「ロレックスのトロピカルダイヤルって何?」
「人気のトロピカルダイヤルについて詳しく知りたい」
アンティークロレックスは年式や使用条件によって様々な経年変化が見られますが、とりわけ注目を浴びているのが「トロピカルダイヤル」と呼ばれる特殊な変化を遂げた個体です。
その美しさは現行モデルでは決して味わえないものであり、アンティーク時計愛好家にとっては喉から手が出る程欲しい時計として絶大な評価を受けています。
そんなトロピカルダイヤルについて知りたいという人は多いのではないでしょうか。
この記事ではロレックスのトロピカルダイヤルについて、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
人気モデルの紹介もしますので、ロレックスに興味がある人はぜひ参考にしてください。
目次
トロピカルダイヤルとは?
トロピカルダイヤルとは経年経過によって文字盤の色が変色した個体のことを指します。
一般的にはブラック文字盤がブラウンに変色したものをトロピカルダイヤルと呼びますが、ブルー文字盤がグレーに変色したものや、ブラック文字盤がオレンジ系の色に変色したものも中にはあります。
限られた個体にしか見受けることができないため、希少性が極めて高く、どのトロピカルダイヤルもプレミア価格となっていることが特徴です。
また、変色の仕方は個体によっても異なり、片側だけが変化した文字盤もあれば、全体が綺麗に変化した個体にもあります。
綺麗に変色していればいるほど個体の価値は上がり、数百万円にも及ぶ価格で取引されることも珍しくありません。
トロピカルダイヤル① ロレックス サブマリーナ 5512
ロレックス サブマリーナ 5512 ミラー/トロピカルダイヤル ブラウンチェンジ
トロピカルダイヤルは主に1960年代に作られたミラーダイヤルに見受けられる特徴であり、元々ブラックだった文字盤が退色したことによりブラウンに変化した文字盤です。
ただ、全てのミラーダイヤルが変色するわけではありません。
実は茶色く褪色するものはごく一部で、ほとんどのミラーダイヤルは経年変化が起こったとしても、ただひび割れたり艶の塗装が剥がれたりするだけです。
体感的にはミラーダイヤルを30本集めても、ブラウンに綺麗に変色するモデルは1本あるかどうかであり、全面均一に焼けたものとなるとごくごく僅かしか存在しません。
つまり、トロピカルダイヤルはそれだけ貴重な存在であるといえます。
しかもこの5512は流通量が少なく、時計自体の希少性が高いモデルです。
そもそもが貴重な上にミラーダイヤルを備えているものはごく僅か、さらに綺麗に変色しているともなると、本当に「奇跡のモデル」であるといえます。
全面均一に焼けたモデルであれば、その価値は400万円を超えることもあり、アンティークロレックスとしては最高クラスの評価を受けるでしょう。
トロピカルダイヤル② ロレックス エクスプローラー 1016
ロレックス エクスプローラー cal.1560 1016 ブラウン トロピカル 11番 アンティーク メンズ
型番:1016
ベルト素材:ステンレススティール
ケース素材:ステンレススティール
ケースサイズ:36mm
文字盤:ブラウン
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:cal.1560
エクスプローラー 1016はサブマリーナと同じく文字盤にミラーダイヤルが採用された珍しい一本です。元々はブラック文字盤でしたが、経年変化によって綺麗なトロピカルダイヤルに変化を果たしています。
通常の文字盤を比較してみると、その差は歴然です。トロピカルダイヤルは針からインデックス、ロゴに至るまでが上品に変色しており、唯一無二の存在感を放ちます。もともと同じモデルであったとは俄かには信じられません。
写真:ミラーダイヤルのみに見受けられる「ゴールドレター」と呼ばれる文字の変色
このエクスプローラー 1016はかなり綺麗に変色した個体であるため、400万円以上の価値が付けられました。
トロピカルダイヤルは変色具合によってはデイトナ以上の価値を持つわけです。
トロピカルダイヤル③ ロレックス サブマリーナデイト 16803 ブルートロピカル
ロレックス サブマリーナデイト 16803 ブルートロピカル
Ref.16803は1980年代半ば~1988年に製造された5桁リファレンスの青サブです。
このモデルにはブラックとブルーが存在しますが、ブルーは経年変化により色が退色するという特徴を持ち、個体によってはブルーが淡いパープルに変色します。
ただ、16803は稀にパープルではなくグレーに褪色する個体も存在し、その個体はブルートロピカルと呼ばれ、強い個性を持ちます。
深海をイメージさせるグラデーションを帯びた文字盤の美しさは、他のどんな時計にも表現することはできません。
変色の仕方によって価値は異なりますが、綺麗に焼けているものでしたら100万円以上の価値がつけられることもあります。
しかしながら、5桁リファレンスのロレックスはまだ製造後40年程度しか経過していません。価値はブラウンに変色した4桁リファレンスモデルと比較するとまだまだ抑えられているのが現状です。
ただ、今後高騰する可能性も秘めているので、今のうちに買っておくのも良いでしょう。
トロピカルダイヤル④ ロレックス サブマリーナ デイト 16808 ブルートロピカル
ロレックス サブマリーナ デイト 16808 ブルートロピカル フジツボダイアル
5桁リファレンスの金無垢青サブ16808にも、ブルートロピカルダイヤルが存在します。
こちらは通称「フジツボ」と呼ばれる独特なインデックスが使用されたモデルであり、王冠マークが盛り上がった「アップライトインデックス」も兼ね備えたレア個体です。
ブルートロピカルとは呼ばれますが、ベゼルの色味と比較するとかなりグレーに近いことが分かります。ただ、ブルートロピカルは何も青みが強いことが求められているわけではありませんので、これはこれで人気です。
寧ろこの上品なグレーは逆に大きな価値を放っているといえるでしょう。
16808は16803と同じくブルートロピカル文字盤ですが、16808は流通量が少なかった為、中古相場が高めです。状態によっては400万円以上の価値となることもあり得ます。
このように、何もトロピカルダイヤルは「ブラウン変色」だけが魅力というわけではありません。
トロピカルダイヤル⑤ ロレックス サブマリーナ デイト 16618 バイオレット/パープル
ロレックス サブマリーナ デイト 16618 バイオレット/パープル
サブマリーナデイトはトロピカルダイヤルの宝庫です。この5桁リファレンス 16618の一部にもトロピカルダイヤルが存在します。
16618は金無垢青サブモデルなので、通常であれば文字盤はブルーカラーです。しかし、90年代の製造されたごく一部の個体にはバイオレットカラーに文字盤が変色する個体が存在します。
この色身は文字盤を製造した工場の違いによって生まれたと言われており、見た目で違いがはっきりと分かります。
時計を近くで見ても、少し離れて見ても、ブルーのベゼルとのコントラストは美しく、そして鮮やかです。
こちらも流通量が少ないモデルですので、状態がよく美しく変色を遂げた個体であれば数百万円で取引されることでしょう。
トロピカルダイヤル⑥ ロレックス GMTマスター 16758 フジツボ/トロピカル
ロレックス GMTマスター 16758 フジツボ/トロピカル
上の写真は1980年頃製造の“GMTマスター” Ref.16758。こちらは通称「フジツボ」と呼ばれるアップライトのインデックスが特徴的なモデルです。一般的にトロピカルダイヤルはブラウン色に変化をしますが、この16758はかなりオレンジに近い色に文字盤が変色しています。
オレンジ色に変化した文字盤は金無垢ケースと上手くマッチしており、他のトロピカルダイヤルにはない独特な存在感を醸し出しています。
ベゼルの焼け具合も見事に文字盤と調和しているため、300万円以上の価値が付きました。
トロピカルダイヤルは個体によって表情が大きく異なります。写真の文字盤はいずれもRef.16758のモノですが、焼け方が先ほど紹介した16758と全然違うのが分かるはずです。
どちらもオレンジ色に変色しているのは分かりますが、左の文字盤はムラが大きく、右の文字盤はベゼルが変色していないことから、価値は200万円台に留まっています。(それでも十分高額ですが。)
これを踏まえると、綺麗に焼けているトロピカルダイヤルが如何に貴重なモノであるかが分かります。
最後に
トロピカルダイヤルは今から30年以上も前に製造された古いロレックスに見受けられるレア個体です。個体によって変色具合は異なり、均一に綺麗に変色する個体もあれば、文字盤の片側だけが変色した個体も存在します。
どれだけ綺麗に変色しているかによって価値が大きく変わるのがトロピカルダイヤルの奥の深さであり、面白さです。
美しいトロピカルダイヤルはすぐに完売してしまうので、購入を検討されている方は「即決」するぐらいの心構えを持っておくとよいでしょう。
現行品とは違い、一度逃すと同じ個体には二度とめぐり逢えないのですから。
当記事の監修者
田所 孝允(たどころ たかまさ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 営業物流部長/p>
1979年生まれ 神奈川県出身
ヒコみづのジュエリーカレッジ ウォッチメーカーコース卒業後、かねてより興味のあったアンティークウォッチの世界へ進む。 接客販売や広報などを経験した後に店長を務める。GINZA RASIN入社後は仕入れ・買取・商品管理などの業務に従事する。 未だにアンティークウォッチの査定が来るとついついときめいてしまうのは、アンティーク好きの性分か。
時計業界歴18年。