「IWC パイロットウォッチ マーク18ってどんなモデル?」
「マーク18の人気モデルはどれ?」
IWCの名作・マークシリーズ。
パイロットウォッチの黎明を担った通称マークIX(9)から端を発するこのシリーズは、まさにIWCを象徴するような存在と言って良いでしょう。
視認性や耐磁性、信頼性といったパイロットウォッチに必要な機能を備えつつ、IWCらしい高い作り込みによって、高級パイロットウォッチとして昇華された逸品です。
このマークシリーズは2016年に誕生したマーク18が最新型で、当店でも売れ筋となっています。
そんなIWC パイロットウォッチ マーク18について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
マーク18は、現在のパイロットウォッチに大きな影響を与えた不朽の名作マークシリーズを継承しています。
この記事ではIWC パイロットウォッチ マーク18の魅力について解説します。
人気モデルも紹介しますので、IWCの時計に興味がある人はぜひ参考にしてください。
目次
IWCが手掛ける名作パイロットウォッチ「マークシリーズ」とは?
マーク18を知るには、マークシリーズの歴史から触れなくてはなりません。そしてマークシリーズの歴史に触れることは、IWCのパイロットウォッチ史を振り返ることにも繋がります。IWCが優れたパイロットウォッチの作り手として、いかに深い歴史を有してきたかが、マークシリーズを紐解くと見えてきます。
1903年、ライト兄弟が有人飛行に成功して以来、航空産業は大きな発展を遂げました。
郵便輸送や旅客機として航空機は重宝されていきますが、大きく進化を果たしたのは第一次・第二次世界大戦です。とりわけ第二次世界大戦下では高速化・高機能化を中心に飛躍的な進化を遂げており、戦闘機は実戦に欠かせない最新兵器となっていきました。
余談ですが、腕時計が一般市場に急速に普及したのは第一次世界大戦がきっかけと言われています。この大戦は人類史上初の総力戦となり、多くの国民が多数徴兵されたこと。また戦車や戦闘機といった最新兵器が投入されたことなどから、共通時刻の必要性がいや増したためです。
戦闘機にしろ旅客機にしろ輸送機にしろ、パイロットらにとって、正確で信頼のおける時計はきわめて重要なツールでした。
ただし、1930年代頃までは腕時計ではなく、コックピットにクロックを置いたり、ポケットウォッチを他の計器と並べたりすることなどが多かったようです。しかしながら、この使い方だと時計が落ちてしまったり位置がずれてしまったりして、やや不便ですよね。
そこで各時計メーカーは軍用・民生用ともに、パイロットウォッチを製造することとなりました。
そんな中でIWCは、1936年にリリースした通称マークIX(9)にパイロットウォッチ製造の端を発します。
出典:https://www.iwc.com/jp/ja/company/history.html
なお、「マーク9」は後年に使われた通称で、本来はスペシャル・パイロット・ウォッチといった名前であったようです。IWCのパイロットウォッチは英国空軍から制式採用されてきたことで有名ですが、当時はまだ軍用ではなく、民間航空会社に向けて製造されました。
このスペシャル・パイロット・ウォッチ、既に耐磁性脱進機を備えていたことが大きな特徴です。また気圧の変化を想定した飛散防止ガラスの風防、-40度~+40度での使用を想定した温度特性などといった当時のコックピット事情を加味した造りになっており、当時からIWCが優れた実用時計の作り手であったことを垣間見せるレガシーですね。
このマーク9の後継機としてマーク10(名称はW.W.W、Watch、Wrist、Water proofの頭文字)が発表され、続いて現在に続くマークシリーズの完成系と名高いマーク11が1948年についにIWC史に登場します。
マーク11より正式にこの名が用いられており、また英国空軍の飛行監視要員向けの腕時計として制式採用され、以降30年以上に渡って英国空軍で重宝されることとなりました。ちなみに「マーク」とは英国空軍が自軍の機器に用いていたナンバリングと言われています。
出典:https://www.iwc.com/jp/ja/company/history.html
マーク11は、デザイン的にも機能的にも、純然たるパイロットウォッチであり、現行マークシリーズはもちろん現行IWC パイロットウォッチの原型となります。名機Cal.89を搭載しており、シリーズ初のセンターセコンド式が採用されました。
※Cal.89・・・今なおアンティーク市場で確かな存在感を放つ手巻きムーブメントの傑作。マーク11がリリースされる前夜の1946年、アルバート・ペラトン氏の設計によって生み出された。高精度でありながらも耐摩耗性に優れ、巻き上げ効率の高さもさすがペラトン。
またパイロットウォッチの必要条件である優れた視認性を保つために、12時位置のインデックスには三角マークを、そして見やすいアラビア数字を配した文字盤が象徴的ですね。
さらに、初めて軟鉄製インナーケースを採用したモデルとしてもマーク11は知られています。スペシャル・パイロット・ウォッチでもご紹介いたしましたが、高い磁場にさらされることも少なくないコックピット内を考慮し、パイロットウォッチに耐磁性能をしっかりと備えたことに、IWCの実力と職人魂を感じさせますね。
なお、急激な気圧の変化の中にあっても堅牢性を維持するよう2ピース構造も、マーク11の特徴であり初代から続くIWCのパイロットウォッチの高性能の象徴となります。
このように、1940年代という早い段階から完成されたパイロットウォッチとして名を馳せていたマーク11。ごく少量ですが、市販もされていたようです。
その後、1994年にマーク11を復刻したマークXII(12)を民生市場に向けてリリースします。ちなみに同年、パイロット・クロノグラフもリリースされています。90年代は長い不振の時期からスイス時計業界が返り咲いていた時代であり、IWCでも様々なコレクションが追加されるに至ったのでしょう。
このマーク12もまた、マーク11の系譜を引く非常に優れたパイロットウォッチでした。
マーク12はマーク11と同様に耐磁性能や耐圧性能を有しつつも、ジャガールクルト製Cal.889をベースとして改良した自動巻きCal.884/2を搭載していることがミソ。この玄人好みの高級ムーブメントだからこそ、マーク12を追い求めているというファンは少なくありません。
ケース直径36mm、そしてジャガールクルトらしい薄型ムーブメント搭載という上品なサイズ感ながら6気圧防水を堅持しており、今なお中古市場では絶大なる存在感を放ちます。
※ちなみにIWCの耐磁コレクションとして有名なインジュニアと同レベルにあたる78,000A/mの耐磁性能をマーク12ではクリアしていたようです。JIS規格で定められる強化耐磁時計の基準は16,000A/mですので、いかに高度な性能を有していたかがおわかり頂けるでしょう。ただしマーク15以降は約24,000A/mと言われています(IWCから公表はされていません)
その後、1999年にマーク15が登場(13と14はありません)。
ムーブメントにETA製Cal.2892A2をベースとした自動巻きCal.37524(現Cal.30110)を載せることで実用性が向上し、またケース直径も38mmへとアップサイジングされました。
※左からマーク15/マーク16/マーク17
2006年には直径39mmへとアップサイジングしたマーク16が、そして2012年には41mmサイズへと拡大したマーク17を経て、2016年にマーク18の誕生へと至ります。
次項では、マーク18について解説いたします。
IWC 名作パイロットウォッチ「マーク18」とは?
基本的にマークシリーズのDNAはマーク11から引かれています。
よってマーク18も、「優れた視認性」「高耐磁性」「高い信頼性」といったIWCのパイロットウォッチらしい要素を詰め込んだ逸品となります。
とは言え、マーク17と比べるとかなり大きく変更されていると感じるかもしれません。
まず、ケース直径は40mmへと変更。前作マーク17が41mmだったので、わずかに小ぶりになったことを意味します。
またデイト窓はマーク17では3日分表示でしたが、マーク18は1日分に(ここに関しては、マーク17が個性的ですが)。
さらに12時位置の三角マークのインデックスがミニッツサークルの内側にセッティングされ、6・9アラビア数字が復活しました。これに伴い、3・6・9位置のバーインデックスがマーク17に比べて短くなっております。
個人的には三角マークの位置やアラビア数字への復活が往年のマーク15や12を彷彿とさせる意匠で、良い風合いだと感じています。
さらに言うと、これまで裏蓋は文字のみが印字されていましたが(プティ・プランスなど特別モデル除く)、新たにドイツのユンカース社製航空機Ju 52がエングレービングされております。
直径40mmサイズとスタンダードながら厚みは11mmに抑えられており、とても上品。歴代マークシリーズは装着感の良さにも定評がありますが、マーク18でもこの腕馴染みの良さをご堪能頂けるでしょう。
パイロットウォッチらしく夜光塗料がしっかり施されており、暗所での視認性にも長けています。
耐磁性軟鉄製インナーケースや6気圧の防水性といった性能面も引き続き維持しております。
なお、マーク18は2018年に型番変更が行われます。これは、ムーブメントが変わったためです。
これまではETAのCal.2892A2をベースムーブメントとしていましたが、セリタ社製のSW300へと変更。IWCはセリタムーブメントをチューンアップしたCal.35111に載せ替えを行いました。
例えば黒文字盤×レザーストラップ搭載のマーク18 Ref.IW327001は、上記のムーブメント変更に伴い、Ref.IW327009へと型番チェンジされています。
この背景には、ETAを傘下に加えるスウォッチグループが、グループ外への供給停止を宣言した問題があります。当初は2010年までに順次停止という声明でしたが、スイス連邦競争委員会(COMCO)などの調停によって2020年まで延長されました。
これを受けて各メーカーは自社や自グループで開発したムーブメントを用いたり、新たなエボーシュ(半完成品ムーブメント)サプライヤーを利用するようになりました。
セリタも、そんなサプライヤーの一つです。もともとはETAの下請け工場でしたが、独自にムーブメントを発表。ETA製同様に信頼性が高く、マークシリーズの機能美は守られていると言えます。
IWC マーク18 人気モデルを一挙公開!
最後に、IWC マーク18の各人気モデルをご紹介いたします。
もっとも構成はシンプルで、基本カラーがブラック・ホワイト文字盤。詳細は後述しますが、プティ・プランスシリーズのブルー文字盤やトップガン・ミラマーのブラウン文字盤などが加わります。
ストラップはステンレス・レザー・ファブリックの3種となっており、マーク18以降、レザーにはサントーニ社製の美しくしなやかなカーフスキンが用いられるようになりました。
なお、掲載する型番はCal.35111搭載の最新型となります。
IWC パイロットウォッチ マーク18 IW327015
ケースサイズ:直径40mm×厚さ約11mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.35111/パワーリザーブ約42時間
防水性:6気圧
定価:693,000円(税込)
ブラック文字盤×SSブレスと、ビジネスにもタウンユースにも扱いやすいマーク18です。
ちなみにブレスレットも歴代マークシリーズでブラッシュアップが加え続けられており、マーク18のやや丸みを帯びた5連ブレスはとてもしなやか。表面はサテン仕上げで落ち着きを出しつつ、サイドはポリッシュといった仕上げのコンビネーションによって、燦然と輝く高級感を醸し出します。
オールステンレスのため重量は148gほどありますが、コマが小さいため細かな調整が行いやすく、またマークシリーズ特有の優れた装着感を備えているため、すんなりと着用できるといったお声をよく頂きます。
IWC パイロットウォッチ マーク18 IW327012
ケースサイズ:直径40mm×厚さ約11mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ホワイト
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.35111/パワーリザーブ約42時間
防水性:6気圧
定価:572,000円(税込)
しなやかで美しいカーフレザーを搭載したマーク18です。爽やかなホワイト文字盤との相性は抜群ですね。
なお、現在はIWCのカタログからはなくなってしまいましたが、ホワイト文字盤にはファブリックストラップモデルもオシャレにマッチします。
マーク18のシンプルさが、様々なスタイルを受け付ける懐の深さに繋がっていると言えるでしょう。
IWC パイロットウォッチ マーク18 IW327009
ケースサイズ:直径40mm×厚さ約11mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ホワイト
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.35111/パワーリザーブ約42時間
防水性:6気圧
定価:572,000円(税込)
同じくレザータイプのマーク18です。
爽やかなホワイトも素晴らしいですが、どちらかと言うと人気の軍配はブラックに上がります。
ビジネススーツからマーク18の精悍な黒が覗かせるというのもオシャレですよね。
IWC パイロットウォッチ マーク18 プティプランス IW327016
ケースサイズ:直径40mm×厚さ約11mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.35111/パワーリザーブ約42時間
防水性:6気圧
定価:693,000円(税込)
IWC パイロットウォッチの中でも、圧倒的な人気を誇ってきたのがプティ・プランスシリーズです。
プティ・プランス(Le Petit Prince)は、『星の王子様』の原題です。IWCでは、『星の王子様』『夜間飛行』などを手掛けた作家であり、パイロットでもあったアントワーヌ・ド・サンテグジュペリ氏に敬意を表して、プティ・プランスシリーズを展開しています。
プティ・プランスシリーズの特徴は、夜空を思わせるミッドナイトブルー文字盤。そして裏蓋にエングレービングされた星の王子様です。
渋い印象の強いマーク18ですが、美しいブルー文字盤が洗練されたオシャレさを醸し出しますね。
なお、レザーストラップタイプも高い人気を誇ります。
特別感は十二分ですがレギュラーモデルのため、こちらもよく流通しています。
マーク18に遊び心が欲しい!そんな方にお勧めの一本です。
IWC パイロットウォッチ マーク18 トップガン・ミラマー IW324702
ケースサイズ:直径40mm×厚さ約11mm
素材:セラミック
文字盤:ブラウン
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.30110/パワーリザーブ約42時間
防水性:6気圧
定価:707,400円(生産終了)
やや毛色の違ったこちらのマーク18は、アメリカ海軍戦闘機兵器学校NFWS、通称 「トップガン」へのオマージュモデルです。
トップガンはパイロットのキャリア組を養成する、きわめて厳格な教育機関。IWCでは2012年より、この機関へのオマージュモデルを製造しており、トム・クルーズさんの同名映画でご存知の方も多いかもしれません。
こちらは、そのトップガンシリーズのうち、2016年に発表された一本です。
堅牢さ・精悍さを感じさせるセラミックケースがいい味ですね。
IWC パイロットウォッチ マーク18 トリビュートトゥマーク11 IW327007
ケースサイズ:直径40mm×厚さ約11mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.35111/パワーリザーブ約42時間
防水性:6気圧
定価:550,800円(生産終了)
2017年、マーク11へのトリビュートとして世界限定1948本のみ生産された、特別なマーク18がこちらです。
前述した1948年発表のマーク11をオマージュしており、いっそうの渋みを感じさせますね。
なお、ファブリックストラップが搭載されているのもミソ。ファブリックストラップは6時側・12時側それぞれのラグのバネ棒で支える一般的なストラップ構造とは異なり、この位置に引き通すようにして固定して装着するタイプです。
そのため落下のリスクが低く、第二次世界大戦下ではイギリス軍が既に用いていたと言います。
ミリタリーテイストの強いパイロットウォッチに仕上がります。
まとめ
IWCの名作中の名作、マーク18についてご紹介いたしました。
現在のパイロットウォッチに大きな影響を与えたIWCが手掛ける、不朽の名作マークシリーズのDNAを引くマーク18。実用性は言わずもがなですが、高級感や風格もひとしおですので、気になる方はぜひ一度お手に取ってみて下さいませ!試着すると、なお良いでしょう。歴代マークシリーズから連綿と受け継がれてきた、しなやかな装着感がそこにはあります。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年