卓越したデザイン、類稀なる技術、奇想天外なアイデアにより、絶大な人気を誇る高級時計ブランド「フランクミュラー」。
トノーカーベックスやロングアイランドなどの定番モデルから、女性に人気のカラードリームス、そして時計の常識を覆すまさかの機構を搭載したクレイジーアワーズなど、ラインナップはさまざま。その上どれもが個性的でアイコニックなポイントを備えており、一目見ただけでフランクミュラーとわかるデザインがほとんどです。
そんな中で、今回取り上げるのは「コンキスタドール」。
中でも、特徴的な操作方法を持つことで時計初心者~中級者泣かせの「コンキスタドールグランプリ クロノグラフ」をご紹介していきたいと思います。
目次
モデルの概要をご紹介
フランクミュラー コンキスタドールグランプリ クロノグラフ エルガ 9900CC DT GPG
商品詳細ページはこちら(2017年9月現在、中古のみの在庫となります)
まず目に入るのは、ケースサイドやリューズを彩るメタリックなレッドのカラーリング。ダイヤルを含め黒・白・赤のみのデザインが最高にカッコ良く、第一印象で惹かれてしまう方も多いのではないでしょうか。
ガラス内を覗いてみると、エンボス加工が施され、ダイヤルから飛び出してきそうな躍動感に溢れるインデックス。「ヌーベルバーグ(新しい波)」と呼ばれるギョーシェ彫りや立体的なインダイヤルのデザインが、角度によって時計の表情を変えるのも魅力です。ベゼルにも60分の目盛りが刻まれて立体感を演出し、針は根本が肉抜きされ、その太さが強調されています。
また、F1や航空産業でも使われる特殊合金「エルガ」製のケースは、頑丈でありながら超軽量。ケースサイズが縦62mm×横42mmというビッグフェイスですが、着用してみると確かに軽いです。
参考までに、こちらは革ベルトのモデルで全体重量が 約133グラム ですが、40mmステンレスケースである ロレックス サブマリーナ デイト 116610LN がフルコマ状態で 約159グラム 。見た目の迫力に対して腕への負荷が軽く、扱いやすさも抜群のスポーツウォッチなのです。
日付が変えられない!?
そんなコンキスタドールグランプリですが、実は操作方法の一部に特徴があり、機械式時計を使い慣れた当店スタッフも一度はつまづくのがこの時計なのです。
どんな罠が仕掛けられているかというと、「日付操作」の部分。
「カレンダーのクイックチェンジができない!」「1段引きが壊れている!?」というご相談を頂くことが少なくない為、今から実際に操作しつつ使用方法をご紹介していこうと思います。
操作してみましょう
3時側、クロノボタンの間のねじ込みロック式リューズを6時側に回していき、ロックを解除します。
ポップアップした状態のリューズを12時側へ40~50回ほど回し、ゼンマイを巻き上げます。
秒針が動き始めました。
適度に巻き上げたら現在の日付時刻に合わせていきたいと思いますが、日付操作禁止時間帯がありますので、まずはリューズを2段引きにし、時刻表示の針を6時位置まで進めます。機械式時計の基本ですね。
さて、ここまで来たらカレンダーを切り替えていきたいと思います。
リューズを1段引きにしました。
6時側に巻いて…… あれ? 何も動かない……
12時側かな? …… こちらも動かない……
そう、ヌルヌルと回るばかりで文字盤上に何の反応もありません。
一人で泣いていると、9時側ケースサイドの赤いパーツと目が合いました。
リューズみたいなこちら……
縋るようにこちらを6時側に回していくと……少しずつ引き出されていきます。
ねじ込みロックのようにポップアップはしませんが、数回回したところで止まりました。
そう、こちらがカレンダー操作ボタンになっているのです!
引き出してしまえばごく単純なプッシュ式。押してみると6時側のカレンダー表示が1日ずつ進んでいきます。
無事に時刻合わせが完了しました!(この記事を執筆しているのが上記日時です)
2段引きの謎
さて、無事に日付が切り替わり、お問い合わせ頂いたお客様にも正しくご案内できます。
しかし、個人的にスッキリしないんです。
3時側リューズで時刻しか操作できないなら、どうして2段引きなんだ!? 何も反応の無かった1段引きは、何のために存在するの……?
カレンダー切替がプッシュ式の時計は他にもありますが、多くはリューズが1段引きだったり、月表示や曜日や月齢など、他の操作を担っていますよね。
初めから2段引きでなければ、こちら側のリューズでは時刻しか操作できないんだな、では日付操作は反対側のリューズかな、と見当がつき、ヌルヌル空回りする1段引きで無駄に悩むことなく解決に向かうことが出来ただろうと思うのです。
ムーブメントの都合だと思い調べてみましたが納得のいく理由が判明しなかった為、この問題は保留です。進展があったらご報告できればいいなと思います!
ちなみに
コンキスタドール グランプリ 8900SC DT GPG という時計があります。
クロノグラフがありませんが、形はよく似ており3時側と9時側にリューズのようなオレンジ色のパーツが見られます。
こちら、3時側のリューズを2段引きで時刻、1段引きで日付が変わります。
9時側のオレンジ色は、全く動きません(飾り!?)。
「時計屋を弄ぶのはやめて!!」と訴えたい気分。
以上、ものすごくカッコよくて、ちょっとクセモノな「フランクミュラー コンキスタドールグランプリ クロノグラフ エルガ」の操作方法についてご紹介いたしました!
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年