユースダイバー」としての道を歩む大きなきっかけとなったシードゥエラーディープシー。
その名の通り、3,900mもの深海潜水に耐えうる驚異のスペックを有したことで話題となりました。
ケースサイズも44mmにサイズアップされ厚みも増します。
さらに、従来のクラスプは工具を使って長さ調節をするのに対し、ディープシー以降グライドロッククラスプが装備され、手動で簡単に2mmごと最大20mmまでの調節が可能になりました。
黒文字盤が出た当初は「着ける人を選ぶ」と言われていましたが、2014年、D-BLUE文字盤の登場によって一気に人気が顕在化。
D-BLUE文字盤は、ジェームズ・キャメロン氏(『タイタニック』などの映画監督)の偉業を讃える特別なモデルとして発表されており、発売直後から生産終了の噂が囁かれプレミア化したという経緯もあります。
さらに2018年にマイナーチェンジ・型番が一新されたことにより、116660 D-BLUE文字盤はわずか4年の生産期間ということとなり、今後さらなるプレミア価格となるポテンシャルを十二分に秘めていると言われています。
116660黒文字盤の現在の中古価格は150万円以上。
D-BLUE文字盤はそれをはるかに上回る200万円台~260万円台という価格。
とりわけD-BLUE文字盤の品薄が顕著で、最近では流通がめっきり減っている状態。
少し前に買った方は、今売るもよし、様子見するもよしな状況でしょう。
なお、黒文字盤にもマークI~IIIの分類があり、現在は文字盤の種類によって買取価格が大きく異なることはありませんが、初期のマークIは2008年の一年のみ生産ですので、今後も価格が高まっていくかもしれません。
↑マークIダイアル。「SEA-DWELLER」の「S」の字が角ばっている、「ft」の「f」の字が長い、などの特徴が見られます。また、王冠マークの突起部分が通常個体より長さがあります。
加えて、ただでさえ価格高騰が続くD-BLUE文字盤の中にもさらにレア個体が存在し、下記の特徴のある文字盤は高価格となります。
- パンチラ・・「DEEPSEA」の印刷が少しだけズレていて縁が白い
- ライムグリーン・・「DEEPSEA」が太く、SEA-DWELLERより下の文字が細い
- ゲッコーグリーン・・「DEEPSEA」が細く、SEA-DWELLERより下の文字が太い
いずれも微細な違いですので、見逃さないようにチェックしてみましょう!
シードゥエラー歴代モデル⑤シードゥエラー4000 Ref.116600
型番:116600
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:40mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自社製自動巻き(Cal.3135)
製造期間:2014年~2017年
6年の沈黙を破り、再び1,220m防水のシードゥエラーとして姿を現したRef.116600。
ベゼルがセラクロム製となったり、インデックスや夜光にブラッシュアップが加えられました。
1,220m防水タイプに、グライドロックとフリップロックのダブルエクステンションシステムを搭載したのもシードゥエラー4000からとなります。
なお、このシードゥエラー4000が、価格を大きく上昇させています。
通称「赤シード」と呼ばれるRef.126600が2017年に出たことにより、生産期間わずか三年で終止符を打たれたことによる買い注文の殺到が大きな要因でしょう。
また、Ref.116600ならではのレアなポイントも少なくありません。
- ディープシーRef.116660に搭載されていた「リングロックシステム」がない。
- ディープシーRef.116660と比べ、操作性・装着感がアップしている。
- 2017年新作Ref.126600に搭載された「サイクロップレンズ」がない。
- ケース径40mmと3モデルを比較したときに一番コンパクト。
とりわけ40mmシードゥエラーの最終世代にあたることの見直しは小さくありません。
現行シードゥエラー126600は43mmですので、厚みと相まって大きすぎると感じる方もいらっしゃるでしょう。
生産終了が発覚する前までは定価を下回る実売価格だったにもかかわらず、今では爆上げ。
現在では状態の良いものであれば230万円台を記録し、ディープシーや現行シードゥエラーに肉薄する勢いです。
シードゥエラー歴代モデル⑥Ref.126600
型番:126600
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:43mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自社製自動巻き(Cal.3235)
製造期間:2017年~
シードゥエラー50周年の節目に、満を持して登場した新型シードゥエラー126600、通称赤シードです。
初代モデルのさらに初期にのみ生産されていた文字盤ロゴ「SEE-DWELLER」の文字列が赤色となっている個体を踏襲しました。
さらに、これまで風防破損防止のために使用していなかったサイクロップレンズを新技術のもとに採用。
43mmにサイズアップと、外観も大きな変化を遂げた一本です。
加えて、ロレックスが「新世代」と自負する自社製ムーブメントCal.3235を搭載させています。
これまで48時間であったパワーリザーブが70時間にアップ!
ロレックスが特許を取得した、新しいクロナジーエスケープメントによる高いエネルギー効率と信頼性。
そしてニッケル・リン合金を使用し、非常に高い耐磁性をも獲得しました。
また、カレンダーをどの時間帯でも日付変更可能にしたことなど、今までの腕時計業界の常識をドラスティックに覆すものとなります。
現在Cal.3235は順次ロレックスのモデルに搭載されており、デイトジャスト、パールマスターでも使用されています。
価格帯は発売当初は200万円近くまで爆上げされましたが、ご祝儀的なものだったのかやや落ち着いてきました。
そうは言っても150万円台後半と、定価を大きく上回る価格帯。
他のスポーツロレックスと変わらない高騰となっております。
なお、発売からわずか3年ほどのシードゥエラー 126600には、実は今後価格高騰しそうなレアなポイントがあります。
それは、「ノークラウン」と称される仕様です。
左:ノークラウン / 右:クラウン有
シードゥエラーだけの話ではないのですが、ロレックスは2018年頃から6時位置の「SWISS MADE」の間に、クラウン(王冠)マークを施すマイナーチェンジを行いました。
シードゥエラーの文字盤がいつ頃から移行したかは定かではありませんが、2019年頃よりクラウン有の126600が出回っていることを見ると、ノークラウン個体はわずか一年ほどの製造期間であったことがわかります。
このノークラウン個体は「マークIダイアル」と体系立てられ、稀少性が見いだされました。
まだ如実に相場に反映しているわけではありませんが、要注目の仕様と言えるでしょう。
シードゥエラー歴代モデル⑦ディープシー Ref.126660
型番:126660
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:44mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自社製自動巻き(Cal.3235)
製造期間:2017年~
ディープシー10周年にあたる2018年、新型ディープシーが発表されました!
と言っても、外観に大きな違いはありませんが、やはり新型キャリバー3235を搭載させたことが大きな進化となります。
型番ごと一新しているので、やはりロレックスの新キャリバーにかける思い入れは並々ならぬものがありますね。
また、外観もわずかではありますが、マイナーチェンジが施されています。
ブレスレットが幅広になったり、ケースラグに細かなデザイン変更がなされました。
外観が大きく異なることはないからでしょうか。
発売当初、これまでの新作スポーツロレックスのような爆上げは見せませんでした。
もちろん高騰はしましたが比較的早めに収束。現在黒文字盤は150万円を切るくらいの市場価格となっています。
一方のD-BLUE文字盤ですが、やはりもともとの人気ゆえか、現在170万円台とかなり価格動向は高め。
しかしながら旧型D-BLUEの高騰を考えれば思ったほど上がっていない印象です。
やはり見た目がほとんど変わらなかったことが要因でしょう。
この状況は、裏を返せば買うなら今!ということ。
ロレックスは相場が本当に読めませんので、今後のさらなる価格高騰に期待するのであれば、相場が落ち着いている今、狙っていくのがいいかもしれません。
ロレックス シードゥエラー 今買うべきモデルとは?
50年の歴史の中で、確実な進化を遂げていったロレックスのシードゥエラー。
では、どのモデルを今買うべきなのでしょうか。
スペック重視や、日常で長く愛用したい、という実用性重視派であれば、断然現行モデルを買うのが一番でしょう。
新ムーブメントの約70時間というロングパワーリザーブはやはり魅力です。
週末に腕時計を着用していなくても、時計は動いたままをキープしてくれています。
精度や安定性・耐久性もさらにパワーアップしているので、長く使いたい方であればなおさらです。
一方でロレックス、とりわけシードゥエラーは高い防水性や堅牢性から、中古であっても日常使いに問題ないコンディションであることが多いです。
そのため状態の良い中古を選んで、価格高騰に期待しつつ大切に使う、という選択肢も良いですね。
ただし中古は、シードゥエラー本来の防水性は有していないことがほとんどとなりますので、お気をつけください。
まとめ
ロレックス屈指のハイスペックモデル・シードゥエラーの歴史,スペック,価格をご紹介いたしました。
シードゥエラーは長い歴史の中で着々と進化を果たしてきており、さらにその歩を止めることはありません。
価格動向や新作動向含め、目が離せないロレックスモデルのうちの一つです。