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スヌーピーにテディベア!?オメガ スピードマスターの限定モデル
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出典:https://www.omegawatches.jp/ja/
「スピードマスターの限定モデルって何がすごいの?」
「スピードマスターコラボモデルの種類や魅力について知りたい」
人類史上初となる月面着陸に携えられていた腕時計・オメガのスピードマスター 。
最も人気のあるスピードマスター プロフェッショナル―通称ムーンウォッチ―やリバイバルであるスピードマスター57、ユニセックスの38mmサイズなど、豊富なモデル展開にも定評があります。
いずれも計器然としたかっこよさが魅力ですが、実はスヌーピーやテディベア、ウルトラマンなどのキャラクターを載せたデザインのモデルも存在します。
そんなスピードマスター限定モデルの魅力が知りたいという人は多いのではないでしょうか。
由緒ある高級時計ブランドが、ファンシーなキャラクターとコラボレーション。
一見アンバランスにも思えますが、実はそこには遊び心だけではない、知る人ぞ知る深い理由があるのです。
この記事ではスピードマスターの限定モデルとその魅力を、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
コラボの経緯についても紹介しますので、オメガの時計に興味がある方はぜひ参考にしてください。
目次
6回の月面着陸プロジェクトに携帯されたスピードマスターとは?
オメガ スピードマスターRef.311.30.42.30.01.006
オメガの「顔」とも言うべきスピードマスター。
1957年に誕生、ロレックス デイトナやタグ・ホイヤーを始めとする同時期のクロノグラフウォッチと同様、そのモデル名を鑑みると当初はモーターレースを念頭に置いたものであったと思われます。
しかしながら時代は冷戦真っ只中、東西による宇宙開発競争は白熱の一途を辿っていました。
NASAは宇宙有人飛行の安全対策のため、飛行士が携帯する腕時計を各時計メーカーに依頼。各時計メーカーは宇宙での使用を想定した「クロノグラフモデル」を開発し、NASAヘ提出しました。
宇宙での過酷な任務に耐えうる時計かどうか。NASAは高圧・真空・無重力・衝撃・-18度から+93度に及ぶ温度変化など10項目にも及ぶ宇宙空間を想定した過酷なテストにより、その実用性を試しました。それは1項目でもクリアできなかった時点で失格となる極めて厳しいものでした。
そして、唯一最後まで時を刻み続け、NASAの公式装備品として正式に採用されたクロノグラフウォッチが、オメガのスピードマスター プロフェッショナルだったのです。
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1969年、アポロ11号が史上初めて月面着陸を果たし、以来全6回にわたる飛行には、いつもオメガのこの腕時計が携えられていました。
1970年にはアポロ13号での酸素爆発の危機から乗務員を救出することに成功。その功績から「ムーンウォッチ」の称号を手に入れました。
スピードマスターは様々な派生モデルが存在します。そんな中スピードマスター プロフェッショナル ムーンウォッチが最も人気がありオメガのフラグシップ的な存在なのは、このストーリーをふんだんに活かしているからに他なりません。
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スピードマスターの特徴①ムーブメントについて
スピードマスター プロフェッショナルは月面着陸時のムーブメントであるレマニア製の手巻き式を今なお踏襲しています。
その他の派生モデルは自動巻きが主流ですが、いずれもオメガが誇るコーアクシャル機構を搭載し、高い信頼性を誇ります。
スピードマスターの特徴②外装について
スピードマスター プロフェッショナルは、ブラッシュアップが加えられながらも初代のイメージを尊重したデザインが受け継がれています。
風防に強化プラスチックガラスを使用し、ブラックダイアルとタキメーターが刻まれたベゼルのスタイルは現在も変わっていません。
スピードマスターの特徴③付属品について
時計に付属する化粧箱も特別仕様で、NATOと宇宙飛行士仕様の2種類のストラップ、メダルプレート、ムーンウォッチの冒険が書かれた冊子などが付けられています。
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※①~③はスピードマスター プロフェッショナルの通常4モデルに採用されており、派生や限定モデルについてはこの限りではありません。
オメガ×スヌーピー 限定コラボレーションモデルについて
伝統的で堅実なイメージの強いスピードマスターと、ファンシーなスヌーピーのコラボレーション。
なんだかそぐわないように感じる方もいるかもしれませんが、そこには人類の宇宙開発とスピードマスター プロフェッショナル”ムーンウォッチ”にまつわる、大きな理由があったのです。
コラボに至った経緯
宇宙開発へのミッションと訓練は、いつも事故と隣り合わせでした。
当時、大きく報道され世界中に衝撃と悲しみをもたらしたものの代表例は、1967年、最初の有人飛行のため訓練をしていたアポロ1号の火災事故です。
3名の宇宙飛行士が犠牲となり、人命を消費するかのようなNASAの宇宙開発を疑問視する声が沸き上がりました。
NASAは、同じ過ちを繰り返さないことを世間に誓う意味もこめて、「安心・安全の象徴」を作ります。そこに選ばれたのが、世界的に有名なキャラクター・『ピーナッツ』のスヌーピーだったのです。
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動物の中で人間と最も密な関わりを持ち、番犬として人々の安全を守ってくれた「犬」だからでしょうか。
選ばれた理由は諸説ありますが、スヌーピーが公式マスコットとなったことは、マスコミ、議会指導者、そして宇宙飛行士たちによって熱烈に支持を得ます。
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後、NASAは、Silver Snoopy Award “シルバー・スヌーピー賞”を設定、有人宇宙飛行ミッションの成功に大きく貢献した人・企業に与えることとしました。
この賞を授かったのがオメガのスピードマスター プロフェッショナル”ムーンウォッチ”です。
1970年、アポロ13号の酸素タンクの爆発事故の際、船内コンピューターは使用不可となりました。
乗員はスピードマスターで軌道修正に要する「14秒」を正確に測定し手動でエンジンを噴射、見事危機的状況を打開したことを称え、「ムーンウォッチ」の称号とともに受賞に至りました。
オメガ×スヌーピー 限定モデル紹介
それでは実際のスヌーピーとのコラボレーションモデルとはどのようなデザインなのか?ご紹介いたします!
スピードマスター プロフェッショナル スヌーピーアワード 限定5441本 3578-51
シルバー・スヌーピーアワードの記念モデルとして、2003年に誕生したコラボウォッチ。宇宙服を着用し、一人前の宇宙飛行士となったスヌーピーがダイアル9時と裏蓋に大きくデザインされています。
また、それぞれのスヌーピーからは、セオドア・ルーズベルトの名言としても知られている「Eyes on the stars」(星を見てごらん)のメッセージが発せられていることが特徴。
限定数の5441本はアポロ13号の活動時間である142時間54分41秒に由来していることも、オメガらしい細やかで心憎い演出です。
スピードマスター プロフェッショナル スヌーピーアワード 限定1970本 311.32.42.30.04.003
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スヌーピーアワードの記念ウォッチは現在2つのモデルが存在しますが、こちらは2015年、受賞45周年を祝して発表されたものです。受賞の年・1970年に合わせた1970本限定販売されました。
ダイアル上の9時位置でスヌーピーが呟いている「Fall is not an option」(失敗という選択肢は無い)。
映画「アポロ13号」のジーンクランツの言葉ですが、これは、事故の際、彼が宇宙飛行士を必ず地球へ帰すと決意したものです。
また、ダイアル上の0秒から14秒の間に「What could you do in 14 seconds?」(14秒で何ができた?)。
これは、帰還の鍵を握る14秒の噴射時間をスピードマスターが正確に計測し、乗員をすくったことに由来するもの。
当時の衝撃をふんだんに詰め込んだ一本。裏蓋にはひとつひとつ手作業で施されたスヌーピーのエングレービングがあります。
スピードマスター プロフェッショナル アポロ11号 45周年 限定1969本 311.62.42.30.06.001
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スヌーピーアワード受賞45周年にあたる2015年、もう一つのアニバーサリーモデルが発表されました。それがこちらのモデルです。
月面着陸を成し遂げた1969年にちなみ、世界限定1969本発売。ムーブメントには現行のスピードマスター プロフェッショナルと同様、当時の手巻き式と同機構のCal.1861が搭載されています。
スヌーピーの記念モデルや他のムーンウォッチとはがらりと趣が変わりました。
軽くて耐久性優れるチタンケースとゴールド製ベゼル。
ブラウンのコーティングが施されたナイロン生地のNATOストラップを併せて、スポーツウォッチでありながらもムーンウォッチであることを実現。雄大な歴史背景を思わせます。
オメガ×テディベア 限定コラボレーションモデルについて
スヌーピーと同様、動物キャラクターとして世界中で愛されるテディベア。
フワフワの愛くるしい外見に心を奪われる方も少なくないでしょう。
このテディベアとのコラボレーションモデルも、スヌーピー同様に深い意味合いがあるのです。
コラボの目的
スピードマスターがテディベアとコラボレーションモデル。これは、オービス・インターナショナルが運営する「空飛ぶ眼科病院(Flying Eye Hospital)」の支援が目的となっています。
オービス・インターナショナルとは「失明防止」を掲げ、世界各国―とりわけ発展途上国で高度な眼科医療を提供する非政府・非営利団体です。
この団体の支援のために製作されたコラボレーションモデルがこちら。なぜテディベアかと言うと、「子どもたちの気持ちを和らげる」から、とのこと。オメガは支援の一環として、大きな治療を控えた小児患者にテディベアをプレゼントしているのです。
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オメガは、この特別なスピードマスターの売上の一部をオービス・インターナショナルの活動支援のために寄付しているとのこと。
スヌーピーと同様、そんな深い意味合いが込められていたのですね。
オメガ×テディベア 限定モデル紹介
現在、テディベアコラボレーションモデルはスピードマスターだけでなく、デヴィルシリーズでも展開されています。
スピードマスター 38 オービス 324.30.38.50.03.002
ユニセックスにあたる、38mmサイズのスピードマスターとコラボレーションしたモデル。
深みのあるブルーとそれより薄めブルーのインダイアルがコントラストになり、どのスピードマスターとも異なる優しいエレガントさが醸し出されています。
クロノグラフ針と裏蓋にテディベアのモチーフがあしらわれています。
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スピードマスター38は女性からの支持も厚く、オメガのファン層がどんどん広がっていっていることを感じます。
そんな中展開されるこの可愛らしくも意義のあるコラボレーションモデル。またオメガ好きを増やしてくれそうです。
ちなみに前述のように、レディースの主力であるデヴィルでもテディベアモデルが登場しています。
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いずれもスヌーピーと異なり、限定生産ではありません。
オメガ×ウルトラマン 限定コラボレーションモデルについて
スピードマスター が、TBS系で放送されていた『ウルトラマン』で使われたってご存知でしたか?
ウルトラ警備隊や怪獣攻撃部隊「MAT」の装備品として登場したモデルは1967年に発表されたスピードマスター 。
その活躍を讃えたアニバーサリーモデルが、ウルトラマン好きにはたまらないギミックが潜んだ、遊び心満載の一本です。
2018年登場!オメガ×ウルトラマンのスピードマスター紹介
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地球防衛隊の装備品として活躍した1967年当時のスピードマスター。
2018年の今年登場したのは、1971年~1972年にTBS系で放映された『帰ってきたウルトラマン』をインスパイアした特別限定モデル。ちなみに当時オメガがウルトラマンのスポンサードをしていたような事実はなく、製作者である円谷プロダクション側に使用者がいて、このモデルを劇中での装備に選んだようです。
同時期に放映された『銀河鉄道999』の原作者である松本零士先生も、若い頃からスピードマスターに魅了されていたことは有名な逸話ですね。
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上の画像は1967年当時のモデルですが、オレンジのクロノグラフ針が非常に特徴的。テレビに映った時はあまり馴染みがなく、「スピードマスターのパチモンでは?」などと騒がれたようです。
実際にはオメガの正規モデルで、オレンジ×ブラックのMAT制服とよくマッチしていました。
そのオレンジ針が改めて採用され、またシェイプもオリジナルを踏襲しており、どこか当時の趣を携えた、ヴィンテージクロノグラフに仕上がります。
ウルトラマンの世界観へ誘うギミックはまだまだあります。
それは、9時位置のスモールセコンドに付属のUVライトを当てると、ウルトラマンのシルエットが浮かび上がるというもの!
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ウルトラマンの変身時間が3分間であることから、3時位置30分積算計の最初の3分間がオレンジに彩られています。
ムーブメントは宇宙防衛隊の装備であるゆえ、スピードマスター プロフェッショナルと同様の手巻きCal.1861。裏蓋には#SpeedyTuesdayとWORN ON THE MOONのロゴが記されるという芸の細かさには本当に驚かされます。
ちなみにこの#SpeedyTuesdayですが、2012年よりSNSで使われ始めたハッシュタグで、オメガ愛用者が毎週火曜日に自信のスピードマスターをインスタグラムに投稿するようになった一大イベント。
その勢いに乗ってオメガが2017年より、2012本限定でスペシャルエディションを製作するようになり、第二段にあたるのがこちらのウルトラマンモデルだったのです。
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今回はウルトラマンの日にあたる2018年7月10日に販売を開始し、すぐさま完売したとのこと。購入者の多くは外国人だったと言います。
日本特撮を盛り上げるに至ったウルトラマンは、世界中で今なお愛されていることがわかる一幕ですね。
まとめ
NASAの悲劇的な事故、オメガの功績、そして人々の宇宙への熱い思い・・・
文字盤・裏蓋に載った愛らしいキャラクターたちには、様々なストーリーが交錯しています。
今回ご紹介したモデルは限定品がほとんどで、実際に目にする機会は少ないかもしれません。
ですが、オメガはオメガ自身が持つストーリー性を上手く活用した限定モデルを多くラインしており、毎年新作が楽しみなブランド。
これからもオメガが生み出すであろう腕時計の数々に、ワクワクした期待感が止みません。
当記事の監修者
南 幸太朗(みなみ こうたろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ
学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴13年。