「グランドセイコーが一生ものの時計って言われるのは何故?」
「グランドセイコーの魅力について知りたい」
グランドセイコーの時計は、精度と耐久性が優れている日本を代表する高級時計ブランドです。
グランドセイコー独自の精度規格があり、その基準はスイスクロノメーター以上の厳しいものとなっています。
そんなグランドセイコーの腕時計が一生ものと言われる理由が知りたいという人は多いのではないでしょうか。
グランドセイコーの優れた時計のバックグラウンドには優秀な時計職人が多く存在します。
この記事ではグランドセイコーの腕時計が一生ものと言われる理由を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
おすすめモデルの紹介もしますので、グランドセイコーの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
グランドセイコーが一生モノの腕時計である理由
グランドセイコーが「一生モノの腕時計」と呼ばれるのはなぜでしょう。理由としては、大きく2つあると思います。
まずは何と言っても品質に優れたムーブメント(高品質なムーブメント)を搭載している点と「歴史と聖地」がある事が挙げられます。
以下に更に詳しく掘り下げていきましょう。
マニュファクチュールであり修理に困らない
グランドセイコーは自社でムーブメントを製造している「マニュファクチュール」であることから、「一生モノの腕時計」であると言えます。
このマニュファクチュールという言葉に明確な定義はありませんが、一般的には自社製ムーブメントを製造できる時計ブランドを指す事が多いです。マニュファクチュールは、自社でムーブメントを製造できるため、修理に困らないメリットがあります。
また、ムーブメントを製造しているため、機械機構に関する色々なノウハウを持っている事が特徴です。当然修理用の部品も確保しており、さらに設計から携わっている事で、不具合があれば即座に各部門へそれらを反映させる事ができます。
これが外注ムーブメントであれば、不具合があった場合、他社の製造ラインに変更を加えるのも大変な労力が必要です。マニュファクチュールは効率よくスピーディーに製造ラインに改善を加えられる事にも一役買っています。
時計自体の品質が圧倒的に高い
グランドセイコーが支持される大きな理由として、時計自体の高い品質が特徴です。
スイス製の時計も品質の高さも有名ですが、彼らが最も拘っているのは「スイス国内で製造する」ことなので、グランドセイコーの品質はスイス製の時計と同等以上のものともいえます。
まず、グランドセイコーが拘っているのは精度品質です。そのためにグランドセイコーはヒゲゼンマイとテンワ支柱を増設させる独自の技術開発にも成功しています。さらにそれらパーツの耐久性も向上させているのです。
革新的クォーツを生み出した歴史から、機械式、クォーツ式、さらに独自技術である「スプリングドライブ」まで多岐に渡って精密に製造しています。機械式とクォーツ式のハイブリッドでもある「スプリングドライブ」はあらゆる高級時計のパフォーマンスを凌駕している事が特徴です。
この技術は自動巻レベルの寿命を持ち、電池式レベルの正確さを備えた時計という、時計の理想形とも言うべき姿かも知れません。これまでの針式のクォーツは、電池によって水晶振動子で発生した電気信号をステップモーターへ伝えて針を動かしています。
一方スプリングドライブはゼンマイを巻き上げその解ける力で発電して、針を動かします。そして水晶振動子はゼンマイが解ける力で発生した電気によって振動して、ICが正確な信号とローターの回転速度を比較して、磁力のブレーキで制御するメカニズムです。
このスプリングドライブの開発によってクォーツの弱点であったトルクが弱い問題を解決し、スプリングドライブでは機械式時計並みの太くて見やすい針を搭載させる事に成功しています。
このように機械式、クォーツ式、そして第3のムーブメントと呼ばれるスプリングドライブまで、3つの機械機構全てにおいてトップレベルのブランドは、世界中見渡してもそう多くはないでしょう。
時代に左右されない普遍的なデザイン
グランドセイコーのファンの方には、時代に左右されない普遍的なデザインをこよなく愛する人たちも一定数以上いるはずです。この普遍的なデザインは、3つのデザイン方式と9つから成るデザイン要素で構成されています。
このデザインコードがあるため、何世代に渡って一貫性のある外観へと仕上がっているのです。
もちろん細部はデザイナーによって、微妙に異なっていることもあります。しかしブランドとしての確固たる哲学がある事で、普遍的なデザインを表現していることが特徴です。
「最高の普通」という唯一のコンセプトが持った実用性の極致
グランドセイコーを語る時に使われるフレーズとして「最高の普通」という言葉を挙げる人がいます。
彼らが時計を製造する上で重視しているのが、極端にトレンドを追いかけすぎない事です。
例えばここ十数年の時計界のトレンドは、ラグジュアリースポーツモデルになります。
しかし、他のスイスブランドのようにグランドセイコーは、それを探求しません。
だからといって若い世代向けのモデルを作らないわけではなく、前述した「最高の普通」を探求し続けている気がします。
若い世代にはダイアルのカラーを、ターコイズブルーのモデルを加えるなど、決して若い世代や女性向けのラインナップを考慮していない訳ではありません。グランドセイコーのデザインという大きな幹があり、それに枝葉をつけて新たなファンへ訴求しているのです。
現在も飽きの来ない洗練されたシンプルさ、クラシカルでもありカジュアルでもある、服装を選ばない実用的なデザインが国内外問わず評価されて今日に至っています。
グランドセイコーの誕生と歴史
グランドセイコーは1960年に初代グランドセイコーが誕生しました。きっかけは「スイス時計」に負けない国産時計を目指して作られたことです。同社HPには世界に挑戦する国産最高級時計の腕時計を作るという志でと記載されています。
※初代グランドセイコー
この時代は海外からの高級時計は物品税と輸入関税が掛けられて、かなり高価だったことも背景にはあったでしょう。
その後1967年には、セイコースタイルを確立させた44GSがリリースされますが、一転1969年にはクォーツ革命によりグランドセイコーは休眠状態に入ります。しかもこれは同じ社内で発表された世界初クォーツ時計によるものです。
※44GS
1988年にクォーツムーブメントを搭載した95GSが登場するまで、休眠していました。その間、VFAとよばれるクォーツを搭載したモデルが登場していますが、表記はあくまでGSだけと表記されていることが特徴です。
Grand Seikoと明記したモデルはこの1988年からで、その後機械式モデルはさらに10年後の1998年の9S5シリーズになって、復活します。スプリングドライブは2004年の9S6シリーズからで、現在に至ります。
更に2017年にはグランドセイコーを世界的な時計ブランドとするため、セイコーからの独立ブランドになるとバーゼルワールドで宣言しました。独立後のグランドセイコーは12時の位置に「Grand Seiko」と「GS」の文字が入り、SEIKOの文字はなくなりました。
グランドセイコーの魅力
日本が誇る「セイコースタイル」
画像引用:グランドセイコー公式HP
グランドセイコーを語る時、よく聞くフレーズとして「セイコースタイル」という言葉があります。これは、具体的には、日本特有の美意識を原点として生まれた、デザイン文法です。つまりスイス時計の模倣では無い、日本らしさを追求したデザインと言えます。
特に近年のグランドセイコーは二十四節季を表現したモデルを多く出している事が特徴です。これもセイコースタイルに根付いており、スイスブランドとの差別化に成功していると言えるでしょう。
セイコースタイルとは
燦然と輝く時計であるために用いられる、独自のデザインロジック。様々な要素で成り立つが、簡単に言うと歪みのない美しいケースや丁寧な仕上げ・加工によって高級機に必須と言われる立体感や光の陰影を実現するもの。
日本独自の美意識を存分に楽しめるモデルがある
グランドセイコーには、「和を感じさせる日本の美意識をコンセプトにしたモデル」が多く存在するのが特徴です。
前述した日本の四季が織りなす自然美を時計のダイアルに表現した二十四節季をコンセプトにしたモデルも多く出しています。スイスブランドでも芸術性や美術性を追求するモデルを出していますが、それらはあくまで特注品という括りになっている事がほとんどです。
それに対してグランドセイコーが探求する「日本独自の美意識コンセプトにしたモデル」はカタログに掲載されているごく普通のコレクションに対して行われています。この事が海外の人にも国内の人にも圧倒的人気を誇る理由になっていると考えられます。
とにかく精度と機能性が高い
グランドセイコーの精度が高いのは一朝一夕で付いたものではありません。これは、長年の歴史の積み重ねから発生したものです。グランドセイコーの歴史でも触れましたが、元々スイス時計、特にクロノメーター検定を上回る時計を作る事が彼らの目標でした。
その目標は、クォーツに置き換わった時、機械式時計が復活した時も同じでその部分は妥協しなかった事が大きいと考えます。また振動数が高いモデルが多い事も高精度の裏付けになっています。
振動数を多くするのは、エンジニア目線では部品の摩耗が増えて避けたい物です。しかし彼らは、そんな困難を克服しているからこそ、ここまでの高精度を実現しているのでしょう。そして常に使いやすい時計を目指してきた事も忘れてはいけません。
これによって機能美を備えた時計に仕上がっているのです。
グランドセイコーは何年くらい持つ?
グランドセイコーの時計は何年くらい持つのか、気になるところです。
基本的に腕時計を長く使うために大事に取り扱う事が一番重要だと考えます。
しかし、大事に取り扱っていても止まる事もゼロではありません。当然時計に搭載されているムーブメントによっても何年持つかというのも変化します。
ムーブメントの性質を理解して、万が一のためにも、メーカー保証も理解しておくと安心です。
購入して最低でも10年は安心して持つ
グランドセイコーでは、2021年10月1日以降の購入の製品より販売日以降、5年間の保証期間を設けています。さらに、購入したモデルが廃盤になったとしても、10年間はメーカーとして部品パーツを保管しておくようになっています。
ただこの10年間の部品の保管はあくまでも最低限の保管期間です。数年前にネットニュースでこのセイコーの担当者の発言を切り抜きして、10年しか保証しないと流れた事があります。
しかし、このニュースはグランドセイコーの真意では無く、最低限の保証期間になる事に注意してください。
当該製品の生産終了後も、監督官庁の指導に基づくメーカーとしての部品保有期間10年を超えて、さらに長期間の修理ができる体制を整えております。
出典:グランドセイコー公式HP
公式HPの記述にある通り、あくまでもメーカーとして最低限の部品保証期間を定めているというだけの事でした。
上記にあるようにグランドセイコーは長期間保証の体制を作りを着々と進めており、メンテナンスさえ怠らなければ、10年以上安心して使うことができます。
クォーツ、機械式、スプリングドライブそれぞれ寿命も異なる
ムーブメント | メンテナンス | 想定される寿命 |
---|---|---|
機械式 | 定期的な分解掃除(OH)が必要 | OHさえ施せば、半永久的 |
クォーツ | 電池交換と定期的なOH | OHで数十年以上。電子部品の寿命は個体差がある |
スプリングドライブ | 定期的なOH | 同上。但し電池交換が不要なので、クォーツより寿命が長い |
上の表にまとめましたが、グランドセイコーには機械式、クォーツ、スプリングドライブがあります。
一番寿命が長いムーブメントは機械式ムーブメントです。機械式ムーブメントの特徴として部品さえあれば、全ての部品を交換する事ができます。一方のクォーツとスプリングドライブは共に電子部品を搭載しているのが特徴です。
そしてこの電子部品の交換修理はできません。素人的には「ICを交換すればいい!」と考えますが、腕時計用のICはかなり小型で精密に設計された物です。個々の時計に合わせて専用設計されています。
そのため他のICで代替する事が難しいです。より長く後世にも自身のグランドセイコーを残したいと考えている人は機械式を選ぶべきだと思います。
グランドセイコーの腕時計を長持ちさせるコツ
3〜4年に1度オーバーホールに出す
一般的に機械式時計では、オーバーホール(OH)頻度は4から5年間隔が理想です。オーバーホールでは、部品を歯車単位まで分解して、汚れを落とします。
この事で、パーツ同士の摩耗を軽減し、潤滑油も経年によって乾燥する場合があるのでこのタイミングで塗りなおしをするのが通常です。グランドセイコーのオーバーホールでは3〜4週間かかります。
日々のメンテナンスを怠らない
また、オーバーホールだけに任せておくだけでは、グランドセイコーといえども長持ちしません。もしかして一番重要なのは日々の手入れかも知れません。基本的な汚れを拭き取る事や特に水分は大敵です。
汗などの皮脂汚れは、気がついた段階で早めにケアする事が重要です。汚れ以外では、強い磁気にも注意する事が求められます。家庭ではスマホやノートPC(特にスピーカー部分)、磁気調理器の近くが要注意です。
グランドセイコーの弱点といえるところは?
グランドセイコーの弱点は時計愛好家には認知度は高いですが、愛好家以外にはまだまだブランドとしての認知度はは低いのが実情になります。また同じセイコーの中で別のブランドが存在する事も、わかりにくいです。
ステータス性が低く見られがち
近年よく言われるのが時計のステータス性がグランドセイコーだと低く感じると言われる事です。確かにステータス性ではロレックスなどのブランドと比較するとまだまだと感じます。
また多くの人が持つ誤解として、セイコーブランドの他の物と違いがわかりにくい点があります。これは経済評論家や経済学者がよく語るビジネス観点から見たブランドの立ち位置があると思います。
そもそも2017年にグランドセイコーが、ブランドの独立宣言したのも一般には広く認知されていないのも事実です。まだまだマーケティングが不足しているのかも知れません。時計業界はどうしても、時計愛好家以外への訴求をこれまでしてきませんでした。
一般への浸透が今以上に進めば、「グランドセイコーは一生モノの腕時計」というイメージが確立するはずです。
実際にはブランド力もあり人気でいえば世界で通用している
グランドセイコーは、まだまだロレックスのようなステータスは持ち合わせていません。
しかし、ブランド力は向上しており、2024年のウォッチアンドワンダーズでもブースを構えているほど、世界的な認知度は高まっています。現状でもグランドセイコーの売上の多くは輸出品で、仕向地は北米向けが大半です。
保守的なヨーロッパの時計ファンには、完全に受け入れらたかは何とも言えませんが、盛岡のグランドセイコースタジオの外国人訪問者も増加しており、世界的なブランドである事は間違いありません。
グランドセイコーおすすめモデル
SBGJ201
ヘリテージコレクションの中にある、彼らのレガシーである44 GSをベースにしたセイコスタイルが根付く、一生モノの時計を代表するモデルと言えるでしょう。
SBGW231
エレガンスコレクションの中からはこのモデルがおすすめです。手巻きムーブメントは機械式時計の中でも希少になります。これは当たり前ですが、手巻き式は日々ゼンマイを巻き上げなければならない点があるからです。
しかし、その煩わしさがあっても構わないと思わせてくれる無駄の無いクラシカルなダイアルカラーは世代を超えて一生モノとして使えるグランドセイコーです。
SBGK002
グランドセイコーでは珍しい鮮やかな透漆を施したダイアルは和を極めたモデルです。更にグランドセイコーでは珍しいスモールセコンドを搭載したモデルで、パワーリザーブ・インジゲーターまでついています。
これもセイコースタイルそのまま、日本特有の美意識から生まれたモデルです。
その他のおすすめモデル
前述したモデル以外にも、おすすめのモデルは沢山あります。続きは、グランドセイコーのブティックでお気に入りの一品を見つけてください。
まとめ
グランドセイコーは世界的な時計ブランドにまで上り詰めましたが、優れた時計のバックグラウンドには優れた時計職人が多くいる事を忘れてはいけません。
職人以外にもデザイナーやエンジニア、様々な人たちが存在します。
この人たちが居ないと僕らは良い時計を手に入れる事はできません。
グランドセイコーを見る時、そんな事も思い出して時計を手につけてください。
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年