富と名誉の象徴である金(ゴールド)素材。
イエローゴールド・ピンクゴールド・ホワイトゴールドが有名ですが、メーカー独自のゴールドを製造しているブランドも存在します。
そこで今回はロレックスの「エバーローズゴールド」、オメガの「セドナゴールド」、ウブロの「マジックゴールド」「キングゴールド」の4つを紹介したいと思います。
通常の金と何が違うのか、是非ご一読ください。
目次
①ロレックス エバーローズゴールド
エバーローズゴールドはピンクゴールドに独自の加工を加え、より美しく上品な仕上がりとしたゴールド素材です。
2005年に開発され、デイトナ・デイデイト・ヨットマスターといった数々の人気モデルに採用されてきました。
エバーローズゴールドの配合
高級時計に使われるゴールドケースは純金(24K)ではなく、加工しやすい18kが使われています。
18kは純金の約75%が金で出来ている素材で、残りの25%に別の素材を配合することで様々な色合いに変化します。
イエローゴールド、ピンクゴールド、ホワイトゴールド。一般的によく使用されるゴールドケースはこの三種類ですが、ロレックスはピンクゴールドに独自の加工を加えることで、他社には真似できない上品な美しさを放つエバーローズゴールドを誕生させました。
出典:https://www.rolex.com
ピンクゴールドは「金:75% 残り25%に銅を多く配合」することで作られる”赤みの強い”ゴールド素材ですが、実は銅の性質上「変色しやすい」という特徴があります。
とりわけ汗や水には弱く、長く使用していると購入当初の美しさが失われていくことが問題視されていました。
そこで、ロレックスはピンクゴールドにプラチナを1.5~3%含めることで、変色強い新しいゴールド素材を完成させます。
それこそがローズエバーゴールドです。
ローズエバーゴールドは変色しにくいだけでなく、プラチナを混ぜることでピンクゴールドよりも上品で優しい色合いになっています。
この主張しすぎない色合いは本当に美しく、人気・評価ともに非常に高いです。
②オメガ セドナゴールド
永遠のライバルであるロレックスのエバーローズゴールドに対抗するため、オメガも独自のピンクゴールドを完成させます。
その名もセドナゴールド。
ピンクゴールドベースであることはエバーローズゴールドと変わりませんが、金75%に対する残り25%の配分がエバーローズゴールドとは異なります。
パラジウムを加えたセドナゴールド
エバーローズゴールドは残りの25%にプラチナを含めていましたが、オメガのセドナゴールドはパラジウムを加えています。
パラジウムはプラチナと同じ白金族元素の一つであり、銀白色の金属素材です。加工しやすく、色味も調整しやすいことから、貴金属に幅広く配合されています。
加えてプラチナと同じく強い耐蝕性を備えているため、変色を起こしにくいという特徴もあります。
配合している素材は違いますが、基本的な性質は殆どエバーローズゴールドと一緒です。
セドナゴールドはエバーローズゴールドよりも赤みが強くなっており、はっきりとした色合いになっています。
開発直後はごく一部のモデルにのみ採用されていましたが、現在はスピードマスター・シーマスター・コンステレーションといった各人気モデルに幅広く採用されるようになりました。
③ウブロ マジックゴールド
ロレックス・オメガに追随し、2011年にはウブロも自社独自のゴールド素材「マジックゴールド」を開発。
このマジックゴールドはプラチナやパラジウムを混ぜることで変色を防ぐことに成功したライバル2社の素材とは全く異なる切り口から開発された、その名の通り魔法のような素材です。
出典:https://www.hublot.com/
変色を抑え、発色の美しさに拘ったエバーローズゴールド・セドナゴールドに対し、マジックゴールドは何といっても「硬い」ことが特徴です。
一般的な18Kゴールドの硬さは ビッカース硬度約400程度といわれていますが、マジックゴールドはなんとその2倍以上の約1000ビッカースを誇ります。
壊れにくく頑丈であるという圧倒的なアドバンテージこそマジックゴールドの魅力です。
色味はクスミを帯びたイエローゴールドといったところでしょうか。
なぜこれほどまでに硬くできるのか?
マジックゴールドがこれほどまでに硬い理由はベースに炭化ホウ素セラミックスと呼ばれるセラミック素材のなかでも最上級に硬い素材が使われているからです。
炭化ホウ素セラミックスは主に軍需産業や航空・宇宙産業で用いられる素材であり、加工する前の硬度は約4000ビッカースを誇ります。
この画期的な素材を金と混ぜることで前例のない硬度を誇る時計ケースが生まれるわけです。
マジックゴールドの配合率
出典:https://www.hublot.com/ja/craftsmanship/materials
マジックゴールドの配合率は金75%、炭化ホウ素のセラミックが約22%、アルミニウムが約3%。混ぜ合わせた合金をアルゴンガスで融解させ、セラミックの骨格に流し込むことにより、時計のケースになります。
尚、アルミニウムは金とセラミックをうまく馴染ませるために加えられています。
この配合は非常に頑丈なケース質感を生みますが、発色や美しさに関してはエバーローズゴールド・セドナゴールドの方が上です。しかし、ウブロならではのスケルトン文字盤にはマジックゴールドのやや黒みがかかった色味がピッタリ合います。
また、マジックゴールドはエバーローズゴールド・セドナゴールドと同じく特許を取得しており、スイス貴金属管理局からも18Kゴールドのお墨付きをもらっています。
異端な素材が使われていますが、紛れもなく世界的に認められたゴールドの一つです。
④ウブロ キングゴールド
ウブロ独自のゴールド素材はマジックゴールドだけではありません。
ビッグバンやクラシックヒュージョンシリーズの人気モデルで採用されているキングゴールドもウブロ独自のゴールド素材です。
正統派ピンクゴールドがベース
異素材を使ったマジックゴールドとは異なり、キングゴールドはピンクゴールドをベースとした正統派ゴールド。
キングゴールドは75%の金、残り25%に通常よりも多く配合した銅とプラチナを入れて作り上げました。
プラチナが入っているという点はエバーローズゴールドと同じですが銅の分量が多いため、赤みが強い色合いになっています。性質はエバーローズゴールドに近く、色味はセドナゴールドに近い、いわば2つの中間的な存在です。
もちろん経年による変色が起こりにくくなっています。
まとめ
- ロレックス エバーローズゴールド:変色しにくく 淡いカラーのピンクゴールド
- オメガ セドナゴールド:変色しにくく エバーローズゴールドよりもやや赤みが強いピンクゴールド
- ウブロ マジックゴールド:ベースにセラミックを採用した硬いゴールド 色味はクスミを帯びたイエローゴールド
- ウブロ キングゴールド:エバーローズゴールドに近い性質でセドナゴールドに近い色味をもつピンクゴールド
一見同じように見える各社の独自素材ですが、細かく中身を見てみてると、明確な違いがあることがわかります。
実物を見たり触ったりすると違いが更に分かりやすいので、是非一度お手に取ってご覧ください。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年