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廣島浩二, グランドセイコー

ザラツ研磨とは?必見グランドセイコーの研磨技術を徹底解説!

最終更新日:

ザラツ研磨とは

「グランドセイコーのザラツ研磨って何がすごいの?」
「グランドセイコーの研磨技術について知りたい」

高級腕時計を購入する際、ケースの仕上がりを重要視される方は多いと思います。

仕上げには、色付けやコーティングを行う「表面処理(メッキなど)」、ヘアラインなどを施す「目付け」、そして面を整えたり鏡面にする「研磨」があります。

グランドセイコーでは、腕時計に仕上げの中でも最高峰の美しさを支える「ザラツ研磨」を施しています。

そんなグランドセイコーのザラツ研磨について知りたいという人は多いのではないでしょうか。

ザラツ研磨は、限られた職人しか使いこなせない技術です。

この記事ではグランドセイコーのザラツ研磨を、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。

ザラツ研磨仕上げを施したモデルの紹介もしますので、グランドセイコーの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。

ザラツ研磨とは「ザラツ兄弟社の研磨機を使った研磨工程のこと」

腕時計のケースを製造するには、ケース形状を鍛造や切削で金属素材から成形し、必ず「研磨」というケースを磨く工程が入ります。

鍛造では表面は荒れた型肌の状態ですし、切削では切削痕が残ったままになってしまいますが、その表面を滑らかに磨いて整えるのが研磨です。

その「研磨」工程の種類の1つに、今回ご紹介する「ザラツ研磨」があります。

スイスのザラツ兄弟社の製造していた研磨機を使って研磨を行うことから「ザラツ研磨」と呼ばれ、それを日本で使い続けてきたブランドがグランドセイコーです。

ザラツ研磨の特徴や魅力

SBGY007

ザラツ研磨で磨き上げた鏡面は、平面が広くても歪みが無く反射し、光と影の美しさを一層引き立てます。

反射に歪みが無いというところが特徴で、時計の立体感やきらびやかさは最上の仕上がりとなる研磨技術です。

鏡面が整うことでエッジも立ち、均整的な美しさが完成されますので、そういった外装が好きな人にはとても魅力的に映ることでしょう。

ザラツ研磨の何がすごい?

ザラツ研磨のすごさは、限られた職人しか使いこなすことができない難易度にあります。

アタッチメントと呼ばれる機材に磨く前のケースをセットし、高速で回転する研磨剤付きの回転盤などに押し当てて平滑面を磨き出します。

ザラツ研磨
画像引用:林精器製造株式会社HP

ただし、単純に押し当てれば良いというものではありません。

アタッチメントは左右の回転方向に可動でき、前後に移動できる車輪がついています。

これは、車のハンドルに前後に動く車輪がついているようなイメージです。

ケースの形状によっては、ケースの中心とケース前面と側面の間にある斜面がケースの中心から偏心している場合があります。

その際には、押し当てながらケースを左右に回転させつつ前後に動かす作業になります。

非常に複雑であり、形状をよく理解した職人が一定の力で手を動かしながら押し当てる技量が必要です。

20以上もあるといわれる研磨工程の中でも、ザラツ研磨は特に職人技が必要とされる研磨技法と評されています。

ザラツ研磨
画像引用:林精器製造株式会社HP

現代においては全て同様のアタッチメントで研磨されているとは限りませんが、いずれにせよ職人の力加減など勘に頼る部分が多いことは共通して認識されています。

【ザラツ研磨】の名前の由来

「ザラツ」はドイツ語の「Sallaz」にカタカナを当てたもので、自動翻訳では「サラツ」とも出てきます。

諸説ありますが、ザラツ研磨は「Gebrüder Sallaz」=「ザラツ兄弟」という文字が研磨機に書かれていたことに由来しています。

「ザラツ兄弟」社はスイスの研磨機メーカーだと考えられ、1950年代には日本のセイコーが現在のグループ企業である林精機製造のために購入し使用し始めたと言われています。

日本の時計メーカー各社で採用され、当時はザラツ兄弟社の研磨機が多数輸入されていたことが伺えます。

現在はザラツ兄弟社についてWEB検索をしてもほとんど情報がないため、営業していないものと思われます。

つまり、当時輸入したものをメンテナンスしながら、今も日本の各社で大事に使っていることが伺えます。

時計の本場ヨーロッパではどう伝えられている?

では、時計の本場ヨーロッパではどうなのでしょうか?

あまりザラツ研磨という言葉は聞きません。

研磨の方法で時折高級メーカーの表現で使われるのは「ブラック研磨」や「ブロック研磨」といった表現です。

素晴らしい鏡面は、ある一定の角度から見ると黒く見えることから「黒」を意味するブラックを使い「ブラック研磨」と呼ばれています。

また、研磨機器の機材の中にブロックと呼ばれる治具があり、それに由来するという説の「ブロック研磨」があります。

通常手間がかかるため高級品にしか使われないとされる手法です。

それらが「ザラツ研磨」と同じ技法かは分かりませんが、本場ヨーロッパから遠く離れた日本で、今はないと思われる研磨機メーカーの名前がこれほどまでに有名になっているのは、何か不思議な歴史の巡り合わせを感じます。

ザラツ研磨の主な方法について

本来「ザラツ研磨」は、ケースを磨き上げる前の下地処理のことを指します。ケース製造の手順の例は以下の通りです(メゾンによって違いはあると思います)。

  1. 鍛造によりケースを成形する
  2. 切削加工で内径や外径を削り出す
  3. ザラツ研磨技法で外観を整える
  4. バフ掛けを実施し光沢を出す
  5. ヘアラインを施す

ザラツ研磨は3の段階にあたり、最終的にはバフで磨かれるものになりますので、直接目にする仕上げではありませんが、この工程を通るかどうかで仕上がりは全く異なります。

また、グランドセイコーを製造するセイコーエプソンに関わる記述をみると、ステンレススチールを磨く場合とチタンや18Kゴールドを磨く場合では1.5倍の時間がかかり、プラチナは5から6倍の時間をかけているとあります。

素材や条件によってもノウハウが必要な技術であることがわかり、どうしても経験が必要な技法であることが想像できます。

参考:SEIKO公式HP

グランドセイコーの外装仕上げの魅力

SLGA009

改めてグランドセイコーの外装仕上げを再度確認してみたいと思います。

グランドセイコーが美しく「ザラツ研磨」を活かしながらコレクション展開できるのには理由があります。

公式HPには「セイコースタイル」というデザイン文法が明記されています。

詳しくは下記URLを参照いただきたいのですが、簡単に特徴をご紹介します。

<セイコースタイル>には3つのデザイン方針があります。

  1. 平面を主体としたデザインで、2次曲面は使うが、3次曲面は原則不採用。
  2. ケース、ダイアル、針で平面部分を極力広くとる。
  3. 各面は原則鏡面とし、鏡面は歪みを極力無くす。

上記はデザイン方針の要約です。

平面が得意なザラツ研磨を活かすことを前提として捉えられていることが感じられないでしょうか?

また、歪みを廃すのが難しい3次曲面を原則取り入れない点も、ザラツ研磨を採用する上で非常に合理的です。

前述の他社のモデルも、ザラツ研磨を採用する上で部分的にでも同様の気遣いがされていることがわかると思います。

なぜなら、ザラツ研磨を採用するにはある一定の形状制約が生まれ、「セイコースタイル」に習うしかない面があるからです。

セイコーが「セイコースタイル」を生み出すことができた要因として、デザイナーが市場でどのような時計が美しいのかを研究し、製造現場で作り手と協議を重ねた結果であると考えられます。

日本の「ものづくり」の情熱を受け継いだコレクションがグランドセイコーだといっても過言ではありません。

次の項目から、そんなセイコースタイルを受け継ぐグランドセイコーのザラツ研磨が美しいモデルをご紹介いたします。

グランドセイコー 44GS 4420-9000

グランドセイコー 44GS
画像引用:グランドセイコー公式HP

こちらは1967年に製造されたとされるセイコースタイルを体現したグランドセイコーです。

ケースには随所に平面や2次曲面が採用され、「ザラツ研磨」がしっかりと施されるようにデザインされています。

また、ケースサイドには裏蓋方向にすぼんでいく斜面が施され、ケースを薄く見せる手法が取られています。

現代においてある程度経験のあるメーカーでは採用される構成ですが、構造や組み立て工程までよく理解していないと成り立たせられない面構成です。

この後の腕時計業界に多大な影響を与えた重要なモデルと言えます。

現代では44GSをベースとしたクォーツモデル:SBGP001がグランドセイコーで販売されていますので、そちらも「ザラツ研磨」の歴史に思いを馳せるには良いかもしれません。

グランドセイコー グランドセイコー SBGP001

グランドセイコー グランドセイコー SBGP001

型番:SBGP001
素材:ステンレススティール/SS
ケースサイズ:40mm
文字盤:シルバー
駆動方式:クォーツ

クォーツといえど、年差の精度があり高級品としての機能は十分です。

その仕上がりを魅力に感じて購入するなら、グランドセイコーの中でも比較的お手頃な価格であることもポイントです。

グランドセイコー スポーツコレクション SBGE307

SBGE307
画像引用:グランドセイコー公式HP

ケースに平面が多用された多面体の構成で「ザラツ研磨」を採用しています。

一見、常識から外れた形状のように感じますが、「セイコースタイル」を守りながら発展して行こうとする姿勢が見えます。

比較的新しい形状なので、今後定着するかは見守りたいですが、ブランドの価値が上がり続けるグランドセイコーでありながら、新しい挑戦を続ける姿勢に頼もしさを感じます。

「ザラツ研磨」という文脈で見出す新しいデザインを腕に纏うことは、きっとオーナーの先進性や挑戦心を演出してくれることでしょう。

マスターピースコレクション SLGT005

SLGT005
画像引用:グランドセイコー公式HP

こちらは2024年12月発売予定のモデルですが、公式HPによるとザラツ研磨を採用しています。

どうしてもトゥールビヨンに目が行きがちな製品ですが、「ザラツ研磨」という観点でケースを見てみると、しっかりとザラツ研磨が施すことができる形状になっています。

足には正面から見て穴の空いた部分があり、一見突飛なデザインに見えます。

しかし、プラチナ950とブリリアントハードチタンという異なる素材を採用していることにより部品分割が生まれており必然性を感じます。

どちらの素材も「ザラツ研磨」が施されているとのことで、その仕上がりに期待ができます。

ザラツ研磨はグランドセイコー以外のブランドで用いられる?

ザラツ研磨はグランドセイコー以外でも用いられています。

日本の高級ブランドでは使用されることが多く、ミナセやロイヤルオリエント、シチズン、カシオでも採用されています。

主観による選定になりますが、各社の「ザラツ研磨」を採用したモデルをご紹介いたします。

ミナセ / DIVIDO VM14-M01NBL-SSB

ミナセ / DIVIDO VM14-M01NBL-SSB
画像引用:ミナセ公式HP

ディヴァイドはエスペラント語で「分割」を意味し、その名の通り細かく分割された部品が組み合わさってケースの完成品になっています。

ザラツ研磨では平面の砥石などに押し付ける方法のため、磨く面の横に飛び出た部分があれば、そこも一緒に削れていってしまいます。

そのため、各面を1つずつ磨ける形状までケースを部品ごとに分解する必要があります。

非常に工数も増えますし、組み立て精度も求められるため難易度が高いのです。

このモデルはザラツ研磨で最高峰の仕上げを持たせたモデルの成立に主題をおいたデザインと言えます。

オリエント時計 / ロイヤルオリエント レトログラード WE0011JD

レトログラード WE0011JD
画像引用:オリエントウォッチ公式HP

オリエント時計社からも1つ紹介します。

現在は販売されていないモデルですが、ザラツ研磨が効いているケースで2014年発売のロイヤルオリエントです。

採用しているザラツ研磨はグランドセイコーと見比べても遜色のない輝きを放っています。

オリエント時計社のなかでも、ザラツ研磨を活かすことがよく考えられたデザインという印象が強く、シンプルでスタンダードなデザインがものづくりへの真摯な姿勢を感じさせます。

シチズン / The CITIZEN NC1001-58A

シチズン / The CITIZEN NC1001-58A
画像引用:シチズン公式HP

CITIZENの公式サイトではザラツ研磨を採用しているとありますが、個別のモデル紹介では表記がないため、全てのモデルがザラツ研磨を採用しているのかどうか判然としません。

しかし、このモデルのケースの足と胴の部分の正接したデザインや平面を多用したデザインは、ザラツ研磨に向いていると言えます。

実際、その輝きはザラツ研磨だと思わざるをえません。

また、話は少し逸れますが、筋目も曲面より平面の方が美しく入る傾向があるため、全体的にレベルの高い仕上げを達成しています。

カシオ / MRG-B2000 Sries MRG-B2000D-1AJR

カシオ / MRG-B2000 Sries MRG-B2000D-1AJR
画像引用:カシオ公式HP

公式HPでは「ザラツ研磨」を採用しているが、ザラツ兄弟社製の研磨機は既になく、自製の研磨機を使っていると記載があります。

しかし、その輝きは紛れもなく「ザラツ研磨」の輝きです。

このモデルの凄さは、研磨するのが難しい複雑な形状に挑戦している点です。

他社が磨きやすさをデザインの制約として捉えるのに対して、デザインありきで技法を合わせ込む姿勢が感じられます。研磨ひとつとっても、各社のアプローチの違いを感じることができます。

まとめ

日本の高級腕時計は限られた職人しか使いこなせない「ザラツ研磨」に支えられています。

特にグランドセイコーでは平面を主体とした「セイコースタイル」により、歪みのない鏡面仕上げが実現されるデザインが確立されています。

1967年製造のグランドセイコー 44GSでは、ケースに平面や2次曲面を多用し、裏蓋方向にすぼんでいく斜面で薄さを演出しセイコースタイルを確立したことは「ザラツ研磨」を切り口に日本の時計史を語る上で基点となっていることをご紹介いたしました。

「ザラツ研磨」を通して皆様の時計選びの楽しみに視点が1つ加われば幸いです。

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