シンプルで上品な腕時計が欲しい・・。そんな人にオススメしたいのが「ノモス(NOMOS) グラスヒュッテ」です。
ノモスはドイツのグラスヒュッテに生まれ、バウハウス調のシンプルが美しいドイツを代表する一流時計メーカーです。 グラスヒュッテレーベルの時計メーカーとして高度な技術をもつノモスの時計は、リーズナブルな価格も相まって近年人気と知名度が高まっています。
第二次世界大戦により一度は経営を休止するなど、歴史に翻弄されながらもグラスヒュッテの伝統を守り、そして新たな価値を作り出したノモス。
今回はそんなドイツ・グラスヒュッテの一流メーカー「ノモス」の魅力をご紹介していきます。
目次
グラスヒュッテから始まったノモスの歴史
出典:https://nomos-glashuette.com/
かつてドイツ・グラスヒュッテには「ノモス」という時計メーカーが存在しました。
1906年にグイド・ミュラー氏によって創立された名門時計メーカー「ノモス」ですが、第一次世界大戦による国内情勢の混乱により、1910年にメーカーは廃業してしまいます。
「ノモス」とはギリシア語で「秩序と法」という意味であり、廃業してしまった「ノモス」の思いを引き継ぐ形で現在のノモスが誕生したと言われています。厳密に別会社として区別するため、現在のノモスの正式名称は「ノモス グラスヒュッテ」です。
時計産業の町 グラスヒュッテとノモス
グラスヒュッテは東部ドイツのドレスデン近くに位置し、森と丘陵に囲まれた人口7000人ほどの小さな町です。もともとグラスヒュッテは鉱山を主産業としていましたが、徐々に鉱山資源が採掘できなくなり町は徐々に衰退の一途を辿りました。
町の存亡が危ぶまれる中、18世紀半ばにドイツ時計の最高峰「ランゲ&ゾーネ」の創業者「アドルフ・ランゲ」はグラスヒュッテに時計工房を開き、高度な時計製作技術を町に広めました。グラスヒュッテには鉱山資源を利用した精密機械会社が多く、時計の一貫生産が可能であったことから、鉱山の町であったグラスヒュッテは瞬く間に世界有数の「時計産業の町」として発展を遂げていきました。
時計の町としての「伝統と技術」は着々と後世に受け継がれ、グラスヒュッテは時計業界において最高の地位を占める町となります。そして、1906年。時計の町グラスヒュッテに「ノモス グラスヒュッテ」は数名の職人という小規模ながら時計メーカーとして誕生しました。
事業の閉鎖と再興
グラスヒュッテの高級時計メーカーとして順調に成長を続けてきたノモスですが、第二次世界大戦を切っ掛けに長い事業閉鎖状態に陥ってしまいます。他のドイツ時計メーカーも事業閉鎖を余儀なくされ、戦争はドイツの時計業界に大きな爪痕を残しました。
閉鎖状態は西ドイツで当時デザイナーとして活躍していた「ローランド・シュヴェルトナー氏」が東西ドイツが統一された後にグラスヒュッテに渡り、1992年に新しいノモスとして再興されるまで続きました。
新たに生まれ変わったノモスは創業者ローランド・シュヴェルトナー氏の元、「シンプルな美しさ」を追求し、一流時計メーカーとして再興を果たします。現在でも1番人気のモデルである「タンジェント」を中心とした人気デザインに、グラスヒュッテの時計技術を融合させたノモスの「新時代の時計」はドイツを代表する高級時計として評価されていきました。
出典:https://nomos-glashuette.com/
シンプルで緻密、ノモスの魅力
現在多くのファンに愛されるノモスの時計。ノモスの時計には「シンプル・機能的・リーズナブル」という3つの大きな魅力があります。特にデザインの美しさは世界に認められ、 国際的プロダクトデザイン賞「レッド・ドット・デザイン賞」をはじめ、国内外で数々の賞を受賞しました。
飽きのこないシンプルで上品なデザイン
機械式腕時計はその構造から、どうしても時計自体が「大きく、複雑」になりやすい性質があります。しかしノモスは「複雑」なものを排除し、シンプルな美しさに拘った飽きのこないデザイン性を生み出しました。幾度進化を遂げても決して変わらないシンプルなデザインにはノモスの強い信念を感じることができます。
シンプルな上品さが特徴のノモスの時計ですが、グラスヒュッテ伝統の高い技術力によって作られた精密なムーブメントのことも忘れてはいけません。ノモスのタンジェント・スポーツを除く全てのモデルはシースルーバックになっており、「ノモスオリジナルムーブメント」の魅力もしっかりと感じることができます。
ノモスのムーブメントからは第二次世界大戦後をキッカケに長く途絶えてしまったグラスヒュッテの「伝統と高度な技術力」を何としても復刻されたいという強い気持ちが感じられます。シースルーバックのモデルが多いのは、グラスヒュッテの伝統を大切にしているからではないでしょうか。
高い視認性は最大の機能性
ノモスの時計はシンプルなデザインを特徴とすることから、複雑な機構は組み込まず「視認性」を最大の機能性とする拘りをもっています。インデックスの大きさや文字の細部にまでも拘り、誰もが見やすく美しい時計を追求しました。青焼きされた針もその美しさを引き立たせてくれます。
左:クラブ オートマティック デイト 右:アホイアトランテック
リーズナブルな価格
ノモスの時計は高級腕時計を初めて購入する人にもオススメできるリーズナブルな価格設定が魅力です。高精度のオリジナルムーブメントを搭載しているにも関わらず、フラッグシップモデルであるタンジェントは20万以下のいう非常にリーズナブルな価格。24時間工場を稼働させ「量産体制を徹底する」「無駄な広告はしない」「共有パーツを多く使用する」「シンプルな機構を利用した組み立ての簡略化」などの経営戦略がリーズナブルな価格を生み出しているのです。
ノモスのリファインムーブメント
出典:https://www.facebook.com/NomosWatches/
1992年に再興したノモスは、当初ETA社のPeseux 7001を改造し金メッキ加工したムーブメントを使用していましたが、2005年にムーブメントの自社開発に成功し、以降ムーブメントの自社開発に 強く力を入れています。
2007年にはドイツの高級時計店向けに「トゥールビヨン」を搭載した複雑なムーブメントを製作し、高い技術力を証明しました。
ノモスの時計は全て機械式時計。ムーブメントは現在自社生産率が80%を超える「ほぼオリジナルムーブメント」です。ノモスのムーブメントの最大の特徴としては、いくつものパーツを組み合わせて作る「リファインムーブメント」であること。各パーツの加工・製造を繰り返し、ノモスのデザインに最適な 「オリジナルムーブメント」を作り上げました。完全マニュファクチュールに向けての開発も現在進んでいます。
グラスヒュッテ・レーベルとは
ノモスのムーブメントにはグラスヒュッテの名がダイヤルに入っています。グラスヒュッテの名を入れるには「ムーブメントの50%以上をグラスヒュッテで手がけている」ことが原則で、グラスヒュッテの伝統を守るルールとして定められています。
革新的でありながらも伝統的。
ノモスには数多くのムーブメントが存在しますが、そのどれもが美意識に優れた仕上がりです。
手巻きムーブメント NOMOS α
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ノモス初の自社製ムーブメントNOMOS α。ノモスの主力商品「タンジェント」のムーブメントとして長く使用されている手巻きムーブメントです。厚さ2.6mmとムーブメントを薄くすることでケースの肥大化を防ぎ、シンプルで綺麗なノモスのデザインを作り上げることに成功。現在はラドウィグ、テトラ、オリオン、クラブ、33シリーズのすべてのモデルの動力源となっています。
DUW3001
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2016年に発売されたノモスの拘りを強く感じることのできるムーブメント。特徴は「NOMOS α」より8mm厚くなりましたが、性能が格段に向上したことです。摩擦を減らすための素材変更、薄型ムーブメント特有のトルクの弱さの解消などに着目し、改良を加えました。
革ベルトへの拘り ~コードバンストラップについて~
ノモスの腕時計は全て革ベルトを使用し、革は農耕馬のお尻の部分の皮「コードバン」が採用されています。コードバンは1頭から1割程度しかとれない非常に貴重な革です。普段から鞭で打たれて過ごしていたことによる繊維組織の丈夫さ、そしてタンニンなめしによる独特の光沢をもつことが特徴として上げられます。
一般的に高級腕時計ではクロコダイルレザーが使われることが多いですが、あえてコードバンを純正ベルトに選んだことにノモスの革に対する拘りを感じることができます。
ホーウィン社のコードバン
ノモスの革ベルトはアメリカのタンナー(HORWEEN社)の厳選されたコードバンを使用しています。ホーウィン社の歴史は古く、2005年に100周年を迎えた伝統のあるタンナーです。欧米の中でも最高級の皮革を作る事で、世界にその名を知らしめました。代表的な革は「シェルコードバン」と「クロムエクセルレザー」の2種類で、ノモスでは「シェルコードバン」を革ベルトとして使用しています。
ホーウィン社のコードバンは手作業による着色、艶出し、仕上げが行われており、全作業を完了するまでおよそ6か月かかります。長時間かけたコードバンは、オイルがたっぷりと入っていて、しっとりとした手触りです。
また、使えば使うほど独特の光沢を放ち、経年変化をじっくりと楽しむことのできる非常に育て甲斐のある魅力的な革です。現在コードバンを扱うタンナーは世界に2社しかなく、1社はノモスで使われているアメリカのホーウィン社。もう1社は日本の姫路にある新喜皮革です。
ライニング(裏地)にはホーウィン社の刻印の一部が残っており、1つ1つ裏面が異なるところも味わいの1つです。
買うならコレ!ノモスの定番人気モデル
ブランドのロゴ同然の役割を担う「タンジェント」を中心に、ノモスの時計には複数の人気モデルが存在しています。どのモデルもシンプルで美しいノモスの魅力がつまったモデルばかりです。
薄い時計が欲しい。知的に思われたい。上品な時計が欲しい。
どなたにとっても最高の選択肢となるでしょう。
ノモス タンジェント38 TN1A1W238(164)
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
ケースサイズ:直径38.omm
全重量:45g
ムーブメント:キャリバー アルファα
パワーリザーブ:約42時間
防水性:30m
ノモスの代表的なモデル。シンプルな3針で偶数にアラビア数字が使われた「飛びアラビア」インデックスの美しいデザインです。ガラスもケースもフラットで、薄さも特徴的となっています。現行モデルは38mmモデルですが35mmも存在し、どちらも人気です。 パワーリザーブ付モデルやデイト付きモデルもラインナップされており、近年はカラーバリエーションの開発にも力が注がれています。
ノモス タンゴマット TN1E1W2(601)
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
ケースサイズ:直径38.omm
全重量:59g
ムーブメント:自動巻き DUW3001
パワーリザーブ:約42時間
防水性:30m
タンゴマットはタンジェントの派生形モデルです。手巻きムーブメント「NOMOS α」を使用していたタンジェントに対し、タンゴマットはムーブメントにDUW3001を採用した自動巻きモデル。 ムーブメントの若干の大型化により、タンゴマットはタンジェントよりもケースサイズが3mmほど大きくなっており、厚みも2mmほど増しています。 ただ外観上の違いはほとんどなく、ムーブメントの違いが両モデルの違いです。
ノモス ラドウィグ38 LD1A2W238(234)
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
ケースサイズ:直径38.omm
全重量:44g
ムーブメント:キャリバー アルファα
パワーリザーブ:約42時間
防水性:30m
アラビア数字を採用したタンジェントに対してラドウィグはクラシカルな魅力を感じるローマ数字・はしご目盛りを採用した上品なモデルです。
ケースのエッジが丸みを帯びていることも特徴的で、タンジェントやタンゴマットにはない美しさを醸し出します。
ノモス オリオン38 OR1A3GW238(384)
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
ケースサイズ:直径38.omm
全重量:47g
ムーブメント:キャリバー アルファα
パワーリザーブ:約42時間
防水性:30m
オリオンはバータイプの立体的なインデックスを採用しています。ドーム型で曲線を意識したデザインが最大の魅力で、ノモスの社内デザイナーはほぼ全員この「オリオン」を着用しているほどの人気モデルです。ノモス基本モデルの中では約8mmの一番厚みのあるモデルで、何方にでも合わせやすいデザイン性となっています。
ノモス テトラ27 TT1A1W1(401)
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
ケースサイズ:直径38.omm
全重量:39g
ムーブメント:キャリバー アルファα
パワーリザーブ:約42時間
防水性:30m
ノモス唯一のスクウェア型モデル。インデックスのフォントが他のモデルと比べテトラは若干違い、装飾が少ないモダンな仕上がりになっています。ノモスの基本モデルの中では一番ケースサイズが小さく設計されており、 女性向きモデルです。ちょっと変わった時計をお探しの方によく選ばれます。
ノモス チューリッヒ ZR1E3BR2(823)
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラウン
ケースサイズ:直径39.7mm
全重量:64g
ムーブメント:キャリバー イプシロンε
パワーリザーブ:約43時間
防水性:30m
ノモスの最新ラウンド型モデル「チューリッヒ」。ノモスコレクション最大の約40mmケースを採用し、自社開発自動巻ムーブメント「キャリバー イプシロンε」を搭載したハイスペックモデルです。スイスの工業デザイナー、ハンス・ウェッツスタインがデザインを担当したことでも話題となりました。
まとめ
飽きのこないシンプルで綺麗なデザインが魅力のノモス。シーンを選ばず利用できるノモスの時計は性別年齢問わず、誰にでも似合うデザインとして多くのファンに愛されています。 また「軽く・薄い」ノモスの時計はオフィスワークでも邪魔にならない為、内勤の方にもオススメできます。
さらには高いデザイン性と優れた精度を誇りながらも低価格であることから初めての腕時計としてはもちろん、2本目・3本目としての時計としても人気が高まっています。 シンプルな時計をお探しの方は是非ノモスを検討してみてはいかがでしょうか。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年