「インジュニア クロノグラフの魅力について詳しく知りたい」
「インジュニア クロノグラフの人気モデルはどれ?」
30代・40代を中心に人気を博すIWC。
実用性重視派から、ファッション感度の高い男性陣と、幅広いファンを獲得しています。
どのモデルも魅力的ですが、IWCの定番からは少し外れたインジュニアも人気です。
その中でも人気コレクションであるインジュニア クロノグラフの魅力について、詳しく知りたいという人は多いのではないでしょうか。
インジュニア クロノグラフには様々な歴代モデルが存在します。
この記事ではインジュニア クロノグラフの魅力について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説しています。
インジュニアの変遷や価格、さらに今買うべきモデルについても紹介していますので、IWCの時計に興味がある人はぜひ参考にしてください。
目次
IWC インジュニアってどんな腕時計?
インジュニアはドイツ語で”エンジニア”を意味し、耐磁性を重視して開発されたモデルです。
1955年、パイロット向けに作られていたパイロットウォッチ「 マーク11」を元に、民生用として開発されたのが始まりでした。
民生用とは言っても、主に医師や放射線技師など電磁波の影響が心配される、特殊な職業に就いている方から愛用されたという経緯を持ちます。
しかもその手法が当時としては独特で、軟鉄製のインナーケースでムーブメントを覆うという、画期的なアイデアが採用されました。
初代モデルの耐磁性は80,000A/m(1,000ガウス)。
一見マニアックに思えるかもしれません。
しかしながら、現在多くのブランドで耐磁性能に力を入れ始めています。
ロレックスのミルガウスやオメガのマスタークロノメーター認定機。グランドセイコーの強化耐磁モデルなどなど・・・磁気に囲まれた現代人にとっては、今や腕時計に耐磁性能は欠かせないスペックとなっております。
そんな機能に1950年代という早い段階で目をつけたIWC。さすがパイロットウォッチのパイオニアと言えますね。
また、全てのモデルが超耐磁というわけではなく、一部のモデルにはシースルーバックを採用したモデルもラインナップに加わっております。
出展:https://www.iwc.com/ja/home.html
しかしながら「超耐磁」はあくまでインジュニアについたイメージであって、もともとのコンセプトは「技術者向け」とも捉えられます。
技術者たちが、どんなに過酷な環境下でも時刻を知る行為に障壁がないように。そんな思いを込めて始められたシリーズだったのではないでしょうか。
実際、インジュニアの現行モデルはIWCには珍しいガッツリのスポーツラインで、高い堅牢性や防水性をも誇ります。クロノグラフや永久カレンダーなど、コンプリケーションを搭載したものも。
加えて、デザインはシンプルからスポーティーまでと多岐にわたり、ライフスタイルや好みに合わせて選択することが可能です。
時代のニーズに合わせて変化と進化を遂げていく、IWCの中でも異色なシリーズと言えるのではないでしょうか。
IWC インジュニアの歴代モデル
IWC インジュニアの、歩んできた歴史と歴代モデルをご紹介いたします。
初代インジュニア
型番:666,866
ケースサイズ:36mm
ムーブメント:自動巻きCal.852系,853系など
耐磁性能:80,000A/m
製造期間:1955年~1975年頃
1955年に登場した初代モデルはラウンドフォルムの、オーソドックスなタイプです。
一方で耐磁性能は80,000A/m。当時としては破格のスペックとなります。
1976年~1980年代後半
その後1976年、インジュニアに大きなテコ入れが加えられることとなります。
インジュニアのイメージとも言える独創的なフォルムの礎を築くこととなった、デザインチェンジが始まりました。
それが第二世代にあたる、インジュニアSLです。
型番:1832など
ケースサイズ:40mm
ムーブメント:自動巻きCal.8541
耐磁性能:80,000A/m
製造期間:1976年~1983年頃
デザインを手がけたのは高名なデザイナー「ジェラルド・ジェンタ氏」。
パテックフィリップのノーチラスやオーデマピゲのロイヤルオークを作り上げた時計界の大御所です。
独特のシェイプにベゼルに打たれたビス、一方でシンプルな文字盤デザインは、やはり天才デザイナーの手がけた作品と一目でみてとれますね。
しかしながら大きなヒットは飛ばしませんでした。
ケースサイズ40mm×厚さ12mmという、当時としては大きすぎるケースが要因でしょうか。「ジャンボ」と呼ぶ方もいらっしゃいますね。加えて高価格帯であったこと。そしてクォーツショックの影響が逆風となったことなどが重なり、生産数わずか976本(うち、ステンレス製は534本)で生産が打ち切られたという、悲しい世代でもあります。
その後ETAベースのムーブメントCal.375を搭載させたインジュニアSL Ref.3505を1983年に、後継モデルにあたるCal.3753を搭載するRef.3506が1985年に製造されました。
ベースとなったETA2892-A2は薄型でしたので、スリム化やケースサイズ34mmの小型化に成功します。
このように、インジュニアは「プロユース」を守りつつ、試行錯誤が繰り返されました。
ちなみにこのSL。
意味に諸説あり、「本来何の意味もない」という説が有力です。
一方で「スポーツライン」だとか「スティールライン」「スリムライン」といった説が囁かれたというエピソードを持ちます。
1989年~2001年
既に完成されたかと思われたインジュニアですが、IWCが進化の手を止めることはありませんでした。
今でこそ洒脱なデザインのラインが人気ですが、IWCは歴史的に質実剛健な側面もあり、技術開発に余念がありません。
1989年、第三世代にあたるインジュニアSLが、なんと軟鉄製インナーケースを使わずに、500,000A/m以上もの超耐磁を携えて発表されたのです。
型番:3508など
ケースサイズ:34mm
ムーブメント:自動巻きCal.2892-A2
耐磁性能:500,000A/m
製造期間:1989年~1992年頃
実測では3,700,000A/m以上の耐磁性を備えていたとも言われていますが、当時の技術ではこれ以上の正確な測定が難しかったようで、控えめに500,000A/mと表記していたとか。
ちなみに1990年前後に高級時計ブランドから出されていた代表的な耐磁モデルはロレックスのミルガウス(80,000a/m)やヴァシュロンコンスタンタンのオーバーシーズ(25,000A/m)など。
いずれも素晴らしいモデルに変わりはありませんが、耐磁性能という面ではインジュニアが一歩抜きんでていたと言わざるをえないでしょう。
軟鉄製インナーケースを使わずにどうやって耐磁性能を保っていたかと言うと、ムーブメントのヒゲゼンマイにニオブ‐ジルコニウム合金を使用したことに秘訣があります。
これはロレックスもミルガウスに使用した素材で、ムーブメント自体に耐磁性能を持たせることで磁気帯びを防いだのです。
非常に合理的な手法と言えます。
ケースはスリムなので、スタイリッシュな形状を保てることも嬉しいですね。
デザインは第二世代にあたるジェラルド・ジェンタ氏のデザインを踏襲しました。
しかしながら温度特性や耐久性への不安から1992年に生産終了。わずか2,700本のみの製造に留まりました。
翌1993年、再び軟鉄製インナーケースを採用したIW352103,352101を発表。
ジャガールクルト製Cal.889をベースとしたCal.887/2を搭載しており、クロノメーターも取得しています。
IWCは独自の品質規格を持つためあまりクロノメーター認定は受けていないので、非常にレアなシリーズとなりました。
2001年まで製造されましたが、インジュニア自体がこの年を境に一度IWCのラインナップから姿を消します。
2005年~
2005年、インジュニアは、IWCの自社開発ムーブメントCal.80110を踏査したIW322701で復活を遂げます。
型番:IW322701
ケースサイズ:42.5mm
ムーブメント:自社製自動巻きムーブメントCal.80110
耐磁性能:80,000A/m
製造期間:2005年~2009年頃
この復活、42.5mmという大幅サイズアップで話題を呼びました。
2001年まで販売されていたモデルは34mmでしたから、1cm近くも大型化したことになります。
インデックスも太くなり、アラビア数字が12と6に付け加えられたことにより、グッとモダンスポーティーといった印象を持つに至りました。
当時は既にパネライがデカ厚ブームを引き起こしていたから、特別大きすぎるということもありませんね。
しかしその二年後に、さらに驚くべきことが起こります。
2007年、IW322801を発表しますが、なんと耐磁性能を捨てシースルーバック仕様としてインジュニアに新ラインが加わったのです。
型番:IW322801
ケースサイズ:40mm
ムーブメント:自社製自動巻きムーブメントCal.80111
ケースバックからはぺラトン自動巻き機構を覗くことができ、機械好きにはたまらない仕様ですが、インジュニアの「超耐磁」というイメージを覆すこととなりました。
IW322801自体は製造本数が少なく、あまり流通していませんが、以降インジュニアにもシースルーバックが採用される大きな契機となりました。
パイロットウォッチでは同様に耐磁モデルがラインナップされていたので、別路線を進むことにしたのでしょう。
これを皮切りに、クロノグラフ搭載モデルやメルセデス・ベンツとのコラボレーションモデル“インジュニアAMG ベンツ” といった新たなモデルが、インジュニアで次々と発表されていくことになります。
「超耐磁性能腕時計」というイメージはなくなったものの、IWCの新たなスポーツウォッチとして名を馳せていくことになりました。
↑メルセデス・ベンツのハイスペックブランド、AMG社とのコラボレーションモデルIW372503 。
この辺りからインジュニアはモータースポーツとの関わりを深めていくこととなります。
また、コンプリケーションやクロノグラフ機能の搭載や、新素材ケースをインジュニアに取り入れるようになったのもこのあたりからです。
現在
2017年のSIHH(ジュネーブ・サロン)で発表されたIW357002は、インジュニアSLから続くジェンタデザインを継承したスポーティーな雰囲気から一転、ファーストモデルを彷彿とさせるシンプルな3針デザインに回帰しました。
型番:IW357002 ケースサイズ:40mm
ムーブメント:自動巻きムーブメントCal.35111
耐磁性能:40,000A/m
製造期間:2017年~
当時のミニマルなデザインに、美しく仕上げがされたポリッシュ仕上げのベゼルやブレスがIWCの現代的なエッセンスを加え、非常にラグジュアリーな雰囲気を感じるモデルに進化しています。
ブレスレットや柔らかなケースラインはジェンタデザインを継承しており、歴代インジュニアを昇華させたようなイメージですね。
40,000A/mという「超耐磁」というほどではないスペックに留まりましたが、決して低いということはなく、むしろ厚み10mmほどにおさまったケースがここまでの耐磁性能を持つ、というのはなかなか他社にはできない仕様ではないでしょうか。
また、同時に発表されたインジュニアクロノグラフ スポーツ は3針モデルにはないインナーケースによる耐磁性能を引き継ぎ、これまでの流れを汲むスポーティーな外観に仕上がっています。
型番:IW380801 ケースサイズ:42mm
ムーブメント:自動巻きムーブメントCal.69375
製造期間:2017年~
インジュニアは「超耐磁性能」というアイデンティティは薄れてきてはいますが、一大スポーツコレクションとして今やIWCのラインナップの中核を担う存在に成長しました。
それは、インジュニアが歴史的に技術者のための機能を追求してきた、というコンセプトに共感する男性陣が少なくないからでしょう。
これからも進化が楽しみなインジュニア。
今後、どのようなモデルが出てくるのでしょうか。
IWC インジュニアの価格帯
出展:https://www.facebook.com/IWCWatches
IWCの新品定価は時計ブランドの中でもやや高価格帯となります。
しかしながら並行店との価格差が比較的大きいブランドでもあり、現行モデルのシンプルなステンレス製3針モデルであれば、50万円台から手に入れることが可能です。
クロノグラフモデルであると70万円台からが相場となりますが、定価は100万円近いこと。さらに、IWCきってのハイスペックモデルであるため末永く使えることから、インジュニアの並行相場は多くの方にとって「お得」と言えるように思えます。
中古であればもう少しお安く手に入れることが可能です。
また、インジュニアは歴史のあるモデルですので、年式の古いモデルの中には30万円台から手に入れられるものも。
なお、前述のように生産本数の少なさから稀少個体も少なくありませんので、中にはプレミア価格のものも存在します。
今買うべきインジュニアとは?
出展:https://www.facebook.com/IWCWatches
歴史あるインジュニア。
では、どのモデルを今買うべきなのでしょうか。
インジュニアのスペックに惹かれる、IWCの技術力をリスペクトしている。
そんな方々は、ぜひ現行モデルをお選びください。
IWCの技術進化は日々顕著で、やはり現行モデルには最先端スペックが詰め込まれています。
また、経年した個体はどうしても本来のスペックを保つことが難しくなるため、スペックを期待するなら断然現行品でしょう。
スポーティーすぎるラインよりもビジネス向けの時計が欲しい方も、初代デザインを踏襲したシンプルラウンドフォルムの現行品が良いかもしれません。
初期インジュニア 666 / 1990年代から製造されていたIW352101
一方で歴史が長く、早い段階から技術力を確立してきたブランドのみ許される中古市場。
IWCはその典型であり、状態の良い中古品・アンティーク品が多く市場に出回ります。いわゆる「オールドインター」という代物ですね。
当店GINZA RASINでも、そんな中古品の扱いに自信があります。
現行品にはないデザインを、現行モデルでは考えられないほどお安い価格で手に入れ、楽しむことができます。
もちろん当時のスペックを有している保証はありませんが、インジュニアは堅牢性や実用性がウリのシリーズですので、メンテナンスをきちんと行えば末永く使えるものがほとんどです。
まとめ
歴史あるインジュニアの、歴代スペックや価格、そして今買うべきモデルをご紹介いたしました。
インジュニアの変遷は、実は人によっては評価や好みが分かれるところです。なんと言ってもインジュニアを象徴していた「耐磁性能」だけではない新ラインを加えてしまったのですから。
しかしながら、これはIWCの進化の歴史である、と捉えられます。
技術追求や時代のニーズに合わせた製品開発に余念のないIWCだからこそ、ここまでの変化・進化を遂げる一大シリーズとなったのでしょう。
歴史あるインジュニアで往年の名作を楽しむもよし。現行モデルでIWCの最先端スペックを楽しむもよし。
IWCの購入をお考えの方は、ぜひインジュニアも候補に入れてみてはいかがでしょうか。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年