出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
2020年はグランドセイコー60周年。この年、グランドセイコーは今後語り継がれていくであろう名機を、60周年の記念限定モデルとして大々的にリリースしました。
1960年、グランドセイコーは日本古来の美意識と最先端の技術を駆使し、世界でトップクラスに輝く腕時計を発信するために創設されました。60年に及ぶ研鑽、技術革新、そして美への探求の粋が、60周年記念モデルには凝縮されています。
この記事では、そんな60周年記念モデルの中でも特に人気の高いSBGR321を、時計専門店スタッフが徹底的にレビューします。
目次
グランドセイコー 誕生60周年記念限定モデルSBGR321はどのような時計か?
グランドセイコーは1960年に誕生して以来、多くの傑作・名機を生み出してきました。
セイコースタイルをはじめとするデザイン哲学やそれを実現する類まれな外装技術が、王者としての風格を生み、守り抜いてきたのです。
そしてスイス天文台コンクールで上位入賞をたたき出した厳しいGS規格をはじめ、精度への飽くなき探求が、人々のグランドセイコーに対する信頼を支えています。
グランドセイコーは60年の歴史を経て、今や海外でも大変人気の高いブランドとして成長しました。
そんなグランドセイコーが満を持してリリースした誕生60周年記念限定モデルSBGR321を細かくご紹介します。
グランドセイコー 誕生60周年記念限定モデル SBGR321
ケースサイズ:直径40mm×厚さ約13mm
ケース素材:ステンレススティール
搭載ムーブメント:自動巻き キャリバー9S64
パワーリザーブ:約72時間
防水性能:10気圧防水
定価:605,000円(税込)
①クラシックなセイコースタイル
グランドセイコー 誕生60周年記念限定モデル SBGR321は、視認性が高く、より光を取り込む美しい針やアプライドインデックスなどが特徴です。
これらの特徴はすべて、クラシカルなセイコースタイルを継承するものです。
信頼性と高級感、そして光をふんだんに反射してきらめくセイコースタイルを忠実に継承することで、レトロ感と上品さがいかんなく発揮しています。
セイコースタイルは、1967年製造の「44GS」にて確立した、輝かしいグランドセイコーを形作るためのデザイン哲学です。
今もなおその哲学は受け継がれていますが、光を多く生み出すセイコースタイルを支えているのが、セイコーが誇る高い技術・ザラツ研磨です。
ザラツ研磨は下地を平滑面に整え、さらに鏡面仕上げを施す手法で、熟練の技を持つ優れた職人にしか行えない仕上げです。
ザラツ研磨を施せること、その質の高さが他の追随を許さないことが、グランドセイコーの多面カットインデックスや針、ケースやラグなどの鏡面をより輝かせています。
ちなみに風防に使用されているサファイアクリスタルは、ほんの少しケースからもり上がったドーム型にセッティングされています。
サファイアクリスタルはサファイアと同じ素材・組成でできた人工クリスタルで、非常に硬く傷がつきにくい反面、加工が難しいというデメリットがあります。そこをあえてドーム型に加工することで文字盤に立体感が生まれ、さらにヴィンテージ品のようにノスタルジックな印象もプラスされています。
40mmというケースサイズが非常にベーシックで、取り回しやすい一本と言えるでしょう。
②岩木山の黎明の空と昇る朝日を表現
グランドセイコー 誕生60周年記念限定モデル SBGR321の文字盤は、大変美しい「紺青」、ネイビーブルーに輝きます。
この深く気高い青は、グランドセイコーのブランドを象徴するカラーでもあり、グランドセイコーブルーとも呼ばれています。
このデザインは、グランドセイコーを技術で支える2つの工房のひとつ、岩手県雫石にある雫石高級時計工房から見える、岩手山の朝焼けをイメージしているのです。
最後の星が消えるころ、夜空は黎明のブルーに染まり、地の果てから一筋の光がまだ夜の気配を残した空へ放たれます。
岩手山の壮大な黎明から朝焼けをイメージした文字盤は、深く透き通るようなブルー、そして朝日に染まる朝焼け雲のような差し色の赤は、秒針の先端のみ。
この赤は朝焼けの色とともに、グランドセイコーがモノづくりにかける【情熱】も表しています。
誰も穢すことを許されない、東北の空と山の気高さ、夜と朝が交差する一瞬の美しさを写し取った、澄み渡る景色がたった4cmの世界に広がっているのです。
ケースバックはスケルトン仕様になっており、ムーブメントが見えるようになっています。
SBGR321のケースバックから見えるローターもまた、岩手山の黎明からインスピレーションを得たというなめらかな紺青をしています。
そして山の稜線を染める朝焼けの赤が、サファイアクリスタルの外周にそって差し色されています。
SBGR321のローターはグランドセイコーの獅子のマークも、紺青で入っている贅沢な造りです。
③ムーブメント「自動巻きキャリバー9S65」
グランドセイコー 誕生60周年記念限定モデル SBGR321に採用されているムーブメントは、自動巻きキャリバー9S65です。
9S65はグランドセイコーの基幹ムーブメントの一つですが、60周年記念モデルということもあり、ブルーローターが採用されていることがミソ。シースルーのケースバックから望めるブルーのローターは、特別感が溢れていますね。
なお、Cal. 9S65は、Cal.9S55(自動巻き・中3針・デイト)の後継機として登場しました。
9Sシリーズはマニュファクチュールの機械式ムーブメントで、Cal.9S55はなんと30年ぶりに開発された、グランドセイコー機械式時計復活を記念するムーブメントです。
Cal.9S55は旧9Sシリーズのスタンダードモデル(自動巻き・中3針・デイト)になります。
Cal.9S65は旧型のCal.9S55と見た目は似ているものの、技術的には大いに飛躍しました。
まず半導体製造技術の応用であるMEMSによって、0.001mmレベルの精度を保ちつつ、軽量化に成功しました。
MEMS技術により、ムーブメントの基本性能は格段にアップしています。
素材選びにもこだわり、機械式時計の課題のひとつである耐磁性も向上しています。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/about/movement/mechanical/9s65
さらにCal.9S55ではセイコー独自のマジックレバー方式で巻き上げを行っていたのに対し、Cal.9S65ではリバーサー方式を採用。
硬化処理によって耐久性をアップさせて巻き上げ効率も向上し、天真も太くなって耐衝撃性も高まりました。
17日間にわたる厳しい検定をクリアしなければならない新グランドセイコー規格より、さらに厳しい「グランドセイコースペシャル(GSS)規格」に準拠する高精度を誇ります。
また軽量化や効率化の向上によりパワーリザーブも大幅に延び、48時間から72時間となりました。
つまり仕事終わりの金曜夜に外しても、月曜朝まで動いている利便性をも手に入れたのです。
【キャリバー9S65の仕様】
巻上げ方式 : 自動巻き式
持続時間 : 約72時間(約3日間)
静的精度 : -3~+5秒/日
携帯精度 : -1~+10秒/日
振動数 : 28,800振動/時(8振動/秒)
石数 : 35石
日付表示機能 : あり
グランドセイコー 誕生60周年記念限定モデル SBGR321の価格と中古相場
グランドセイコー 誕生60周年記念限定モデル SBGR321の定価は税込605,000円となっています。
しかしこの年に60周年記念モデルとして登場した腕時計はすべて数量限定ものであり、市場の出回りは限定的。
とは言え60周年記念モデルの中では、SBGR321は2500本と数も多めです。限定モデルとしてはお求めやすい価格となっており、その中古相場は個体のコンディションによりますが、50万円前後~になります。
グランドセイコーブルーの文字盤と、Cal.9S65を搭載し、ちょうど良いサイズのラグジュアリー感もある腕時計であることを考えれば、価値ある1本になるのではないでしょうか。
中古市場においても美しくて手ごろな価格・サイズの特別モデルということで人気もあり、狙っている場合は見つけたら手に入れることがおすすめです。
しかし、中古時計を購入する際は、コンディションの個体差が大きい事を念頭に入れておかなければなりません。
メンテナンスや保証など、信頼のおけるお店で手に入れることがおすすめです。
まとめ
グランドセイコー 誕生60周年は合計5本がローンチされましたが、その中でもクラシカルなセイコースタイルを継承するSBGR321についてご紹介いたしました。
グランドセイコーの基幹ムーブメントを載せた当ハイビートメカニカルモデルは、ビジネスマン必携の一本。緻密なスケジュール管理に一役買ってくれることはもちろん、ビジネススーツにビシっときまるグランドセイコーブルーによって風格を見に着けるのにうってつけですね。
ぜひ一度、SBGR321を手に取ってみませんか?。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年