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2020年の新作モデル10傑。腕時計業界で最も際立った一本とは?
最終更新日:
2020年は、多くの産業にとって「未曾有」の年でした。
まさか新型コロナウイルスによって、私たちの生活様式がこれほどまでに一変するとは、一年前には誰が想像したでしょうか。
時計業界もまた御多分に漏れず。その様式の変化が如実に現れたのが「新作見本市」です。
時計業界では例年、バーゼルワールドとSIHH(ジュネーブサロン)が新作見本市の二大巨頭として君臨してきたのですが、2020年は開催が危ぶまれました。どうしても大規模展示会となる両見本市は、「3密」の温床であったためです。
こういった背景から、ある者は泣き、ある者は戸惑った2020年。
しかしながら各メーカーは、コロナ禍に負けずに魅力的な新作を続々打ち出してくれました!
この記事では、2020年新作のうち、特筆すべき10本を厳選してご紹介いたします。
ロレックス,オメガ,ブライトリングにグランドセイコー・・・2020年、最も熱い一本はこれだ!!!
目次
2020年新作①ロレックス サブマリーナ ノンデイト 124060
出典:https://www.rolex.com/ja
スペック
外装
型番: | 124060 |
ケースサイズ: | 直径41mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | 黒 |
ムーブメント
ムーブメント: | Cal.3230 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 300m |
定価: | 854,700円(税込) |
例年、時計業界で最も新作動向に注目されるブランドと言えば、ロレックスでしょう。
しかしながらバーゼルワールドが中止(そしてあえなく廃止・・・)となったことで、新作発表の無期限延長が公表されていました。
確かに、新作発表が予定されていた4月はコロナショック真っ只中。
スイスも緊急事態宣言が発令され、ロレックスの本社工場は休業を余儀なくされていました。そのため、2020年はロレックスの新作は発表されないのではないか。そのような噂も囁かれていたものです。
ところがどっこい。
7月に突如としてチューダー(ロレックスの弟分)新作ブラックベイ58が発表され、次いで9月の新作に関する公式アナウンスが行われたのです。
そして、計4シリーズから新しいモデルが打ち出されることとなったのですが、2020年新作10傑としてまずご紹介したいのが、こちらのサブマリーナ ノンデイト 124060です!
出典:https://www.rolex.com/ja
長らくノンデイトサブマリーナのアイコンであったケースにアップデートが加えられています。と言うのも、従来のケース直径40mmから、41mmへの変更が敢行されたのです!
サブマリーナはロレックスのロングセラーの中の一つであり、最も象徴的なコレクションです。
初出は1953年。つまり、間もなく半世紀を迎えようとするコレクションで、黎明期こそ37mmサイズだったものの、1960年前後にリリースされたRef.5512(または5513)より、直径40mmへアップサイジング。その後、幾度かのモデルチェンジを経てきましたが、ケースサイズにテコ入れされたことはありませんでした。
出典:https://www.rolex.com/ja
しかしながらこの度、思い切った41mmサイズへ!
ちなみに同サイズはデイトジャストでは既に存在していましたが、スポーツロレックスでは大変珍しいことです。
なお、ケースサイズがアップデートされたことによって、ケース設計も変更が加えられました。
フォルムがより優美になったこと(リューズガードフォルムにも手が加えられている)、そしてラグも細くスマートになっていることがその概要です。このフォルムやディテールによって、サイズアップしたにもかかわらず、どこかヴィンテージ時代のサブマリーナを感じさせることとなりました。
出典:https://www.rolex.com/ja
新型ムーブメントCal.3230が搭載されていることも、この新作を語るうえでは外せないでしょう。
近年、ロレックスはムーブメントをCal.31系から32系に移行しています。
ただ、昨年まではデイト付きモデルの移行に留まっていたのですが、こちらの2020年新作サブマリーナで以て3針ノンデイトにも初となるCal.3230が搭載されることとなったのです。
他の32系同様、パワーリザーブ約70時間への延長,新しいクロナジーエスケープメント(脱進機)による高効率,ニッケル・リン合金を使用したことによる高耐磁性を獲得。外装は言わずもがな、内部も確実なアップデートが図られました。
気になる定価は税込854,700円。114060は定価832,700円だったので、2万円程の価格差ですね。
リリース当初は間もなく発売、と言われていましたが、国内正規店での購入報告はまだありません。また、恐らく生産終了と思われる114060系の相場動向と併せて気になるところ。
外観が変わると、新旧ともに買いが集中し、どちらも実勢相場を大きく上げる可能性が高いです。
今後、ますますサブマリーナは品薄モデルとして語り草になっていくことでしょう。
2020年新作②IWC ポルトギーゼ オートマティック 40mm
出典:https://monochrome-watches.com/iwc-portugieser-automatic-40-iw3583-hands-on-price/
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径40.4mm×厚さ12.4mm |
素材: | ステンレススティールまたはローズゴールド |
文字盤: | シルバーまたはブルー |
ムーブメント
ムーブメント: | マニュファクチュールCal.82200 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 約60時間 |
機能
防水: | 30m |
定価: | 797,500円他(税込) |
冒頭でSIHHについて言及させて頂きました。
これは、バーゼルワールドから離脱したカルティエ率いるリシュモングループ系の高級ブランドが、1991年に別途設立した時計新作見本市です。
バーゼルワールドと同様に、最近では従来型の経営では成り立たなくなっており、2020年にWatches & Wonders Geneve(ウォッチ&ワンダー ジュネーブ)へと改名。大幅な刷新が加えられることとなりました。
しかしながらこの新生Watches & Wondersの行く手を阻んだのが新型コロナウイルスです。
新型コロナウイルスはまだわかっていないことも多いですが、感染経路は飛沫や接触等の、人と人との間であるとされています。そのためブランドのみならずメディアや業界人が一堂に会するこれら見本市は好ましくない、とし、中止か延期が騒がれていました。
しかしながらWatches & Wonders Geneveは、敢行されます。安全なデジタルプラットフォームで!時計業界としては、初の試みとなります。
このWatches & Wonders Geneveは、大成功。
確かに時計は実機を触ってみないとわからない面が多々あります。
しかしながら現在は撮影技術や液晶の質が格段に向上しており、実機とそん色のない新作の数々を、ステイホームを守りながら楽しむことができましたね。
出典:https://twitter.com/iwc
そんなWatches & Wondersはカルティエ,ジャガールクルト,パネライ,ヴァシュロンコンスタンタンといった錚々たるメンツが居並んでいたのですが、まず取り上げたいのが、IWCのポルトギーゼ オートマティックです。
ポルトギーゼは、「IWCの中で最も成功したコレクション」と称されるほど、人気の高い逸品です。
ただ、どちらかと言うと、クロノグラフ搭載モデルの方に注目が集まるきらいがありました。2019年末には新型ポルトギーゼ クロノグラフがリリース。ファン待望の自社製ムーブメントを搭載していたことからも、依然として人気に軍配が上がっていたように思います。
しかしながら4月末に行われたWatches & Wondersをきっかけに、オートマティックからも目が離せないこととなりました。
それが、こちらの直径40.4mmモデルです!
出典:https://monochrome-watches.com/iwc-portugieser-automatic-40-iw3583-hands-on-price/
ポルトギーゼ オートマティックは、2000年に登場したラインです(ちなみにクロノグラフは1995年)。
従来はケース直径42mmがスタンダードでしたが、この度40mm台にダウンサイジングされた一本がリリースされました。
2mm程度のサイズ変更だとムーブメントは従来型と共有するブランドは少なくありません。しかしながらIWCは、渾身の自社製ムーブメントCal.82200を内部機構に据えました。
出典:https://www.iwc.com/portugieser2020/ja/site
Cal.82200は、2018年にブランド創業150周年を記念してリリースされたアニバーサリー「ダヴィンチ」にて採用されていた傑作自動巻きムーブメントです。新定番のIWCの基幹ムーブメントとして、高い注目度が集まっています。
Cal.82200はIWCらしい大型サイズで、やはりIWCが堅持してきた耐久性、そして機能性がさらに向上しています。
大きな特徴と言えば、ペラトン自動巻きを採用していること。
ペラトン自動巻きとは簡単に言うと他の自動巻き機構よりも、きわめて優れた巻き上げ効率をもったもの。腕の動きが少ないとローターが回転せず、上手くゼンマイが巻き上がらない・・・そんな悩みを解決しました。
出典:https://twitter.com/iwc
また、各パーツの素材を硬度のあるものとすることで、摩耗を低減し耐久性がより高まります。ちなみにパワーリザーブ約60時間という利便性も嬉しいところ。
なお、Cal.82200搭載に伴い、文字盤レイアウトも大幅な変更が加えられました。
従来のポルトギーゼ オートマティックは3時位置にパワーリザーブインジケーター、9時位置にスモールセコンド、6時位置にデイト窓の配置。一方の82200においては6時位置にスモールセコンドを置いて、あとは2針のみと言うスッキリとスタイリッシュな顔立ちへ。
このデザインは1993年に限定でリリースされたRef.325を踏襲しているので、それを実現するために82200が選ばれたのかもしれません。
出典:https://monochrome-watches.com/iwc-portugieser-automatic-40-iw3583-hands-on-price/
価格は797,500円(税込)と、比較的リーズナブル。自社製ムーブメントとしては珍しいですよね。
82系は量産機に当たるため、良心的な価格設定が行われたのでしょう。
高級ブランドの名作でありながらも、従来モデルと比べて背伸びの少ない価格帯。まさに2020年新作の中で、語りたい一本となる理由の一つです。
なお、こちらは既に、国内ブティックで店頭販売されています。
ラインナップは計4種。
ステンレススティールにはシルバー文字盤にクロノグラフでおなじみの青針or金針、さらにブルー文字盤が追加されています。
また、ローズゴールド製モデルのハイエンドラインも一本コレクションに加わっており、ますます今後のIWCのカタログが華やかになりそうですね。
2020年新作③ブライトリング クロノマット 42 B01 復刻モデル
出典:https://www.breitling.com/jp-en/watches/chronomat/chronomat-b01-42/
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径42mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | 黒 |
ムーブメント
ムーブメント: | B01 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 200m |
定価: | 979,000円他(税込) |
2017年より経営母体が変わったこともあり、既存モデルにテコ入れを行ってきたブライトリング。
フラグシップのナビタイマーを皮切りに、プレミエやスーパーオーシャン等で、既存ファンも新規ファンも垂涎の名作を発表し続けてきました。
そして2020年、他社と同様にコロナ禍の影響下にあったブライトリング。
しかしながら同社は、かなり早い段階でデジタルプラットフォームでの新作発表やプロモーションに力を入れていました。
もちろん実際のお披露目は各地で会場を借り切った見本市の様相でしたが、積極的に自社ホームページやSNSでも公開。また、見本市についても従来のバーゼルワールドやSIHHとは別に、独自展開をしてきたことも特徴です。
※2019年の独自サミットの様子。「Surf’s Up!」というコンセプトのもと、海沿いで行われた(画像出典:https://www.breitling.com/us-en/news/details/surf-s-up-31287)
そんなブライトリングですから、新型コロナウイルスで鬱々とした世界に、新しい風を続々と吹き込んでいます。
2020年は新作発表を制限するブランドも少なくなかったのですが、ブライトリングは全部で6種。そのうちの一つには新コレクションも含むという充実ぶりです。
中でも特筆すべきはこちら、歴史的名機・クロノマットのリバイバルモデルではないでしょうか。
出典:https://twitter.com/breitling
先ほどナビタイマーを指して「フラグシップ」と述べましたが、それと双頭を成すのがクロノマットです。
定番シリーズとして市場に出てきたのは1984年のことですが、その名前は第二次世界大戦下に誕生します。実は、ナビタイマーのプロトタイプがクロノマットと言う名前でした。
当時のクロノマットは、現行ナビタイマーに象徴される航空計算尺を備えていたのです。しかしながら「ナビタイマー」の名前がカタログに残ったのはご存知の通り。
そして後年、「プロフェッショナルのための計器」かつ「どんな過酷な使用シーンでも時計としての真価を発揮する」という、ブライトリングのコンセプトを備えた、クロノマットが登場することとなりました。
こんな歴史を持つクロノマットの、1984年の初代モデルがこの度リバイバル!
こちらの初代モデルに補足を加えると、もともとはイタリア空軍のアクロバット飛行チーム「フレッチェトリコローリ」の公式クロノグラフへの応募の一環として誕生しました。ちなみにその後、無事クロノマットは該当アクロバット飛行チームのクロノグラフとして採用されています。
出典:https://twitter.com/breitling
そんな歴史的なモデルですが、まず目を惹くのがルーローブレスレットではないでしょうか。
この筒状のブレスレットは、今ではあまり見かけないかもしれません。クロノマットでは2000年頃より前の個体に用いられていました。
また、クロノマットは誕生20周年にあたる2004年、大きくその様相を変化させます。
「クロノマット エボリューション」と名付けられた新生モデルは、従来よりもケースサイズを大幅アップ&防水性300mと、内外ともに現代的なアップデートが図られたのですが、さらにはライダータブ(ベゼルの上下左右に設置された取り外し可能なタイプのタブ)が取り払われたことです。
このライダータブも、2020年新作で再び採用されることとなりました。
まさに「原点回帰」。現在、時計業界(と言うかファッション業界全体)全体が復刻ブームで、過去作品のリバイバルモデルが各社からリリースされています。
この新作クロノマットもそのうちの一つですが、非常にヴィンテージ感溢れ、かつブライトリングファンにはたまらないデザインを携えていることがわかりますね。
この復刻ジャンルの素晴らしい点は、過去作品に思いを馳せつつも、テクノロジーは最先端ということ!
当然2020年新作クロノマットもブライトリングが誇る高度なノウハウとテクノロジーがあますことなく使われています。
例えばルーローブレスも当時のものをそのまま使うのではなく、造りや堅牢性を大幅に向上させています。
また、当初は100mに留まっていた防水性も、200mにアップ。
これらに加えて「最先端」を感じられる仕様は、ブライトリングが誇る自社製ムーブメントB01が搭載されている、ということです。
ちなみにB01はブライトリングが5年もの歳月をかけて開発・製造した、現在に至るまでの旗艦ムーブメントなのですが、初めて搭載されたのもクロノマットです。
B01は、パワーリザーブ約70時間、性能・信頼性・操作性が優れていることは言わずもがな。機械式時計にあるカレンダー操作禁止時間帯を廃止するという画期的な名機となります。
出典:https://www.breitling.com/jp-en/watches/chronomat/chronomat-b01-42/
今回登場した新作は、ステンレス以外では18Kレッドゴールドとコンビもございます。
定価はSSが979,000円、コンビが1,122,000円、レッドゴールドが1,441,000円。いずれも税込です。
出典:https://www.breitling.com/jp-en/watches/chronomat/chronomat-b01-42/
また、前述した、イタリア空軍のアクロバット飛行チーム「フレッチェトリコローリ」のために1983年に開発されたモデルのリバイバルも登場しました。
美しいブルー文字盤に、12時位置の同チームのロゴが、歴史的クロノグラフを彷彿とさせますね。
こちらは数量限定250本販売となります。
2020年新作④オメガ スピードマスター ムーンウォッチ クロノグラフ キャリバー321
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch/calibre-321/product
スペック
外装
型番: | 311.30.40.30.01.001 |
ケースサイズ: | 直径39.7mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | 黒 |
ムーブメント
ムーブメント: | Cal.321 |
駆動方式: | 手巻き |
パワーリザーブ: | 約55時間 |
機能
防水: | 50m |
定価: | 1,661,000円(税込) |
オメガ好きの中でも、とりわけスピードマスター プロフェッショナルーまたの名をムーンウォッチーに傾倒している方は少なくないでしょう。
1957年にレーシングモデルとして誕生した歴史ある銘クロノグラフであるとともに、唯一にして初のNASA公式装備品として、月面着陸に携行された歴史を持ちます。
このスピードマスターの魅力は枚挙にいとまがありませんが、その一つに「ムーブメント」が挙げられます。スピードマスター プロフェッショナルは、手巻きクロノグラフムーブメントを初代から踏襲していることが特徴なのです。
現在は自動巻きクロノグラフが主流です。しかしながら自動巻きクロノグラフが主流になったのはここ20年程のこと。
そのため1950年代に製造されたクロノグラフは手巻きです。オメガでは、その機構を「あえて」連綿と受け継いでいることとなります(プロフェッショナルモデルにて)。
余談ですが、手巻きと自動巻きどちらが良いかは好みのよるところが大きいです。
前述の通り、現在は自動巻きが主流ゆえに、各社のラインナップは手巻きの方が少ないです。そのため選択肢も限られがちだったり、手でリューズを使ってゼンマイを巻かなければならなかったりする手巻きは「不便」と捉える向きもあるでしょう。
しかしながら手巻きはローターがない分衝撃や振動に強いこと。加えて(ローターがない分)内部機構を見渡せる、機械式時計ならではのロマン溢れる機構です。
これに加えてスピードマスターが手巻きを踏襲するのは、「宇宙空間ではローターを巻き上げづらい」という背景が関係していると言われてます。
さらに、スピードマスター プロフェッショナルのムーブメントは、代々レマニア社製の機械が踏襲されています。
※レマニア社製Cal.321
レマニアとは、クロノグラフに一家言持つ老舗ムーブメントメーカー。
レマニアは早い段階からオメガにムーブメント供給を行っており、そうしてできた名機がCal.321です。「手巻きクロノグラフの最高傑作」とも称されるこちらは、初代から第四世代(~1960年代後半)のスピードマスター プロフェッショナルに搭載されました。
その後第五世代のCal.861⇒第六世代以降のCal.1861(またはCal.1863。こちらは裏スケ用)⇒Cal.3861(最新作。まだ多くは流通していない)へと進化していくのですが、Cal.321は時計好きにとっては永遠のアイドルのような存在だったものです。
そんなCal.321、2019年に復活します!
レマニアは1981年にブレゲに買収され、2007年には同ブランドに吸収合併されることとなりました。しかしながら同じスウォッチグループ同士のオメガがCal.321の金型を自社に移管し、再生産。
ただ、2019年にリリースされたモデルはプラチナ製だったため、なかなか手が出なかった方もいらっしゃったのではないでしょうか。
そして2020年発売のこちらの最新スピードマスター ムーンウォッチ クロノグラフ キャリバー321にて、待望のステンレススティールモデルがリリースされるに至りました。
出典:https://twitter.com/omegawatches
「再生産」とは言え、Cal.321の魅力を受け継ぎつつも、現代風にリファインされているのはさすが実用性に一家言持つオメガです。
Cal.321の評価の声は様々ですが、以下の3点が代表的なものです。
・機械式時計ならではの味わいが楽しめるコラムホイール式を採用(Cal.861以降はカム式だった)
・毎時18000振動のロービート設計でありながらも高精度
・コンパクトな直径27mm・厚さ6.7mmというサイズ感
こういった魅力は受け継ぎつつも、48時間だったパワーリザーブを55時間へ延長するなど、実用面では確実に進化を遂げています。
出典:https://twitter.com/omegawatches
なお、外装デザインについても、言及しなくてはなりません。
現行スピードマスター プロフェッショナルとは明らかに異なるこのデザインコードは、実は第三世代(1963年~1965年頃製造。ただし1959年~説も)の同モデルを踏襲したものです。この第三世代こそがNASAの公式装備品のためのテストを突破し、1965年にアメリカ人初の宇宙遊泳を行ったエド・ホワイト氏が着用していた歴史的モデル。
文字盤レイアウトやデザイン,ケースサイズ,ラグ,ブレスレットまで、忠実に再現されることとなりました。
出典:https://twitter.com/omegawatches
これだけスピードマスターの、ひいてはオメガの歴史やストーリーをふんだんに詰め込んだ2020年新作は、定価1,661,000円とSSスピードマスター屈指のハイエンドモデルとなっております。
ただ、スピードマスターファンの中には、狙っている方もいらっしゃるでしょう。
まだ流通しきってはいませんが、ぜひ探してみたいものです。
2020年新作⑤グランドセイコー スポーツコレクション スプリングドライブ5DAYS
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/news/pressrelease/20200305-10
スペック
外装
型番: | SLGA001 / SLGA003 |
ケースサイズ: | 46.9mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | 黒または青 |
ムーブメント
ムーブメント: | 9RA5 |
駆動方式: | スプリングドライブ |
パワーリザーブ: | 約5日間 |
機能
防水: | 600m |
定価: | 115万円(税抜) |
わが国が誇るグランドセイコー。2017年からは母体であったセイコーから独立し、その販路をさらに世界中へと拡大し続けてきました。
実は2020年は、グランドセイコー60周年に当たります。
1960年当時、まだまだ世界の時計市場に「追いつけ・追い越せ」であったセイコーが、当時の同社最高のテクノロジー・ノウハウを盛り込んだ腕時計としてリリースさせました。
以来、「国産時計の最高峰」「最高の普通」をコンセプトに、ハイエンドラインとして名作の数々を世に送り出し続けています。
そんなグランドセイコー、60周年に当たり、アニバーサリーモデルがいくつか出ています。
初代グランドセイコーのリバイバルをレギュラー化したことや、新型メカニカルムーブメントを搭載した価格450万円(!)の逸品も魅力的。しかしながら2020年新作10傑としては、スプリングドライブを搭載したダイバーズウォッチをご紹介いたします。
スプリングドライブ9Rムーブメントは、2004年に誕生したセイコー独自の機構です。
この機構の画期的なところは、「ゼンマイ」による駆動方式を持ちながらも、精度は「クォーツ」が司る、ということ。また、ゼンマイをエンジンとする時計ならではの大迫力のトルクを持つため、太く長く美しい「針」を取り付けられることも大きなアドバンテージです。
まさに機械式時計とクォーツ式時計の良いとこどりをしたメカニズムとなりますね。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/special/60th/springdrive5days/
スプリングドライブの開発は、既に1970年代には行われていたようです。しかしながら、なぜ2000年代の発表になってしまったのか。
その理由の一つに、「パワーリザーブ」が挙げられます。
セイコーのスプリングドライブ開発陣は、「約72時間」のパワーリザーブを同機に求めました。安定した駆動のために、最低限必要な時間だったとのこと。この実現がなかなかに難しく、試行錯誤の結果、二十年の歳月が過ぎてしまいました。
こういった背景からか、スプリンドライブモデルには必ずパワーリザーブインジケーターが搭載されています。
そして2020年。
なんと、新世代スプリングドライブ9RA5として誕生したムーブメントは、5日間ものロングパワーリザーブを備えているのです!
パワーリザーブを延長するやり方はいくつかありますが、グランドセイコーではツインバレル式を用いました。
これはゼンマイを内包する香箱を二つ備えるものですが、どうしてもムーブメントに厚みが出がち。しかしながら実際の9RA5ムーブメントは、既存のスプリンドライブから厚みを5.0mmに減らす(もともとは5.8mmがスタンダードだった)ことに成功しています。
これはサイズの異なる大小二つの香箱を並べることで、ゼンマイが限られたスペースで効率的なパフォーマンスを発揮しているため。また、パーツを全体的に分散させることも、薄型化に大きく貢献しています。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/special/60th/springdrive5days/
さらに言うと巻き上げ機構にも革命が加えられています。
セイコーではお馴染みの「マジックレバー」と呼ばれる巻き上げ機構を採用しており、これは両方向巻き上げが可能なローターによって生み出されるエネルギーを使用しています。9RA5ではさらにこのマジックレバーを中心位置よりもオフセットすることで、高効率を維持したまま薄型化にも成功しました。
これによってリューズの位置が低重心化されるため、快適な装着感やスタイリッシュな外観をも実現しています。
さらに、クォーツ側にもドラスティックな進化が見受けられます。これまでの月差±15秒の精度から、なんとこの新世代に至っては月差±10秒までチューンアップされたのです。
クォーツは水晶に電圧を印加すると高速振動します。この仕組みを利用しており、振動をパルス信号に変換・歯車へと伝達するIC(集積回路)が搭載されていることが普通なのですが、なんと新世代スプリングドライブには、このICに温度センサが内蔵されているというのです。
水晶は温度係数の高い素子です。そのため少しの温度変化で精度や性能に影響を及ぼす可能性があります。そこで温度センサを組み込むことで微々たる温度変化にも敏感に感応し、温度補正を行う仕組みにしました。
さらに、発振器と温度センサは一緒にパッケージングされているため、ラグがなくお互いが存分に性能を発揮できます。
ちなみに使用する水晶も、一定の電圧を人為的にかけ、経年変化を3ヶ月間与えた「エージング」をあえて行うことで、より高精度の素子を選出しているとか。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/special/60th/springdrive5days/
この時計史を大きく塗り替えるであろう新世代ムーブメントは、グランドセイコーの「ダイバー」ラインでリリースされました。
実はグランドセイコーが飽和潜水レベルを備えたダイバーズウォッチを作り始めたのは、2017年と結構最近です。
ちなみに飽和潜水とは100m以上の潜水が安全かつ長時間できるようになり、700m以上潜ることも可能となる潜水技術です。
もともと「最高の普通」がグランドセイコーのモットーであるため、オーバースペックは望むところではなかったのかもしれません。
しかしながら2017年より新生グランドセイコーが始まると同時に600m飽和潜水可能のプロフェッショナルモデルが登場。その人気はあっという間に時計市場で広がり、この度の記念すべき2020年新作でも採用されるに至りました。
デザインコードや外装スペックは2017年版に打ち出されたメカニカルハイビートモデルと大きくは変わりません。
600mという堅牢なケースはザラツ研磨で整えられ、さらにブライトチタンを用いることできわめて軽量な仕上がりとなっています。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/news/pressrelease/20200305-10
文字盤カラーは二色がリリースされることとなりました。グランドセイコーブルーとネイチャーグリーンです。
これはグランドセイコーの主力工房「信州 時の匠工房」が位置する長野県塩尻市を取り巻く自然がモチーフになります。
なお、この二本はそれぞれで限定生産です。
グランドセイコーブルーモデルが世界限定700本、ネイチャーグリーンモデルが60本となります。
今後、新世代スプリングドライブ9RA5の量産化を待ちましょう!!
2020年新作⑥パネライ ルミノール マリーナ 44mmサイズ トリロジー
出典:https://www.panerai.com/ja/panerai-luminor-watchesandwonders-2020.html
スペック
外装
型番: | PAM01117 / PAM01118 / PAM01119 |
素材: | チタン / カーボテック / ファイバーテック |
文字盤: | ブルー / ブラック / アンスラサイト |
ケースサイズ: | 直径44mm×厚さ15.6または14.5mm(後者はAM01118・PAM01119) |
ムーブメント
ムーブメント: | P.9010 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 300m |
定価: | 2,299,000円 / 1,936,000円 / 2,299,000円(全て税込み) |
その他: | それぞれ世界限定270個生産 |
IWCやカルティエとともにデジタル版Watches & Wonders Geneveを成功させたパネライも、語りたい10傑のうちの一つ!
パネライは2020年より、大人気シリーズ「ルミノール マリーナ」の刷新を図ってきており、同シリーズ内から続々と新作が打ち出されました。
なぜなら今年はルミノール70周年記念のため!
「ルミノール」とはシリーズ名ではなく、もともとパネライが商標登録した夜光塗料です。登録年は1930年でした。
しかしながら後年、この歴史的名称は「軍用時計に出自を持つダイバーズウォッチ」といった様相を呈していきました。
なぜならパネライは民生市場に打って出たのは1990年代ですが、1930年代よりイタリア海軍を始めとした軍用時計を供給した名手として呼び声が高いためです。
こういった歴史から、「パネライ=堅牢で、質実剛健で、とにかくかっこいい」といったイメージがパネリスティ(パネライファンをこう呼ぶ)の間で広まっていきました。
出典:https://twitter.com/PaneraiOfficial
そんなパネライのイメージをさらに押し上げたのがこちらの新作です。
「トリロジー」とあるように計三種のモデルがリリースされており、44mmサイズのルミノール マリーナとなっております。
しかしながら、それぞれが異なる革新素材を利用しており、前述した「パネライの堅牢な軍用ダイバーズウォッチ」というイメージを強化するに至ったのです。
それぞれをご紹介しますと、まずこちらのPAM01117。
出典:https://www.panerai.com/ja/panerai-luminor-watchesandwonders-2020.html
今では時計業界では主流のチタンを使ったモデルですが、こちらはDMLS(Direct Metal Laser Sintering;ダイレクト金属レーザー焼結システム)という3Dプリント技術を用いられています。当技術によって、チタン加工をより低コストにて実現しました。
さらにマイクロブラスト処理によって、ルミノール マリーナ特有の精細かつ精緻な造形がチタンでも実現されております。
わずか100gの重量のため、直径44mm×厚さ15.6mmというボリューミーなケースも扱いやすくなっています。
また、近年パネライが力を入れるカーボテックを採用したPAM01118。
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カーボテックはその名の通りカーボンをベースにした複合素材となりますが、製法が独特です。カーボンファイバーシートを何層にも積み重ねて生成しますが、さらに配列を交互に入れ替えます。
そうしてできたカーボンのパイをポリエーテルケトン(PEEK)とともに高圧・高温下で圧縮させます。するときわめて頑丈で腐食にも強い、まさに「最強素材」が生み出されることとなります。
2015年からパネライで開発がスタートし、SIHH2019では新生サブマーシブルに採用され、一躍話題を呼びました。
最後にご紹介するPAM01119。
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Fibratech(ファイバーテック)という、ポリマーと結合した鉱物玄武岩繊維で形成されたケース素材が特徴です。
ステンレススティールよりも60%ほども軽量で、かつ耐蝕性や耐傷性にも優れます。
こういった特殊素材ケースに加えて、さらにこのトリロジー全て、夜光塗料の使われ方が見物です!
と言うのも、文字盤や針のみならず、リューズガードや果てはストラップのステッチなどにも塗布されているのです!
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暗闇で見ると、よりその個性が際立つでしょう。
ちなみに今日パネライで使用されている夜光はルミノールではなく、「X1 Super-Lumiova」と名付けられた最新世代の塗料となります。
また、搭載するムーブメントはパネライ屈指の薄型自動巻きP.9010。パワーリザーブ約70時間、高精度と高信頼性を誇ります。
最後になりますが、2020年新生ルミノール マリーナ トリロジーの特筆すべき事項。それは、なんと驚きの70年保証が付随しているのです!
確信素材,高性能ムーブメントを使用することで、パネライは自信を持って70年保証を打ち出したのでしょう。
各270本限定生産ですのでなかなか入手しづらいですが、一度実機を見てみたい新作です。
※70年保証にはPAMガードプログラムへの加入が必要となります。
2020年新作⑦ロレックス スカイドゥエラー オイスターフレックス
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スペック
外装
型番: | 326238/326235 |
ケースサイズ: | 直径42mm |
素材: | イエローゴールド/エバーローズゴールド |
文字盤: | 黒,シャンパン,白等 |
ムーブメント
ムーブメント: | Cal.9001 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 100m |
定価: | 4,228,400円/4,383,500円(税込) |
2020年ロレックス新作の話題は、サブマリーナに一極集中しがちです。
確かにデイト・ノンデイトともに41mmサイズ&新世代ムーブメントを搭載させた「御一新」は、刮目に価するものでしょう。
しかしながら、ロレックスの新作リリースを華やがせたコレクションがあることを、忘れてはいけません。
それは、スカイドゥエラーのオイスターフレックス搭載モデルです!!
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スカイドゥエラーは、ロレックス屈指のコンプリケーションですね。
「サロス」と呼ばれる年次カレンダーを備えること。加えて中央やや下寄りのディスクで第二時間帯を表示させる機能となっていることが特徴です。
ヨットマスターIIに代表されるリングコマンドシステムによって、ベゼルで操作の制御を行えるのもユニークですね。
そんなスカイドゥエラーは、これまでケースと同じ素材を用いたメタルブレスレットが用いられてきました。
しかしながらこの度、ロレックスが特許を取得したラバーベルト・「オイスターフレックス」が採用されたのです!!
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オイスターフレックスはヨットマスター,次いでデイトナ等に搭載されてきた過去を持ちます。
一般的に販売されているラバー素材とは異なり、オイスターフレックスのラバーは「ブラック エラストマー」という豊かな弾性を持つゴム状の高分子物質がコーティングされていることをご存知でしょうか。
*エラストマー =「erastic(弾性のある)」+「polymer(重合体)」を合わせた造語
これによってラバーであるにもかかわらず、メタルブレスレットに匹敵する堅牢性・防水性が備わることとなりました。
また、「縦方向クッションシステム」によって、快適な装着感を実現していることも非常に魅力的なポイントですね。
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加えて、このオイスターフレックス、とにかく「かっこいい」のです。
ロレックスはゴールド製のハイエンドにのみ当ベルトを採用してきましたが、ラグジュアリー×スポーティーの相性の良さと言ったら!!
実際、デイトナ 116519LNやヨットマスター 126655は、金無垢モデルには珍しく品薄で、比例して相場も高めです。
スカイドゥエラー自体が魅力的な時計ですが、高価格帯であること。コンプリケーションという定番外しであることから、サブマリーナやデイトナに比べると派手な売れ筋とは言えません。
しかしながらオイスターフレックスと組み合わさることで「肩の力を抜いて楽しめるラグジュアリ―ロレックス」に昇華されており、今後幅広いファンを集めていくのではないでしょうか。
2020年新作⑧タグホイヤー カレラ ホイヤー02搭載 スポーツクロノグラフ
出典:https://twitter.com/TAGHeuer/
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径44mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | 黒,青,緑 |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | ホイヤー02 |
パワーリザーブ: | 約80時間 |
機能
防水: | 100m |
定価: | 676,500円または775,500円(全て税込) |
販売: | 2020年7月~ |
2020年、実はタグホイヤーも創業160周年を迎えました!
タグホイヤーはウブロ,ゼニス,ブルガリ等と並び、LVMHグループ傘下に属しています。
LVMHでは、「LVMH Watch Week ドバイ」と称し、2020年1月にどのブランドよりも先駆けて合同見本市を開催していました。
その頃はまだ今ほど新型コロナウイルスの脅威が世界に広がっていなかったため、ドバイにあるブルガリホテル&リゾートにて、業界人やメディアを呼んでの新作発表となりました。
しかしながらタグホイヤーは、その際には2020年新作の全てを明かしていません。
その全貌があわらになったのは7月(当初は3月を予定していたが、緊急事態宣言等の影響で延期)。そして中でも特に目を惹いたのが、フラグシップのカレラ ホイヤー02のニューフェイスです!
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もともと自社製ムーブメントにあたるホイヤー02(2019年以前はホイヤー01含む)を搭載したカレラのデザインコードは共通項がありました。
それは、文字盤をスケルトナイズしている、ということです。これによってメカ好きにはたまらない、かつユニークで近未来的なデザインを獲得するに至っています。
しかしながら2020年は、定番を決して崩さない、シンプルかつスポーティーな4種として新たに解釈されたのです。
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ブラックまたはブルー,グリーンの文字盤に、ホイヤー02のレイアウトである横目クロノグラフとなっております。
また、既存のホイヤー02搭載カレラは45mmまたは43mmがラインナップされてきましたが、こちらは44mm。ブライトリングのところでもご紹介したように、最近「ヴィンテージ」「リバイバル」が一つの流行で、その潮流の一つに「ケースを小型化する」というものがあります。
しかしながら新しいホイヤー02カレラはあくまで44mmと大型。
「モダン・スポーティー」をデザインコンセプトとしていることがわかる、「とにかくかっこいいタグホイヤー」に仕上がりました。
もっとも、2019年まではタグホイヤーの自社製ムーブメントの代表であったホイヤー01よりも、ホイヤー02は若干スリムになっていること。加えて当新作ではラグが小さめになっていることから、コンパクトな印象が強いことも事実です。
従来のカレラ通りのつや消し・ポリッシュ仕上げが融合されたケースも踏襲されているようで、カレラらしい美しいフォルムは健在です。
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
なお、タグホイヤー初となるローズゴールドをあしらったモデルが、ラインナップに加わっています!
針・インデックス・プッシャー・セラミックベゼルタキメーターメモリの印字等にローズゴールドが使用され、華やかな印象となりました。こちらはアリゲーターストラップが付属し、他の三機種はメタルブレスレット仕様となっております。
裏蓋はシースルーとなったため、従来のカレラ同様にその機械の意匠を楽しむことができますね。
定価はSSモデルが税込676,500円,ローズゴールドをあしらったラグジュアリーモデルが775,500円。
自社製ムーブメントを搭載させていることから同社の中では高価格帯に位置しますが、従来のホイヤー02搭載カレラのプライスレンジも60万円台~でしたので、突出して高すぎるということはないでしょう。
既に市場に出回っており、当店でも何度か入荷しております。
タグホイヤーらしいかっこよさ・高級感・使いやすさを楽しめる新作ですので、気になる方はぜひチェックしておきましょう!!
2020年新作⑨シャネル J12 パラドックス
出典:https://monochrome-watches.com/chanel-j12-paradoxe-and-j12-x-ray-watches-introducing-price/
スペック
外装
型番: | H6515 |
ケースサイズ: | 直径38mm |
素材: | セラミック |
文字盤: | 白×黒 |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | 12.1 |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 50m |
定価: | 865,000円(税抜) |
グランドセイコー,パネライ ルミノール,タグホイヤーと、周年記念であることをお話いたしました。
実は、シャネル J12もまた、20周年の節目を迎えます!
そうしてリリースされた新作は、ぱっと見てもわかるように、「これまでにない」腕時計に仕上がっています
新作解説の前にJ12について簡単に解説すると、ファッションブランドであるシャネルが、本格的に時計製造をスタートさせた際の処女作となります。それまでにデザインウォッチは製造しており、こちらはこちらで見事ですが、メンズ・レディース共通の本格派となるとブランド史上初。
しかしながらシャネルはお初にもかかわらず、老舗の多い時計業界において、誰もやらなかったことをやってのけ、かつ新機軸をスタンダードとすることに成功します。
それは、「セラミック」使いです。
今でこそセラミックは時計では珍しくない素材です。しかしながら2000年当時はあまり使っているブランドは見られませんでした。セラミックは加工・切削がきわめて難しかったこと。加えて「セラミックをデザインとして使う」など、なかなか出てこない発想ですよね。
そこへきてシャネルは、ケースとブレスレット全面にセラミックを採用するという、驚きの概念を市場に送り込んだのです。
この試みは大成功。
J12は今なお続くヒット作になるとともに、セラミックが時計業界の一つのデザインコードとして確立しました。
出典:https://www.chanel.com/ja_JP/watches-jewelry/watches/the-watch-j12
そんなJ12の20周年を記念する新作モデルが、こちらのバイカラーモデル「パラドックス」です!
創業者ココ・シャネル氏は、黒と白をブランドカラーとして非常に大切にしてきました。このブランドカラーを同時に使うという快挙に出た形です!まさに「パラドックス」の名前を冠した通りですね。
3分の2をホワイトセラミック、残りをブラックセラミックで彩りました。
前述の通りセラミックは、その切削・加工の難しさにあります。それは今の技術で以てしても変わらないこと。
にもかかわらず、異色のセラミック同士を組み合わせてしまうところに、シャネルの技術力の高さを実感して止みません。
ちなみにこの偉業を実現しているのは、1993年以来、シャネルと付き合いのあるスイスのケース専門メーカーG&Fシャトラン社となります。
パッド印刷(パッドプリント)という手法を用い、二次転写に及ぶ作業を行ってキッチリとした境目が作られております。
出典:https://monochrome-watches.com/chanel-j12-paradoxe-and-j12-x-ray-watches-introducing-price/
ムーブメントは2019年にリリースされた、シャネル渾身のマニュファクチュールムーブメント12.1を搭載しております。
こちらは昨年、非常に大きな話題になりました。
と言うのも、シャネルが「ケニッシ」というムーブメントメーカーの株式20%を取得するうえで成り立ったマニュファクチュールなのですが、このケニッシはチューダーとブライトリングにも供給していた企業だったためです。
当然チューダー・ブライトリングのムーブメントそれぞれが、畢生の出来栄えであることは間違いありません。
そのためシャネルの12.1も、COSC認定機&28,000振動という高精度と信頼性を有しており、実用性がいや増しました。
今回の新作は、定価税抜き865,000円とのこと。
一見すると奇抜ですがそこはシャネルのマニッシュなデザインが活きているため、どんなファッションにも合わせやすい一本となることでしょう。
2020年新作⑩オーデマピゲ CODE11.59 新カラー&コンビモデル
出典:https://www.audemarspiguet.com/ja/
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm |
素材: | ピンクゴールド,ホワイトゴールド,PG×WG |
文字盤: | シルバー,ブルー,バーガンディ等 |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.4302/Cal.4401(クロノグラフ) |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
定価: | 3針が3,080,000円(税込) |
最後にご紹介するのは、オーデマピゲが新たなるコレクションとして2019年にリリースしたCODE11.59の、美しくもユニークな新モデルです!
オーデマピゲと言うと、ロイヤルオークがまず思い浮かぶことでしょう。事実、当店の売れ筋もロイヤルオークに偏る傾向にあります。また、オーデマピゲ自身も「新作」と言えば、ロイヤルオークに力を入れていたようにも思えます。
しかしながら2019年、その「イメージ」は覆されました。
CODE11.59と銘打って、これまで誰も見たことのないような見事なモデルがレギュラーとして登場したのです。
出典:https://www.audemarspiguet.com/ja/
ちなみにCODE11.59の名称は、下記のような意味があります。
曰く、
CODEのCは職人魂の限界への挑戦(Challenge the limits of craftsmanship)
Oはブランド遺産の所有(Owing the Brand’s legacy、歴史があるということ)
Dは恐れずにブランド理念に従う(Daring to Follow Firm Convictions)
Eは進化(Evolving)
そして11.59は、日付が変わる直前を示唆している、とのこと。
この錚々たる名前を冠したモデルは、「全く新しいケース」「全く新しいムーブメント」を携えました。
すなわち、ラウンドケースと思いきや、ミドルケースがロイヤルオークの象徴でもあるオクタゴンになっていること。加えて風防が微妙に湾曲していること(12時から6時位置にかけて垂直に湾曲していますが、内側はドーム型になっており、光の加減によって波状に表情を変える仕様に)こと。
さらにはオーデマピゲが「5年」の歳月をかけて開発したという、自社製ムーブメントが携えられていたことは、今なお驚きを以て伝えられているものです。
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そんなCODE11.59、新たに10モデルが追加されました!
3針およびクロノグラフで、それぞれ5リファレンスずつが発表されています。
さらにバーガンディ(ワインレッド),グレー,シルバー,パープル,ブルーの計5色が追加され、目で見て楽しいラインナップとなりました。
出典:https://www.audemarspiguet.com/ja/
また、オーデマピゲでは珍しく、コンビモデルが採用されていることも2020年新作で特筆すべき点です。
しかも、よくあるSS×ゴールドではなく、ピンクゴールド×ホワイトゴールドのコンビネーションモデル!
出典:https://www.audemarspiguet.com/ja/
こういったバリエーションの意欲的な追加からも、オーデマピゲがCODE11.59に情熱を込めている様が伺い知れますね。
昨年発表のモデルと併せてじょじょに市場に流通してきています。本当に見事な時計ですので、ぜひ一度実機をお手にとってみてください!
まとめ
2020年、時計業界でひときわ輝く新作10傑をご紹介いたしました!
冒頭でもご紹介した通り、何かとイレギュラーが多かった新作発表の場ですが、本当に各社名作ばかりを発表してくれて、新型コロナウイルスに負けない、時計業界の明るい未来を垣間見た思いです。
なお、本稿でご紹介した新作以外にも、まだまだ語りたいモデルはたくさん!
既に流通が始まっている個体も少なくないので、当店でも入荷次第、ホームページにアップしていきます!
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年