みんな大好きフランクミュラー。とにかくオシャレで独創性溢れる高級時計ブランドとして、国内外で高い人気を誇ってきました。
そんなフランクミュラーを初めて購入する時、意外に購入場所の選択肢の多さに迷ってしまうこともあるかもしれません。正規ブティック,時計専門店,量販店…また、新品で買うか中古で買うかも悩みどころですよね。
それぞれの購入形態でメリット・デメリットがありますが、一番に知っておきたいことがあります。それは、「修理」についてです。
高級時計はメンテナンスや修理を行いながら末永く使い続けていくことが大前提。しかしながらフランクミュラーは、購入店舗によって修理対応や費用が大きく異なるブランドでもあるのです。そしてこれは、並行輸入品または中古品を購入する時にこそ、注意が必要となります。
この記事では、フランクミュラーの購入場所について解説するとともに、並行輸入・中古品を買った後の「修理」について解説いたします。
※メーカー修理対応や内容は順次変更されています。また、個体によってはメーカー判断で修理の可否が変わるものもあります。詳細はメーカーまたは購入店にお問合せ下さい
目次
知っておきたいフランクミュラーの「正規品」「並行輸入品」
まず始めに、フランクミュラーを購入する際に知っておきたい「正規品」「並行輸入品」について解説いたします。
①フランクミュラーを購入する店舗の種類
フランクミュラーを購入する際、以下の店舗をお選び頂きます。
・正規代理店
・時計専門店
・量販店
・オンラインサイト
・楽天やヤフーショッピングといったECショッピングモール
正規代理店は、フランクミュラーと直接販売契約を結んだ企業が展開するショップです。日本国内ではワールド通商株式会社がこれを担っており、新品のみならず、中古時計の販売も手掛けます。この正規の中古を「認定中古時計」と呼び、他社が販売する中古フランクミュラーとは差別化を図っています。
時計専門店・量販店の多くは、並行輸入と呼ばれるショップです。これはフランクミュラーやフランクミュラー正規代理店と直接契約せず、独自ルートで製品の仕入れを行います。「独自ルート」は様々ですが、海外の正規店・正規代理店や量販店,あるいは免税店や業者向け市場で買い付けることが一般的です。なお、2020年は新型コロナウイルスの影響で直接海外仕入れは行わず、仕入れ専門の業者を通したり、個人のお客様から買取を行ったりすることが多くなってきました。
この仕入れの性質上、時計専門店であれば新品・中古ともに取り扱っていることがほとんどです。
オンラインサイトはショップが運営するものとなります。カルティエやIWCといったリシュモン系列,あるいはタグホイヤーやウブロといったLVMH系のメーカーはオンライン販売を手掛けています。新型コロナウイルスの影響で「おこもり需要」が劇的に伸び、これまで通販に躊躇していたメーカーもどんどん参入することとなりました。
しかしながら高級時計メーカーの中ではまだ一般的とは言い切れず、フランクミュラーもオンライン販売を行っていません。そのため、オンラインでフランクミュラーの時計を販売しているところは、基本的には並行輸入と言えるでしょう。
これは、楽天やヤフーショッピングといったECショッピングモールでも同一です。ただし、ヤフオクやメルカリは個人が販売しているケースも少なくありません。
つまり、上記の販売店舗を大まかに分けると、「正規」「並行輸入」ということになります。
②正規・並行輸入品それぞれのメリット・デメリット
「正規」「並行輸入品」のどちらで買っても同じかと言うとそうではありません。それぞれに一長一短があります。
とりわけ「価格」が大きく違ってきます。
フランクミュラーのみならず全ての正規店・正規代理店に言えることですが、メーカーが決定した「定価」で販売が行われます。基本的に値引きやセールはありません。これは認定中古時計にも当てはまり、並行輸入店よりも高値となる傾向にあります。
一方の並行輸入品は、仕入れ値や為替,人気によって販売価格が決定します。定価に縛られることがないため、一般的には正規品に比べて価格が安くなります。フランクミュラーは人気が高い商品ですので決して値崩れしやすいわけではありませんが、それでも定価が非常に高いため割安感は大きいもの。当店で販売したフランクミュラーが定価と比べてどれくらい割安になっているか計算したところ、平均して定価の半額ほどの値付けを行ってきたことがわかりました。
※ただしこれはメンズ・レディース全てのモデルを合算して割り出した数値となります。ヴァンガード等、人気商品は割安率が低く、販売価格は高値傾向です。
こういった価格のうま味は並行輸入店が大きいと言えるでしょう。また、ショップによっては独自の会員制度を設けたり、セールを行ったりしているため、さらにお安くフランクミュラーを入手できるケースが散見されます。
一方で正規品ならではのメリットがあります。それは「修理」についてです。
と言うのも、フランクミュラーは厳格な並行差別を設けており、「正規品以外の個体は正規メンテナンスを一切受け付けません」「正規品以外の修理については購入店にお問合せ下さい」と明言しています。
フランクミュラーはクレイジーアワーズやマスターバンカー等、独自機構も多く、正規修理が受けられないとなると不安なものですよね。
この安心感を買うのであれば、断然正規品がお勧めということになります。
しかしながら、全ての並行輸入品でこの安心感が買えない、というわけではありません。
次項で、フランクミュラーの並行輸入品のメンテナンスについて解説いたします。
フランクミュラーの並行輸入品はどのように修理・メンテナンスを受けるのか?
冒頭でも述べたように、フランクミュラーのような高価格帯の時計は修理やメンテナンスを繰り返しながら、末永く使い続けていくこととなります。
その一例がオーバーホールです。これは分解洗浄とも呼ばれるもので、時計(機械式・クォーツ式ともに)のムーブメントを一度ばらし、キレイにし、新たに潤滑油を注す一連の作業となります。ムーブメントは繊細なパーツで構成されているため、少しの摩耗や劣化で性能を著しく落とすことがあります。また、パーツの摩耗を最小限にする潤滑油も、古くなると酸化したり固着したりと何かと機械によろしくありません。
そこで、数年に一度(クォーツ時計であればもう少しスパンは長く7~8年に一度程度。いずれもメーカーによって見解が異なります)オーバーホールを行うことが推奨されており、これによって時計は再び生命力を返り咲かせることとなります。また、オーバーホールの際は、外装からは気づきづらい不具合を発見したり、破損したパーツ交換を行ったりと、時計にとってきわめて大切な作業となります。
このオーバーホール、基本的にはメーカーで受けられるに越したことはない、と思う方は少なくありません。また、コンプリケーションや独自機構など、モデルによってはメーカーでしか修理できないものも存在します。
※もちろんメーカーでも、年式の古い個体等はメンテナンスを受け付けていない場合もあります。なお、年式問わず、創業から今に至るまで全ての個体を修理すると謳うメーカーはパテックフィリップやオーデマピゲ,ジャガールクルトなど、屈指の名門ばかりです。こういった体制を「永久修理」と呼んでいます。
では、並行輸入品で買ったフランクミュラーのオーバーホール・その他メンテナンスは、いったいどこで受ければいいのでしょうか?
詳しく解説いたします。
※繰り返しになりますが、メーカーの修理体制や内容はしばしば変更が加えられています。記事執筆時とは異なる場合もありますので、実際のメンテナンス時には、まずは購入店に相談するのがお勧めです。
※中古商品の正規メンテナンスの可否はメーカー判断である場合がほとんどです。
①正規修理が受けられる並行輸入品
厳密には「並行輸入品」とは言えませんが、並行輸入店で「国内正規品」を購入すれば、メーカーの修理が受けられる場合が多くあります。
この正規品の判断としては、まずメーカー保証書を見ることです。これは、認定中古のウォッチランド保証書も当てはまります。
保証書にリファレンス,シリアル,そして国内ブティックのスタンプ・日付等が記入されていれば、国内正規品であり、メーカーで受け付けてもらえる可能性が高いです。
※ちなみに海外購入品であっても、リファレンス,シリアル,販売店スタンプ(海外のメーカー正規代理店),購入日の記載全てが揃っていれば、メーカーで修理を受けられるようです。
では、保証書がなかった場合はどうすれば良いのでしょうか。実はフランクミュラーで1カ月程度預けることにより、ショップ側に販売履歴があった場合のみ販売証明書が交付されます。その証明書と一緒に持ち込めばメーカーメンテナンスを受けられる場合があります。なお、販売証明書の申請は有料となります。
ただし、中古商品をメンテナンスするかどうかはメーカー判断となりますので、修理を断られる可能性もあることをご留意ください。
②国内正規品なのに、正規の修理が受けられない場合がある!?
国内販売店のスタンプが押印された保証書が付属しているのに、メーカーで修理を断られた!こんなケースがあることをご存知でしょうか。これは、ブレスレット等が並行品と交換されている場合に起こりうることです。
実は最近のフランクミュラーのブレスレットにはシリアルナンバーが刻印されています。この刻印が確認できない、または何らかの方法で純正以外のパーツ交換が見受けられたり、メーカーの人間以外の手が加わったと見なされたりした場合は、メーカーはメンテナンスを断るのです。
前述の通り、フランクミュラーは高級時計ブランドの中でも極めて厳格な並行差別を設けていることがわかりますね。
③並行輸入品の修理はどうすればいいのか?
では、国内正規品と確認できない,あるいは国内正規品ではない並行輸入品のメンテナンスや修理は、どうすればいいのでしょうか。
「メーカーで受けられない」と聞くと躊躇してしまうかもしれませんが、ご安心ください。時計を専門に扱っている並行輸入店では、ほとんどの場合、提携工房で修理やメンテナンスを行うことが可能です。
そもそも、中古品を個人のお客様から買い取ったり、業者オークションで仕入れたりする時、必ず精度や動作チェック,加えてムーブメント点検を行いますが、この時にオーバーホールを施す必要のある個体は少なくありません。「そのままお店に出す」なんてことをしてしまったら、お客様からの信頼を失ってしまいますね。
提携工房で修理・オーバーホールをしっかりと行ってから出品しているため、販売個体に何かあった時も、提携工房に依頼することで対応可能なのです。
また、しっかりとした時計専門の並行輸入店であれば、独自保証を設けていることがほとんどです。
何かあった時のサポート体制が整っているため、安心してご購入頂ければと思います。
※一部純正パーツのご用意ができない場合は、代替パーツでの修理になる場合があります。
とは言え、これは「しっかりとした」「信頼できる」時計専門店のみに言えること。中にはアフターサービスが貧弱だったり、そもそも出品時にきちんとメンテナンスを行わないまま販売したりするお店も…
インターネットの口コミを調べたり、該当店舗の創業年や立地を確認したりすることで、良いお店をぜひ見極めてください。なお、競合の多い土地で長年経営している並行輸入店は、信頼できるお店である可能性が高いです。
詳細はお問合せ下さいませ!
まとめ
フランクミュラーの並行輸入品・中古品を買う時に知っておきたい「修理」の話をまとめてご紹介いたしました!
フランクミュラーは正規代理店・並行輸入店それぞれの購入でメリット・デメリットがあること。国内正規品と判明すれば並行輸入店購入個体でも正規の修理が受けられるケースがありますが、そうでない場合やメーカー判断によって変わる可能性があること。並行輸入品は信頼できるお店であれば、提携工房で修理を受けたり保証が効いたりと、安心したお買い物ができることをお伝えできていれば幸いです。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年