高級時計を購入する際、選択の要所は人ぞれぞれでしょう。機能を第一に考える方もいれば、デザイン性重視の方も。また、ネームバリューやステータスも大切ですね。
その全てを兼ね備えた時計の一つに、カルティエ サントスがあります。
カルティエは20世紀初頭、腕時計がまだ一般に普及していない時代に銘パイロットウォッチ「サントス」を輩出し、腕時計の黎明を担った存在として時計業界では有名です。ただ、カルティエの出自はジュエラー。そのイメージが強いため、高級時計ってどうなの?などと躊躇してしまう方を見かけます。
そこでこの記事では、カルティエ サントスの魅力を余すことなく解説するとともに、現在市場に出回る代表モデルおよび当店での人気モデルをご紹介いたします。
ロレックスやオメガじゃ人とかぶる。
野暮な時計はしたくない。
そんなうるさい男の腕に、カルティエ サントスはいかがでしょうか。
目次
カルティエ サントスってどんな時計?
カルティエは、ジュエリーメーカーとしては非常に稀有な歴史を辿ってきたブランドです。
1847年、創業者のルイ=フランソワ・カルティエが師匠からジュエリー工房を受け継ぎ、フランス パリで事業をスタートさせたことが全ての始まりです。その美しく精緻なジュエリーにヨーロッパ全土の王侯貴族が魅了されることとなり、創業からほどなくして「王の宝石商 宝石商の王」の呼び名をほしいままにしました。
一方で経営の才能にも秀でており、ジュエリーのみならずシガレットケースなどの日用雑貨と言った、事業の多角化も積極的に行っていきます。
そんな中、三代目ルイ・カルティエは、友人のアルベルト・サントス=デュモンから、ある依頼を受けます。このアルベルトも一風変わった人物で、ブラジル出身の貴族であり、発明家であり、かつ飛行家でした。そんな彼が「飛行機の走行中、操縦桿から手を放さずに時間を確認できる時計が欲しい」という依頼をルイ・カルティエに出したのです。今で言うところの「パイロットウォッチ」の所望ですね。確かに当時の主流は懐中時計で、いちいち懐から手元に持ってこなくてはならず、操縦中だと危険を伴います。
画像引用:カルティエ 公式サイト
そうして1904年に生まれたのが今回ご紹介するサントスです。
腕時計がいつ始まったのか、には諸説ありますが、既に腕に時計を巻く、という発想は比較的行き渡っていました。しかしながらこのサントスのすごいところは、ただ懐中時計にベルトを通しただけでなく、きちんとしっかりしたラグを備えてベルトとケースを固定するとともに、腕に巻いて美しいデザインを確立していたところにあります。また、サントスが開発されるまでは、腕に時計を巻くのは主に女性で、ジュエリーアクセサリーのような様相を呈していました。つまり、パイロットウォッチ、および男性用の腕時計を開発し、以降急速に普及させたのはこのカルティエ サントスであることを示唆します。
当時、現在にも続く様々の時計メーカーが存在していました。ロレックスが誕生したのもこれと同時期です。にもかかわらず、ジュエラーであるカルティエが現代の腕時計の黎明を作った・・・あまり知られていませんが、実はこういった歴史的事実があります。
画像引用:カルティエ 公式サイト
その後1911年に市販化されて以降、今なおカルティエのフラグシップとして君臨しています。
特徴としては、オリジナルから踏襲したスクエアケース。ちなみにスクエアケース自体も、当時としては異例中の異例です。昔のモデルって丸形が多いですよね。しかしながら斬新なデザインを良しとするカルティエは、あえてスクエアを採用しています。
また、ベゼルとブレスレットに打たれたビスがもう一つの特徴ですが、これは飛行機のボディに使われるネジをイメージしているのだとか。フォルムなどモダンな印象が強いですが、非常に薄型で上品なケースを使っている側面も見られます。そのためドレッシーな衣装との相性も良く、アルベルトが愛したスーツスタイルにこそ映える時計と言えるでしょう。もちろん、洒脱なジャケパンにも。
なお、カルティエはタンクフランセーズやタンクソロなどを始めとしたタンクシリーズや、2010年から始まったメンズ専用ラインのカリブル ドゥ カルティエも高名です。でもここまでご紹介してきたように、実はサントスこそがカルティエの時計製造の始まりであり、シンボルと言えるのです。
カルティエ サントスの多彩なシリーズ紹介
前述の通り、カルティエ サントスは同社のフラグシップです。
ただ、長年あまりシリーズにメスが入れられず、タンクのように続々と派生モデルが登場・・・などといった存在ではありません。しかしながら近年、新作サントスの勢いが凄いです。サントスのコンセプトや魅力的なデザインはそのままに、ジュエリーメーカーらしからぬ高機能にアップデートされています。
サントスは、デザインやステータスはもちろん、こういった機能面でも他の時計メーカーと遜色のない時計となりました。
詳細をご紹介いたします。
サントス デュモン
画像引用:カルティエ 公式サイト
アルベルト・サントス=デュモンと同名の当シリーズ。初代サントスのデザインを踏襲しており、サントスのルーツとも言うべきモデルとなります。一見すると他サントスと大きな違いはないのですが(ベゼルのビスやカルティエらしいアイボリー文字盤×ローマンインデックス,青針など)、革ベルトときわめて薄いケースを採用することで、20世紀初頭、アルベルトが愛したクラシック・ウォッチを正統に受け継ぐこととなりました。
そんなサントス デュモンですが、2019年に刷新が行われます。クォーツがラインナップに追加されたのです。
画像引用:カルティエ 公式サイト
レディースカルティエであれば、別にクォーツは珍しくもありません。しかしながらカルティエは男性向けには、機械式時計を主流としていました。とりわけサントス デュモン=機械式、という構図を描いていた時計業界人は少なくありません。サントス デュモンは、上品な薄型ケースを実現するために、伝統的に手巻きを採用しています。
しかしながらこのたびクォーツが追加!しかもこのクォーツ、バッテリーの持ちが約6年と、かなり長寿命なこともポイントです。通常のクォーツ時計の電池はせいぜいが2~3年程度(カメラなどにも使われているリチウム電池だと10年近く持つものもありますが・・・)。
サントス デュモンのコンセプトは守りつつも、実用性がいや増したことは間違いありません。ただ、手巻きのサントス デュモンは現在ではチタンまたはゴールドのハイエンドモデルのみの製造に留まることとなりました。
また、従来のサントスよりもベゼルが薄くなり、ラグもスリムになったことから、ドレッシーな印象が強まっています。ただ、根はパイロットウォッチのため、モダンさも忘れないのが嬉しいところ。そのためスーツはもちろん、やや崩したジャケパンなどにも合わせやすい「軽さ」があります。ドレスウォッチは大仰だけど、最近流行りのスポーティーすぎるモデルはスーツに合わせづらい・・・そう思っていた男性は、ぜひサントスデュモンを着けてみてください。
画像引用:カルティエ 公式サイト
ラインナップはステンレススティール,SS×ピンクゴールドのコンビ、ピンクゴールドの3種。サイズはそれぞれSM(縦38mm×横27.5mm×厚さ7.3mm)またはLM(縦43.5mm×31.4mm×厚さ7.3mm)が追加となりました。
なお、クォーツを採用したため、価格がお手頃なのも嬉しいところ。ステンレススティールモデルはSMとLMでそれぞれ定価407,000円・434,500円。ピンクゴールドとのコンビモデルでも、70万円を下回る価格です。
カルティエが当新作を発表したSIHH2019にて、「これは新たなるメンズの定番となる」そう確信しましたが、現在の勢いはそれを実現しています。
サントス ドゥ カルティエ
画像引用:カルティエ 公式サイト
「サントスの勢いがすごい」と申し上げましたが、その先駆をサントス デュモンよりも早く担ったのはサントス ドゥ カルティエでした。2018年に登場した新ラインで、デザインは基本的なサントスに準じますが、ベゼル形状が後述するサントス100のように流麗になっていたり、さらに便利機能が搭載していたりと、サントスを現代風にリファインしたコンセプトを持つことが特徴です。
この「便利機能」がすごいのです!
と言うのも、「クイックスイッチ」と呼ばれる、ベルト交換システムを新たに採用しているのですが、これはカルティエの特許技術。通常、ベルト交換には特別な工具が必要となりますが、そういったものなしにワンタッチで交換可能にした画期的なシステムです。パネライなども順次こういった便利機能を追加していますので、時代のニーズによくマッチしたものであることがわかります。実際、気分によってベルトを付け替えることができる、というのは嬉しいですよね。なお、メタルブレスレットとも容易に交換することができます。
ただ交換できる、というわけではなく、しっかりとケースとベルトを繋ぐため、ガタガタしたりスイッチ稼働がスムーズでなかったり、といった弱点がないのも、さすがカルティエ。ちなみに自社製ブレスレットも、工具なしで簡単に長さを調整できるというおまけ付きです。
また、自社製ムーブメントが搭載されていることもミソ。カルティエの内部機械は、従来ベースをETAなどのムーブメント製造会社に外注しており、自社でチューンアップする、という手法が主流でした。しかしながら2010年から工房を設立し、本格的な自社製造ムーブメントを続々ラインナップさせていきます。当初はカリブルドゥカルティエにのみ搭載されていましたが、この度カルティエのフラグシップ・サントスでも採用されることとなりました。
このムーブメント、自動巻きでありながらサントスらしい薄型を形成していることも見事なのですが、耐磁性能など実用面でも優れており、カルティエの時計技術への高さを感じられる逸品です。
2019年には、このサントス ドゥ カルティエにクロノグラフモデルが追加されました。
この新作もまた曲者で、従来から使用されてきた自社製ムーブメントCal.1904 CH MCがベースになっているのですが、なんとクロノグラフには必ずついているべきプッシャーが取り払われているのです。代わりに9時位置にプッシャーが密かに設けられ、ここでクロノグラフを作動・リセットはリューズに組み込む、という手法を採用しました。
サントスのデザインを大切にするために、このような独創的な機構を産み出したのでしょう。
なお、サントス ドゥ カルティエもステンレススティール,コンビ,ゴールドなどがラインナップされていますが、サイズのメインはMMサイズ(直径35.1mm×厚さ8.83mm)またはLMサイズ(直径39.8mm×厚さ9.8mm)となります。
また、これだけ薄いにもかかわらず、10気圧という高い防水性を備えていることも、実用面では見るべきところ。
プライスレンジは70万円台~。カルティエ渾身の自社製ムーブメントを搭載していることを鑑みれば、定価がかなり良心的であることもおわかりいただけるでしょう。
カルティエ好きやオシャレ好きはもちろん、「良い時計が欲しい」「ビジネスシーンで日常的に使える時計が欲しい」といった方にも、サントスを自信を持ってお勧めできるのは、こういった実用面で優秀すぎる時計であることが大きな理由です。
サントス100
2004年、サントス誕生100周年を祝して誕生したアニバーサリーモデルがサントス100です。現在は生産終了していますが、今なお中古市場で絶大な人気を誇る一大コレクション。それを証明するかのように、芸能人ではスガシカオさんやトム・クルーズさんなど、一流のファッショニスタが愛用しているって知ってましたか?
何よりの特徴は、薄型がメインであったサントスケースを、厚くボリューミーにしたこと!2000年代初頭はパネライやウブロなどがデカ厚時計を打ち出し、一つの大きなトレンドとなっていたので、ニーズをくみ取った形なのでしょう。
確かに上品でドレッシーなサントスもステキですが、ダイナミックでとにかく男らしいサントス100もまた違った味わいがありますね。
ちなみに初期の個体には裏蓋に「1904-2004」という刻印がエングレービングされていましたが、レギュラー化されたこともあってかいつの間にかなくなりました。
サントス100のもう一つの特徴として、特別モデルが多彩にリリースされていた、というものがあります。例えばケースにカーボンを使用したモデルやグレー文字盤のモデルなどがこれに当たります。限定品であることが多いので欲しいと思った時にすぐに時計店で見つかる、というものでもありませんが、比較的状態の良い個体も出回っているので、「大きくて厚いサントスが好み」という方はサントス100をチョイスしてみてはいかがでしょうか。
サントスガルベ
サントスガルベもまた、既に生産終了していますが、昔ながらのカルティエファンを中心に絶大な人気を誇っています。野球選手の田中将大さんなどがご愛用されているようです。ただ、レディースのイメージが強い方も多いかもしれません。
と言うのも、クォーツ搭載機がシリーズのメインであり(メンズは自動巻き)、またピンク文字盤など女性らしいモデルが少なくなかったためです。
一方で、基本的にカルティエは「メンズ」「レディース」のくくりをきちんと設けているわけではありません。サイズもSM、MM、LMなどといった区別をしているように、ご自身に合ったお好きな一本を選ぶ、というのがカルティエが望むところでしょう。
そのためサントスガルベでもLMまたはXLサイズがリリースされており、オシャレ男子はもちろん、メンズライクなファッションが好みの女性からお選びいただくことがあります。薄型ですので女性が着けても違和感なく、ペアウォッチやシェアウォッチとしても使えますね。
ちなみにガルベは「湾曲」という意味を持つそうです。その名の通り、ラグから続くケースが優美なラインを描いており、現行サントスとはまた違った独創的なデザインに仕上がります。
カルティエ サントス 人気モデル
最後に、当店GINZA RASINで人気の高いカルティエ サントスをご紹介いたします。
サントス ドゥ カルティエ LM WSSA0013
型番:WSSA0013
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 39.8mm
文字盤:ブルー
駆動方式:自動巻き(Cal.1847MC)
2019年、サントス ドゥ カルティエに追加された、深みあるブルー文字盤モデルです。ブルーは近年ファッション業界で流行りのカラーで、他の腕時計ブランドもよくラインナップされるようになりましたが、やはりジュエラーとしての審美眼あるカルティエ製ブルーは、ちょっと一味違いますね。深みもありますがサンレイ仕上げによって独特の光沢も醸し出しており、クラス感が漂います。
サントス ドゥ カルティエ MM WSSA0010
型番:WSSA0010
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径35.1mm×厚さ8.83mm
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き(1847MC)
シルバー文字盤がカルティエらしい一本です。正統派のため、ここぞと言うと時のビジネスシーンや、フォーマルなパーティーなどに着けていってもいいでしょう。
一方で10気圧防水×耐磁性能などハイスペックを誇りますので、日常使いにも安心です。
サントス ドゥ カルティエ クロノグラフ XL WSSA0017
型番:WSSA0017
素材:ステンレススティール(一部ADLC加工)
ケースサイズ:直径43.3mm×厚さ12.5mm
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き(Cal.1904 CH MC)
2019年、サントス ドゥ カルティエに追加されたクロノグラフモデルです。プッシャーが取り払われたことで、非常にスタイリッシュに生まれ変わりましたね。
ベゼルやエンドピースにはADLC加工があしらわれました。これは、傷をつきづらくするとともに、ブラックカラーをデザインアクセントに加えることでスポーティーさを強める働きがあります。当モデルはインデックス・針に夜光が塗布されているので、スポーツウォッチとしての側面が強まった印象です。お好きな方にはたまらない一本でしょう。
サントス100 LM W20127Y1
型番:W20127Y1
素材:ピンクゴールド
ケースサイズ:縦51mm×横41mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
現在は生産終了していますが、比較的状態の良い個体も出回るサントス100。こちらはピンクゴールドケースにブラウン文字盤をあしらった、ゴージャスな一本です。
ハイエンドモデルとなりますがカルティエは生産終了品も大きく相場を上げているわけではないので、現行品よりお得に手に入れられるのが嬉しいところです。
サントス ガルベ LM W20055D6
型番:W20055D6
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径31mm×厚さ8mm
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き
こちらも生産終了したサントスガルベです。シンプルながら、独特のケースフォルムがとてもユニーク。個性を演出したい男性にはうってつけの一本でしょう。
年々流通量が減っていっているので、気になる方は見つけた時に買いましょう。
まとめ
高級時計を買う際は、機能・デザイン・ステータス全てを抑えておきたい。そんな時計に一家言持つ男性陣に向けて、カルティエのサントスをご紹介いたしました。
文中でも述べたように、サントスは現在カルティエが意欲的に新作や新機構を発表している、同社きっての注目ラインです。現在既に人気があって品薄ぎみで、当店でも入荷するとすぐに売り切れてしまう状況。気になる方は、ぜひお早めにお問合せくださいね。