ドイツを代表する老舗時計ブランド、ユンハンスは歴史あるブランドとして時計界に多くの秀作を輩出してきました。
しかし、販売価格帯が低い事もあり、「恥ずかしい」と感じる人もいるようですが、ユンハンスの時計を付ける事は決して恥ずかしい事ではありません。
この記事ではユンハンスが恥ずかしくない理由について詳しく説明していきます。
また、似合う年齢層などについても解説していきますので、ユンハンスが気になっている人はぜひ最後までお読みください。
目次
ユンハンスの時計が恥ずかしくない理由
ユンハンスの時計が恥ずかしくない理由とは一体何か。ユンハンス好きな人にとっては改めて語る必要はないと思いますが、これからユンハンスをセレクトしたい人に向けて分かりやすい視点で説明していきたいと思います。
クラシカルな上品さがある
一度でもユンハンスの時計を見たことがある人はご存じでしょうが、ユンハンス時計にはクラシカルな上品さがあります。ラウンドのケースにドーム型の風防で、視認性に優れ、文字盤のカラーはモノトーンが多いことが特徴です。
インデックスはバーとアラビア数字が基本で、針もバータイプで統一して控えめでシックな印象になります。他のブランドで見られる装飾的な要素はほとんどありません。
派手さはありませんが、上品さがあるため、飽きが来なくどんなシーンにも使える魅力を兼ね備えています。
100年以上の歴史と伝統がある
画像引用:ユンハンス公式HP
ユンハンスは100年以上の歴史があるブランドです。
創業は1861年と古くスイスの名門ブランドと比較しても遜色ない伝統を持っています。その年代だと、スイスブランドでは、タグホイヤーとショパール(共に1860年創業)と同じ年代です。
その2社と同じ歴史を持っているのに知名度やブランドイメージが劣るのはスイスブランドの方が国を挙げて時計産業を支援したり、マーケティング戦略が優れていた事が考えられます。
相対的にスイスブランドの影になってしまっていただけの事でしょう。
しかし近年はドイツも時計産業の支援に力を入れています。スイスほどではないにしろ、特に地域毎にフォーカスしたプログラムを実施しています。シュヴァルツヴァルトでも、ユンハンスのようなトップ企業が率先して業界を牽引していることが特徴です。
特に若手の技術者育成には積極的に貢献しています。
ユンハンスが持つ100年以上の歴史と伝統があるからこそ、シュヴァルツヴァルトの同業者だけに留まらず、ドイツ時計業界全体を牽引しているのでしょう。
洗練されたデザインと丁寧な作り
画像引用:WIKIMEDIA COMMONS
またユンハンスを語る上でもう一つ欠かせない事が優れたデザイン性です。前述したように装飾的な要素が少ないドイツらしい「質実剛健さ」もユンハンスの魅力でしょう。品質も高く、丁重な造りにも定評があります。
ユンハンスのデザインの優位性は20世紀に入ると、著名な建築家マックス・ビルとのコラボにより生まれた時計、「マックス・ビル」が誕生した事により頂点を極める事となりました。
彼は時計にバウハウスのデザイン哲学を取り入れました。
バウハウスとは?
画像引用:WIKIMEDIA COMMONS
バウハウスとはドイツ1919年から1933年までにドイツで生まれたデザイン専門の美術学校で、徹底した合理主義、機能主義を探求した手法を取り入れていました。工芸・写真・デザインを総合的な教育を行う学校として多くの優れた著名デザイナーを輩出しました。
ただ残念な事に、当時のナチスからの迫害を受けて1933年に閉校、その後卒業生と教授陣の多くはアメリカへ逃れました。
しかし、そこでも卒業生や教授陣達は、バウハウスの哲学を伝授してゆきます。そのため現在もアメリカとドイツ双方で、バウハウスの理念は継承されて美術に携わる人たちからは「伝説の名門校」として高くリスペクトされています。
ユンハンスは1832年創業のスイスの時計メーカー
ユンハンスの歴史
ユンハンスは1861年にエアハルト・ユンハンスとその義理の兄弟によって設立されたブランドです。ユンハンスは当初、時計部品の製造から始め、その5年後には完成品の時計を製造するまでになります。
急成長した理由は当時のドイツの会社組織がしっかりしていた事と、もう一つ大きな理由が人件費の安さでした。その二つの理由を追い風にしてユンハンスの黎明期はアメリカ向けの輸出で会社が大きく発展していきます。
ユンハンスが発祥した地は、ドイツの南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州の山岳部の森林地帯にあるシュヴァルツヴァルトです。森林地帯ゆえに当初は木材を使用した時計が、製造されていましたが、より耐久性の高い金属を使った時計製造に移り変わっていくのです。
主に生産していたのはクロック(置き時計)で、地域の木材資源と新たな金属製のパーツを組み合わせた鳩時計を大量生産する事にも成功して、世界クラスの時計ブランドへと拡大していきます。
その後順調に成長を続けたユンハンスは、1909年には従業員3000人以上、年間300万個の生産数を誇るまでになります。しかし、そんなユンハンスの急成長に影を落としたのは、ドイツが敗戦国となった2度に渡る世界大戦でした。
画像引用:WIKIMEDIA COMMONS
第二次世界大戦で敗戦国であったドイツ国内の主要産業は戦争による甚大な被害を受けた企業が多かったのですが、シュヴァルツヴァルトは運良く大きな被害を逃れたため、時計生産再開には大きな影響はありませんでした。
しかし、1950年代に入るとユンハンスは国際競争の激化によって会社を売却します。結果論かも知れませんが、この決断は決してネガティブな売却では無かったかも知れません。
ユンハンスは会社の売却によって過去の伝統だけに固執せず、新しい物を積極的に取り入れる急伸的な会社へとなっていきます。20世紀に入りユンハンスは伝統的な機械式時計だけでは無く、クォーツ時計や電波時計も発売するようになりました。
また1990年代には、ソーラー時計も世に送り出すなど、100年以上の歴史ある時計ブランドとは思えない最新技術を追求するエレクトロニクス企業並みのテクノロジーを取り入れます。
2000年代に入っても最新技術への探究心は衰えず、現在はスマートウォッチの分野にも進出しています。ただ、伝統的な機械式時計も近年はヘリテージモデルをリリースして、時計総合メーカー的な側面も見せています。
ユンハンスの時計はどの年齢層に人気がある?
主に20代から30代前半に人気
ユンハンスの時計が人気ある年代は、主に20代から30代前半だと言われています。
これは、ユンハンスの時計が持つシンプルかつ上質なデザインにある事が大きいと言われています。
ただ、シンプルでシックなデザインだからこそ、様々な服装やシーンにも相性が良いと言われるゆえんです。
ユンハンスのデザインは流行に左右されない、普遍的なデザイン。年齢的にも新社会人、もしくは社会人になって間もない世代には、あまり「オジサン」ぽく無く、センス良く見えるデザインゆえに、オシャレ男性には嬉しい時計です。
もう一つ付け加えるなら、値段がリーズナブルである事も見逃せません。
ミドル世代と違い20代から30代前半世代はまだ、経済的には決して恵まれているとは言えないでしょう。
お財布に優しいユンハンスに目が無いのも「イマドキ男子」でしょう。
ただし、時計というものは年齢でくくれるほど単純なものではありません。もちろん30代後半以降のメンズにもユンハンスは選ばれています。
ユンハンスを愛用している有名人
堺雅人さん
高い演技力で定評のある堺雅人さんは、マックス・ビル クロノスコープRef.027 4600 00を付けている姿が、ドラマ「Dr。倫太郎」の中で演じていました。ドラマでは精神科医という役柄で、白衣でのシーンが多くありました。
白衣とマックスビルは相性が抜群です。少しクールでヒンヤリとも感じる外観もドクターにはピッタリ。巨匠デザイナーが自らをモデル名に冠したマックス・ビルは、それを付けるだけでも充分に満足できる時計です。
加藤浩次さん
堺雅人さんに続き、加藤浩次さんも「マックス・ビルクロノスコープRef.027 4600 00」をドラマ「ブラックペアン」で着用しているシーンが放映されました。加藤さんのドラマでの役柄は「医療ジャーナリスト」という権威がある役柄を演じていたのです。
影のキーマン的な役割で役柄にマックスビルは、マッチします。ドイツ時計らしい実利的な外観で、冷静、時には非情に物事を進めるキャラクターにマックス・ビルは、ピッタリかも知れません。
宮迫博之さん
芸能界きっての時計通と知られる、宮迫博之さんは私物時計としてユンハンスの時計をコレクションしています。モデル名は「マックス・ビル クロノスコープRef027 4500 45」です。これは調べたところ、唐沢寿明さんから教えてもらったとの事。
宮迫博之さんのコレクションの大半は数百万円以上のモデルが大半の中、ユンハンスのようなリーズナブルな価格のモデルが彼のコレクションに加わるのは異例だと感じます。恐らく、この時計が持つエレガントなデザインが宮迫さんの琴線に触れたのでしょう。
実際本人もインタビューの中で「ドーム型のノスタルジックな風防がときめく」とコメントしているように、クラシックかつ上品なデザインに惹かれた一人なのでしょう。
そうそうたる彼のコレクションの中に加わるほど、ユンハンスは素晴らしい魅力を持つブランドだと言えるでしょう。
唐沢寿明さん
前述した時計通の宮迫博之さんにユンハンスを紹介した唐沢寿明さん、彼が着用しているのは宮迫博之さんと同じ「マックス・ビル ユンハンス クロノスコープRef027 4500 45」です。これも宮迫博之さん同様に私物時計と言われています。
このモデルの特徴であるドーム型風防と併せて、ミラネーゼのストラップも忘れてはいけません。メッシュとも呼ばれるミラネーゼブレスレットの良さはしなやかで、通常の三連ブレスレット(ロレックスのオイスターブレスレット)よりも腕にフィットします。
さながらファブリックス(布製)のようなしなやかさで、日本のような高温多湿気候の地域でも問題なく付けられて、水洗いもできます。まさにドイツ製品らしい実用性を追求した時計です。
松坂桃李さん
松坂桃李さんは、元々「戦隊シリーズ」の番組でブレークした実力派俳優になります。そんな彼は警視庁の機動捜査班という、現代的な犯罪の捜査にあたる役でした。着用していたのは「マックス・ビル Ref.027 4701.00」です。
マックス・ビルは実用的な外観ゆえに、お固い仕事用時計と芸能界では思われているのかも知れませんね。それ以外にこの時計の良さは付けている事を感じさせない時計である事も見逃せません。
デスクワーク用の時計と違い、屋外メインで働く人たちに求められる時計は、軽さでありフィット感です。だからと言って野暮ったい時計は避けたいものです。そんな人たちにはユンハンスのようなセンスが良い時計はピッタリだと思います。
ユンハンス人気モデル
さてここまで紹介してきたユンハンスというブランドの中から3点、おすすめの人気モデルを紹介します。購入や検討の際、ぜひ参考にしてください。
以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
マックス・ビル バイ ユンハンス Ref.027 4700 00
ドイツで生まれた伝説の美術大学「バウハウス」の卒業生で、建築家でもあった巨匠、マックス・ビルの名前をそのまま冠したこのシリーズは、ユンハンスのアイコン的モデルと言って良いでしょう。
そのシリーズの中でも別格なモデルがこのRef.027 4700 00です。モノトーンカラーで統一され、黒い細い線だけで引かれたアラビア数字のダイアルは一見すると何の変哲もない文字盤として目に映る筈です。
しかし、遠目に見ても近くに時計を引き寄せても数字と時間が一瞬で読み取れるデザイン力は、時計の視認性を徹底的に計算しつくした物、だと理解できます。モノトーンで色を統一して尚且つ、数字とロゴをバランス良く配列させ見やすくするレイアウトは神業です。
腕時計の場合、狭い直径40㎜前後の中に時間や日付の情報を直観的に読み取れるように工夫して記さないと、我々ユーザーは途端にストレスを感じます。そのため工業デザイナーは様々な創意工夫をしてユーザーにストレスを感じさせないデザインを施すのです。
ノスタルジックなドーム型風防とモダンな直線のバーハンド(針)は、相反する物になります。しかし、その相反するデザイン要素を工業製品として調和させるデザイン力は、神業です。
マックス・ビル自身が1961年に残したデザインスケッチをそのままに再現したこのモデル、恐らく風防の素材はプラスチックから、サファイアクリスタルへと移り変わっているはずです。
しかし、マテリアルの変化にも耐えうる力強いデザインは、半世紀を超えても生き続け、これからも後世へと継承されていくと思います。この事が前述した「バウハウス」のデザイン哲学なのかと実感できる、アイコニックなモデルです。
マイスターパイロット Ref027 3591 00
画像引用:ユンハンス公式HP
マイスターパイロットRef027 3591 00はこれまで紹介してきたユンハンスのモデルとは違います。12角形のベゼルに弧を描くくぼみを入れた、ある意味ユンハンスらしくない主張の強い外観が特徴です。
針もペンシルタイプを採用しており、本当にユンハンスと思わせるフェイスダイアルを持っています。しかし、これもパイロットウォッチと言えば納得がいくでしょう。
大きめのクロノグラフプッシャーは恐らくパイロットグローブを装着した事を想定しているためこの大きさになったと考えられます。同じくベゼルのくぼみも厚手のグローブを付けても操作できるように配慮したとされています。
1955年にドイツ空軍へ支給していたモデルで、与圧が無い戦闘機パイロット用の腕時計の復刻版です。このようにユンハンスは現代風のデザインだけで無く、ヴィンテージモデルもラインナップされています。ユンハンスの製品ラインナップの奥深さを体感できるモデルです。
フォーム メガRef 058 4931 00
画像引用:ユンハンス公式HP
ユンハンスの伝統であるシンプルな外観を採用して、中身には電波時計ムーブメントを採用しています。ユンハンスは歴史ある伝統時計ブランドでありながら、最新技術の導入にも積極的な時計ブランドです。
電波時計の良い点は時間調整が一切不要である事が、挙げられます。元々はクロック用として採用されていた技術を、ユンハンスは電波腕時計として商品化して、1990年に世界に先駆け発売した事でも有名です。
伝統に固執せず、常にユーザー目線で使いやすく精度の高い腕時計を世に送り出すという企業姿勢を、ユンハンスは決して崩していません。また電波時計と感じさせないシックな外観も魅力的です。
まとめ
ユンハンスはドイツ工業製品らしい、高品質で丁重な製品造りで定評があり、100年以上の歴史を持つ名門時計ブランドです。またデザインもドイツの伝説の美術大学、バウハウスからの影響を強く受けた優れたデザイン手法で、多くの人たちから支持されています。
そのため決して「ユンハンスが恥ずかしい」と感じる必要は全くありません。
世界中で多くの人たちが身に着けている時計を持つ事は誇りでもあります。様々なシーンで使えるユーティリティーな時計です。外観のセンスも良く、世代を超えてつける事ができます。
それでいて、コスパにも優れているものは、なかなか見かけません。ぜひユンハンスを恥ずかしがらずに身に付けてください。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年