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新美貴之, オメガ

オメガ スピードマスタープロフェッショナルの歴代モデルと系譜を解説!

最終更新日:

オメガスピードマスター 歴代モデル 系譜

オメガのスピードマスター。時計愛好家たちにはおなじみの時計ですね。

いくつかの派生モデルがラインナップしていますが、基幹モデルは「プロフェッショナル」あるいは「ムーンウォッチ」とも呼ばれる、手巻き式クロノグラフとなります。

このスピードマスター プロフェッショナルは60年以上にわたり生産が続けられていながらも今なおその人気は衰えず、異例とも言える超ロングセラーモデル!かっこいいとか、スーツにもカジュアルにも使えるとか…

こういったデザイン性の高さは勿論のことですが、奥深い歴史・ストーリーを有することもまた、この時計の大きな魅力です。そのストーリーは、時計史においては伝説的な存在とも言えます。

この記事では、オメガ スピードマスターのプロフェッショナル―伝説のムーンウォッチ―の歴代モデルや初代から最新作に至るまでの系譜、魅力についてご紹介いたします。

オメガ スピードマスター プロフェッショナルの歴代モデルと系譜

オメガ スピードマスターの魅力を語るには、まずその歴史を知ることから始まります。

初代モデルから現在に続く歴史と系譜をご紹介いたします。

初代オメガ スピードマスターの誕生

オメガがスピードマスターを世に送り出したのは、1957年のことです。

1950年~1960年頃というのは、近代時計史において非常に意義深い時代です。

ロレックスのサブマリーナを筆頭に、ブライトリングのナビタイマーや同じくロレックスのGMTマスターなど、現代も人気を博す数々の名機が誕生。「スポーツウォッチ」という分野が開花しました。

そんな一時代のスポーツウォッチの一環として生まれたのがスピードマスターです。同年に、三つの「マスターシリーズ」として発表されました。

まず1つ目はシーマスター。
シーマスター 234.10.39.20.01.001
シーマスター 234.10.39.20.01.001

※画像は2017年に誕生60周年記念として初代意匠が受け継がれたスペシャルエディションです。

これまで通常の3針モデルでシーマスターは作られていましたが、回転ベゼルを搭載したオメガ初の本格ダイバーモデルとして発表されました。

2つ目はレイルマスター。
レイルマスター 220.10.38.20.01.002
レイルマスター 220.10.38.20.01.002

※画像は2017年に誕生60周年記念として初代意匠が受け継がれたスペシャルエディションです。

鉄道時計というコンセプトですが、耐磁機構を備えたモデルです。

ロレックスで言うならミルガウス。IWCで言うならばインジュニア的な存在ですね。

そしてもう1つが今回のテーマである、スピードマスター。
スピードマスター 311.10.39.30.01.001
スピードマスター 311.10.39.30.01.001

※画像は2017年に誕生60周年記念として初代意匠が受け継がれたスペシャルエディションです。

これらは2017年に記念モデルとしてリバイバルが出ているので、詳しくご存知の方も多いかもしれません。

共通しているのはアローハンドと言われる特殊な形状の針がセットされていることですね。

今でこそ「スピードマスター=宇宙」という図式がすぐに浮かび上がりますが、実際は宇宙は全く関係のない、純粋なモータースポーツ用の時計として誕生しました。

ちなみにスピードマスターは、ダイヤルではなく外周ベゼルにタキメーターを表示した世界で初めての時計と言われています。

当時画期的だったこのデザインは、レーサーの視認性を高めたと共に、デザイン面でも以降のクロノグラフに多大な影響を与えました。

これが後々に1stモデルと呼ばれるようになります。

ムーブメントは、詳しくは後述しますがブレゲやブライトリングなどにも卸していた老舗ムーブメントメーカーレマニア社製Cal.321を搭載。

このクロノグラフは、スピードマスター第四世代まで受け継がれていくこととなります(さらに後年、見事なリバイバルが成功することに…!)。

ちなみによくアンティークの世界では、年式が古くなかなか流通していない珍しい時計を「幻の~」と大げさに表現することがありますが、この初代スピードマスターに関して言えば全く大げさではありません。

実際に我々が自身の目で、虹や蜃気楼などの幻現象を見る機会の方が圧倒的に多いからです。

スピードマスター第二世代の誕生、初の宇宙空間へ

スピードマスター発売から2年後の1959年、スピードマスターはマイナーチェンジをします。

ベゼルがアルミニウムの黒色ベースとなり、針の形状がアロー針からアルファ針に変更されました。

オメガ スピードマスター

マイナーチェンジと言いましたが、実際には外装面はかなり変化しています。第2世代なので、そのまま「2ndモデル」と呼ばれます。

空軍からの要請を受けていたこともあり、実用面において非常に優れた進化だったと言えます。

また、デザイン面での完成度も高く、その後のスピードマスター60年の歴史の中で、2ndモデルのデザインは踏襲されていくこととなりました。

そしてこの時計を、1962年のマーキュリー計画(宇宙開発計画の黎明であり、初めての有人宇宙飛行計画)で宇宙飛行士ウォルター・シラーが個人的に着用し、オメガ製の腕時計は初めて宇宙遊泳を果たしました。

ちなみにこのウォルター・シラーは、その後に続くアメリカの宇宙開発計画―ジェミニ計画・アポロ計画―の全てで地球周回軌道以上の宇宙飛行を体験した唯一の人物で、NASAにおいてとても重要な人物であり、宇宙飛行のスペシャリストとも言える人物です。

彼がスピードマスターを着けていたこの事実は、後のスピードマスターの運命をすでに暗示していたのかもしれません。

スピードマスター第三世代の誕生、NASAのテストの通過

オメガ スピードマスターは1963年(1959年説も有り)に3rdモデルへとマイナーチェンジを行います。

この時のモデルチェンジは針の形状がアルファ針から白ペイントのバトン針へと変更されています。これによりさらに視認性が高まりました。

このバトン針は未だに継承されているデザインです。

オメガ スピードマスター

さて、ちょうどその頃、NASAは宇宙での過酷な環境にも耐えうる丈夫な腕時計を探していました。

ちなみに求められた腕時計は手巻き式クロノグラフ。

なぜ自動巻き式3針では不可かと言うと(もっとも、当時はまだ自動巻き式より手巻き式の方が主流でしたが)、無重力空間では腕の運動量が減ったり重力の助けがなくなったりして自動巻きのローターが回りづらいため。

また、クロノグラフは、宇宙船の電気系統が壊れるなどして、時間計測が困難になった場合に必要な機能となるためです(事実、後述するある事件でこの機能が活躍することとなる)。

そんな宇宙飛行士のための腕時計を求めるNASAが行ったテストは、70℃で48時間(さらに93℃で30分)の高温、-18℃を4時間までの低温での検査をはじめ、高熱の蒸気を当てられたり、40Gの負荷をかけられたり、急激な温度変化や気圧変化にさらしたりといった、非常に過酷なテストでした。

オメガの他にCal.30chを搭載したロンジン、バルジュー72を搭載したロレックスなど、10社ほどの時計が集められたそうですが、このNASAのテストを経て、最後までクロノグラフ機能が稼働していたのは、オメガのスピードマスターだけだったと言います。

ちなみにそれらの時計は一説によれば、特注品ではなく普通に出荷された市販品だったそうです。

オメガミュージアム館長が後日談として「我々には使用目的が伝えられないままNASAに納入して、その後当時の雑誌での発表で真相を知ることになった」ということを語っています。

街の時計屋にならんでいた市販品を買ってきた、などという説もありますが、いずれにしても「特注品ではなく、通常の市販品が宇宙へ行けるスペックを持っている」という事実がスピードマスターへの信頼性をより高める結果となりました。

スピードマスター第四世代―プロフェッショナル―の誕生

1965年にオメガ スピードマスターは第4世代に突入しています。

ケースが左右非対称となり3時側にリューズガードが追加され、さらに衝撃に対して強固になりました。

この時点でほぼ現行モデルの土台が完成され、以降のスピードマスター プロフェッショナルと呼ばれる基幹モデルに踏襲されていきました。

オメガ スピードマスター
画像引用:オメガ 公式サイト

そしてこの年、NASAの宇宙飛行士用標準装備としてオメガ スピードマスターが正式に採用されたことが発表されました。

翌年1966年から正式にオメガへの発注が行われました。

以降の生産分から文字盤にダイヤルに「PROFESSIONAL」の文字を表記することなります。

そんな流れから、4thモデルには「PROFESSIONAL」表記なしのものと、表記有りのものの2種類存在します。

ちなみに「1969年、人類が初めて月面に降り立った時に装着されていた時計は3rdモデルか4thモデルか(たまに5thモデルという人もいますが)」という論争がありますが、オメガが公式に4thモデルが「月面で着用された最初の時計」と謳っています。

スピードマスター第五世代の誕生、ムーンウォッチへ

1968年、スピードマスターは第5世代に突入しました。

外装に変化はありませんでしたが、搭載ムーブメントがCal.321からCal.861へと変更されました。

クロノグラフのクラッチが複雑な形状のコラムホイール式から合理的なカム式へ、テンプのひげゼンマイが平ひげに変更され、振動数は18,000から21,600とハイビートに。精度の安定化を図りやすくなっています。

スピードマスター Cal.861 ST145.022
スピードマスター Cal.861 ST145.022

ムーブメントの作りや美しさはCaL.321に定評がありますが、ちょうどどのメーカーも大量生産期に移行する1960年代後半という時代背景とNASA採用によりスピードマスターが売れ始めた時代ということもあり、量産しやすいムーブメントへ変更したのでしょう。

5thモデルへ移行した翌年の1969年、ついに人類が月面へと降り立つことになりました。

その時に着用されていたのは当然オメガ スピードマスターです。(アームストロング船長は着けていなかった説も有り)これ以降、スピードマスター プロフェッショナルは「ムーンウォッチ」の称号を獲得します。

これを受けて1970年頃から裏蓋に、今もお馴染みの「THE FIRST WATCH WORN ON THE MOON」の刻印が入るようになりました。

なお、5thモデルには年代によって幾つかの文字盤バリエーションがあります。そのどれもベースのブラック塗装の違いによるものです。

1970年代の文字盤=通称「段付き文字盤」

スピードマスター 5th 145-022-68ST
スピードマスター 5th 145-022-68ST

外周がステップ状に成形されて、光沢感のある黒が特徴。5thは幾度となくマイナーチェンジが行われたモデルですが、こちらは段差があるタイプのダイアルで、矢尻型クロノグラフ針、ラウンドの強いプラ風防、刻印タイプのケースバックを備えています。

ブレスレットはヴィンテージウォッチならではのキャタピラブレスとなります。

この個体は1968年頃に製造されたもので、今となっては非常に貴重な個体ですね。

1980年代の文字盤=通称「”r”下がり文字板」

スピードマスター 5th ST145.022 下がり”r”
スピードマスター 5th ST145.022 下がり”r”

1980年代の文字盤は段無しダイアル、矢尻型クロノグラフ針、ラウンドの強いプラ風防を備えています。文字盤のSpeedmasterの文字『r』が下がっていることが最大の特徴です。
そして質感はまさしく漆黒のマットブラック。プリントの白とベースのブラックのコントラストがはっきりしていて、これ以降外周のステップは無くなっています。

1990年代の文字盤=通称「トリチウム最終文字盤」

スピードマスター 5th ST145.022
スピードマスター 5th ST145.022

僅かな期間製造されていた文字盤です。色合いは漆黒のマットブラック。質感的には1980年代とほぼ一緒です。この文字盤が生産終了してからは現行文字盤の「ルミノバ文字盤」に変更されました。

現行文字盤=通称「ルミノバ文字盤」

スピードマスター 311.30.42.30.01.006
スピードマスター 311.30.42.30.01.006

5thモデルではなく、コチラは現行(第七世代)の文字盤。実物を手に取らないと分かりにくいとは思いますが、マットな度合いが増加して全体的にグレー調の質感になりました。

インデックスが褐変し易いトリチウム夜光から白味の強いルミノーバ蓄光になった事で、モノトーン傾向も強くなっています。

スピードマスター、さらなる伝説へ

「アポロ13」という映画をご覧になったことがあるでしょうか?

月面調査からの帰還時(月面着陸はできなかった)に起こった爆発事故の影響により節電のため計器類が使えないというギリギリの状況のなか、正確な軌道上に修正するためには正確に14秒間エンジン噴射をしなければいけない。
これは実際のアポロ計画で起きたことであり、そんな状況下で活躍したのがオメガ スピードマスターでした。

オメガ スピードマスター
画像引用:オメガ 公式サイト

先ほど、クロノグラフの宇宙計画での必要性をご説明しましたが、実際に宇宙船の電気系統が全てダメになり、スピードマスターのクロノグラフ計測機能のみで大気圏突入を試みたのが1970年 アポロ13号のミッションでした。

この事件は、宇宙飛行士たちの勇気と判断を称え無事を喜ぶとともに、スピードマスターの更なる信頼と実績を勝ち取る結果となったのです。

ちなみにこのスピードマスターの功績を称えるモデルとして、「スヌーピーアワード」というスペシャルエディションが何度かラインナップされています。

スピードマスター プロフェッショナル スヌーピーアワード 3578-51
スピードマスター プロフェッショナル スヌーピーアワード 3578-51

なぜスヌーピーかというと、NASAの公式マスコットのため。何度かの事故を教訓に、「安心・安全の象徴」として、世界的に有名なキャラクター・『ピーナッツ』のスヌーピーを登用したのです。

元々はモーターサイクル用の時計として開発されたスピードマスターは、当初の意図とは別にこのような経緯を辿りながら唯一無二のムーンウォッチとして確固たる地位と実績を築いていきました。

オメガ社もこの意義と重要性を感じているからこそ、いまだに大きな変化もなく「スピードマスター プロフェッショナル」という機種を作り続けています。

スピードマスター 第六世代

第五世代でデザインは現行に踏襲されるスピードマスター プロフェッショナルが完成されましたが、実はその後、あと二度のマイナーチェンジが行われます。

その一度目、6thモデルにあたるのが、1996年頃~2014年まで製造されていたRef.3570.50です。今の前世代ということですね。

スピードマスター プロフェッショナル 3570.50
スピードマスター プロフェッショナル 3570.50

この6thモデルで、ムーブメントが現行モデルに続くCal.1861へと変更になります(初期モデルにはCal.861搭載の個体があるようです)。

Cal.861をチューンアップした程度のマイナーチェンジですが、さらに使いやすくなったと誕生当初から高い評価を得てきました。

また、夜光もスーパールミノバに変遷することとなります。そのため、ルミノバ文字盤といった呼ばれ方がされることも。

ただ、この第六世代より、機械式時計ファンにとって嬉しい仕様がプロフェッショナルに派生モデルとして登場します。それは、シースルーバック個体です!

スピードマスター プロフェッショナル 3573.50
スピードマスター プロフェッショナル 3573.50

これまでスピードマスターは耐久性が重視されていたため、裏蓋は強固なメタルバックとなっていましたが、サファイアクリスタルガラスの加工技術が飛躍的に伸びたことにより、スケルトンバックを実現しました。ちなみにムーブメントも、見た目の美しさ・楽しさのために改良された手巻き式Ca.1863搭載となっております。

なお、スピードマスター プロフェッショナルは初代の雰囲気を出すために風防にはプラスチックが使われているのですが、シースルーバックモデルに関しては当初は文字盤側はプラスチック、裏蓋はサファイアクリスタルだったものの、後年両方ともにサファイアクリスタルが採用されることとなりました。

スピードマスター 第七世代 プロフェッショナル 311.30.42.30.01.005

スピードマスター 311.30.42.30.01.005
スピードマスター 311.30.42.30.01.005

2014年以降、現行として多くのオメガファンから親しまれてきたスピードマスター プロフェッショナルがこちらの311.30.42.30.01.005です。
外装やムーブメント(Cal.1861)に大きな違いはありませんが、ブレスレットのねじ留めがマイナーチェンジしていること。さらに、現行から豪華付属品が新品購入の際についてくるようになったことが大きな変更点です。

スピードマスター 311.30.42.30.01.005

大きい化粧箱の中には、替えストラップ、ルーペ、特別冊子など豪華特典がついており、「ムーンウォッチ」としての歴史をいやがおうにも確認させられます。

ちなみに第七世代スピードマスターは資産価値(リセールバリュー)が高いことでも有名ですが、こういった豪華付属品による人気もあるのでしょう。売ろうと思っている方はとっておかなくてはいけません。

また、現行モデルにもCal.1863を搭載したシースルーバックモデルが存在します。
オメガ スピードマスター

誕生から60年以上が経つスピードマスター。当初から大きくは変わらないデザインと、雄大なストーリーのもと、今なおファンを増やし続けていっていることは間違いありません。

最新スピードマスター プロフェッショナル コーアクシャル マスタークロノメーター

オメガ スピードマスター
画像引用:オメガ 公式サイト

2021年、最初のSpeedy Tuesdayにあたる1月5日、最新世代にあたるスピードマスター プロフェッショナルがリリースされました。これを以て長らく親しまれてきた第七世代はモデルチェンジとなり、今後、当モデルが現行品と言うこととなります。

なお、型番はRef.310.30.42.50.01.001とRef.310.30.42.50.01.002(後者がシースルーバックモデル)に変更されました。

※Speedy Tuesday(スピーディー・チューズデー)とは、オメガファンが毎週火曜日にスピードマスターの写真やコメントをSNS投稿する際に用いるハッシュタグのこと。オメガファンの有志で始まったが世界中で浸透しており、オメガ側もスペシャルエディションをリリースするなど非常に重要視している

最新世代のスピードマスター プロフェッショナルで最も大きな「進化」となるのは、ついにコーアクシャル機構×マスタークロノメーター認定のCal.3861ムーブメントが搭載されたことです。

詳細は次項で詳述しますが、スピードマスター プロフェッショナルは外装のみならず、ムーブメントもいくつかの系譜を辿ってきました。

もともとのオリジナルはレマニア製Cal.321でしたが、これをベースにオメガ自身が現代風に改良を加えてきたのです。

Cal.3861
画像引用:オメガ 公式サイト

スピードマスター プロフェッショナルに用いられる手巻きクロノグラフの「完成版」とも言うべきCal.3861がローンチされたのは、2019年のことでした。

当時は限定生産でしたが、2021年、ついにレギュラーモデルとしてラインナップに加わっています!

どう新しいのかと言うと、前述の通りオメガが誇るコーアクシャル機構とマスタークロノメーターが搭載されたこと。手巻きとしては同社初の試みです。

ちなみにコーアクシャルとは特別設計でパーツの摩耗を劇的に軽減し、オーバーホールの回数を減らすことに成功した機構です。

そしてマスタークロノメーターとは、コーアクシャルムーブメントのための工業規格であり、さらに性能面でアップデートを目論むもの。とりわけマスタークロノメーターの認定基準である耐磁性能は15,000ガウスまでを基準にしている、ということは有名ですね。ちなみに病院のMRIが15,000ガウスですからね。

この耐磁性能はムーブメント自体が有しているもののため、スピードマスター プロフェッショナルの長年続いてきた外装ケースをいじることなく、現代社会に欠かせない高耐磁性能を有するに至った、スピードマスター史上最たる進化と言っていいかもしれません。

オメガ スピードマスター

オメガ スピードマスター
画像引用:オメガ 公式サイト

外装はほぼ第七世代を踏襲していますが、タキメーターベゼルや文字盤設計,ブレスレット・バックルに改良が加えられています。とりわけブレスレット設計については多くのメディアが高評価を下しており、より完成されたムーンウォッチへと進化しました。
なお、付属品は小型化が図られたようですが、変わらず特別仕様となっているようです。

スピードマスター プロフェッショナルのムーブメントの進化

スピードマスター ムーブメント
画像引用:オメガ 公式サイト

スピードマスター プロフェッショナルの変遷の中で、ムーブメントについてもご紹介してきました。

初代~第四世代に搭載されたCal.321⇒第五世代のCal.861⇒第六世代以降のCal.1861(またはCal.1863)です。

このムーブメントは、ヌーベル・レマニアという、クロノグラフに定評のある老舗ムーブメントメーカーが製造した機械です。レマニアは現在はブレゲに吸収されていますが、数々の名機を世に送り出したことで有名で、ブレゲはもちろんジンやブライトリングにも採用されてきました。

とりわけCal.321は、「スピードマスター=高性能」と言う図式を広めた立役者です。ちなみにパテックフィリップの永久カレンダークロノグラフやヴァシュロンコンスタンタンのコルヌ・ドゥ・ヴァッシュ等、Cal.321がベースとなった雲上ブランドの名機も数多く挙げられます。

そんなCal.321を簡単に解説すると、もともとは1940年代にオメガとレマニアが共同開発した手巻きクロノグラフムーブメントでした。設計は天才と高名な時計技師アルバート・ピゲ氏です。

Cal.321の素晴らしいところは、まず振動数が18,000/時であるにもかかわらず、きわめて高精度という点が挙げられます。

振動数とはテンプの動きを指します。振動数が高ければ高いほど高精度になりますが、一方でパーツの摩耗が避けられません。Cal.321は、現代に照らし合わせればロービートに分類されるにもかかわらず、安定した精度を叩き出すことに定評があります。

オメガ スピードマスター Cal.321
オメガ スピードマスター Cal.321

また、精密な制御・操作が可能なことも大きな利点です。これは、コラムホイール式を採用したことに秘訣があります。

クロノグラフは大きく分けてカム式とコラムホイール式に分類できます。どちらもクロノグラフの制御方式を指しますが、カム式よりもコラムホイール式の方が精密な制御ができ、かつ操作性に優れていることが特徴です。

さらには非常にコンパクトな直径27mm・厚さ6.7mmというサイズ感のため、レーシーなデザインながらスピードマスターは直径40mmをk切る程度のスリムさです。

スピードマスターの歴史の項でもご紹介したように、このCal.321を搭載した初代~第四世代の個体はきわめて稀少で、アンティーク市場で高値で取引されてきました。

しかしながら2019年、このCal.321が復刻することとなったのです!しかも、きわめて忠実に。

詳細を解説いたします。

Cal.321の復刻

何度か言及しているように、2019年はアポロ11号計画によるスピードマスターの月面着陸50周年!そのためいくつかのスペシャルエディションがリリースされていたのですが、最も特筆すべきはCal.321の再生産のアナウンスでしょう!
現在、レマニアはブレゲに吸収されています。

しかしながら同じスウォッチグループ同士のオメガがCal.321の金型を自社に移管し、再生産の運びとなったのです。

そうして2019年に発表された記念モデルはプラチナ製の638万円というハイエンドモデル!

しかしながら翌2020年、ステンレススティール製モデルがリリースされました!しかも、第三世代の意匠を携えて!

オメガ スピードマスター
画像引用:オメガ 公式サイト

もっとも、ただ復刻しただけで終わらないのが私たちのオメガ。

香箱の構造を変えてパワーリザーブを約48時間から約55時間へと延長しており、現代の実用性も考慮されています。

シースルーバックが採用されたことで、アンティーク品ではなかなか日常で鑑賞できなかった内部機構も楽しめることとなりました。

ステンレススティール製のため今作の販売価格は税込1,661,000円です。

しかしながらまだ流通が始まったばかりのようで、レアアイテムであることはアンティークと同等!?Cal.321は決して量産品ではないため、リバイバルとは言え製造個数もそう多くはないのでしょう。
早く実機を手にしてみたいものです。

無印スピードマスターとプロフェッショナルの違い

オメガ スピードマスター

ここまでスピードマスター プロフェッショナルの歴史と系譜をご紹介してきました。

ところで、よく「無印スピードマスターとプロフェッショナルの違いがわからない」といったお問合せをいただくことがあります。

確かにスピードマスター(シーマスターなどもそうですが)には派生モデルが非常に多く、どれがどれだかよくわからないことがありますね。

例えばプロフェッショナルの中にも、派生モデルがあります。

スピードマスター 311.62.42.30.06.001
2014年、アポロ11号45周年記念として発表されたスピードマスター 311.62.42.30.06.001

スピードマスター 3575.20
初代意匠であったブロードアロー針を使ったスピードマスター 3575.20

プロフェッショナルは、基本的にレマニア社製手巻き式クロノグラフとなります。

宇宙空間での使用を想定しているため、手巻き式はマスト。基本的にはマットな黒文字盤がベースとなります。

一方無印の方なら、自動巻き式。文字盤デザインもバリエーションが豊富です。

まとめ

60年以上の歴史を持つスピードマスター プロフェッショナル―伝説のムーンウォッチ―の歴史や系譜、偉大なるストーリーについてご紹介いたしました。

スピードマスター プロフェッショナルは、今なお不動の人気を誇り、そして進化の止まないオメガのフラグシップとして君臨します。そのコンセプトを可能にするのが、「スピードマスター プロフェッショナル」を選んできたユーザー達。

いくら重要な時計と言っても、実際に売れなければメーカーも作り続けるわけがありません。

見た目良し。使い勝手良し。バックストーリー良し。

実用的で日常使いが出来つつも、壮大なスケールの話の当事者となったような気持ちになれる時計、それがスピードマスター プロフェッショナルです。

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