「ロレックス相場はどうなっていくの?」
「今後のロレックスの市場動向が知りたい」
円安やインバウンド景気、続くコロナ禍における消費の受け皿として、急激な右肩上がりを続けてきた高級腕時計の実勢相場。
しかしながら一転、2022年5月あたりから、高騰相場を牽引してきたロレックスやパテックフィリップ、オーデマピゲなどといった人気ブランドの価格が下落傾向を見せておりました。
そのため最近では、「さらに相場が下がっていくのでは」「暴落していくのでは」などと囁かれており、人気商材の買い控えが業界では懸念されていたものです。
とは言え、長年「高くても欲しい」という購入マインドに支えられてきた高級腕時計。
2022年8月頃から相場が下げ止まり、9月に入ると、デイトナやGMTマスターII、サブマリーナーなどといった人気の主要モデルの小売り価格が、再び上昇基調を描き始めていることがわかりました。
さらに、これより早い時期から、業者間オークションの仕入れ価格は高値傾向に転じたことが確認されており、各時計店での小売り価格の調整も始まっております。
そんなロレックスの相場について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
この記事では直近の高級腕時計ブランドの人気主要モデルの相場を、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
今後の市場動向も予測しますので、ロレックスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
※掲載する定価・相場は2022年9月現在の情報となります。また、あくまで予測となり、今後の相場高騰をお約束するものではございません。参考程度にお読みください。
目次
今がトレンド転換!「仕入れ価格」「小売り価格」から見る高級腕時計の相場とは?
これから腕時計の相場が上がるか下がるかは、誰にもわかりません。
しかしながら市場の動向を注視し、ある程度の「予測」を立てることは可能です。
では、最近の「市場動向」は、どのような形勢を描いてきたのでしょうか。直近の高級腕時計の相場とともに、「仕入れ価格」「小売り価格」から見た市場の動向を解説いたします。
直近の高級腕時計の実勢相場
2022年3月末から4月初旬にかけて行われた時計業界の大型新作見本市。
この前夜にあたる2月頃から、人気の高級時計ブランドの主要モデルは大きく相場を上昇させました。
例年、2月というのは時計業界でも閑散期にあたり、激しい値動きを見せるようなシーズンではありません。しかしながら近年では―主にロレックスに当てはまることですが―新作前夜に「モデルチェンジによって生産終了するかもしれない個体(生産終了の噂があるモデル)」を中心に買いが集中し、相場が大きく高騰する現象が見受けられてきました。
ただでさえ人気のあまり、正規店はおろか並行輸入店でも品薄傾向にあるロレックス。生産終了によって供給がストップすれば市場への出回りがさらに減り、品薄は加速することが予想できますね。そのため、さながら「青田買い」のように、生産終了の噂のある個体への購買傾向が高まり、結果的に相場が上昇する、というサイクルを描いています。
もっとも、モデルチェンジしたばかりの個体も含めて全体的に相場が上昇しているので(しかも年間を通して)、ロレックス人気は季節的要因を凌駕することもまた事実でしょう。
※2021年に新作発表されたエクスプローラーI 124270。2010年から製造されていた214270は生産終了となり、39mmサイズの同コレクションはカタログから消えました。
もちろん、ロレックス以外に目を向けても、高騰続きであることは否めません。
これは、同年3月頃から円安が急激に加速したことも、相場上昇の大きな背景の一つです。
高級腕時計は海外ブランドが多いこともありますが、これに加えて石油や原材料の輸入価格が上昇しており、メーカーの国内定価は度重なる値上げを行ってきました。メーカーの値上げがすぐに実勢相場に反映するわけではありませんが、仕入れ値は上がっていくこととなるため、近年の相場高騰に大きな影響を及ぼしているのです。
事実、ロレックスのみならずパテックフィリップやオーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンといった雲上ブランド。あるいはオメガ、ウブロ、チューダー、タグホイヤーといった人気ブランドもまた、高値傾向を続けました。
しかしながら冒頭でも述べたように、2022年5月あたりから異変が見られるようになります。
ロレックスやラグジュアリー・スポーツウォッチとして価格高騰を続けていたモデルが、ジワジワと相場を下落させていったのです。
「下落」とは言え、定価や過去の相場に比べれば、まだまだ「超高値」であったモデルがほとんどです。反面、長らく続けてきた右肩上がりの上昇ラインのストップや、なかなか「底」の予測がつかない下げ相場は、多くの時計関連業者にとって「警戒心」を生んだのでしょう。
高額モデルには慎重となる向きも多く、買い控えが見られるようになり、この傾向がさらにジワジワと相場を下落させていきました。
一方で8月下旬頃から下げ止まりを見せ、9月に入ると相場が徐々に上昇へ転じたことがわかります。
ロレックス相場を見ると、この傾向が顕著です。
デイトナ 116500LN
ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ホワイトまたはブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
定価:1,720,400円
GMTマスターII 126710BLRO
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3285
防水性:100m
定価:1,272,700円(オイスターブレスは1,247,400円)
サブマリーナー 126610LV
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
搭載ムーブメント:Cal.3235
パワーリザーブ:約70時間
防水性能:300m
定価:1,259,500円
エクスプローラーI 124270
ケースサイズ:36mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
ムーブメント:自動巻きCal.3230
防水性:100m
定価:847,000円
上記は、ロレックス デイトナ・GMTマスターII・サブマリーナー・エクスプローラーIの各現行モデルの新品並行輸入品の価格推移です。
いずれも年初から3月にかけて急騰した後、徐々に下落を始め、8月を底に再びジワジワと上昇基調となっていることがご確認頂けるのではないでしょうか。
また、これまで派手な値動きを見せてこなかったオメガやチューダーといった人気ブランドの主要モデルについては、高値安定またはジワジワと相場上昇を続けていったことも直近の市場の特徴です。むしろロレックスなどが下落傾向にあった時もオメガやチューダー、ウブロなどは人気が集中しており、各社の新作が徐々に相場に出回っていったことも相まって、活発に売買されていきました。
市場動向を読むには「仕入れ価格」と「小売り価格」を読む
前項で「実勢相場は9月、再び上昇に転じ始めている」と申し上げましたが、これは「小売り価格」を指しています。
市場動向の一歩先を読むには、業者間の「仕入れ価格」が一つのトピックとなります。
業者間の仕入れ価格というのは、業者がオークション等から仕入れる際の、時計の価格のことです。
時計専門の並行輸入店や中古時計店の仕入れ方法は様々です。
顧客から仕入れる「個人買取」や海外仕入れもありますが、一度に大量の仕入れを行うとなればオークションです。また、現在の中古時計相場の大きい部分を形成しているのが、オークションと言っても良いでしょう。
オークションは決まった日程で定期的に開催されているのですが、一度に数百本単位~数千本単位で出品されることも!当然参加する業者も多く、各社・各人が為替や社会情勢はもちろん、自社在庫や売れ筋モデル等を考慮のもと、落札を行います。
人気モデルは争奪戦が激しく、高額落札が続くことも珍しくありません。一方で相場の上げ下げといった機微には敏感に対応し、必要な個体を適正価格で買い付けるためにも、オークションに参加する業界人には熟達した経験とノウハウが重要になります。
そんな業者間オークションですが、ここで付けられた仕入れ価格と、顧客に向けた小売り価格にはタイムラグがあります。
各業者は仕入れた価格をもとに値付けを行い、顧客(他店への卸も含め)へと販売するためです。
つまり、どのブランド・モデルにも言えることですが、相場が上昇または下落に転換する際、まず仕入れ価格に影響が出始め、その後小売り価格へと反映されるのです。
事実、ロレックスの小売り価格が下がり始めたのは2022年5月あたりからでしたが、オークションでは既に2月頃から、下落の兆候が見られていました。
もちろん人気商品は高額落札となるのですが、反面、急騰を続けていたロレックス デイトナやパテックフィリップのアクアノート、オーデマピゲ ロイヤルオークにヴァシュロンコンスタンタンのオーヴァーシーズなどといったモデルは「様子見」する業者も多く、ロレックスについては3月の新作発表で再び注目度が増していたものの、ジワジワと下げ相場を見せていったのです。
さらに、そこから一転。再び相場が上向いてきているのは前述の通りですが、業者間オークションでは、6月の時点で既に下げ止まりを見せておりました。
続く7月も円安が追い風となったこと。またオメガやチューダー、ウブロなどといった、安定的な価格で推移してきた人気ブランドに買いが集中し続けたことから、これまでの「様子見」「買い控え」はいったん落ち着き、積極的な売買が行われていた印象です。
そして9月になると小売り価格にも徐々に影響が出始め値上がり。詳細は後述しますが、今後さらに業者の仕入れ価格・小売り価格ともに上昇気流に乗り、高級腕時計相場全体が高騰傾向を続けていくことが予測されます。
すなわち、9月現在は高級腕時計相場のトレンド転換にあたり、トレンド転換を迎えている「今」が人気モデルの買い時と言えるのではないでしょうか。
これからの高級腕時計相場を予測する~ロレックスやパテックフィリップの価格はどうなる?~
高級腕時計相場、とりわけロレックスやパテックフィリップにオーデマピゲといった、いったん相場が落ち着いていた高騰ブランドの相場が、トレンド転換を迎えている、とお伝えしました。
つまり、これからいっそうの価格高騰が予測される、と。
いったい、なぜこのように言えるのでしょうか。その背景をご紹介いたします。
価格高騰の背景①年末商戦に向けた業者の仕入れ増加
時計業界にも、閑散期・繁忙期が存在します。
そして年間を通して、最大の繁忙期は12月です。この季節はボーナスとクリスマスが重なることもあり、非常に活発に腕時計の売買が行われます。
各業者では、10月頃から年末商戦の準備を開始し、時計の買い付けを行います。
新品であれば仕入れてすぐ販売することがほとんどですが、中古の場合は機械点検や外装仕上げ、あるいはオーバーホールといったメンテナンスが必要となり、仕入れから店頭での販売に至るまで平均的に1~2か月を要します。
そのため、業者は年末商戦が本格化する11月下旬をめどに店頭に豊富な在庫を用意できるよう、10月頃から仕入れを急激に増やすこととなります。
ロレックスやオメガ、タグホイヤーにウブロ。あるいはクリスマス時期のメイン商材となるカルティエやシャネル・・・人気ブランドの人気モデルは、業者は絶対に在庫を切らしたくありません。そのため10月から年末に向けて業者間では争奪戦が起き、需要と供給のバランスは崩れ、結果的に仕入れ価格の高騰が小売り価格の高騰へと繋がっていくのです。
この仕入れ価格の高騰は、オークションだけに限った話ではありません。高騰が最も色濃く反映されるのは、個人買取価格です。
業者は売れ筋モデルや人気モデルが他店に流れないよう、「高価買取」「積極買取」を掲げ、個人消費者からの高値買取を行います。この価格競争によって買取価格が吊り上げられ、仕入れ値が上昇することとなり、結果として小売価格もまた跳ね上がる、と。
なお、パテックフィリップやオーデマピゲといった、個体数が少なく入荷が難しいブランドのモデルに関しては、仕入れに力を入れることはもちろん、安売りしすぎて在庫が枯渇しないよう、既に9月現在から小売り価格の調整が始まっております。
すなわち、これから年末にかけて業者が活発に仕入れを行うため、価格が高騰するのが例年通りのセオリーとなっているのです。
ちなみに年末年始が過ぎれば多少価格は落ち着いてくるといった見方もありましたが、近年では新作発表にまつわる値動きも激しいため、あるいは2月・3月にかけても高騰傾向が続くこともまた予測できます。
価格高騰の背景②現在の相場が心理的節目を迎えた
例えばロレックス デイトナ 116500LNの黒・白文字盤。前者の現在の中古販売価格が450万円台~、後者は540万円前後~となっております。
この相場感は2021年末、すなわち2022年の価格急騰以前の水準まで戻ってきており、心理的節目を迎えていると言えます。
心理的節目とは投資などで使われる用語で、一般的にはキリの良い相場の数値を指しています。相場は投資家の心理に左右されることが多く、キリの良い数値は何らかの目安やきっかけになりやすいことから、心理的節目として意識されています。
現在のロレックスを始めとした高級腕時計相場も意識するべき心理的節目と言え、これ以上は下落しづらい状況になっていると考えられます。
価格高騰の背景③円安による仕入れ価格のさらなる高騰
現在、急激な円安進行を経験しているわが国。
ドル買いが進んでいたことに加えて、アメリカの中央銀行では金利引き上げを実施。アメリカを中心に金融引き締め策が行われる中でも日本では金融緩和が続けられていることなどから、今後も円安傾向が続いていくといった見方が続いています。
前述の通り、円安になれば輸入品の価格は上昇します。また、昨今はロシアのウクライナ侵攻によって原油や貴金属価格が上昇しており、各メーカーの値上げが非常に顕著となっております。
こういった時勢によって、年末商戦にかかわらず仕入れ価格自体が上昇を続けていること。また日本政府は新型コロナウイルスの水際対策を緩和し、「開国」を進めていることからインバウンド需要が揺り戻ってくると予想されます。
インバウンドにとって円安の日本市場は、きわめて魅力的です。そのため国内の高級腕時計市場は、いっそうの需要によって品不足が加速され、これに伴い相場が上がっていくと予測できます。
これら「年末商戦に向けた仕入れ増加」「心理的節目」「円安により仕入れ価格の高騰、およびインバウンドを始めとした需要喚起」によって、高級腕時計相場はこれから高騰する、と言うことができるでしょう。
さらに価格が上がってしまう前に。また品薄で欲しいモデルが入手困難になってしまう前に。
この「買い時」を、逃さないようにしたいものですね。
まとめ
昨今の高級腕時計相場について、「仕入れ価格」「小売り価格」から市場動向をご紹介するとともに、今後の予測について解説いたしました。
相場下落が囁かれていた高級腕時計相場ですが、業者間の仕入れ価格はむしろ上昇基調をたどっており、今後の年末商戦に向けた仕入れ増加や円安の加速によって、価格高騰に転じることが予測されます。
2022年9月現在は「トレンド転換」をまさに迎えており、小売り価格が再び高騰してしまう前に。欲しいモデルを買っておくことをお勧めいたします。
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年