「世界に挑戦する国産最高級の実用時計」というコンセプトのもと誕生したグランドセイコーですが、物理的なモノである以上、オーバーホールは欠かせません。
実用時計と言うだけあって、普段使いに耐えうる外装とムーブメントを持ち合わせています。
たとえ不具合が腕時計に起きなくとも、定期的にオーバーホールされた腕時計を身につけることは、買って終わりではなく、身だしなみの一環としての信頼感を得ることができます。わかる人にはその違いが明確に伝わります。
燦然と輝いている腕時計を持つ人と、傷だらけで汚れだらけ、時刻遅れも起こしている時計を身につけている人では大きく印象が違います。
グランドセイコーには、しっかりと身だしなみを支え続けるサービス体制が整っていますので、確認していきたいと思います。
目次
2024年現在、グランドセイコー正規のサービスでどのようなメニューがあり、どの程度の料金がかかるのかをご紹介します。
グランドセイコーのコンプリートサービスは、オーバーホールとライトポリッシュと言われる輝きを取り戻す研磨処理を施してくれるサービスになります。
ムーブメントの形式によって料金が異なり下記の通りになります。
やはり、クォーツよりもメカニカルやスプリングドライブの方が部品点数がおおくなりますので費用が多く掛かります。
同様の理由でクロノグラフかどうかや機能の差によって費用が変わってくるものと思われます。
グランドセイコーのコンプリートサービスは、ムーブメントなどを意味する内装の修理・オーバーホールと一緒に「ライトポリッシュ」を行うサービスで、保証内の修理とは異なり送料が掛かります。
ライトポリッシュとは言うものの小型工具を用いた研磨や、バフ掛け、ザラツ研磨、筋目付けなど多くの工程を駆使してその輝きや美しさを取り戻してくれます。
とてもライトとは言えないように思えますが、大きな傷などの修復が必要な場合は別途「研磨修理」を依頼する必要があります。
「研磨修理」の場合は傷の部分に同質の金属を当てがい、高温で溶かして傷に流し込み、固まったところで研磨することで傷を無くしたように見せる復元技術も駆使されます。
気になる傷がある場合は「ライトポリッシュ」で修復できるか「研磨修理」まで行った方が良いかを修理受付の時に相談してみることをお勧めします。
「外装リペアポリッシュサービス」は外装に特化したリペアになります。
ケースだけ実施したい、またはバンドの傷が異なるなど部分的なサービスを依頼する場合にはこちらが便利ですね。
ムーブメントも見てもらえる「コンプリートサービス」の方が割安と捉える考え方もできそうですね。
電池交換はクォーツ式の時計に限った話ですが、グランドセイコーのクォーツは3年で電池寿命がきます。
腕時計の電池がなくなってくると完全に止まる前に秒針が2秒に1回運針するようになるのでお気づきの際は電池交換をしましょう。
放っておくと電池から液だれなどを起こし修理が必要な状態になる可能性もあります。
料金は8,800円です。
バッテリープラスサービスは、電池交換に加え精度保証も提供してくれるサービスです。
料金は11,000円で、電池交換だけを行う8,800円と比較すると2,200円の差です。
そのため、電池交換と一緒に依頼することで安心して使い続けられることを考えると、お得と感じられます。
こちらは研磨の話ではなく、ガラス割れ、リューズ折れ、バンドの駒を止めているネジの脱落、ピンの折れなどが対象になります。
料金は以下の通りですが、交換部品代が別途かかる場合がありますので、修理受付の際にしっかり確認しておくことが大切です。
上記は最低料金であり、修理対象の時計の部品点数や機能、素材によって変動がありますので、しっかり確認した上で修理に出すことが重要です。
結論から申し上げると、民間企業が正規の半分以下の料金で修理を実施してくれる可能性が高いです。
民間の修理業者をWeb検索して、最低料金と正規の修理費用を比較してみたいと思います。
オーバーホール | |
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民間 | 13,000円〜 |
正規 | 52,000円(クォーツの最安値)〜 |
ケース/バンド研磨 | |
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民間 | 10,000円〜 |
正規 | 38,500円(バンドのみ)~ |
電池交換 | |
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民間 | 4,000円〜 |
正規 | 8,800円 |
金額の面では民間業者の方がはるかに安く済みそうであることがわかります。
しかし、内装の構造を熟知しているのはセイコーの正規修理ですので、正規にお任せする方が安心感はあります。
特にスプリングドライブは世界でも類を見ないほど特殊なムーブメントになりますので、正規での修理が求められます。
また外装のポリッシュに関しても、研磨する道具の違いで磨きの表現は変わってくるので、正規の修理で販売時と同じ研磨を施した方が元通りになることは確かです。
さらに、ケースの深い傷の修理では、金属を溶かして傷に流し込むわけですが、民間ではあくまでこのケースの素材を推測しているに過ぎません。
推測が当たっているかもしれませんが、正規のように仕様書を見て、どの素材なのかを間違えることなく対応しているものとは安心感が異なります。
上記さまざまな理由により、できれば修理やオーバーホールは正規サービスを利用するのがお勧めといえるでしょう。
ただし、民間業者が悪いというわけではありませんので、安く済ませたいという希望があれば信頼できる時計修理店を探すのもアリです。
グランドセイコーのオーバーホールのタイミングはどのくらいなのか、オーナーであれば気になるところですよね。
グランドセイコーは一生モノの高級時計ということもあり、いつまでも永く使いたいという気持ちが大きいかと思います。
また逆に、高級時計だからこそ「グランドセイコーにオーバーホールは必要なのか」という疑問を抱えている人も、いるかと思います。
この項目では、オーバーホールの必要性やタイミングにおけるよくある疑問を丁寧に解消していきたいと思います。
グランドセイコーのオーバーホールは3〜4年に1度行うことが推奨されています。
特に購入後最初のオーバーホールは、製造してから初めて駆動させた段階ということで金属の摩耗や想定外の現象も考えられるので、オーバーホールの重要性は高いです。
そのため、最初のオーバーホールはなるべく早いタイミングという意味で「ちょうど3年を迎えるタイミング」で依頼するのが良いと考えられます。
グランドセイコーの補修用性能部品の保有期間は通常10年と言われていますが、実際にそれ以上の場合もあるでしょうし、購入から必ずしも10年ではなく製造終了から10年ということも考えられます。
一概には言えませんが参考として、大まかに次のようにオーバーホールのスケジュールを考えると良いのではないでしょうか。
初回のオーバーホール | 短めの3年で行い、初期の摩耗などによる不具合を払拭 |
2回目のオーバーホール | やや長めの4年で行い、様子をみる |
3回目のオーバーホール | 3年として、購入から10年目で確実に補修用性能部品が供給されている間に行う |
以降 | 4年毎にオーバーホール |
このように、3年、4年、3年の組み合わせで最初の10年を迎え、以降は4年毎で良いのではないかと考えるのもお勧めのパターンです。
オーバーホールのことばかり話していると、グランドセイコーオーナーの方はご心配になるかもしれません。
冒頭にも述べたとおりグランドセイコーの時計は普段使いにおける耐久性はありますが、精密機械である以上オーバーホールは必要だと考えて良いです。
例えばムーブメントは、部品と部品が噛み合って動力を伝達するために力が加わり続けている状態で駆動を強いられます。
当然、噛み合う部分には摩耗が生じますし、駆動部分に潤滑を目的に塗布された油が切れることもあります。
また、メカニカルやスプリングドライブをしばらく使わずに放置した場合やクォーツ時計を電池切れのままにした場合には、潤滑油が固着することも考えられます。
さらに、防水性を担保するゴム製のパッキンは劣化することもあります。
これらを防止するためには、定期的なオーバーホールで技能者に部品の交換や洗浄、油の塗布などをしてもらう必要があります。
正規の「グランドセイコーサービススタジオ」にオーバーホールの依頼をする手順を把握し、実際の依頼の時に慌てないようにしたいものです。
オーバーホールの流れをまとめると、以下となります。
フェーズごとに詳しく、解説していきます。
グランドセイコー公式HPより受付フォームに必要事項を記載し、申し込みをします。
この時点で保証書がある方は、保証書または保証カードを手元に用意し情報を見ながら打ち込みます。
保証書や保証カードがない場合は、修理したい腕時計を手元において見ながら情報を打ち込むことになります。
申し込みURL:https://repair.seiko-watch.co.jp/gs/page/reception/top.aspx
申し込みを行うと、セイコーが腕時計を引き取るための発送キットを指定の住所に送ってくれます。
発送キットには輸送中に時計が傷つかない工夫がされています。
例えばメタルバンドの場合ですが、駒の内側同士がぶつかり傷つけ合ったり、バックルの内側が時計の裏蓋にぶつかり傷をつけてしまうことがあります。
そのため、台紙と呼ばれるボール紙を丸めたものをメタルバンドの内側に入れて傷を防止します。
この方法はお店に入荷する際と同じ方法なので、傷がつかないことは折り紙付きです。
バンドに台紙を挟み込んだ後、ビニール袋に入れ、台紙が外れないようにしてから、あらかじめ送られてきた箱に時計を入れます。
時計は下側のスポンジと上側のスポンジでしっかりと挟んでから箱を閉じます。
この状態なら大切な腕時計も傷がつかずに郵送されます。
保証修理外の場合は送料がかかりますが、後払いとなります。
金額は公式HPをご確認いただきたいのですが、2024年現在では以下の金額になっています。
オンラインクレジットカード決済:1540円(税込)
代金引換:1870円(税込)
なお、郵送方法は郵便局とヤマト運輸が選択でき、提携しているコンビニからも発送できるため非常に利便性が高いと言えます。
時計がグランドセイコーサービススタジオに届くと、入力フォームに記載したサービス依頼内容や過去の修理歴、時計の状態を調べてくれます。
申し込み時に提示された概算見積もり以内の金額で収まる場合は、そのまま修理が実施されます。
概算見積もり金額を超える場合は、修理実施前に連絡が来るので、その時点で進めるかどうかを判断することができます。
このように、想定外の金額が急に請求されることがないため、安心してサービスを利用することができます。
コンプリートサービスでは、下記の手順で作業が進められます。
時計を部品ごとに分解します。
分解されたムーブメント部品を超音波洗浄機で洗浄します。
組み立ての際、スムーズに動き続けるよう各所に油を挿します。顕微鏡を使って微細な部品の接する部位に注油を施します。メカニカル時計の場合は、テンプやヒゲゼンマイの調整も行われます。
いくつかの研磨が部位に合わせて実施されます。
調整されたムーブメントを磨き上げられたケースにセットし、バンドを取り付けます。
防水性の検査や時計本来の機能が発揮できているかを、専用の機械と熟練技能者の目で確かめます。
この作業の間は待ち遠しいですが、公式Webサイトから修理状況を確認できるサービスもありますので、状況を確かめながら待つことができる点も素晴らしいです。
修理依頼時に登録した住所に送付されます。
修理代金と送料が請求されます。
これらの①〜⑤の手順があらかじめ分かっていると、安心して依頼側もお任せできますね。
グランドセイコーのオーバーホールにかかる期間は「時計を預けてから3〜6週間」が目安となっています。
ただし、故障だとオーナーが思っても、店舗に持っていくことですぐに解決する問題もあるかもしれません。
外装の傷やクォーツ時計の秒針が2秒運針になっているために電池交換をするなど理由が明確な問題以外は、店舗で一旦見てもらうのも一つの方法と考えられます。
グランドセイコーのオーバーホールは、3〜4年に1度行うことが推奨されています。
オーバーホールをしなくても大丈夫かと言うと、おそらく電池交換や大きな衝撃、浸水などがなければ、5年や10年、それ以上動き続ける個体もあるかもしれません。
しかし、ベストな状態で動き続けることや防水性能の維持を望む場合は、オーバーホールを行うべきです。
最初は小さかった不具合が、後に大きな故障となり、多大な費用がかかることも考えられます。
特に使い始めて3年目は、初回ということもあり、製造時から使用され始めるという時計にとって大きな状況の変化がある時期ですので、「コンプリートサービス」を受けることをお勧めします。
オーバーホールをすることで、時計の寿命を延ばすことができると考えられます。
これは実証が難しいですが、油切れや部品の摩耗を放置した機械類が必ず不具合を起こし、修理が不可能になることはよく耳にします。
腕時計も同じです。車であれば車検やオイル交換をしないで乗り続けることは危険ですよね?
時計も同様に、オーバーホールをしなければいずれ故障します。
長く使い、環境にも優しいロングユースを実現するためには、オーバーホールは欠かせません。
保証書や保証カードがなくても依頼できます。
型番等を腕時計の裏蓋の刻印で確かめながら申し込みフォームに記載することになります。
グランドセイコーのオーバーホールは、時計の寿命を延ばし、最適な状態を保つために重要です。
3〜4年に一度のオーバーホールが推奨されており、特に初回の3年目は時計にとって大きな変化の時期ですので、コンプリートサービスを受けることをお勧めします。
オーバーホールを定期的に行うことで、油切れや部品の摩耗を防ぎ、長く快適に時計を使用することができます。
また、正規の修理を受けることで、スプリングドライブのような特別なムーブメントや外装のポリッシュも適切に保たれます。
費用はかかりますが、信頼性と品質を維持するためには正規の修理が最も安心です。
この記事が、グランドセイコーオーナーの皆様がオーバーホールを検討する際の一助となれば幸いです。